CINC CapitalはCINC(証券コード:4378)のグループ会社です。
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M&A / 基礎知識
- 公開日2024.12.18
- 更新日2025.05.27
M&Aのメリットとデメリットは?売り手や買い手、従業員など立場別にわかりやすく解説
企業の成長戦略や経営課題の解決策として注目されるM&A(企業の合併・買収)は、年々その重要性を増しています。
グローバル化やデジタル技術の進化、そして中小企業における後継者問題といった社会的背景の中で、M&Aを選択する企業が増加中です。
一方で、M&Aには企業の立場によって異なるメリットとデメリットが存在し、その特性を正しく理解することが成功の鍵です。
この記事では、売り手・買い手・従業員など、それぞれの視点からM&Aのメリットとデメリットをわかりやすく解説します。また、業種別や手法別の違い、成功のために欠かせない専門家の役割まで包括的にご紹介します。
M&Aを検討している方はもちろん、基礎から学びたい方もぜひ最後まで読んでみてください。
目次
【売り手企業】M&Aのメリット
まずは、売り手企業のメリットから見ていきましょう。M&Aには、事業の持続や後継者問題の解決など多くのメリットがあります。
それ以外にも、以下のようなメリットがあげられます。
- 事業を存続させることができる
- 後継者問題を解決できる
- 従業員の雇用を維持できる
- 経営者・創業者が利益を得られる
- 個人保証から解放される
売り手のメリット①
事業を存続させることができる
売り手企業にとってM&Aは、事業の存続を確保できる手段の一つです。
経営者のリタイアや市場の変化などにより、独立して事業を続けることが難しくなった場合、M&Aを通じて事業を引き継ぐ新しい企業や経営者を見つけることが可能です。
売り手のメリット②
後継者問題を解決できる
日本では多くの中小企業で、経営者が高齢化する一方で、後継者が見つからないという問題があります。そこでM&Aを行うことで、第三者に経営を引き継いでもらうことができます。
近年、地方の製造業者が事業を継続するためにM&Aを通じて大手企業に吸収されることで、後継者問題を克服し、事業を存続させるケースが多く見られます。
こうした事例は特に地方の中小企業において顕著で、地域経済の活性化も期待できます。
【関連記事】【中小企業】後継者不足の現状は?何が問題?原因や解決策、相談先を解説
売り手のメリット③
従業員の雇用を維持できる
M&Aは、従業員の雇用維持に寄与することがあります。経営難に直面している企業にとって、M&Aは新たな資本やリソースを導入する手段となるため、これにより従業員の雇用を維持することができます。
こうした雇用維持を目的として、より経営基盤の安定した大企業とのM&Aを検討する中小企業のオーナーも多いです。
売り手のメリット④
経営者・創業者が利益を得られる
M&Aを行うことにより、経営者や創業者が株式や資産の売却を通じて現金収入を得られるため、引退後の生活資金や新たな投資の原資にすることができます。
中小企業の経営者が自分の会社を大手企業に売却することで、大きな売却益を手にし、それをリタイア後のプランや別のビジネスに投資するケースも多いです。
【関連記事】会社売却後の経営者(社長)の人生とは?選択肢やメリットデメリットを解説
売り手のメリット⑤
個人保証から解放される
M&Aを実施することで、経営者が個人保証の負担から解放される可能性があります。中小企業では、経営者が会社の借入に対して個人保証を提供しているケースが一般的です。
しかし、M&Aによって新しいオーナーが経営を引き継ぐ際、債権者との合意が得られれば、この個人保証も解除されることがあります。
その結果、経営者は退任後の財務的リスクを回避でき、安心して次の人生に進むことができます。M&Aは、経営者にとってリスク軽減の有効な手段といえるでしょう。
【売り手企業】M&Aのデメリット
M&Aは売り手企業にとって多くのメリットをもたらす一方で、いくつかのデメリットやリスクも伴います。
具体的には、以下のようなリスクがあげられます。
- 買い手企業が見つからないことがある
- 希望する条件で売却できないことがある
- 従業員が離職するリスクがある
- 企業文化の違いにより摩擦が生じることがある
- 経営権を失うことがある
これらのリスクを理解し、適切な対策を講じることが大切です。ここでは、売り手企業が直面する可能性のあるデメリットについて解説します。
売り手のデメリット①
買い手企業が見つからないことがある
M&Aにおいては、適切な買い手企業が見つからない可能性があります。例えば、市場のニーズと売買対象企業の特性が合わない場合が挙げられます。
また、高額な買収価格を設定しているなど売り手企業側の条件が厳しすぎる場合も、買い手企業の関心を惹きにくくなります。
このようなリスクを回避するため、事前の市場調査と柔軟な条件設定が重要です。
事前の市場調査を通じて、自社の強みや買い手企業が求めるポイントを把握し、それに合わせた譲渡条件を設定することが求められます。
また、市場の動向や買い手企業の財務状況を把握することで、双方にとって有益な条件を提示できるようになります。
売り手のデメリット②
希望する条件で売却できないことがある
M&Aでは理想的な条件での売却が難しい場合があります。買い手企業が、自社の利益を最大化するために交渉を有利に進めようとするケースも存在するからです。
特に、業績が不安定な企業や特定の市場での競争力が低い企業の場合、買い手側が条件を厳しく設定する傾向があります。
理想的な条件での売却が難しい可能性があることを理解し、状況に応じて柔軟な交渉姿勢を持つことが重要です。
プロのM&Aアドバイザーや専門家を活用して、妥当な交渉条件を引き出すための戦略を練ることも、成功へのポイントです。
売り手のデメリット③
従業員の雇用や役割が維持されない可能性がある
M&Aの過程で、従業員の雇用が維持されない可能性があります。経営者変更や事業再編に伴い、重複する役職やポジションが発生し、結果として配置転換や役割の変更が行われることがあります。
また、働き方の変更によって従業員から不満の声が上がる可能性もあります。このような事態を避けるために、M&Aの過程で従業員の雇用に関する議論を慎重に行うことが重要です。
売り手のデメリット④
従業員が離職するリスクがある
M&A成立後、従業員のモチベーションが低下し、離職する可能性があります。
新しい経営体制や組織文化への適応が求められるため、従業員にとってストレスが増加することが多いためです。
例えば、企業買収後に新しい経営方針や評価システムが導入され、従業員がこれに反発して離職を選ぶケースがあります。
このような事態を避けるためには、M&Aに際して従業員のモチベーション維持策を講じることが重要です。
売り手のデメリット⑤
企業文化の違いにより摩擦が生じることがある
M&Aにおいて企業文化の違いが統合の障壁になることが多いです。企業文化は、長年にわたり形成された企業内の習慣や価値観であり、異なる文化が混在するとコミュニケーションや業務遂行に支障をきたす場合があります。
例えば、ベンチャー企業と大企業が合併する際、ベンチャー企業のフラットな組織文化と大企業の階層的な組織文化が衝突し、意思決定プロセスの違いや働き方の違いが問題になることがあります。
ベンチャー企業は自発性や迅速な意思決定を重視するのに対し、大企業は階層的な意思決定プロセスや従来の業務フローを重視することが多いため、これが合併後の組織運営において混乱を招くことがあるのです。
M&Aを成功させるためには、企業文化の違いを認識し、統合プロセスを慎重に進めることが重要です。
売り手のデメリット⑥
経営権を失うことがある
M&Aを行うと、買い手企業が経営の主導権を握るため、元の経営者が経営に参加できなくなるケースが一般的です。
例えば、ある中小企業が大手企業に買収された場合、これまでの経営者は役員や顧問として残ることもありますが、実際の経営判断は買い手側に委ねられることが多いです。
経営権の喪失に伴う影響を理解し、慎重にM&Aを進めることが重要です。経営権喪失のリスクを最小限に抑えるためにも、M&Aの目的や目標を明確に設定し、収益性や強みを十分に活用できるように計画を練ることが必要です。
また、売却後の企業統合(Integration)や組織再編(経営統合後)においても、元の経営環境とは異なる課題が新たに発生するでしょう。
そのため、事前に議決権や経営方針の調整についても詳細に契約書に明記し、取締役や株主総会における権限の明確化を図ることが重要です。
【関連記事】経営権とは?支配権との違い、M&Aや譲渡を円滑に進めるポイントを解説
【買い手企業】M&Aのメリット
続いては、買い手側のメリットについてです。M&Aは、企業が事業規模を拡大し成長を加速させるための強力な手段です。
例えば、以下のようなメリットがあげられます。
- 事業規模や市場シェアを拡大できる
- コストを削減して業務を効率化できる
- 新規事業に進出して多角化を図れる
- 技術力やノウハウを取得できる
- 顧客基盤を獲得できる
これらのメリットを理解し、戦略的に活用することが重要です。
買い手のメリット①
事業規模や市場シェアを拡大できる
M&Aを通じて事業規模を拡大し、市場シェアを迅速に取得することが可能です。M&Aは既存の事業基盤や顧客基盤を活用することで、新規市場への参入やシェア拡大をスピーディーに実現できます。
新たにゼロから市場に参入するよりも、既存のリソースを使うことで大幅に時間を短縮できます。
買い手のメリット②
コストを削減して業務を効率化できる
M&Aにより、コスト削減と効率化が実現できます。経済規模の拡大に伴い、スケールメリットを活用することで運営コストが削減されるからです。
重複する部署や機能を統合することで人件費や運営費を削減し、技術やノウハウを共有することで効率的な生産体制を築くことが可能です。
買い手のメリット③
新規事業に進出して多角化を図れる
新規事業への進出や多角化は、企業の成長とリスク分散に大きく寄与します。既存事業だけに依存するリスクを避けるため、M&Aを通じて新たな市場や事業領域に進出することで、収益の多様化を図ることができます。
また企業の成長機会を増やし、市場の変動にも柔軟に対応できるようになります。
買い手のメリット④
技術力やノウハウを取得できる
技術力やノウハウを取得する目的でM&Aを実施することは、市場競争力を大幅に向上させるための重要な手段です。
これにより、既存のリソースや時間を節約しながら、高度な技術やノウハウを迅速に手に入れることができます。
M&Aを通じて技術力やノウハウを得ることは、自社で開発するよりもリスクが少なく、即戦力として活用できる点が魅力です。
買い手のメリット⑤
顧客基盤を獲得できる
M&Aは、新たな顧客基盤を迅速に獲得する有効な手段です。既存の企業と合併することで、その企業が持つ顧客リストやマーケットシェアを短期間で自社に取り込むことができます。
売り手企業が持つ販売チャネルや顧客リストが、自社と相性が良いかどうかを見極めることが大切です。
【買い手企業】M&Aのデメリット
買い手企業にとって、M&Aには多くのメリットがある一方で、デメリットやリスクも存在します。
- 想定以上の費用がかかることがある
- 想定通りのシナジー効果が得られないことがある
- 組織文化の統合が難航することがある
- 簿外債務などのリスクを抱えることがある
M&Aを成功に導くうえで、考慮すべきデメリットについて解説します。
買い手のデメリット①
想定以上の費用がかかることがある
M&Aにおいては、買収や統合に関する費用が当初の予想を超えるケースがよくあります。想定以上の費用が発生する主な理由は、デューデリジェンスの段階で見つからなかった問題や、統合作業の複雑さによるものです。
例えば、買収後に隠れた負債が発見された場合や、システム統合の遅れによる追加コストなどが挙げられます。
事前の詳細なデューデリジェンスと統合後の綿密な計画が、将来的な予期しない費用を防ぐために重要です。このため、M&Aを実施する前にしっかりとした調査と計画を行うことが非常に重要です。
【関連記事】M&Aにかかる費用にはどのようなものがある?内訳と影響を与える要素
買い手のデメリット②
想定通りのシナジー効果が得られないことがある
社会情勢の変化といった外的要因以外にも、事前の期待値が高すぎる、統合後の運営における具体的なプランが不十分であるといった理由から、想定通りのシナジー効果が得られない可能性があります。
買収前に十分なデューデリジェンスを行い、経営統合後の具体的な経営・事業計画を練ることが必要です。予想外の事態に柔軟に対応できるよう、詳細なシミュレーションを行うようにしましょう。
【関連記事】M&Aのシナジー効果とは?種類や分析フレームワーク、定量化する方法を解説
買い手のデメリット③
組織文化の統合が難航することがある
M&Aによる企業統合時には、組織文化の違いが大きな障壁となることがあります。企業ごとに異なる文化や価値観、仕事の進め方が根付いているため、それらを一致させるのは困難を極めます。
これにより、統合後の事業推進および個々の業務遂行に支障をきたす可能性があります。
これらの問題を解消するため、経営者自身や管理職が積極的に関与し、全社をあげたコミュニケーションの活性化を徹底することが成功の鍵となります。
例えば、社員同士の交流を促進するためのイベントや共同プロジェクトを設けることが有効です。
買い手のデメリット④
簿外債務などのリスクを抱えることがある
M&Aには簿外債務などの隠れたリスクが存在します。このため、M&Aを行う際には、表面に出てこない簿外債務や過去の法律問題など、買収後に明らかになる潜在的なリスクが存在する可能性があります。
一例として、過去の未払い賃金や環境汚染に関する法的責任が発覚するケースがあり、これが企業の財務に大きな影響を与えることがあります。
M&Aの従業員のメリットとデメリット
M&Aは経営戦略の一環として企業に大きな影響を与えますが、その影響は従業員にも及びます。
ここでは、従業員の視点から見たM&Aのメリットとデメリットを解説します。
従業員のメリット
M&Aによって従業員はキャリアや待遇の向上といった恩恵を受けることがあります。特に買収先が大手企業である場合、新たな制度や福利厚生が適用され、労働環境が改善されることが期待されます。
例えば、中小企業の従業員がM&Aによって大企業のグループ会社となったケースでは、賞与や退職金制度、教育研修制度などが充実し、スキルアップやキャリア形成がしやすくなったという例もあります。
また、事業の安定化により雇用が守られるケースも多く、将来への不安が軽減される点も大きなメリットです。
したがって、M&Aは従業員の働き方や将来にポジティブな影響を与える可能性があります。
従業員のデメリット
一方で、M&Aは従業員にとって必ずしも良いことばかりではありません。注意すべきデメリットも存在します。
M&Aにより従業員が不安やストレスを抱えることもあります。その主な理由は、組織体制や経営方針の変更、人員整理のリスクなどがあるためです。
例えば、吸収合併の際には同じ職務に複数の人員が存在することで配置転換やリストラの対象となるケースもあり、将来の見通しが不透明になることがあります。
また、企業文化の違いによる人間関係の摩擦や、従来の業務スタイルが通用しないことも心理的負担となります。こうした要素から、M&Aは従業員のキャリアにマイナスの影響を及ぼす場合もあります。
そのため、M&Aの実施にあたっては従業員への十分な説明と支援が不可欠です。
【関連記事】売却された会社の社員はどうなる?影響や社員とのトラブルを防ぐための注意点について解説
M&Aの主な手法ごとのメリット
M&Aには複数の手法があり、それぞれに特徴とメリットがあります。ここでは主要な手法ごとに、どのような利点があるのかを解説します。
株式譲渡
株式譲渡は最もシンプルなM&A手法の一つで、スピーディに企業買収を実現できるというメリットがあります。
株式譲渡は、買収側が売却側企業の株式を取得することで経営権を得る手法です。この方法の最大のメリットは、手続きが比較的簡易で、短期間でM&Aを完了できる点にあります。
具体的には、取締役会や株主総会の承認のみで進行可能なケースが多く、迅速に事業の統合や意思決定が行えます。また、買収対象の会社を丸ごと引き継ぐため、契約の再締結や資産移転の手間が少なく済む点も効率的です。
そのため、スピード感を重視した買収や、現経営陣との協議を経て合意形成が図られている場合に適した手法といえます。
【関連記事】株式譲渡とは?メリットやデメリット、事業譲渡との違いも解説
株式交換
株式交換は、親会社が子会社を完全子会社化する際によく使われる手法で、資金を使わずにM&Aが可能です。
株式交換とは、買収側が自社株式を譲渡対象企業の株主に付与することで、対象企業を完全子会社化する手法です。現金を使用せずに買収が可能なため、資金負担が少なく、手元資金を温存しながらグループ体制の構築ができます。
例えば、上場企業が成長分野にある企業をグループ内に取り込む際、株式交換を活用することで、相手企業の経営陣のモチベーションを維持したまま、円滑な統合が実現できます。
資本関係の整理や事業戦略の統一がしやすいこともメリットであり、長期的なシナジー創出を狙うケースで効果的な手法です。
【関連記事】株式交換とは?メリットとデメリット、手続き方法を解説
会社分割
会社分割は、特定の事業や部門を切り出して新会社として独立させたり、他社に承継させたりするM&A手法です。
会社分割の大きなメリットは、必要な事業のみを切り出して売却・移転ができる点にあります。これにより、買収側は不要な負債や非コア事業を避けながら、狙った事業資産だけを取得できます。
例えば、赤字部門を除いた収益性の高い事業だけを他社に譲渡するケースでは、会社分割を用いることで取引の透明性が高まり、ステークホルダーにも納得感を持たせやすくなります。
また、従業員や契約関係も包括的に承継されるため、事業運営の継続性が確保されるという点も大きなメリットです。事業再編や選択と集中を進める企業にとっては非常に有効な手段です。
【関連記事】会社分割とは?吸収分割や新設分割との違い、手続きについても解説
子会社化
子会社化は、対象企業の株式の過半数を取得して経営権を得る手法で、完全統合ではなく段階的な支配が可能な点が特徴です。これにより、企業文化や従業員の働き方を急激に変える必要がなく、ソフトランディングが可能となります。
例えば、ベンチャー企業を子会社として取り込むことで、独自性を保ちながらシナジー効果を活かす戦略が実現できます。さらに、完全買収よりもリスクが低く、経営状況を見極めながら統合を進められる柔軟性もあります。
こうした特性から、長期的な成長戦略として活用されやすい手法です。
【関連記事】M&Aによる子会社化とは?方法やメリットデメリット、事例を解説
事業譲渡
事業譲渡は、企業全体ではなく特定の事業や資産のみを対象とするM&A手法で、買い手が必要な機能だけを選んで取得できる点が大きな魅力です。
例えば、飲食チェーンが好調な店舗だけを買収し、効率的にエリア拡大を図るといった活用法があります。売り手にとっても、不採算部門を切り離して経営のスリム化を図ることが可能です。
また、株式とは異なり負債や不要資産を引き継がないため、買い手のリスクも限定的になります。このように、事業譲渡は戦略的な事業選択と集中を実現できる手法です。
【関連記事】事業譲渡とは?メリットやデメリット、手続きをわかりやすく解説
【業種別】M&Aのメリット
M&Aは業種によって得られるメリットが異なります。それぞれの業界特有の課題やニーズに応じて、M&Aは効果的な解決策となる場合があります。
ここでは主要な業種ごとに、M&Aを通じて期待できる利点を解説します。
不動産業
M&Aにより不動産業では営業基盤の拡大や物件管理体制の強化が可能になります。地域密着型の企業同士が統合することで、新規エリアへの進出や既存顧客との関係強化が期待できます。
例えば、地方で強みを持つ不動産会社が都市部企業に買収されることで、広域展開と情報網の強化が同時に進みます。また、人的リソースやノウハウを共有することで、高付加価値のサービス提供も可能になります。
結果として、企業競争力の向上と安定的な収益確保が見込めます。
【関連記事】不動産M&Aが注目される理由は?メリット・デメリットや留意点
運送業
運送業ではM&Aによって人手不足の解消や車両・倉庫の効率的な運用が実現できます。業界全体でドライバー不足が深刻化する中、人員の確保とエリア網の統合が進むことで、サービスの安定供給が可能になります。
例えば、地方の運送会社が都市部の企業と統合することで物流網が広がり、荷主のニーズに柔軟に対応できるようになります。また、燃料や保守費のコスト削減にも寄与し、経営効率の改善が見込めます。
【関連記事】物流業界におけるM&Aの動向とは?市場規模や業界特有の注意点
建設業
建設業ではM&Aによって技術力や受注力の強化が可能になります。特に小規模業者は人材や資格保持者が不足しがちですが、M&Aによって組織体制が強化され、大型案件への参入が現実的になります。
例えば、専門性の異なる業者が合併することで、元請けとしての機能が高まり、業務の一貫受注が可能になります。さらに、機材の共有や経理・人事などの間接部門の統合も経費削減につながります。
【関連記事】建設業界の事業承継・M&A動向(2025年)メリット/事例/成功のポイントを解説
医療法人
医療法人のM&Aは医療資源の有効活用や経営の安定化を実現します。高齢化による医師不足や地域偏在が課題となる中、法人同士が統合することで人員配置の最適化や診療科目の充実が可能になります。
例えば、急性期病院と回復期リハビリ病院の連携によって、患者の受け入れから退院まで一貫した医療提供体制が整います。これにより、地域医療の質を高めつつ経営効率の向上が図れます。
【関連記事】医療法人業界のM&Aの動向|事例や売却成功のポイントも紹介
歯科医院
歯科医院のM&Aは後継者問題の解決や診療体制の強化に貢献します。多くの歯科医院が個人経営であるため、院長の引退が閉院リスクに直結しますが、M&Aによって継続運営が可能になります。
例えば、大手医療法人が個人の歯科医院を承継することで、患者数や売上が安定し、最新設備への投資も容易になります。また、スタッフの雇用維持や地域医療の継続という社会的意義も大きいです。
【関連記事】歯科業界のM&A・事業承継動向(2025年)メリットデメリット/事例/成功のポイントを解説
中小企業
中小企業にとってM&Aは事業承継の最も有効な手段の一つです。経営者の高齢化が進む中、親族や社内に後継者がいないケースも多く、M&Aにより事業の存続と雇用の維持が実現できます。
例えば、同業種の企業に承継されれば、業務や文化の親和性が高く、スムーズな移行が可能です。さらに、買収企業の経営資源を活用することで、販路拡大や商品開発にも繋がります。
商社
商社におけるM&Aは、取り扱い商材や販路の多様化に大きく寄与します。特に中堅・中小の専門商社では、異業種との統合によりシナジー効果を得ることが可能です。
例えば、機械部品商社が電子部品商社を買収することで、クロスセル戦略を展開し、顧客の囲い込みが強化されます。また、調達力や在庫管理ノウハウの共有によりコスト最適化も実現でき、事業全体の競争力が高まります。
【関連記事】商社業界のM&A動向(2025年)メリットデメリット/事例/成功のポイントを解説
介護業界
介護業界ではM&Aによるスケールメリットと人材確保が大きな効果を生みます。人手不足と施設運営の非効率さが課題ですが、複数施設の統合により管理体制を一元化し、運営コストを抑えることができます。
例えば、地方の小規模事業者が大手グループに加わることで、研修制度や採用支援が整い、サービス品質の向上と離職率の低下が実現します。業界再編の中で、安定成長の鍵となる戦略です。
【関連記事】介護施設のM&Aの動向や最新事例|メリットについても解説
ホテル
ホテル業におけるM&Aはブランド力の強化と稼働率の向上をもたらします。地域密着型のホテルが全国展開する大手グループに参加することで、予約システムや販促ノウハウを共有でき、集客力が高まります。
地場ホテルが大手チェーンの傘下に入ることでインバウンド対応が可能となり、外国人観光客の取り込みにも成功したケースがあります。M&Aは、経営基盤の安定とサービスレベル向上の両立を実現します。
【関連記事】ホテル・旅館業界のM&Aの実態は?売却事例やメリットを紹介
調剤薬局・ドラッグストア
調剤薬局・ドラッグストアでは、M&Aによってスケールメリットと店舗展開のスピードが加速します。薬剤師の確保や物流の効率化が求められる中、M&Aで人材や仕入れルートを共有できることは大きな利点です。
地方薬局が大手チェーンと統合することで、PB商品の導入やITシステムの最適化が可能になり、顧客満足度の向上にも繋がります。競争の激しい業界において、成長のドライバーとなる手法です。
【関連記事】調剤薬局業界のM&A動向(2025年)メリットデメリット/事例/成功のポイントを解説
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M&Aを成功させるためには専門家への相談が不可欠
M&Aの成功には、様々な専門家のサポートが必要不可欠です。主な専門家として、M&Aアドバイザー、弁護士、会計士が挙げられます。
M&Aアドバイザー
プロジェクト全体を統括する重要な役割を担います。全体的な戦略立案から、買収・売却候補企業の発掘、条件交渉まで幅広く関与します。
また、企業価値評価や適正な取引価格の算定も行い、関係者間の調整役としても機能します。
【関連記事】M&Aアドバイザーとは?仕事内容や起用するメリット・デメリット、選び方のポイントを解説
弁護士
法務面での支援を提供します。契約書の作成や法的リスクの確認はもちろん、法務デューデリジェンスの実施も担当します。
また、規制当局への対応や株主総会などの各種法的手続きもサポートします。
【関連記事】M&Aにおける法律事務所の役割とは?M&Aに強い事務所の選び方と注意点を解説
会計士・税理士
財務・税務面での専門家として重要な役割を果たします。財務デューデリジェンスの実施や税務上の影響分析を行い、適切な節税戦略を立案します。また、企業価値評価のサポートや会計処理方針の検討も行います。
このような専門家の支援を受けることで、潜在的なリスクを早期に発見し、適切な対策を講じることができます。
また、効率的なプロセス管理により、時間とコストを削減することも可能です。自社にとってどの分野の専門家のサポートが必要かを、見極めることが大切です。
初めてM&Aを行う場合は、M&Aアドバイザーと面談し全体像を掴む方法も有効です。
【関連記事】M&Aにおける公認会計士の役割は?業務内容や依頼するメリット、デメリットを解説
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M&Aは立場ごとのメリットとデメリットを比較して判断を
M&Aのメリット・デメリットを立場別に解説しました。それぞれの立場での具体的な利点や注意点を理解することは、M&Aを成功に導くために重要です。
M&Aを検討している企業は、専門家の意見を交えながら具体的なプラン作成を進めることをおすすめします。企業にとって重要な意思決定であるM&Aを成功させるためにも、適切なパートナーを見つけ、綿密な準備を行いましょう。
CINC Capitalでは、M&A仲介協会会員および中小企業庁のM&A登録支援機関として、M&A・事業承継のご相談を受け付けております。業界歴10年以上のプロアドバイザーが、お客様の真の利益を追求します。
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この記事の監修者

CINC Capital取締役執行役員社長
阿部 泰士
リクルートHRマーケティング、外資系製薬メーカーのバクスターを経て、M&A業界へ転身。 日本M&AセンターにてM&Aアドバイザーとして経験を積み、ABNアドバイザーズ(あおぞら銀行100%子会社)では執行役員営業本部長として営業組織を牽引。2024年10月より上場会社CINCの100%子会社設立後、現職に就任。