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M&Aでの税理士の役割とは?業務内容や依頼するメリット、選ぶポイント

支援 / 士業

  • 公開日2025.04.30
  • 更新日2025.04.30

M&Aでの税理士の役割とは?業務内容や依頼するメリット、選ぶポイント

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事業や会社の売却を検討している経営者の皆様、M&Aを成功させるためには様々な専門家のサポートが必要です。その中でも特に重要な役割を担うのが「税理士」です。M&Aプロセスにおける税務面のリスク管理や適切な売却価格の算出など、税理士の専門知識は事業売却の成否を大きく左右します。

本記事では、「M&A 税理士」に関して、具体的な役割や業務内容、依頼するメリット、そして適切な税理士の選び方まで、経営者が知っておくべき情報を詳しく解説します。

M&Aにおける税理士の役割

M&Aにおける税理士の役割は、税務の専門家として、M&Aにまつわる税金面のサポートを行うことです。

M&Aでは数多くの税務処理が発生します。特に譲渡益の計算、資産評価の方法、税制優遇の適用可否など、見落としてはならない重要なポイントがあります。税理士へ依頼することで、税務リスクの洗い出しや、確定申告の代行、M&Aスキームの検討時に税制面からのアドバイスを受けられます。

また、一部の税理士は、M&A仲介やアドバイザリー的な業務を担う場合もありますが、税務以外は専門外となるケースも多く、サポート範囲は限りがあります。税理士は主に税務戦略の立案、税務リスクの分析、税務上の最適なスキームの提案などを担当しますが、M&A全体をカバーするわけではありません。

M&Aは複合的な専門知識を要する取引であり、以下のような役割分担が一般的です。

  • 税理士:税務デューデリジェンス、税務スキームの提案、税務上の問題分析
  • 弁護士:法務デューデリジェンス、契約書作成・レビュー、法的リスク分析
  • 公認会計士:財務デューデリジェンス、財務諸表分析、会計上の問題点特定
  • M&Aアドバイザー:案件全体のコーディネート、買い手・売り手のマッチング、交渉支援

これらの専門家がチームとして連携することで、M&Aの成功確率は格段に高まります。例えば、税理士が特定した税務上の問題点について弁護士が契約書に適切な表明保証条項を設けたり、公認会計士の財務分析結果を踏まえて税理士が税務スキームを最適化したりといった連携が効果的です。

特に中小企業のM&Aでは、コスト削減のために一人の専門家に多くを依頼しがちですが、それぞれの専門性を活かした適切な役割分担を行うことが、長期的には効率的かつリスクの少ない方法だといえます。税理士に依頼する際は、その専門性の範囲を理解し、必要に応じて他の専門家との連携も視野に入れることが重要です。

M&Aにおける税理士の業務内容

M&Aにおける税理士の業務は、大きく分類すると税務デューデリジェンス、M&Aアドバイザリー業務、バリュエーションの三つです。それぞれの業務内容を詳しく見ていきます。

バリュエーション

バリュエーション(企業価値評価)は、M&Aにおいて、対象企業の適正な価値を算出するために行われます。バリュエーションは、適正な譲渡価格を決定し、売り手・買い手の双方が納得できる取引条件を設定するための業務です。

税理士は企業の価値を税務面から評価するための専門知識を持っており、収益アプローチや市場アプローチなどを理解した上で、特に税務リスクの特定や税効果を考慮した分析を行い、適正な買収価格算定に貢献します。なお、法的リスクの特定は弁護士の専門領域であり、M&Aにおいては各専門家がそれぞれの得意分野でサポートします。

バリュエーションを正確に行うことで、M&Aの成功確率を高められます。企業買収において、過大評価や過小評価は、取引の成功に悪影響を及ぼす可能性があるため、正確なバリュエーションは、M&Aの交渉や取引条件を適正に導くために非常に重要です。

税務デューデリジェンス

税務デューデリジェンス(買収監査)は、買収対象企業の税務状況を詳細に調査し、潜在的な税務リスクや不正確な申告を事前に発見することを目的としています。

税務デューデリジェンスを行うことで、買収後に発生するかもしれないトラブルの予防が可能となります。税務デューデリジェンスでは以下のようなポイントが重点的に調査されます。

  • 過去の申告内容の適正性
  • 税務上の繰越欠損金の状況
  • 未払税金の有無と金額
  • 税務調査の履歴と指摘事項
  • 特殊な税務処理の検証 など

売り手企業が過去の税務申告において適切に税務処理を行っていたかどうかや、過去の税務調査の内容、現在進行中の税務問題についても調査を行います。

調査内容から税務問題が発生するリスクを評価し、評価内容を基に取引の交渉材料を買い手企業へ提供します。買い手企業は提供された情報から、買収価格の決定や、売り手企業の潜在的な税務リスクを自税に特定するのです。

【参考】中小企業庁「中小 M&A ガイドライン(第3版)-第三者への円滑な事業引継ぎに向けて-」

M&Aアドバイザリー業務

M&Aのマッチングからクロージングまでのトータルサポートを行う税理士事務所もあります。M&A戦略の策定から、スケジュールの管理、M&Aのマッチング、相手先との交渉などM&Aで必要なサポートを全面的に行います。

専門的なアドバイザリー業務を受けることで、複数の専門家に依頼するよりも手間がかかりにくいです。

M&A後の税務サポート

M&A後の税務サポートは、税務申告、会計処理、税務相談など多岐にわたります。

特にM&Aを実施した年の売り手企業の税務申告は複雑です。M&Aによって得た譲渡所得を正確に計算し、適切な税金を申告する必要があります。正確な計算を行うことで、追徴課税などのペナルティを回避できます。

買い手企業もまた、統合後の税務申告を適切に行う必要があります。M&Aによって複数の企業が統合された場合は、会計・税務システムの統合やグループ法人税制に基づいた資産の譲渡損益の繰延べ、グループ通算制度に基づいた連結財務諸表の作成及び、企業内での会計方針などのルールを統一しなければなりません。

上記の税務サポートや、M&A後の将来的な税務リスクを回避するためのサポートを受けられます。

税理士と公認会計士の業務内容の違い

税理士と公認会計士は、どちらも企業の経営や財務に深く関わる専門家ですが、その業務内容と専門性には明確な違いがあります。M&Aにおける税理士の役割についてはすでにご紹介しましたが、ここでは公認会計士の役割について見ていきましょう。

公認会計士は会計の専門家として、企業の財務状況を第三者の視点でチェックする役割を担います。M&Aの場面では、特に「財務デューデリジェンス(財務調査)」や「財務報告の適正性の確認」などを通じて、取引の信頼性を高める役割があります。

財務の視点からの支援は、投資家や買い手企業に対して、財務内容の透明性や信頼性を示すことにつながります。特に、過去の決算書の整合性や、簿外債務※1の有無などは、M&A成立の大きな判断材料になるため、公認会計士の関与は大きいです。

「税金のことは税理士」「財務の見える化は公認会計士」というように、自社の状況に応じてそれぞれの専門家をうまく活用することが、M&A成功への近道となります。

※1…簿外債務とは:企業が抱える負債の一部が、会計上の理由や戦略的な理由から、正式な財務諸表に記載されない場合に発生する企業の貸借対照表に計上されていない債務のこと

M&Aで税理士へ依頼した際の報酬相場

M&Aにおける税理士の報酬相場は、取引の内容や会社の規模で変動します。

取引規模以外にも、

  • 税務デューデリジェンス
  • アドバイザリー業務
  • バリュエーション
  • 確定申告代行

など依頼する業務内容によっても金額が変わるため、依頼する際には注意が必要です。

なお、参考として、M&A仲介会社などでは取引価格に応じて報酬を決める、「レーマン方式」が一般的に採用されています。税理士の場合は、通常は時間単価制や固定報酬制を採用することが多いですが、M&A仲介業務も行う税理士事務所では、一部でこのような成功報酬型の料金体系を採用する場合もあります。

レーマン方式とは、取引金額が増えるにつれて手数料率が低くなる仕組みの計算方法です。

▼レーマン方式を採用した場合の手数料率の例

取引金額が5億円までの部分:5%
取引金額が5億円超〜10億円の部分:4%
取引金額が10億円超〜50億円の部分:3%
取引金額が50億円超〜100億円の部分:2%
取引金額が100億円超の部分:1%

取引金額が高くなるほど手数料率が低くなるため、大規模な取引においては相対的に低い手数料で済むことが多いです。

【レーマン方式の計算方法の具体例】

  1. 5億円(〜5億円部分)× 5% = 2,500万円

  2. 2. 5億円(5億円〜10億円部分)× 4% = 2,000万円

  3. 3. 2億円(10億円〜12億円部分)× 3% = 600万円

    取引金額が12億円の場合の成功報酬は上記のように計算します。この場合の総成功報酬は5,100万円です。

    税理士へ依頼する際は、具体的な報酬の内訳と相場を確認して、納得した上で契約を結びましょう。事前にしっかりと確認することで、後のトラブルを避けてスムーズにM&Aを進められます。契約前に十分な説明を受けて、お互いの合意のもとで進めることが大切です。

    M&Aを税理士へ依頼するメリット

    M&Aを税理士に依頼するメリットは、税務・会計面でのリスク把握や、適切な申告処理を行うことなどのメリットがあります。以下で詳しく解説します。

    税務・会計面でのM&Aのリスクを発見できる

    M&Aを税理士へ依頼する大きな利点は、税務や会計面における潜在的な問題を早期に特定できる点です。税理士が持つ会計や税務の専門知識と、財務状況の詳細な分析能力を活用して、潜在的なリスクを特定できます。

    税務デューデリジェンスや企業価値の評価を適切に行うことで、売却価格の適正化を図れます。税務上の問題点を早期に把握することで、M&A後のトラブルを防止し、円滑な取引が実現します。

    税務申告を正しく行える

    M&Aに伴う取引の税務の複雑さは、多くの会社にとって頭を悩ませる要因となります。買い手にとっては、買収した資産の減価償却方法など専門的な知識がなければ正確な処理が難しく、売り手にとっては、売却益や譲渡所得に関する正確な計算を行わなければなりません。

    税理士に助けを借りて、これらの複雑な計算を正確に行い、適切な申告が可能になります。正しい税務申告を行うことで、その後の税務調査をスムーズに進められ、不要なペナルティを避けられます。税理士の専門知識を活用することで、M&Aプロセスのリスクを最小限に抑えられます。

    M&Aの税務に関するアドバイスを得られる

    税理士からM&Aの税務に関するアドバイスを受けることにより、包括的な視点での税務上の指針を得られます。特に税務面においては複雑な部分が多く、専門家の支援が求められる場面が多いです。

    税理士に依頼することで、M&Aを実施する際に発生する譲渡益税や法人税などの税金のリスクの特定や、最新の税法に基づいたサポートを行ってくれます。

    他の専門家とのネットワークを活用できる

    税理士が持つ幅広いネットワークを活用することで、他の専門家からのサポートを同時に得られます。

    M&Aは税務処理にとどまらず、法務やファイナンスの専門的な知識も求められます。このため、総合的なサポートが必要です。

    経験豊富な税理士は、弁護士やファイナンシャルアドバイザー、公認会計士、M&A仲介業者など、異なる専門分野の専門家とのネットワークを持っている場合があります。M&A実績の豊富な税理士であれば、信頼できる専門家を紹介してもらえる可能性が高まります。ただし、税理士によってネットワークの範囲や質は異なるため、事前に確認することをお勧めします。

    税理士が持つネットワークを活用することで、総合的なサポートを受けられます。

    M&Aについて相談する税理士を選ぶポイント

    M&Aを成功させる鍵は、適切な専門家を選ぶことです。ここでは、M&Aについて相談する税理士を選ぶ際のポイントを解説します。

    M&Aの支援実績が豊富である

    税理士を選ぶ際に、その税理士がM&Aに関する支援実績が非常に重要です。M&Aは税務、法務、財務など多岐にわたる専門知識が求められます。支援実績が豊富な税理士は、過去の案件を通じて得た知識や経験を活かし、クライアントに対して適切なアドバイスを提供します。

    M&Aの支援実績が豊富な税理士を選ぶ時には、具体的な実績や過去の案件について確認することが推奨されます。

    自社とのコミュニケーションの相性が良い

    M&Aにおいては、自社とのコミュニケーションの相性が良い税理士を選ぶことが非常に重要です。

    M&Aのいくつかステップは時間が限られている場合が多く、迅速な意思決定が求められます。コミュニケーションの相性が良い税理士であれば、必要な情報を迅速に伝えられるため、M&Aをスムーズに進行することが可能です。

    また、自社のビジネスモデルや業界特性を理解している税理士は、より具体的で実践的なアドバイスを提供できます。コミュニケーションが円滑であれば、自社の状況や目標を的確に伝えやすいです。また税理士も目標に基づいた提案を行いやすく、M&A戦略が自社の実情に即したものとなります。

    M&Aを税理士へ依頼する際の注意点

    M&Aについて税理士へ依頼する際には、税理士の経験や専門知識を確認し、信頼できる専門家を選ぶことが重要です。また、税理士へ依頼する際には、報酬形式や仕組みについて事前に把握しておくことも大切です。

    曖昧な報酬体系では、想定外の高額請求が発生する恐れがあります。一方、明瞭な料金設定をしている税理士なら、透明性と信頼性が担保され、安心して業務を委託できるでしょう。

    M&A業務には基本料金と成功報酬が混在するケースが多く、それぞれについて事前に詳細を確認し、合意することが必須です。契約を進める前に見積もりを取得し、料金に納得した上で契約するようにしましょう。

    M&Aについての相談は以下で詳しく解説しています。併せてご覧ください。
    【関連記事】M&Aはどこに相談する?相談先の選び方やメリットデメリットを解説

    まとめ|不安の多いM&Aこそ、税理士などの専門家のサポートを活用しましょう

    事業売却を成功に導くうえで、税理士の専門的サポートは不可欠な要素です。適切な税理士を選ぶことで、潜在的な税務問題を事前に発見し、適正な売却価格の算出や正確な税務申告が可能です。

    また、税務リスクの洗い出しからバリュエーション、税務デューデリジェンス、そしてM&A後の税務サポートまで、専門的な知識と経験に基づいたサポートを受けることができます。しかし、M&A全体を円滑に進行させるには、M&A仲介会社による包括的な支援も検討すべきでしょう。

    専門のM&Aアドバイザーと税理士が連携することで、マッチングから交渉、クロージングまで一貫したサポートを受けられ、より効果的かつ効率的に事業売却を進められるでしょう。

    弊社はM&Aのご相談を受け付けております。業界歴10年以上のプロアドバイザーが、お客様の真の利益を追求します。M&Aの相談をご希望の方はお気軽にお問い合わせください。

    この記事の監修者

    阿部 泰士

    CINC Capital取締役執行役員社長

    阿部 泰士

    リクルートHRマーケティング、外資系製薬メーカーのバクスターを経て、M&A業界へ転身。 日本M&AセンターにてM&Aアドバイザーとして経験を積み、ABNアドバイザーズ(あおぞら銀行100%子会社)では執行役員営業本部長として営業組織を牽引。2024年10月より上場会社CINCの100%子会社設立後、現職に就任。

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