CINC CapitalはCINC(証券コード:4378)のグループ会社です。
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支援 / 士業
- 公開日2025.04.30
- 更新日2025.04.30
M&Aにおける法律事務所の役割とは?M&Aに強い事務所の選び方と注意点を解説
M&A取引においては、専門的な法務サポートが不可欠です。法的リスクを最小限に抑え、最適な交渉条件を引き出すために「法律事務所」を頼る経営者も多いことでしょう。
本記事では、M&Aにおける法律事務所の主な役割と、適切な事務所を選ぶ際のポイントを解説します。
目次
M&Aにおける法律事務所の役割
法律事務所とは、弁護士が所属し、企業法務や民事、刑事など、幅広い法分野における法的サービスを提供する専門機関です。M&Aにおいては、契約書作成から交渉、法務デューデリジェンスまで幅広いサポートを行います。ここでは、M&Aに関する法律事務所の主な役割をご紹介します。
法務デューデリジェンスを実施する
担当弁護士が法務デューデリジェンスを実施し、対象企業の法的懸念事項や契約上の制限、知的財産権の状況などを精査します。調査過程では相手方の主張における矛盾点や解決策も見出せるため、M&A取引の成否を左右する重要な情報が得られます。
M&A契約書の作成・レビューを行う
M&A取引に必要な各種契約書の作成・レビューを行います。秘密保持契約書、基本合意書、最終契約書など、各段階で必要な法的文書を準備します。
基本合意書はM&Aプロセスが進み、売り手と買い手の双方が基本的な取引条件に合意したことを示すために締結される文書です。一般に、M&Aの手法、対象、価格の概算などの基本条件や、デューデリジェンスの期間、独占交渉権などが含まれます。ただし、この段階では法的拘束力を持つ条項が限定される場合が多く、最終契約に向けた中間的な合意文書という位置づけです。
最終契約書は当事者間の最終合意内容を明確にした正式文書で、調査結果を踏まえて作成されます。経験豊富な弁護士が、クライアントの権利を守るための適切な契約書作成とアドバイスを行います。
法的手続き全般をサポートする
株式譲渡、事業譲渡、会社分割、合併など、各手法に応じた法的手続きをサポートします。そもそもM&Aには、「会社法」「金融商品取引法」「独占禁止法」「税法」といった多様な法律が関係するため、これらに精通した専門家のサポートが必要です。適切な法的手続きを進めることで法律違反リスクを回避し、円滑な取引につながります。
交渉の代理人として関与する
法律事務所の弁護士は、M&A取引における交渉代理人でもあります。専門的な法律知識と交渉経験を活かし、依頼者の利益最大化を支援します。
M&Aでは、買収価格や契約条件、表明保証条項、補償条項など、さまざまな点で交渉が行われます。弁護士が各交渉でクライアントの立場を代弁し、法的リスクを最小限に抑えながら有利な条件を引き出します。
M&A戦略の立案を支援する
法律事務所は主に法的手続きのサポートを行いますが、M&A戦略の立案段階からも法的観点からの助言を提供することがあります。例えば、クライアントの成長戦略や事業承継計画に基づく最適なM&A手法(株式譲渡や事業譲渡など)を法的な観点から選定する、税務面も考慮したスキームの法的分析を実施する、といった支援を行います。
ただし、M&A戦略の立案全体については、M&A専門のアドバイザリーファームと連携して進めることが一般的です。
PMI(統合プロセス)の法務支援を提供する
法律事務所は、M&A取引成立後の統合プロセス「PMI(Post Merger Integration)」においても、多岐にわたる法務支援を行います。M&A後のトラブルや事業承継に関連した紛争対応など、統合プロセスにおける法的課題の解決を専門的にサポートします。
M&A後は通常、組織統合、人事制度の統一、契約の承継、知的財産権の移転など、各種法的手続きが必要です。法律事務所の弁護士は、これらの手続きを適切に進めるための法的アドバイスを行い、円滑な経営統合を目指します。
法的トラブルを予防する
M&Aを実施する際は、さまざまな法的トラブルに見舞われるリスクがあります。
例えば、提示した情報に虚偽があり表明保証違反を問われるケースや、補償条項の解釈をめぐって争いになるケース、従業員の処遇変更をめぐってトラブルになるケースなどが代表的です。こういった事態を未然に防ぐためには、取引前のデューデリジェンスで潜在リスクを洗い出すことや、契約書に明確な条項を盛り込むことなどが重要です。
法律事務所は上記のような予防策を講じる際に適切なサポートをし、リスクの最小化に貢献します。
M&Aアドバイザリーファームと連携する
M&Aを進めるにあたっては、法律事務所単体で支援を行うのではなく、M&Aアドバイザリーファームと連携しながら案件に取り組むのが一般的です。例えば、アドバイザリーファームが戦略立案やデューデリジェンスなどを担い、法律事務所が各プロセスにおいて法的リスクを特定するために動きます。
両者が役割を明確に分担しつつ、連携してアドバイスを行うことが、M&Aの成功につながります。
M&Aに強い法律事務所を選ぶときのポイント
M&Aを成功させるには、適切な法律事務所の選択が欠かせません。ここでは、法律事務所選びの重要なポイントをご紹介します。
M&Aの実績や専門チームの有無を確認する
M&A案件を依頼する際は、法律事務所の実績が判断材料となります。豊富な経験を持つ事務所ほど、状況に対応できる知識と対応力を備えていると考えられます。
また、M&A専門のチームが存在するかも確認すべきです。そうした事務所では、経験豊富な弁護士が業種別専門チームや税理士などと連携して、各手続きに対応します。
さらに、M&A案件は複雑で多岐にわたる法的知識が必要です。株式・組織・労務問題・取引契約・債権回収・資産・負債・不動産・知的財産権など、企業法務に関する幅広い知識と経験に定評のある法律事務所を選びましょう。
業種や取引規模に応じた対応力があるかを見る
M&A案件は、業種や取引規模によって必要な専門知識と対応方法が異なります。そのため、自社に適した対応力を持つ法律事務所を選ぶことが重要です。
大手法律事務所は、数億円から数百億円規模の大型案件を主に扱い、弁護士報酬も高額になる傾向があります。中小法律事務所は小規模・中規模企業案件を請け負うことが多く、比較的相談しやすい特徴があります。
また、専門性の高い法律事務所も存在します。M&Aに強い法律事務所の場合、M&A案件を全国規模で引き受け、地方の中小企業にも対応しているケースがあります。遠方のクライアントであっても密なコミュニケーションを図ることができ、よりよい形での成約を目指せるでしょう。
コミュニケーションのスムーズさや対応スピードも重視する
M&Aを成功させるには、法律事務所と円滑にコミュニケーションをとり、迅速に対応してもらうことが欠かせません。クライアント側の意図を理解しているか、効果的に交渉を進められる判断力があるかといった部分も重要です。
また、初回相談の対応や費用体系も確認してください。予算やスケジュールに応じ、最適なM&Aスキームや法務デューデリジェンスの範囲、弁護士費用の見積もりを提案してもらえる事務所が理想です。
法律事務所にM&Aに関する依頼する際の注意点
法律事務所を選ぶときは、費用体系の明確さ、弁護士の専門性、情報管理体制などをチェックしましょう。ここでは、法律事務所に依頼する際に知っておくべき注意点をご紹介します。
費用体系や報酬条件を事前に明確に確認する
最初に、法律事務所の費用体系と報酬条件を知っておきましょう。多くの法律事務所では着手金、中間報酬、成功報酬という段階的な料金体系を採用しています。法律事務所によっては、案件の規模や難しさに応じて市場原理を反映した報酬体系があり、クライアントニーズに応じた料金プランを用意している場合があります。
また、成功報酬の最低額が設定されているケースも珍しくありません。案件規模に応じて適切なプランを選ぶ必要があります。依頼前に費用面の詳細な説明を受け、見積もりを取得しましょう。
担当弁護士の経験や専門性を確認する
M&A案件では、担当弁護士の経験・専門性が重要視されます。豊富なM&A取扱実績を持つ弁護士が在籍する事務所なら、M&A専門家が連携してワンストップのサービスを提供していることもあります。専門的な視点からのサポートを受けられるかチェックしましょう。
守秘義務や情報管理体制の有無を確認する
M&Aでは、企業の機密情報や戦略的計画が多く扱われるため、守秘義務や情報管理体制の確認は極めて重要です。事務所によっては相談約款を設けており、依頼者との間で守秘義務を含む契約条件を明確にしています。依頼前に内容を確認し、情報管理方針を理解しておきましょう。
まとめ|M&A全体のプロセス最適化のため、M&A仲介会社も活用を
法律事務所はM&Aにおいて重要な役割を果たしますが、法務面だけでは十分な成果を得られないケースが少なくありません。M&Aの全体プロセスを最適化するには、法律事務所と連携しつつ、M&A仲介会社の活用を検討しましょう。
M&A仲介会社は、買い手・売り手の発掘から条件交渉、クロージングまで一貫したサポートを行います。初めてM&Aを実施する中小企業の経営者ほど重要性が感じられるはずです。M&Aを行うなら、まずは仲介会社にご相談ください。
CINC Capitalは、M&A仲介協会会員および中小企業庁のM&A登録支援機関として、M&Aのご相談を受け付けております。業界歴10年以上のプロアドバイザーが、お客様の真の利益を追求します。M&Aの相談をご希望の方はお気軽にお問い合わせください。
この記事の監修者

CINC Capital取締役執行役員社長
阿部 泰士
リクルートHRマーケティング、外資系製薬メーカーのバクスターを経て、M&A業界へ転身。 日本M&AセンターにてM&Aアドバイザーとして経験を積み、ABNアドバイザーズ(あおぞら銀行100%子会社)では執行役員営業本部長として営業組織を牽引。2024年10月より上場会社CINCの100%子会社設立後、現職に就任。