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事業譲渡とは?メリットやデメリット、手続きの流れ、税金や会計処理についてわかりやすく解説

M&A / スキーム

  • 最終更新日2025.07.10

事業譲渡とは?メリットやデメリット、手続きの流れ、税金や会計処理についてわかりやすく解説

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事業譲渡は、会社の事業を他の法人や個人に引き継ぐ方法の一つです。

事業再編や撤退、後継者問題の解決策として活用されることが増えています。

本記事では、事業譲渡の基本から種類、株式譲渡との違い、手続きや税務面の注意点まで、初心者にも理解できるように解説します。

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事業譲渡とは?

事業譲渡とは、会社が営む事業の権利義務を、契約によって他の事業者に移す行為を指します。

単に資産を売却するだけでなく、事業活動に必要な契約、在庫、顧客情報なども包括的に譲渡するケースが一般的です。

会社法467条などにより、議決権を行使することができる株主の議決権の過半数を有する株主が出席し、出席した当該株主の議決権の3分の2以上の賛成が必須です。

加えて重要な財産の処分として取締役会決議が必要なケースもあります。

譲渡対象の範囲を明確に定めることが重要で、曖昧な合意ではトラブルの原因となります。

特に、債務や契約の引き継ぎについては慎重に検討しなければなりません。

事業譲渡は、事業再編や不採算部門の整理、経営資源の集中など、企業の成長戦略の一環として幅広く利用される手法です。

会社の根幹に関わる重大な取引であるため、専門家の助言を得ながら進めることが推奨されます。

事業譲渡の種類

事業譲渡には大きく分けて部分譲渡と全部譲渡の2つの形態があります。

それぞれの特徴や違いを理解することが、適切な選択を行ううえで重要です。

部分譲渡

部分譲渡は、会社が営む複数の事業のうち、特定の事業だけを切り離して譲渡する方法です。

経営資源を集中するために一部の不採算事業を売却する際などに多く利用されます。

譲渡対象が限定されるため、事業全体の継続性を保ちやすい点が特徴です。

例えば、製造業の会社が不採算になった特定の工場事業のみを他社に譲渡する事例があります。

この方法では、残る事業に経営資源を集中しやすくなる一方で、譲渡する範囲を明確に特定しなければ契約や債務の移転において問題が生じやすい点には注意が必要です。

部分譲渡を選ぶことで、会社全体の体制を維持しながら事業再編を実現できるのが大きなメリットといえます。

全部譲渡

全部譲渡は、会社が営む全ての事業を一括して譲渡する方法です。

事実上の事業撤退やM&Aの一環として用いられ、経営の大幅な転換が伴います。

事業の包括的な引き継ぎが行われるため、従業員や契約先との調整、許認可の承継など多くの手続きが必要です。

例えば、後継者不在の中小企業が全事業を他社に譲渡して経営をバトンタッチするケースが典型例です。

全部譲渡では、譲渡後に会社が休眠や清算へ移行することも多く、税務・会計面の影響も大きくなります。

全事業をまとめて譲渡するため、事業の分割や整理が不要で一体的な取引が可能ですが、その分、準備や合意形成に時間がかかる点はデメリットです。

すべてを引き継ぐ前提で契約を整備することが求められます。

事業譲渡と株式譲渡との違い

事業譲渡は事業そのものを売買する取引ですが、株式譲渡は会社の株主構成を変更する取引です。

事業譲渡の場合、契約や許認可、従業員の雇用契約は新たに締結または承継手続きを行う必要があります。

一方、株式譲渡では会社自体は存続し、事業も組織もそのままで、株主が変わるだけです。

例えば、ある飲食チェーンの株式を買い取ると、運営会社がそのまま事業を継続しますが、事業譲渡では営業権や設備などを別会社へ移すため、従業員への説明や承諾が必要になります。

このため、事業譲渡は利害関係者への影響が大きい一方、譲渡対象を柔軟に選べるのが利点です。

株式譲渡は手続きが比較的簡便で、事業全体を維持しやすいため、どちらを選ぶかは目的と状況に応じて慎重に検討する必要があります。

事業譲渡が選択されるケースは?

事業譲渡はさまざまな経営課題を解決するために活用されます。

代表的なケースをリストで整理しましたので、自社に当てはまる事例がないか確認してみましょう。

不採算事業の整理:収益性の低い事業を手放し、経営資源を収益性の高い事業へ集中する目的で選ばれます。

後継者問題の解消:経営者の高齢化や後継者不在により、第三者に事業を譲り渡して事業継続を図るケースです。

事業の成長戦略:他社へ事業を売却することで得た資金を成長分野への投資に活用する戦略的な選択肢として活用されます。

業界再編への対応:業界再編の流れの中でシェア拡大や再編の一環として事業譲渡を行うことがあります。

グループ内再編:グループ企業間で特定事業を移管し、組織や機能を再編成する目的でも事業譲渡が利用されます。

事業譲渡のメリット

事業譲渡は買い手・売り手双方にとって多くの利点があります。

ここでは、買い手と売り手それぞれの立場から具体的なメリットを解説します。

買い手のメリット

買い手側にとって事業譲渡は、既存事業を一から立ち上げるよりも短期間で市場に参入できる大きなチャンスです。

既に確立された取引先やブランド、従業員を一括して引き継ぐことができるため、時間やコストを大幅に削減できます。

例えば、飲食業界で新規出店を検討している企業が、事業譲渡によって店舗運営ノウハウや顧客基盤をそのまま獲得し、スムーズに事業をスタートさせる事例が増えています。

また、競合他社の事業を取り込むことでシェア拡大や地域戦略の強化が期待できる点も魅力です。

このように、事業譲渡は成長戦略を加速させる有効な手段といえます。

売り手のメリット

売り手にとっての最大のメリットは、不要となった事業資産を現金化し、経営資源を重点分野に集中できることです。

特に不採算事業を手放すことで、経営効率や収益性の向上が期待されます。

加えて、従業員の雇用や取引先との関係を一定程度維持しながら事業を引き継ぐため、社会的責任を果たしやすいのも特徴です。

例えば後継者問題を抱える中小企業が、従業員や顧客を守る形で第三者に事業を譲渡するケースは少なくありません。

この方法により、廃業リスクを回避しながら、売却資金を次の事業投資や債務返済に充てられる点が大きなメリットです。

経営の選択肢を広げる有力な手段として注目されています。

事業譲渡のデメリット

一方で、事業譲渡にはリスクやデメリットも存在します。

ここでは、買い手・売り手それぞれが直面しやすい課題を整理します。

買い手のデメリット

買い手が抱える最大のデメリットは、譲渡対象の事業に潜在的な問題や負債が含まれているリスクです。

譲渡契約において対象範囲を明確に定めていても、引き継ぎ後に従業員の離職や顧客離れが発生する場合があります。

例えば、買収先企業の経営スタイルが大きく異なると、文化や価値観の衝突が起こりやすく、組織統合が円滑に進まないことがあります。

さらに、許認可や契約の再取得・変更手続きが必要になることも多く、時間やコストが想定以上に膨らむおそれがあります。

こうしたリスクを事前に精査し、専門家のサポートを受けながら進める必要がある点は大きな負担です。十分な調査と準備が不可欠です。

売り手のデメリット

売り手側にとっては、事業譲渡による情報漏えいや取引先の不安感がデメリットとなる場合があります。

交渉過程で社内外に譲渡の情報が広がると、従業員のモチベーション低下や競合他社の動きに影響を受けるリスクがあります。

また、事業を譲渡する際には、譲渡益に対する法人税や譲渡関連コストが発生し、手取り額が想定より減少する可能性も見過ごせません。

例えば製造業の企業が工場部門を売却する場合、工場関連の契約解除費用や移転コストが発生し、財務面での負担が大きくなることがあります。

このように、事業譲渡には計画段階でコストや影響を十分に見積もる必要があります。

事業譲渡の手続きの流れ

事業譲渡は段階的に進める必要があります。

各プロセスを正しく理解し、計画的に進行することで、トラブルを避けスムーズな譲渡を実現できます。

  1. 対象事業の選定・検討を行う
  2. 基本合意書を取り交わす
  3. デューデリジェンスを実施する
  4. 条件や価格を交渉する
  5. 関係者の同意や承認を得る
  6. 譲渡契約を締結する

1. 対象事業の選定・検討を行う

事業譲渡の第一歩は、どの事業を譲渡対象とするかを選定し、社内で慎重に検討することです。

譲渡の範囲を明確に決めることで、後々のトラブルを防げます。

例えば、複数の事業を抱える企業では、不採算部門だけを切り離すケースも多く見られます。

検討段階では、財務状況や収益性、譲渡後の事業への影響を総合的に評価し、譲渡することによるメリット・デメリットを洗い出します。

この準備を怠ると、譲渡後に経営に支障が生じる可能性があります。しっかりとした分析と計画立案が必要です。

2. 基本合意書を取り交わす

対象事業の概要が決まったら、買い手と基本合意書を取り交わします。

基本合意書は、譲渡の大枠を定める重要な書面で、交渉の出発点となります。基本合意書には、譲渡対象、予定価格、スケジュール、独占交渉権などの条件を記載します。

例えば、M&A仲介会社を活用する場合は、専門家の助言を受けながら双方の合意内容を整理し、誤解を防ぐ工夫が重要です。

基本合意書の段階で詳細な条件を詰めることで、後の交渉がスムーズになります。適切なタイミングで締結することが成功の鍵です。

3. デューデリジェンスを実施する

基本合意書締結後、買い手はデューデリジェンス(資産・財務・法務調査など)を行います。

これは事業譲渡の中でも特に重要な工程で、隠れたリスクや問題を把握する役割を果たします。

例えば、財務調査で過去の未払い債務が判明するケースや、許認可の問題が明らかになることもあります。

デューデリジェンスは通常、弁護士や公認会計士などの専門家と連携し、徹底的に行うのが一般的です。

この調査結果を踏まえ、契約条件の修正や最終判断が行われます。

買い手・売り手双方にとって不可欠な確認作業です。

4. 条件や価格を交渉する

デューデリジェンスを終えると、調査結果を踏まえて最終的な条件や価格の交渉に入ります。

この交渉は、事業譲渡の成否を大きく左右する重要な局面です。

例えば、調査でリスクが見つかった場合は、その分価格の減額や契約内容の調整が求められます。

買い手はリスクを軽減するための保証条項を提案することも多いです。

交渉は感情的になりやすい部分ですが、第三者の専門家を交えることで冷静に進められます。

双方が納得できる合意に達することが、信頼関係を築くために大切です。

5. 関係者の同意や承認を得る

条件が整ったら、株主総会や取引先など関係者から正式な同意・承認を取得します。

事業譲渡では、会社法上の承認決議が必要な場合があります。

特に重要な契約や許認可は、譲渡に伴い変更や再取得が必要となるため、事前の説明と調整が不可欠です。

例えば、大手取引先が承認しなければ事業継続が難しい場合もあるため、早期から関係者への説明を行うことがリスク回避につながります。

全員が理解し同意することで、円滑な移行が可能となります。

6. 譲渡契約を締結する

すべての条件が確定し承認が得られたら、正式に譲渡契約を締結します。

契約書には譲渡対象の詳細、譲渡価額、支払方法、リスク負担、秘密保持、違約条項などが明確に記載されます。

例えば、引き継ぎ時のトラブルを防ぐために、引渡し後のアフターサポートや従業員対応を盛り込むことも重要です。

契約書は専門家の確認を受けて作成し、双方が署名捺印を行うことで法的効力が発生します。

この段階をもって、事業譲渡は正式に完了し、移行プロセスがスタートします。

事業譲渡でかかる税金

事業譲渡を行うと、買い手・売り手の双方に税金が発生します。

適切な税務対応を怠ると予想外の負担が生じるため、基本的な仕組みを理解しておくことが大切です。

買い手側に発生する税金

消費税:事業譲渡は資産ごとの個別課税となり、土地・有価証券などは非課税、営業権や棚卸資産は課税(10%)など資産区分で取り扱いが異なります。取引金額を資産ごとに内訳計上しないと税額が算定できない点に注意してください。

不動産取得税・登録免許税:譲渡資産に不動産が含まれる場合、不動産取得税や登記の登録免許税が別途発生します。不動産を伴う事業譲渡では税負担が高額になることもあります。

買い手は取得した資産を減価償却し、将来の損金計上で節税効果を得られます。

計上タイミングや方法は専門家に相談することが大切です。

売り手側に発生する税金

法人税・地方税:事業譲渡で得た譲渡益は法人税や法人住民税、法人事業税の課税対象です。譲渡価格から簿価や譲渡費用を差し引いた金額が所得として扱われます。

消費税:売り手が消費税課税事業者であれば、譲渡代金に応じた消費税を申告・納付する必要があります。事前に納税額を試算しておくことが大切です。

不動産譲渡に伴う税負担:不動産を含む場合は、譲渡所得税や登録免許税も負担対象です。特に高額不動産を含む場合、税負担が大きくなるため注意が必要です。ただし、法人の場合、不動産譲渡益は法人税等の課税所得に算入され、個人のような分離課税の不動産譲渡所得税は適用されません。

事業譲渡の会計処理・仕分け

事業譲渡では、買い手と売り手の双方で異なる会計処理が必要です。ここでは、それぞれの立場における仕分けや注意点を具体的に解説します。

買い手側の会計処理

買い手側では、事業譲渡に伴って以下のような会計処理が発生します。

  • 資産・負債の取得原価の計上
  • のれん(営業権)の認識と償却
  • 期中取引の区分管理
  • 登録免許税や付随費用の処理

買い手は、譲受けた資産や負債を適切に評価し、譲受時の取得原価に基づいて仕訳を行います。

取得原価には、譲渡代金だけでなく登録免許税や仲介手数料などの付随費用も含みます。

例えば、建物を取得した場合、取得価額は「建物」として固定資産に計上し、関連する登記費用も同様に資産計上が必要です。

仕訳例では「建物5,000万円/現金預金5,000万円」などと記録します。

また、譲受ける事業の価値が帳簿上の純資産額を超える場合、その差額は「のれん」として無形固定資産に計上します。

税務上のれんは資産調整勘定として原則5年均等償却します。一方、会計上は最長20年までの定額償却が認められており、IFRSでは非償却・毎期減損テスト方式が一般的です。目的に応じて区別が必要です。

例えば、取得価額が1億円で純資産が8,000万円なら、差額2,000万円がのれんとして処理されます。

のれんはブランド価値や顧客基盤など目に見えない価値を表すもので、譲受後の収益貢献を期待する資産です。

さらに、買い手側は事業譲渡完了後、期中の取引区分にも注意が必要です。

基準日以前の売上や経費は売り手側に帰属し、それ以降は買い手側で計上します。

この区分管理が曖昧だと、決算時に誤った利益計上や税務申告を行うリスクが高まります。

特に在庫や売掛金の引継ぎはトラブルが起きやすいため、詳細なリストを作成して管理することが重要です。

売り手側の会計処理

売り手側の会計処理は、譲渡によって資産・負債を除去し、利益や費用を計上することが特徴です。

主な内容は次の通りです。

  • 譲渡損益(売却益・売却損)の計上
  • 関連費用(仲介手数料など)の処理
  • 消費税や法人税の申告
  • 未払債務・引当金の清算

売り手は、譲渡する資産や負債を帳簿から除去し、譲渡損益を計上します。

具体的には、譲渡価格と帳簿価額の差額が「固定資産売却益」や「営業外収益」として認識されます。

例えば、帳簿価額3,000万円の機械設備を5,000万円で譲渡した場合、2,000万円が譲渡益となります。

この譲渡益は法人税や地方税の課税対象となるため、税額を試算し納税資金を準備しておく必要があります。

また、譲渡に関連する仲介手数料や契約書作成費用などは「支払手数料」や「雑費」として費用計上します。

これらの経費は譲渡益から控除できるため、最終的な課税所得を減らす効果があります。

消費税課税事業者の場合は、譲渡資産に対応する消費税も計上し、確定申告で精算が必要です。

売り手側は従業員の未払給与や退職給付引当金など、譲渡に伴って清算すべき債務についても会計処理を行います。

事業を譲渡した後に債務が残っていると、引継ぎ先とのトラブルに発展することがあります。

例えば、従業員が継続雇用される場合でも、退職給付の精算範囲を契約で明確に定め、会計処理を済ませておくことが欠かせません。

さらに、売り手の決算では譲渡による大きな利益が発生する可能性があるため、会計監査や株主への説明責任が問われます。

特に上場企業の場合は、有価証券報告書や決算短信への適切な記載が求められます。

このように、売り手側の会計処理は譲渡損益だけでなく、未精算債務や税務負担まで幅広く管理することが必要です。

専門家の助言を受けながら正確に仕訳し、透明性を確保することが重要です。

事業価値の評価方法

事業譲渡を進めるうえで重要なのが、譲渡対象事業の適正な評価です。

ここでは、主な評価方法と特徴をわかりやすく解説します。

事業価値を評価する際は、複数の手法を組み合わせて算定するのが一般的です。

主な方法として「コストアプローチ」「マーケットアプローチ」「インカムアプローチ」の3つが用いられます。

コストアプローチ

コストアプローチは、譲渡資産を再調達するのに必要な原価や簿価を基準に評価する方法です。

例えば設備や棚卸資産が中心の事業の場合、資産の簿価や市場価値を積み上げて総額を算出します。

会計帳簿に基づいて算定するため客観性が高い一方、将来収益力が反映されにくい点に注意が必要です。

マーケットアプローチ

マーケットアプローチは、類似する取引事例や業界内の相場を参考に評価する手法です。

例えば同業他社のM&A実績や、同規模の事業の取引価格を基に換算します。

市場実勢を踏まえた評価ができるため実務で多用されますが、比較対象が少ない業種では使いにくい面もあります。

インカムアプローチ

インカムアプローチは、将来生み出す利益やキャッシュフローを現在価値に割り引いて評価する方法です。

例えばDCF(ディスカウント・キャッシュフロー)法では、今後数年間の予想利益を基に割引率を適用し、現在価値を算定します。

将来性を考慮できるため、成長企業の評価で重視されますが、予測の正確性が結果に大きく影響する点には注意が必要です。

実務ではこれらの手法を単独で使うのではなく、複数の結果を参考に総合的に価値を決定します。

例えば、設備が多い事業はコストアプローチを重視し、将来性が期待されるサービス業ではインカムアプローチを中心に据えるなど、業態や状況に応じてバランスを取るのが重要です。

正しい評価を行うことで、買い手・売り手双方が納得できる条件を整えられ、トラブルを防げます。

事業価値の算定は専門性が高いため、公認会計士M&Aアドバイザーに相談し、客観的なデータに基づいた評価を進めることが大切です。

事業譲渡に関する注意点

事業譲渡には多くのメリットがありますが、進め方を誤ると重大なリスクが生じます。

ここでは進行中に注意すべきポイントを解説します。

契約書の条項をしっかり確認する

事業譲渡契約書は取引の基本を定める最重要の書類です。

内容を曖昧にしたまま締結すると、譲渡後のトラブルに発展するおそれがあります。

契約書には譲渡対象資産の範囲、譲渡価額、引渡日、債務の引継ぎ方法、保証条項など多岐にわたる事項を詳細に盛り込む必要があります。

例えば、設備や在庫の範囲が明確でないと、引渡し時に「含む・含まない」で揉める事例が少なくありません。

契約条項の一つひとつを理解し、疑問があれば専門家に確認することで、不要なリスクを避けられます。

譲渡契約は単なる合意書ではなく、将来的な紛争防止の基盤です。

秘密情報の管理を徹底する

事業譲渡では、交渉やデューデリジェンスを通じて多くの機密情報が開示されます。

この情報が漏えいすると、信用失墜や事業の競争力低下につながります。

例えば、顧客リストや仕入先情報が第三者に流出した場合、営業妨害を受けるリスクがあります。

交渉の段階から秘密保持契約(NDA)を締結し、開示範囲と利用目的を厳格に制限することが重要です。

また、情報管理ルールを社内で共有し、従業員や関係者にも徹底させる必要があります。

秘密情報の取り扱いを甘く見ると、取引そのものが破談になるおそれもあるため注意が必要です。

譲渡益などの税務リスクを理解する

事業譲渡では、売却益や不動産譲渡益などの税負担が一度に発生するため、納税資金の準備が重要です。

税務リスクを軽視すると、譲渡後に資金繰りが悪化するおそれがあります。

例えば、不動産を含む事業譲渡で多額の譲渡所得税や法人税が課税され、予想以上に手取り額が減少する事例があります。

さらに、買い手も消費税や不動産取得税が発生するため、資金計画に反映する必要があります。

税務上のリスクを正しく把握し、事前に試算やシミュレーションを行うことが重要です。

専門家のサポートを得て、余裕を持った資金準備を行いましょう。

専門家へ相談する

事業譲渡は法務・税務・会計の知識が求められる複雑な取引です。

自己判断だけで進めると、想定外のトラブルが起こりやすくなります。

例えば、契約条件の不備や税務処理の誤りにより、譲渡後に多額の損失を負う事例もあります。

弁護士や公認会計士、税理士、M&Aアドバイザーなど専門家の助言を活用することで、リスクを最小限に抑えられます。

初期段階から専門家に相談することで、戦略立案からクロージングまでの流れがスムーズになります。

安心して事業譲渡を進めるためにも、早めの相談を心がけましょう。

事業譲渡の成功事例

ここでは、CINC Capitalが支援した事業譲渡の成功事例をご紹介します。

デジタルマーケティングを手がける総合コンサルティング企業が、事業のさらなる拡大を目指してAIスタートアップ企業を買収しました。

売り手の企業は、日米で特許を取得した画像認識AIを活用し、Webサイト開発の初期工程を自動化するサービスを開発していました。

また、複数のベンチャーキャピタルや事業会社から出資を受け、成長を続けていた企業です。

買い手の企業が提供するAI SaaSプロダクトは、売り手企業の技術と非常に相性が良く、両社のサービスやノウハウを組み合わせることで、事業の成長をさらに加速できると判断しました。

その結果、双方の強みを活かしたシナジーが期待され、M&Aが成立しました。

まとめ|事業譲渡は専門家に相談のもと慎重に進めましょう

事業譲渡は経営資源の集中や後継者問題の解決、成長戦略の一環として有効です。

ただし、部分譲渡と全部譲渡では手続きや影響が異なり、慎重な判断が必要です。

適正な事業価値の評価や契約内容の確認、税務・会計処理まで幅広い準備が求められます。特に税負担は大きくなることが多く、事前の試算と専門家の助言が不可欠です。

CINC Capitalでは、豊富なM&A支援の実績をもとに、事業譲渡に関する戦略立案から手続きの完了まで一貫したサポートを提供しています。

安心して相談できるパートナーを探している方は、ぜひCINC Capitalにお問い合わせください。

正しい知識と準備で、事業譲渡を新たな成長の機会に変えていきましょう。

この記事の監修者

阿部 泰士

CINC Capital取締役執行役員社長

阿部 泰士

リクルートHRマーケティング、外資系製薬メーカーのバクスターを経て、M&A業界へ転身。 日本M&AセンターにてM&Aアドバイザーとして経験を積み、ABNアドバイザーズ(あおぞら銀行100%子会社)では執行役員営業本部長として営業組織を牽引。2024年10月より上場会社CINCの100%子会社設立後、現職に就任。

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