CINC CapitalはCINC(証券コード:4378)のグループ会社です。
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法務 / デューデリジェンス
- 公開日2024.10.30
- 更新日2024.11.05
デューデリジェンスとは?M&Aにおける基礎知識とその重要性
デューデリジェンス(DD)はM&Aで最終的な意思決定をするために非常に重要なものとなります。ただ、初めてM&Aをする企業にとって、デューデリジェンスはわからないことのほうが多いはずです。
そこで、本記事ではデューデリジェンスに関する基本的な知識、流れや注意点を詳しく解説します。
目次
デューデリジェンスとは?目的と基本概念
近年、M&A※は企業の成長戦略や事業再編の一環として行われる機会が増えています。そのM&Aのプロセスの中に「デューデリジェンス」があり、このデューデリジェンスがM&Aの成功の鍵を握っていると言っても過言ではありません。
※Merger and Acquisitionの略称で、企業の合併や買収のことを指します。
ただ、初めてM&Aに携わるという方にとっては、デューデリジェンスがどういうものかわからない方が多いでしょう。ここでは、デューデリジェンスの意味や目的をお伝えします。
デューデリジェンスとは?
デューデリジェンス(Due Diligence DDとも言われる )は、M&Aプロセスで買収対象企業(売り手)の実態を詳しく把握するための調査です。
この調査を通じて、買収側企業は対象企業の財務状態、法的リスク、業績、事業計画などを詳細に分析し、M&Aの実施や交渉に役立てます。
デューデリジェンスの目的
デューデリジェンスの目的は、3つあります。
- M&A実施の有無を決めること
- 適正な価格を決めること
- 買収後のリスクを最小限に抑えること
買い手企業が売り手企業の正確な価値を把握することで、M&A実施の有無の判断をしやすくなったり、適正な価格を提案できたり、メリットがもたらされるでしょう。
また、買収後に発生する可能性のあるリスクを事前に特定し、対策を講じることも期待できます。
デューデリジェンスの種類
デューデリジェンスには様々な種類があり、それぞれ異なる側面から対象企業を評価します。
- 財務デューデリジェンス
- 法務デューデリジェンス
- 税務デューデリジェンス
- ビジネスデューデリジェンス
- 労務デューデリジェンス
- ITデューデリジェンス
ここでは、代表的なデューデリジェンスの種類について詳しく説明します。
財務デューデリジェンス
財務デューデリジェンスでは、対象企業の財務状況を評価します。資産や負債、収益力を把握するほか、決算書では把握できない財務面も調査対象です。これらを詳細に分析することで、企業の経済的な安定性を評価します。
法務デューデリジェンス
法務デューデリジェンスでは、対象企業の法的リスクを評価します。調査対象は、 取引先との契約書をはじめ、規定や法律に関わるものです。法務デューデリジェンスの実施が甘いと大きな損失やトラブルに繋がることがあるため、買収する企業に法的リスクが潜んでいないか、徹底的に確認・調査を行います。
税務デューデリジェンス
税務デューデリジェンスでは、売り手企業の税務状況を評価します。税務面でのリスクや不備を事前に確認することで、予期せぬ税務問題を避けられます。調査の上、必要であれば売り手企業は修正申告が必要です。ちなみに税務デューデリジェンスは、財務デューデリジェンスの一部で行われることが多いです。
ビジネスデューデリジェンス
ビジネスデューデリジェンスは、これまでどうやって収益を上げてきたか、売り手企業の収益構造を調査します。 調査方法は、売り手企業の開示資料の確認や従業員インタビューです。また、このタイミングで将来性や買い手企業とのシナジー効果についても確認していきます。
労務デューデリジェンス
労務デューデリジェンスでは、労務や人事に関する内容について調査を行います。労働環境や雇用について問題点やリスクを特定を行った後、その問題点の解決策やリスクの回避策について掲示します。
ITデューデリジェンス
ITデューデリジェンスは、ITシステムの構成や活用状況、リスクを調査し、買い手企業と売り手企業の各社のITシステムの統合の可能性を評価していきます。ITシステムで情報や業務の管理 をしている企業は情報漏洩リスク、情報セキュリティ事故の有無などを確認します。また、M&Aの後にシステムの統合が必要になる場合は、統合時の弊害の有無をこのタイミングで確認していきます。
デューデリジェンスの手続きと流れ
デューデリジェンスは、M&Aプロセスにおいて非常に重要なステップであり、その手続きと流れを理解することが不可欠です。
デューデリジェンスは以下の9つのステップで進んでいきます。
- 準備段階
- 方針の決定
- 資料要請
- 調査実施
- 開示資料の確認
- QAシートの回答
- 現地調査
- 結果の分析と報告書作成
- 結果の検討
ここでは各ステップの業務内容について解説していきます。
準備段階
デューデリジェンスの最初のステップは準備段階です。この段階でしっかりとした計画と準備を行うことで、調査が円滑に進みます。
デューデリジェンスの目的や範囲を明確にし、必要なリソースや人員を確保します。
方針の決定
次に、デューデリジェンスの方針を決定します。
明確な方針がなければ、調査が方向性を失い、大事なポイントを見逃す可能性があります。
財務、法務、人事など、各分野で重点項目や方針を決めることが大切です。
資料要請
資料要請では、必要な資料を評価対象の企業から収集し、正確な調査を行います。決算書、事業計画書、月次試算表などが該当します。
なお、デューデリジェンスの種類によって準備する資料が異なるので、その点は注意が必要です。
調査実施
資料が揃った後、実際の調査を行います。集められた資料を基に詳細に分析し、リスクや問題点を洗い出します。
資料がない場合は、売り手企業のオーナーや役員、担当部長などに聞き取り調査を行うことが一般的です。
QAシートの作成・回答
QAシートに基づいて、具体的な質問と回答のやり取りが売り手企業と買い手企業の間で行われます。疑問点をクリアにすることで、精度の高い調査結果を得ることができます。
買い手企業は、分析したいテーマについてQAシートを活用して質問をしていくことになります。
現地調査
必要に応じて現地調査を行います。実際の業務環境や資産の状態を確認することで、資料だけでは把握できない情報を得られます。
例として現地スタッフとの面談や、(生産拠点がある場合は)視察などが行われます。
結果の分析と報告書作成
調査結果を分析し、報告書を作成します。具体的には、リスク分析や課題の整理、推奨事項の記載が含まれます。
報告書作成は、調査結果をわかりやすくまとめるために必要なステップです。
結果の検討
作成した報告書をもとに、買い手企業の経営陣がM&Aについて議論を行います。価格調整やリスクの軽減方法などを話し合います。
あまりにもリスクが大きい場合はM&Aそのものが中止になることがあります。
デューデリジェンスにかかる費用
デューデリジェンスの実施には費用がかかります。デューデリジェンスは専門性の高い業務であるため、専門家に協力を依頼することが多いです。
財務、法務、税務、ITなど各分野のデューデリジェンスを実施するためには、それぞれの専門家のコンサルティング料金が発生します。
専門家に依頼する場合は、企業全体で数十万から数百万円程度かかります。当然規模が大きくなればかかる費用も高額になります。
デューデリジェンス実施時の注意点
デューデリジェンスは、M&Aの成功において欠かせないプロセスです。しかし、このプロセスを適切に行うためにはいくつかの注意点があります。
ここでは、デューデリジェンス実施時の注意点を3つお伝えします。
経費と期間の決定
デューデリジェンスにかかる経費と期間を前もって、正確に見積もります。
これにより、想定以上に費用や時間がかかることを防ぎ、効率的に調査を進めやすくなります。
デューデリジェンスの所要期間…1~2か月ほど
※期間は規模にもよる。企業の規模が大きいと期間は長くなる傾向にあります
経費と期間をあらかじめ見積もり、スムーズかつ効果的なデューデリジェンスを実現しましょう。
タイミングの確認
デューデリジェンスを行うタイミングは非常に重要です。デューデリジェンスは基本合意契約の締結後に行うことが推奨されます。
時間がかかるという理由から、早めに実施したいと考える企業も中にはいます。
しかし、早めに始めると、その調査を確認した従業員や競合からが起点となってM&Aに影響し得る噂が立つ恐れが出てきます。また、タイミングが遅いと、別の買い手によって買収される可能性があります。
デューデリジェンスは早すぎず、遅すぎず、基本合意契約締結の後に実施しましょう。
まとめ丨デューデリジェンスがM&Aの成功と失敗を分ける
デューデリジェンスは、M&Aの成功または失敗に大きく影響する重要なプロセスです。
事前に企業の財務状況、法務リスク、税務問題などを詳細に調査することで、リスクを最小限に抑え、取引の安全性を高めます。
デューデリジェンスを適切に行うことで、M&Aの成功確率が大幅に向上します。
M&Aを成功させるためにもデューデリジェンスの実施は専門家の助言を求めることをおすすめします。専門家の力を借りながら、慎重に進めることを心がけましょう。
この記事の監修者
CINC Capital取締役執行役員社長
阿部 泰士
CINC Capital取締役執行役員社長。リクルート関連会社や外資系製薬会社、大手・ベンチャー独立系M&A仲介会社で営業組織を牽引。 特にM&A実績の多い業界は調剤・IT・運送業。