CINC CapitalはCINC(証券コード:4378)のグループ会社です。
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法務 / デューデリジェンス
- 公開日2024.10.30
- 更新日2025.01.31
デューデリジェンスとは?M&Aにおける意味や種類、進め方をわかりやすく解説
デューデリジェンス(DD)はM&Aで最終的な意思決定をするために重要なものとなります。ただ、初めてM&Aをする企業にとって、デューデリジェンスはわからないことのほうが多いはずです。
そこで、本記事ではデューデリジェンスに関する基本的な知識、流れや注意点を詳しく解説します。
目次
M&Aにおけるデューデリジェンスとは?
デューデリジェンス(Due Diligence)とは、M&Aで買収や合併の対象企業に対して実施される詳細な調査のことを指します。財務・法務・税務・ビジネスの観点からリスクや問題点を洗い出し、適正な企業価値を判断する重要なプロセスです。
特に、財務デューデリジェンスでは資産・負債の正確性や収益性を分析し、法務デューデリジェンスでは契約関係や潜在的な訴訟リスクを確認します。適切なデューデリジェンスを行うことで、M&Aの成功確率を高め、不測のリスクを回避することが可能です。
デューデリジェンスを実施する目的
デューデリジェンスの目的は、主に3つあります。
- M&A実施の有無を決めること
- 適正な価格を決めること
- 買収後のリスクを最小限に抑えること
買い手企業が売り手企業の正確な価値を把握することで、M&A実施の有無の判断をしやすくなったり、適正な価格を提案できたり、メリットがもたらされるでしょう。
また、買収後に発生する可能性のあるリスクを事前に特定し、対策を講じることも期待できます。
デューデリジェンスを実施するタイミング
デューデリジェンスは、M&Aにおいて基本合意書を締結した後、最終契約の締結前に実施されます。この段階では、買い手企業が対象企業の財務状況や法的リスク、事業の実態を詳細に調査し、買収の最終判断を行います。
このタイミングで実施される理由として、交渉の初期段階では売り手企業が詳細な情報を開示しないことが一般的であるため、基本合意後に本格的な調査が進められます。デューデリジェンスを通じて潜在的なリスクを把握し、適正な価格や契約条件を確定することが重要です。
デューデリジェンスの種類
デューデリジェンスには様々な種類があり、それぞれ異なる側面から対象企業を評価します。
- 財務デューデリジェンス
- 法務デューデリジェンス
- 税務デューデリジェンス
- ビジネスデューデリジェンス
- 労務デューデリジェンス
- ITデューデリジェンス
ここでは、代表的なデューデリジェンスの種類について詳しく説明します。
財務デューデリジェンス
財務デューデリジェンスでは、対象企業の財務状況を評価します。資産や負債、収益力を把握するほか、決算書では把握できない財務面も調査対象です。これらを詳細に分析することで、企業の経済的な安定性を評価します。
法務デューデリジェンス
法務デューデリジェンスでは、対象企業の法的リスクを評価します。調査対象は、 取引先との契約書をはじめ、規定や法律に関わるものです。法務デューデリジェンスの実施が甘いと大きな損失やトラブルに繋がることがあるため、買収する企業に法的リスクが潜んでいないか、徹底的に確認・調査を行います。
税務デューデリジェンス
税務デューデリジェンスでは、売り手企業の税務状況を評価します。税務面でのリスクや不備を事前に確認することで、予期せぬ税務問題を避けられます。調査の上、必要であれば売り手企業は修正申告が必要です。ちなみに税務デューデリジェンスは、財務デューデリジェンスの一部で行われることが多いです。
ビジネスデューデリジェンス
ビジネスデューデリジェンスは、これまでどうやって収益を上げてきたか、売り手企業の収益構造を調査します。 調査方法は、売り手企業の開示資料の確認や従業員インタビューです。また、このタイミングで将来性や買い手企業とのシナジー効果についても確認していきます。
労務デューデリジェンス
労務デューデリジェンスでは、労務や人事に関する内容について調査を行います。労働環境や雇用について問題点やリスクを特定を行った後、その問題点の解決策やリスクの回避策について掲示します。
ITデューデリジェンス
ITデューデリジェンスは、ITシステムの構成や活用状況、リスクを調査し、買い手企業と売り手企業の各社のITシステムの統合の可能性を評価していきます。ITシステムで情報や業務の管理 をしている企業は情報漏洩リスク、情報セキュリティ事故の有無などを確認します。また、M&Aの後にシステムの統合が必要になる場合は、統合時の弊害の有無をこのタイミングで確認していきます。
デューデリジェンスにかかる費用
デューデリジェンスの実施には費用がかかります。デューデリジェンスは専門性の高い業務であるため、専門家に協力を依頼することが多いです。
財務、法務、税務、ITなど各分野のデューデリジェンスを実施するためには、それぞれの専門家のコンサルティング料金が発生します。
専門家に依頼する場合は、企業全体で数十万から数百万円程度かかります。当然規模が大きくなればかかる費用も高額になります。
デューデリジェンスの進め方・実施の流れ
デューデリジェンスは、M&Aプロセスにおいて非常に重要なステップであり、その手続きと流れを理解することが不可欠です。
デューデリジェンスは以下の9つのステップで進んでいきます。ここでは各ステップの業務内容について解説していきます。
- 準備段階
- 方針の決定
- 資料要請
- 調査実施
- 開示資料の確認
- QAシートの回答
- 現地調査
- 結果の分析と報告書作成
- 結果の検討
準備段階
デューデリジェンスの最初のステップは準備段階です。この段階でしっかりとした計画と準備を行うことで、調査が円滑に進みます。まず、M&Aの目的を明確にし、デューデリジェンスの範囲を決定します。例えば、買収対象企業の財務状況のみを確認するのか、それとも法務や人事、IT環境まで含めるのかを決めることが重要です。
また、調査に必要なリソースや専門家(弁護士、会計士、税理士など)を確保し、スケジュールを調整します。準備が不十分だと、調査の途中で必要な情報が不足したり、時間がかかりすぎたりする可能性があるため、事前の計画が成功の鍵となります。
方針の決定
デューデリジェンスの具体的な方針を決定するステップです。企業の買収目的に応じて、重点的に調査すべきポイントを明確にします。財務、法務、人事、IT、知的財産、環境リスクなど、さまざまな分野で調査の優先順位を決めることが必要です。
例えば、財務面では過去数年間の決算書やキャッシュフローを重視し、法務面では契約関係やコンプライアンス状況を重点的に調査することになります。M&Aの目的が技術獲得や事業拡大である場合は、知的財産や営業権の評価にも力を入れるべきでしょう。明確な方針を決めることで、調査の効率を高め、重要な情報を見落とさないようにします。
資料要請
デューデリジェンスの実施に先立ち、買収対象企業から必要な資料を収集します。具体的には、財務諸表、税務申告書、契約書、従業員の雇用契約、事業計画、知的財産関連の書類など、多岐にわたる書類が対象となります。企業の実態を正確に把握するために、できるだけ最新のデータを取得することが重要です。
また、資料の不足や不整合が見つかった場合には、追加資料の提出を求めることもあります。資料要請の段階では、売り手側とのコミュニケーションを円滑に行い、必要な情報が適時提供されるように調整することが求められます。
調査実施
収集した資料を基に、専門家チームが各分野の詳細な調査を進めます。財務デューデリジェンスでは、過去の決算書の精査、キャッシュフローの分析、負債の有無を確認し、企業の収益力や財務の健全性を評価します。法務デューデリジェンスでは、契約書の確認や訴訟リスクの特定、コンプライアンス状況のチェックが行われます。
人事デューデリジェンスでは、従業員の給与体系や福利厚生、人材の流動性について分析されます。ITデューデリジェンスでは、システムの整備状況やセキュリティリスクの有無が調査されます。調査を通じて、企業のリスクや改善点を明らかにし、M&Aの適正な判断材料を得ることが目的です。
QAシートの作成・回答
デューデリジェンスの過程で、買い手側が疑問に思った点や追加で確認したい情報について質問をまとめ、売り手側に提出します。これがQAシートです。売り手側は、これに対して詳細な回答を提供し、必要に応じて追加資料を提出します。
QAシートのやり取りは、デューデリジェンスの精度を高める上で重要なプロセスです。売り手側が迅速かつ正確に回答できるかどうかは、M&Aのスムーズな進行に大きく影響します。
現地調査
必要に応じて、実際のオフィスや工場、店舗などの現地調査を行います。書類上では把握しきれない点を確認し、企業の実態をより深く理解することが目的です。例えば、生産工場を訪問し、設備の老朽化状況を確認する、従業員の働き方を観察する、在庫の管理状況をチェックするなどの作業が含まれます。
特に製造業や物流業では、現地調査を行うことで、企業の運営状態を正しく把握することができます。
結果の分析と報告書作成
調査結果をもとに、リスクや課題を整理し、報告書を作成します。この報告書には、企業の財務状態や法務リスク、人事面の課題などが詳細に記載され、M&Aの意思決定のための重要な資料となります。また、リスクが判明した場合には、それをどのように軽減できるかについても提案が行われます。
例えば、買収後の統合プロセスを円滑に進めるための計画や、潜在的な法務リスクに対する対応策などがまとめられます。
結果の検討
最終的に、デューデリジェンスの結果をもとに、買い手企業の経営陣がM&Aの判断を行います。報告書を精査し、企業買収を進めるか、それとも条件を変更するかを議論します。場合によっては、デューデリジェンスで発見されたリスクが大きすぎるため、M&Aを中止する決定が下されることもあります。
特に、法務リスクや財務上の問題が重大である場合には、取引が破談になる可能性もあります。そのため、買い手企業はデューデリジェンスの結果を慎重に検討し、適切な判断を下す必要があります。
【買い手】デューデリジェンス実施時の注意点
デューデリジェンスは、M&Aの成功において欠かせないプロセスです。しかし、このプロセスを適切に行うためにはいくつかの注意点があります。
調査範囲を明確にする
デューデリジェンスは財務・法務・税務・ビジネスなど多岐にわたるため、事前に調査範囲を明確に定めることが重要です。対象企業の規模や業種に応じて重点を置くべき項目が異なるため、適切な範囲設定を行わないと、調査の抜け漏れが発生する可能性があります。
信頼できる専門家を起用する
デューデリジェンスには高度な専門知識が求められるため、財務・法務・税務の各分野で専門家を起用することが望ましいです。特に法務や税務に関するリスクは見落としやすく、後に大きな損害を招く可能性があるため、経験豊富な専門家の協力が不可欠です。
早い段階で潜在的リスクを把握する
M&Aの交渉が進んでから重大なリスクが発覚すると、取引の中止や条件変更を余儀なくされることがあります。そのため、デューデリジェンスの初期段階で潜在的な問題を洗い出し、リスクの有無や対策の検討を行うことが重要です。特に、過去の訴訟履歴や未払い債務、労働問題などは早めに確認すべきポイントです。
売り手との適切な情報開示を確保する
売り手企業がすべての情報を積極的に開示するとは限らないため、買い手側は適切な開示を求める姿勢が求められます。特に、財務諸表や契約書、資産状況などの重要な情報は、詳細な確認を怠ると後に問題が発生する可能性があります。秘密保持契約(NDA)を締結したうえで、十分な情報開示を得ることが不可欠です。
調査結果を基に適正な条件交渉を行う
デューデリジェンスの結果をもとに、買収価格や契約条件を見直すことが一般的です。問題が見つかった場合には、適切な価格調整やリスク回避のための条項を契約に盛り込む必要があります。調査結果を踏まえて売り手と適切な交渉を行うことで、リスクを最小限に抑えながらM&Aを進めることができます。
【売り手】デューデリジェンス実施時の注意点
M&Aにおいて売り手側がデューデリジェンスを受ける際には、適切な準備と対応が求められます。買い手からの詳細な調査に対して、正確な情報を提供しつつ、自社の価値を適正に評価してもらうことが重要です。
情報の整理と開示を徹底する
デューデリジェンスでは、財務諸表や契約書、従業員の雇用条件など、幅広い情報を求められます。情報が整理されておらず、不備が多いと、買い手の信頼を損ない、取引条件が不利になる可能性があります。事前に必要な資料を揃え、正確なデータを提供できるよう準備しましょう。
重要事項の開示は慎重に行う
デューデリジェンスの過程で、買い手に対して企業の内部情報を開示する必要があります。しかし、すべての情報を無条件に提供するのはリスクが伴います。秘密保持契約(NDA)を締結した上で、慎重に情報を共有し、機密情報の漏洩を防ぐことが重要です。
法務・税務リスクの洗い出し
買い手は、売り手企業の法務・税務面のリスクを特に重視します。未払いの税金、訴訟リスク、契約上の問題などが見つかると、取引が破談になったり、買収価格の引き下げ要因になったりする可能性があります。事前に専門家と相談し、問題点を洗い出しておくことが重要です。
従業員や取引先への影響を考慮する
M&Aの交渉が進む中で、従業員や取引先に不安が広がることがあります。特にデューデリジェンスの段階では、買い手が社内情報を確認するため、社内に噂が広まりやすくなります。情報管理を徹底しつつ、適切なタイミングで従業員や取引先に説明を行う準備を進めましょう。
交渉過程での条件変更に備える
デューデリジェンスの結果によっては、買い手が価格の引き下げや条件の見直しを求めてくることがあります。売り手としては、事前に交渉戦略を練り、譲歩できる点と譲れない点を明確にしておくことが重要です。また、複数の買い手候補を検討し、最適な条件を引き出せるように交渉を進めることも有効です。
まとめ|デューデリジェンスがM&Aの成功と失敗を分ける
デューデリジェンスは、M&Aの成功または失敗に大きく影響する重要なプロセスです。
事前に企業の財務状況、法務リスク、税務問題などを詳細に調査することで、リスクを最小限に抑え、取引の安全性を高めます。デューデリジェンスを適切に行うことで、M&Aの成功確率が大幅に向上します。
M&Aを成功させるためにもデューデリジェンスの実施は専門家の助言を求めることをおすすめします。専門家の力を借りながら、慎重に進めることを心がけましょう。
この記事の監修者

CINC Capital取締役執行役員社長
阿部 泰士
CINC Capital取締役執行役員社長。リクルート関連会社や外資系製薬会社、国内最大手M&A仲介会社で営業組織を牽引。 特にM&A実績の多い業界は調剤・IT・運送業。