CINC CapitalはCINC(証券コード:4378)のグループ会社です。
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法務 / デューデリジェンス
- 公開日2025.06.03
- 更新日2025.06.06
デューデリジェンス(DD)のチェックリストとは?主な調査項目を解説
デューデリジェンス(DD)は、企業買収や合併の成功を左右する重要な要素です。しかし、具体的に何をチェックすれば良いのかが分かりづらいと感じている方も少なくないでしょう。
デューデリジェンスは、企業買収や合併の際に行う詳細な調査プロセスのことで、これを通じてリスクを最小限に抑える効果や、投資判断の精度を高める役割があります。
本記事では、デューデリジェンスの主な調査項目を詳しく解説します。
デューデリジェンスの主な調査項目に関する知識を身につけることで、リスクを効果的に管理し、M&Aを成功に導くことができるでしょう。
目次
デューデリジェンス(DD)とは?
デューデリジェンス(DD/Due Diligence)とは、M&A(合併・買収)で買収対象の企業に対して実施される詳細な調査のことを指します。
財務・法務・税務・ビジネスなどの観点から、売り手企業が抱えるリスクや問題点を洗い出すことで、買い手企業が売り手企業の企業価値を適正に判断するための重要なプロセスです。
また、デューデリジェンスは買収後のリスクを最小限に抑えることも目的として実施されます。
デューデリジェンスを実施して、買い手企業は安心して買収を進められるとともに、、将来の経営に必要な判断材料を入手できます。デューデリジェンスは、単なるの事前調査ではなく、企業の成功に欠かせない基盤を築くための不可欠なプロセスなのです。
ビジネス・事業デューデリジェンスのチェックリスト
ビジネスや事業のデューデリジェンスは、企業の買収、統合、またはその他の大規模なビジネス取引において重要な役割を果たします。
財務や法務にとどまらず、事業そのものの価値やリスクを調査します。主要なチェックリストを見ていきましょう。
市場や競合などの外部環境
市場や競合などの外部環境とは、市場の成長性や規模、競合他社の強みや、新規参入企業などが含まれます。
市場の成長性や規模、さらには競合企業の状況を理解することで、事業におけるリスクや新たな機会をあらかじめ把握できます。市場が拡大する傾向にあるのか、それとも縮小しているのかという情報は、戦略の方向性や資源の投入を判断する際に役立つのです。
また、外部環境の調査は自社の製品やサービスをどのように市場に投入し、どのように差別化戦略を打ち出していくかを考える上でも大切な情報です。
収益性などの内部環境
内部環境のチェックには、企業の商品やサービス、ネームバリュー、経済価値、希少性などが含まれます。ネームバリューなどの要素は、企業の競争力や市場での位置づけを評価するために重要です。
企業が提供する商品やサービスの質、ブランドのネームバリュー、経済的価値、そして競合他社に対する希少性を評価することで、企業の強みや弱みをより明確に理解できます。
事業計画の内容
事業計画は、企業の将来的な方向性を示すものです。ターゲット顧客に対して、どのような価値を提供するのかというビジネスモデルの収益性や、事業計画が現実的で実行可能であるか、売上計画や費用計画、投資計画など具体的な数値目標が設定されているかを確認します。
計画の実現可能性を検討することで、買収後の収益獲得や経営方針の方向性をより明確にできます。
また、売上予測が実績とどれほど一致しているかを分析することで、企業が設定した目標が過去の実績に基づいた信頼性のあるものか検証するのです。
事業デューデリジェンスは以下の記事で詳しく解説しているので併せてご覧ください。
【関連記事】事業DD(デューデリジェンス)とは?
財務デューデリジェンスのチェックリスト
財務デューデリジェンスは、売り手企業の財務状況を詳しく調査し、経営リスクや成長の可能性を評価します。
ここでは、チェックリストに沿って重要なポイントを解説します。
簿外債務のリスク
簿外債務の有無を調査し、未計上の買掛金や借入金がないか、将来の修繕費や引当金計上状況を調査し、潜在的リスクを洗い出します。
簿外債務とは、財務諸表に掲載されない負債のことです。簿外債務が見過ごされると企業の潜在的な財務リスクを過小評価してしまう恐れがあります。
特に、財務諸表では現れない負っている責任や義務が、事業の健全性に大きく影響する場合があるため、調査を行います。
特に、中小企業の財務デューデリジェンスでは、役員貸付金や税務申告との整合性などが重要です。
貸借対照表などの財務諸表
どのように資金が運用されているか、そしてその運用が健全であるかどうかを判断するため、貸借対照表や損益計算書、キャッシュフロー計算書の正確性を調査します。
財務諸表を確認することで、対象企業が健全な財務基盤を構築しているかどうかを評価できるのです。この調査では、帳簿上の数値だけでなく、主な取引先との契約書や請求書、棚卸し資産や売掛金の実在性なども精査する必要があります。
取引先の外部調査
取引先の信用状況や財務健全性を把握することで、どのようなリスクが存在するかを事前に予測し、それに対する適切な対策を講じられます。
具体的には取引先の信用状況や財務状態、継続的な取引リスクなどを、取引先の決算書や登記簿謄本、業界情報などを収集して調査します。
取引先の外部調査を行うことで、買収企業の財務リスクをより多面的に把握できるのです。
財務デューデリジェンスは以下の記事で詳しく解説しているので併せてご覧ください。
【関連記事】財務DD(財務デューデリジェンス)とは?
法務デューデリジェンスのチェックリスト
法務デューデリジェンスとは、企業の法的リスクを評価・分析するプロセスです。
法務デューデリジェンスのチェックリストには、社内規定、契約状況、労務に関する問題などが含まれます。これらの調査項目を深く掘り下げていきましょう。
社内規定
社内規定の確認は、企業の日常運営が法的に適正かどうかを判断するために欠かせません。社内規定が最新の法規制を反映しているか、また実際に従業員に遵守されているかを確認します。
社内規定のチェックは、企業の法的リスクを特定し、組織内の一貫性と信頼性を維持するために重要です。したがって、買収前のデューデリジェンスでは、社内規定が定期的に見直され改善されているかを確認すべきです。
債務などのリスク
対象企業の債権や債務リストを精査し、未回収リスクや訴訟リスクを把握します。長期的に支払いが滞っていないか、期限管理が曖昧な借入金などがないかをチェックすることで、リスクの回避もしくは対策が行えるのです。
債務が未払いのまま放置されると、様々な法的トラブルの原因となり得ます。例えば、税金の未払いやサプライヤーへの支払いの遅延は、企業の信頼性に影響を与えるだけでなく、ペナルティや裁判沙汰に発展する可能性もあります。
契約状況
企業が締結した契約状況について調査します。
契約書の正当性や従業員・取引先との関係を適切に管理しているかを精査します。また、調査対象会社が所属するグループから離脱した取引先が重要顧客の場合、サービス利用や契約継続の可否を確認する必要があるため注意が必要です。
特に買収後に契約できなくなる可能性がある顧客との関係は、経営に大きな影響を与えるため、慎重に調査しましょう。
労務に関する問題
労務に関する問題の確認は、企業の労働環境が法的に適正かどうかを判断するために非常に重要です。就業規則や雇用契約書が適切に整備されているか、労働基準法などの国内法規や海外現地法規を遵守しているかを確認します。
労務に関する問題がある場合、それは労働紛争や法的トラブルのリスクを高め、企業の安定した運営を脅かします。未解決の労務問題は後々の経営に大きな影響を及ぼす可能性があるため、デューデリジェンスにおいてはしっかりと確認する必要があります。
労務・人事デューデリジェンスとは、企業買収や統合の際に、人事・労務関連の問題点を洗い出し、そのリスクを評価するプロセスです。
労務デューデリジェンスでは、未払い賃金や労働契約の不備など主に労務管理に関する実態や法令順守状況を調査・分析します。
人事デューデリジェンスでは、労務リスクの特定などの対象企業の人材・組織に関する潜在的問題点を明らかにします。
労務・人事デューデリジェンスの主なチェック項目は、人事・役員、組織図、労使協定、従業員データの4つです。それぞれの項目について詳しく見ていきましょう。
【関連記事】法務DD(デューデリジェンス)とは?
人事・役員
経営陣や重要な役員の評価は、デューデリジェンスにおいて欠かせない項目です。企業の成功に大きな影響を与える彼らの信頼性や専門性を確認することは、投資や買収の成功につながります。
また、重要な人材や役員などの離職リスク、役員報酬や親族従業員の給与水準についても調査します。事前に調査を行うことで、買収後の労務トラブルを未然に防ぐのです。
組織図
組織図を確認することで、企業全体の構造や役割分担を把握できます。組織図の分析では、対象企業に在籍する従業員の人数や、従業員それぞれの役割を調査します。
これにより、効率的な業務運営が行われているか、あるいは役割が重複していたりギャップが存在していないかを見極められます。組織図の確認は、業務効率の向上だけでなく、組織全体の健全性を把握できるのです。
労使協定
労使協定は、企業と従業員の間で結ばれる重要な文書であり、その存在と内容を確認することが不可欠です。就業規則や労使協定が最新の法改正に対応しているか、またその内容が従業員に周知されているかを調査・分析します。
また、未払残業代のリスクの有無も重要なチェックポイントです。
労使協定の確認は、単に書面上の手続きにとどまらず、労働環境の健全性を維持し、法令遵守を確保するために非常に重要です。
従業員データ
従業員データとは、従業員の年齢構成、在職年数、離職率、教育訓練履歴、社会保険の加入状況などのことです。
従業員データを分析することで、企業の労働力の現状を把握可能です。従業員のスキルや経験、離職率は、企業のパフォーマンスに大きな影響を及ぼします。労働力の現状を理解することで、企業は効率的で効果的な人材管理を行えます。
また、調査で得た従業員データは総人件費のシミュレーションなどにも活用できます。
【関連記事】労務DDとは?
【関連記事】人事DDとは?
技術デューデリジェンスのチェックリスト
技術デューデリジェンスでは、対象企業が保有する技術資産や技術力、設備などを専門的に調査・評価します。企業が所有する技術は、競争力を左右するため注意深く評価する必要があります。
ここでは、技術デューデリジェンスのチェックリストの項目について解説します。
企業が所有する技術
企業が所有する技術を評価することは、企業分析において非常に重要です。特許分析や実地検証などを通じて、技術の独自性や希少性を中心に、他社との差別化要因を評価します。
具体的には以下の項目を確認します。
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特許や商標の保有状況
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出願中の技術やライセンス契約
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権利侵害リスクや有効期限の管理状況
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競合との技術比較や市場での優位性
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設備やシステムの稼働状況
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研究開発体制や人材のスキルなど
上記の内容を評価することで技術の価値や将来性を詳しく把握し、M&A後の技術統合リスクや追加投資の必要性、市場での価値を見極めます。
市場においての企業の位置
対象企業が保有する技術が市場や業界の中でどれだけ他社と差別化され、優れたポジションであるかを調査・分析します。
技術の市場優位性・競争力は、「他社との差別化」「知的財産権の独占性」「市場での実績」「将来の成長性」など多角的な視点から評価されます。これにより、M&Aや投資の際にその技術がどれだけ企業価値や成長の源泉となり得るかを判断します。
技術の相性
自社が買収を検討している企業の技術と自社の技術の相性を評価することは、M&Aを成功させるために非常に重要です。技術の統合がスムーズに進むかどうかを判断するためには、相性の良し悪しの確認が欠かせません。
具体的には、例えばソフトウェアの互換性がどれほどあるか、または両社の研究開発の方向性が一致しているかといった点を詳細に確認する必要があります。
技術の相性をしっかりとチェックすることにより、M&A後の統合プロセスを効率よく進められるでしょう。
ITデューデリジェンスのチェックリスト
ITデューデリジェンスでは、対象企業のIT資産やシステム、インフラなどを包括的に調査・評価します。
ここでは、ITデューデリジェンスのチェックリストに含まれる主要な項目について詳細に解説します。
システム関連の資産の査定
IT資産の正確な価値を把握することにより、企業の資産状況を正しく理解し、適正な評価額を設定できます。
システム関連の資産には、サーバー、ネットワーク機器、ライセンスソフトウェアなど、物理的なものとデジタルのものが含まれます。これらの資産を細かく査定して、全体でどの程度の価値を持つのかを明確にすることが求められます。
また、IT資産が業務や事業価値にどの程度寄与しているかも評価ポイントです。
システム統合に関するリスク
システム統合に関するリスク評価には、システム間の相互関係や統合の親和性も含めて調査します。複数の情報システムやITインフラが、M&A後にどの程度スムーズに連携・統合できるかがポイントです。
例えば、異なるERPシステム(統合基幹業務システム)やCRMシステム(顧客関係管理システム)を統合する際には、データの非互換性が生じる場合があります。この問題を無視して進んでしまえば、重要なデータの一部が失われてしまったり、業務プロセスが非効率になったりする可能性があります。
また、各システムの運用や保守に必要なコストが増加するリスクも考えられます。これらのリスクは、システム統合の際にしばしば見落とされがちですが、非常に重要です。
その他にも、システム運用や保守を担う組織・担当者の役割分担、外部委託の有無などの組織面での親和性も評価します。
まとめ|デューデリジェンスのチェックリストを把握して、M&Aをスムーズに実施しよう
デューデリジェンスのチェックリストをしっかり把握することは、M&Aの成功に欠かせません。市場や競合、内部環境、財務、法務、労務・人事、技術、ITなど、各領域の詳細な調査が成功の鍵となります。
各領域での詳細な調査を通じて、潜在的なリスクや問題をできるだけ早期に発見し、適切な対策を講じることが可能になります。各種リスクや企業価値を多角的に評価して、安心して取引を進められます。
とはいえ、項目が多岐にわたるため専門知識が必要です。初めての方や不安がある場合は、経験豊富なM&A仲介業者に相談することをおすすめします。適切なサポートを受けることで、スムーズかつ安全なM&A実現が期待できます。
CINC Capitalでは、M&A仲介協会会員および中小企業庁のM&A登録支援機関として、M&Aのご相談を受け付けております。業界歴10年以上のプロアドバイザーが、お客様の真の利益を追求します。
この記事の監修者

CINC Capital取締役執行役員社長
阿部 泰士
リクルートHRマーケティング、外資系製薬メーカーのバクスターを経て、M&A業界へ転身。 日本M&AセンターにてM&Aアドバイザーとして経験を積み、ABNアドバイザーズ(あおぞら銀行100%子会社)では執行役員営業本部長として営業組織を牽引。2024年10月より上場会社CINCの100%子会社設立後、現職に就任。