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財務DD(財務デューデリジェンス)とは?目的ややり方、費用相場、チェックリストを解説

法務 / デューデリジェンス

  • 公開日2025.04.11
  • 更新日2025.04.14

財務DD(財務デューデリジェンス)とは?目的ややり方、費用相場、チェックリストを解説

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M&Aや投資の場面で欠かせないものの一つが「財務DD(財務デューデリジェンス)」です。買収対象の財務状況を詳細に調査し、リスクを見極めるために行われる重要なプロセスです。財務DDを適切に実施しないと、想定外の負債や資金繰りの問題が後から発覚し、思わぬ損失を被る可能性もあります。

本記事では、財務DDの目的や具体的な進め方、費用相場、チェックリストについて解説します。財務DDの基礎をしっかり押さえ、M&Aや投資を成功へと導きましょう。

財務DD(財務デューデリジェンス)とは?

財務DD(財務デューデリジェンス)とは、M&Aの際に売り手企業の財務状況を詳しく調査し、経営リスクや成長の可能性を評価することです。

企業の買収を検討する際、売り手側が提示する財務諸表や決算書だけでは、財務の健全性を完全に把握することは困難です。表面上は黒字に見える企業でも、簿外債務や資金繰りの問題を抱えている可能性があるため、慎重な分析が求められます。

財務DDでは、対象企業の財務諸表の正確性を確認し、資産・負債の状況、キャッシュフローの健全性、経営成績の実態などを詳細に分析します。これにより、M&Aを進める際に予想されるリスクを明確にし、買収後の経営に大きな影響を及ぼす問題を未然に防ぐことが可能です。

また、財務DDを通じて、適正な企業価値を算出することも可能になり、適切な価格でのM&A交渉を進めるための重要な基礎資料となります。

税務DDとの違い

税務デューデリジェンス(税務DD)は、財務DDと同様に企業の経営状況を分析するプロセスですが、特に税務上のリスクの有無に焦点を当てた調査です。財務DDは、企業の財務健全性を総合的に評価するものです。それに対し、税務DDでは法人税・消費税・所得税などの申告内容が適切か、税務上のリスクが潜んでいないかを詳しく調査します。

具体的には、過去の税務申告が正しく行われているか、未払いの税金がないか、過去の組織再編や関連当事者取引に税務的な問題がないかを確認します。さらに、繰越欠損金の適用状況や、税務上の優遇措置が適切に利用されているかも分析の対象となります。

財務DDと税務DDの両方を実施することで、財務上・税務上のリスクを包括的に把握できます。M&A後に予期せぬ負担が発生するリスクの軽減が可能です。

財務DDの目的

財務DDは、M&Aの成功を左右する重要な調査の一つです。ここでは、財務DDの主な目的についてご紹介します。

投資判断の材料とするため

M&Aを実施する際、買収先企業の財務状況を正しく理解しなければ、適切な投資判断を下すことはできません。財務DDでは、売り手企業の財政状態や収益力、資金繰りの健全性などを詳細に分析し、買収に伴うリスクや成長の可能性を明確にします。

特に、過去の業績データや財務諸表の分析を通じて、対象企業が将来的にどの程度の収益を生み出せるのかを評価することが重要です。また、過去の設備投資や運転資本の推移を確認することで、将来の投資計画にも反映させることができます。これにより、M&Aの意思決定をより確実なものとするための根拠を得られます。

リスクを洗い出し、対策を検討するため

財務DDのもう一つの重要な目的は、対象企業の財務リスクを特定し、適切な対策を検討することです。財務諸表の表面的な数値だけでは把握できない簿外債務や不利な契約条件が潜んでいる可能性もあるため、徹底的な調査が求められます。

例えば、未払いの税金や未計上の負債、将来的に発生する可能性のある偶発債務などが見つかった場合、M&A後に予期せぬ財務負担を抱えるリスクがあります。財務DDを通じてリスクを事前に明らかにすることで、買収契約の条件に反映させたり、対策を講じたりすることが可能です。

企業価値を適正に評価するため

M&Aの交渉において、企業価値の適正な評価は非常に重要です。財務DDを実施することで、売り手企業の資産・負債の状況や収益性を正確に把握し、適切な買収価格を算出できます。

例えば、企業の時価純資産や正常収益力を評価し、事業の成長性や将来の収益見込みを分析することで、妥当な買収価格を決定するための根拠が得られます。また、財務DDによって発見された簿外債務や財務リスクがある場合、それを考慮した価格交渉を行えるため、買収後のリスクを最小限に抑えることも可能です。

財務DDのやり方・流れ

財務DDは専門的な知識を要するため、適切な流れで進めることが重要です。以下では、財務DDを実施する際の、具体的な手順について解説します。

専門家に依頼する

財務DDは高度な専門性を必要とするため、多くの場合、外部の専門家に依頼します。M&A仲介会社や公認会計士、税理士、ファイナンシャルアドバイザー(FA)、コンサルティング会社など、対象企業の規模や調査範囲に適した専門家を選定します。自社に必要なサポートを明確にしたうえで、適切な専門家を選ぶことが重要です。

調査範囲を決める

財務DDの目的に応じて調査範囲を決定します。財務諸表の基本的な分析にとどめるのか、過去の取引データや支払明細まで詳細に調査するのか、どの程度の期間を対象とするのかなどを具体的に設定します。調査範囲の決定によって、必要なリソースやスケジュールが変わるため、慎重な検討が必要です。

必要な資料を収集する

調査に必要な財務諸表や帳簿、契約書、税務申告書などの資料を収集します。調査対象となる企業から提供される場合もありますが、情報が不足しているケースも少なくありません。そのため、追加資料をリクエストしたり、不明点について質疑応答を行ったりしながら進めていきます。財務情報が正確に把握できるよう、可能な限り多くのデータを集めることが重要です。

経営陣にヒアリングを行う

書類だけでは把握しきれない情報を補うために、経営陣や財務担当者へのヒアリングを実施します。財務戦略や資金調達の方針、事業の成長見込みなどを確認することで、財務諸表の数字だけでは見えないリスクやチャンスを特定可能です。必要に応じて、税務や法務のデューデリジェンスと連携しながら進めることもあります。

最終報告書を作成する

財務DDの調査結果をまとめ、最終報告書を作成します。この報告書には、対象企業の財務状況、リスクの洗い出し、今後の対策などが記載されます。関係者間での認識を統一するために重要な資料となるため、詳細かつ分かりやすい内容にまとめることが大切です。また、状況によっては中間報告を行いながら、最終報告へと進める場合もあります。

財務DDのチェックリスト

M&Aにおける財務DDは、買収対象企業の財務状況を詳細に分析し、リスクを洗い出すための重要な要素です。ここでは、財務DDの際に確認すべき主要なチェック項目を解説します。

会社の基本情報

財務分析を行う前提として、企業の基本情報を整理します。会社の沿革、資本構成、主要株主、経営陣の構成などを確認し、M&A後の経営の安定性や統合の可能性を見極めます。

財務諸表の整合性

貸借対照表(B/S)、損益計算書(P/L)、キャッシュフロー計算書(C/F)を確認し、会計処理が適正に行われているかを検証します。特に、過去の会計処理の変更点や、不明瞭な調整項目がないかをチェックします。

収益性とキャッシュフローの分析

企業の収益力を測定するため、売上高、営業利益、EBITDAなどの推移を分析します。また、営業キャッシュフローの動向を確認し、資金繰りの健全性を評価します。

負債および潜在的なリスク

有利子負債の水準や、リース債務、退職給付債務などのデットライクアイテムを洗い出します。また、簿外債務や偶発債務の有無を確認し、M&A後の財務リスクを最小限に抑える対策を検討します。

税務上の問題点

法人税や消費税などの納税状況を確認し、過去の税務調査の指摘事項や未払税金がないかを調査します。税務リスクが高い場合、M&A後に追加の税負担が発生する可能性があるため慎重に分析します。

契約や法的リスクの確認

主要取引先との契約内容、融資契約、リース契約、労働契約などを精査し、潜在的な法的リスクを特定します。特に、契約上の変更条項や解除条件がM&Aにどのような影響を与えるかを確認することが重要です。

人件費および労務管理

従業員数、賃金体系、退職金制度、労働組合の有無などを分析し、M&A後の人件費の増減や労務リスクを評価します。特に、人件費が企業のコスト構造に与える影響を正確に把握することが必要です。

関連会社や子会社の財務状況

グループ企業全体の財務状況を確認し、関連会社や子会社に簿外債務や損失計上がないかを調査します。親会社と子会社間の取引が適正に行われているかも重要なチェックポイントです。

財務DDの費用相場

財務DDは、主に監査法人や会計事務所に依頼します。依頼する機関や対象企業の規模によって、費用は大きく異なります。例えば、大手監査法人に依頼する場合は500万円以上かかることがあります。中小規模の監査法人や会計事務所に依頼し、調査範囲を限定する場合、100万円程度で実施することも可能です。実際の状況に応じて金額は変動します。

上場企業や大規模な企業のM&Aでは、財務DDの範囲が広がるため、費用が1,000万円以上に及ぶケースもあるため注意が必要です。コストを抑えるためには、専門家と相談しながら、必要な範囲を明確にした上で実施することが求められます。

財務DDのポイント

財務DDで正確な財務状況を把握し、将来的なリスクを見極めるためには、いくつかの重要なポイントを押さえる必要があります。以下では、財務DD実施時のポイントを解説します。

財務諸表の信頼性を確認する

財務諸表の正確性を確認することは、財務DDの基本です。売り手企業の財務諸表に誤りや粉飾がないかを精査し、適正な会計基準に則って作成されているかをチェックします。また、過去数年間の決算書を比較し、収益や負債の推移を分析することも重要です。

キャッシュフローの実態を把握する

企業の資金繰りの健全性を判断するために、キャッシュフローの実態を確認する必要があります。営業活動によるキャッシュフローが安定しているか、債務返済の負担が適正かなどを分析し、資金ショートのリスクがないかを見極めます。

簿外債務や偶発債務の有無を調査する

財務諸表には記載されていない簿外債務や、将来的に発生する可能性のある偶発債務がないかを調査します。未払いの税金や訴訟リスク、未計上の退職給付債務などがないかを精査することで、想定外の負担を防ぐことができます。

収益性とコスト構造を分析する

売り手企業の収益性を評価し、利益率やコスト構造の妥当性を分析します。特定の取引先に依存していないか、コスト削減の余地があるかなどを検討し、M&A後の経営安定性を見極めることが重要です。

税務・法務リスクを見落とさない

税務面では、過去の税務申告に誤りがないか、未払税金や税務調査による追徴リスクがないかを確認します。法務面では、契約書の内容や取引関係の適正性をチェックし、将来的な法的リスクを回避するための対策を検討します。

まとめ|財務DDを適切に実施しリスクを回避しましょう

財務DDは、M&Aにおける財務リスクを回避し、健全な取引を実現するために欠かせないものです。実施することで企業の財務状況を正確に把握し、将来的なリスクを事前に見極めることが可能になります。

財務DDの精度がM&Aの成功を左右するため、専門家と連携しながら適切に進めることが求められます。コストや時間を考慮しつつ、的確な財務DDを実施することで、リスクを最小限に抑えたM&Aを実現しましょう。

CINC Capitalは、M&A仲介協会会員および中小企業庁のM&A登録支援機関として、M&Aのご相談を受け付けております。業界歴10年以上のプロアドバイザーが、お客様の真の利益を追求します。M&Aの相談をご希望の方はお気軽にお問い合わせください。

この記事の監修者

阿部 泰士

CINC Capital取締役執行役員社長

阿部 泰士

リクルートHRマーケティング、外資系製薬メーカーのバクスターを経て、M&A業界へ転身。 日本M&AセンターにてM&Aアドバイザーとして経験を積み、ABNアドバイザーズ(あおぞら銀行100%子会社)では執行役員営業本部長として営業組織を牽引。2024年10月より上場会社CINCの100%子会社設立後、現職に就任。

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