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M&Aで企業売却を成功させるための基本ガイド

M&A / 基礎知識

  • 公開日2024.10.01
  • 更新日2024.10.31

M&Aで企業売却を成功させるための基本ガイド

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近年、多くの企業が成長戦略の一環としてM&A(Mergers and Acquisitions)を取り入れています。特に企業の後継者不足や事業の集約などを理由に売却を検討する企業が一定数います。
しかしM&Aを行う機会そのものが多くないことから、M&Aに関する知識や経験を持っていない人がほとんどなのではないでしょうか。
この記事では、M&Aによる企業売却を成功させるための基本的な知識と具体的なステップについて詳述します。M&Aを行う際に知っておきたいポイントを押さえるための参考にしてください。

M&Aで企業を売却するメリット

まずは、M&Aによって会社や事業を売却することでどのようなメリットがあるのかを改めて説明します。

事業承継が可能になる

M&Aを通じて事業承継がスムーズに行えます。M&Aは後継者がいない場合や経営リソースが不足している場合の、効果的な事業承継手段です。別の買い手企業に事業を引き継げば、企業は存続できますし、さらなる発展が期待できます。

そして、M&Aで企業を売却できれば、企業で働く社員の雇用や顧客関係も維持することができるというわけです。

売却益が得られる

M&Aによって企業を売却すれば、売却益を得ることができます。企業売却により、オーナーはそれまで保持していた資産を現金化できるからです。

売却益は活用して新たなビジネスチャンスに挑戦したり、個人的な財務目標を達成したりすることができます。

経営基盤が強化できる

M&Aにより、経営基盤を強化することが可能です。買収企業との統合により、経営資源やノウハウの共有が促進され、競争力が向上します。また、規模の経済やシナジー効果を生かすことで、コスト削減や収益拡大が期待できます。M&Aは企業の経営基盤を強化し、競争力を高める手段として効果的です。

M&Aで企業を売却する手法

M&Aで企業を売却する手法にはいくつかの方法があります。それぞれの手法は異なる特徴や利点があり、企業の状況や売却目的に応じて最適な方法を選択することが重要です。ここでは、主に「株式譲渡」と「事業譲渡」について詳しく解説します。

株式譲渡

株式譲渡とは、売却の対象となった会社の発行済株式を全部または一部を他者に譲渡する行為を指します。M&Aでは一般的な手法として広く用いられています。

株式譲渡の大きなメリットの1つは、法的手続きが比較的シンプルである点です。後述する事業譲渡と異なり、個々の資産や負債の移転手続きを個別に行う必要がありません。そのため、手続きにかかる時間やコストを抑えることができます。

さらに、株式譲渡の場合、会社そのものがそのまま存続するため、企業の独立性が維持されます。これにより、事業運営の連続性が確保され、社員や顧客に対する影響を最小限に抑えることができます。また、取引先との既存契約もそのまま維持されるため、スムーズな引き継ぎが可能です。

事業譲渡

事業譲渡は、組織化して機能している財産の全部または一部を他者に譲渡することを指します。特定の事業のみを譲渡することが可能な点が事業譲渡の特徴です。売り手側の企業はコア事業に集中しつつ、経営のスリム化が可能です。

事業譲渡は、経営改善や新たな投資機会を創出するための有効な手段となり得ます。

M&Aで企業を売却する流れ

M&Aで企業を売却する際には、いくつかの重要なステップを踏むことが必要です。ここでは、M&Aで企業を売却する大まかな流れについて解説します。

売り手側とM&Aアドバイザーの契約

売り手側はまず、信頼できるM&Aアドバイザーを探し出し、面談を行います。このプロセスではアドバイザーの専門知識や過去の実績、さらにはコミュニケーション能力を評価することが重要です。適切なアドバイザーとの契約を結ぶことで、企業売却の各段階が円滑に進む可能性が高まります。

M&Aアドバイザーのサポートを受けることにより、効率的な売却プロセスの進行が可能です。アドバイザーは経験豊富で市場の状況をよく理解しており、適切な買い手候補の選定から必要な資料作成、交渉に至るまでの各プロセスを支援します。彼らの知識とネットワークを活用すれば、企業の価値を最大限に引き出せます。

売り手側とM&Aアドバイザーが双方の合意に至った場合、まずはNDA(機密保持契約などを締結します。これにより、企業の重要な情報が漏洩するリスクを最小限に抑えることが可能です。

契約の内容は、業務範囲、手数料の設定、業務の実施期間などです。売却プロセス全体の透明性が確保され、売り手側は安心して企業売却に集中できる環境が整います。

トップ面談

売り手側の企業のトップと買い手側の企業のトップによる「トップ面談」は、M&Aプロセスにおいて非常に重要なステップです。面談は、主に事業内容や経営の意向を伝達し合うことが目的です。事前に資料を送付しておくことで、条件交渉の場とは異なり、円滑なコミュニケーションが図れます。

トップ面談は、単なる条件の確認の場ではなく、お互いの誠実さや信頼性を確かめるための重要な機会でもあります。相手の経営者が信頼できる人物かどうか、企業や組織の文化が互いに適応できるものであるかどうかを見極めるための貴重な時間です。

トップ面談をスムーズに進めるためには、事前に確認しておきたい事項を整理しておくことが大切です。例えば、事業の販売状況や将来の展望、従業員の処遇などについての具体的な質問を用意しておくと、より有意義な時間にできます。

基本合意

基本合意で重要なのは、売り手側と買い手側が協力してM&Aを完了させることを約束する点です。基本合意の段階で基本合意契約書を締結し、双方の意向を明確にします。基本合意書には「いつ」「どのように」「いくらで」会社を譲渡するかが明記されるため、具体的な取り決めが求められます。

また、基本合意が成立することで買い手側には独占交渉権が与えられ、他の競合買い手との交渉は一時的にストップします。

デューデリジェンス

デューデリジェンスとは、買い手側が企業買収を検討する際に行う詳細な調査を指します。このプロセスを通じて、買い手は対象企業の財務状況や法律面でのリスクを分析し、投資の妥当性を評価します。

デューデリジェンスの重要性は、買い手が企業の実態を正確に把握し、潜在的なリスクを事前に認識するためです。これにより、投資後に発覚するリスクや不正確な情報によるトラブルを防ぐことができます。

具体的なデューデリジェンスのプロセスでは、売り手側が提供した資料や情報が正しいかどうかを徹底的に調査します。調査範囲は広く、登記、現物資産、会計、財務、税務、人事、労務、各種契約書など、企業経営や法的義務に関わる全ての内容が対象です。

デューデリジェンスの結果は最終契約の条件に直接影響します。もし買い手側にとって不都合な事実が判明した場合、譲渡価格の変更や取引自体の取りやめが起こる可能性もあります。そのため、売り手側はデューデリジェンス実施の前に企業情報の不明点や曖昧な点を解消しておくことが重要です。

最終契約

デューデリジェンスの結果を踏まえた最終的な条件の調整が完了すると、次に行うべきステップは最終契約の締結です。この契約をもって、売却が正式に成立し、双方が合意した条件で取引は完了です。

最終契約の場には、売り手側や買い手側、M&A仲介会社のほか、取引金融機関などの関係者や司法書士などの専門家が同席する場合があります。

M&Aで売却する企業の査定方法

M&Aで企業を売却する際には、企業の価値を正確に把握するための査定が欠かせません。企業の査定方法は、大きく3種類に分けられます。この見出しではそれぞれの査定方法について解説します。

インカムアプローチ

インカムアプローチは、自社の収益力や将来獲得する利益、キャッシュフローをベースに計算される方法です。このアプローチでは、企業の現時点の収益力だけでなく、将来の可能性を考慮して評価が行われます。

この方法の特徴として挙げられるのは、自社の将来の収益力を企業の価値に反映させることができる点です。例えば、現在は収益がそれほど大きくない企業でも、将来的な市場拡大や新製品の導入などによって収益が大幅に増加する見込みがある場合、その将来性を評価に反映することができます。 

インカムアプローチを正しく算出するためには、事業計画が現実的であることが重要です。事業計画が確かなものであれば、将来の収益力を適切に評価に組み込み、企業の価値を正確に算出できます。

マーケットアプローチ

マーケットアプローチは、類似企業の市場価格と比較して企業の価値を評価する方法です。このアプローチは、市場での取引価格や株価などを基にするため、現実の市場動向を反映した客観的な評価が可能です。具体的には、同業他社の株価や最近の取引価格と比較して、自社の企業価値を算定します。しかし、類似した会社や取引がないと、正確なデータが得づらいという点もあります。

コストアプローチ

コストアプローチは、企業が保有する資産や負債に基づいてその価値を評価する方法です。この方法の特徴は企業の純資産価値を重視する点にあります。したがって、資産の実質的な価値を正確に反映しやすいです。

具体的には、コストアプローチでは企業の棚卸資産や設備、不動産などの資産価値を総額で算出し、そこから負債を引いて純資産価値を計算します。例えば、企業が所有する機械や建物の市場価値を個別に評価し、それらを合計した後に企業が負っている借入金や未払いの債務を差し引くことで最終的な純資産価値を導き出します。

ただし、コストアプローチは資産ベースの評価が中心となるため、会社の将来性や成長可能性といった経済的価値は考慮されません。したがって、将来的なキャッシュフローや収益性を反映するためには他の評価方法と併用することが一般的です。

M&Aの企業売却を成功させるアドバイス

最後に、M&Aの企業売却を成功させるための具体的なアドバイスについて詳しく解説します。

M&Aの知識が豊富な専門家の力を借りる

M&Aを進める際には、経験や実績、知識が豊富な専門家の力を借りることが大変重要です。専門家のサポートがあれば、スムーズに企業売却のプロセスを進行させることが可能です。専門家は市場の動向や業界の知識を持っており、適切なタイミングで適切な方法を提案し実行してくれます。

さらに、法務や財務に関する深い専門知識を有するとともに、複雑な手続きを効率的に行うスキルも持っています。例えば、M&Aアドバイザーは企業価値の適切な算定を行い、交渉の代行もしてくれるため、オーナー自身のリソースを最大限活用することが可能です。また、契約書の作成や確認などの法務面でもサポートが受けられるため、安心してM&Aを進められるでしょう。

情報の取り扱いに気をつける

M&Aの過程において、重要な企業情報が漏洩すると交渉に悪影響を及ぼしたり、競合他社に利用されたりするリスクが生じます。もし企業の秘匿情報が外部に流出したら、買い手との信頼関係が損なわれ、M&A自体が取りやめになることもあるので注意しましょう。

情報が外部に漏洩しないよう、関係者とはNDAを締結します。NDAは情報の取り扱いに関して関係者が責任を持つための基本措置です。また、企業内の情報アクセス権限を制限し、アクセス可能な人物を絞ることも有効です。さらに、定期的なセキュリティ監査を行い、情報漏洩のリスクを事前に検知・対処することも重要になります。

基本的にはM&Aアドバイザーの助けを借りることで大きなリスクを回避できますが、それでも社外で重要な情報をうっかり漏らさないよう、常に注意しましょう。

まとめ丨M&Aで企業の売却を成功させるために

M&Aで企業売却を成功させるためには、多面的なアプローチと綿密な準備が不可欠です。

まずは売却する動機を明確にしましょう。M&Aはいくつもの場面で意思決定が求められますが、動機が曖昧になっていると判断が揺らぎやすくなります。目先の判断に囚われないよう、確固たる動機を持つようにしましょう。

経験豊富なM&A仲介会社とM&Aアドバイザーの助けを借りることが、成功を収めるための確実な方法となります。M&Aの専門家は、売却の目的や状況に応じて適切なサポートをしてくれるからです。

仲介会社によっては無料で相談やカウンセリングを受け付けているところもあります。まずは気になる仲介会社に問い合わせて、アドバイスを受けてみましょう。相談を通じて話を聞いてもらえば、目指すプロセスが見えてくるはずです。

この記事の監修者

阿部 泰士

CINC Capital取締役執行役員社長

阿部 泰士

CINC Capital取締役執行役員社長。リクルート関連会社や外資系製薬会社、大手・ベンチャー独立系M&A仲介会社で営業組織を牽引。 特にM&A実績の多い業界は調剤・IT・運送業。

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