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M&Aの実務とは?基本の手順から仲介会社の動き、実務で役立つ書籍や資格も解説

M&A / 基礎知識

  • 公開日2025.06.03
  • 更新日2025.06.03

M&Aの実務とは?基本の手順から仲介会社の動き、実務で役立つ書籍や資格も解説

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M&A(合併や買収)は企業間の合併や買収を意味し、企業戦略の一環として広く利用されています。特に中小企業にとっては、次世代への事業引継ぎや新たな成長のために欠かせないプロセスとなることが多いです。しかし、M&Aの実務は複雑で、専門的な知識と経験が求められます。

この記事では、M&Aの基本的な流れから仲介会社の役割、さらに実務で役立つ書籍や資格について解説します。

M&Aの実務の全体の流れ

M&Aの実務は、まず事前準備から始まり、その後、適切な相手先を選定し、契約を交わし最終的には統合プロセスに進みます。この一連の流れを順を追ってみていきましょう。

事前準備と社内体制の整備

M&Aの流れは複雑で、適切な準備なしには失敗しやすくなります。そのため、事前に企業の現状を詳細に把握し、必要な体制を整えることが求められます。

事前準備とは、M&Aの目的や戦略の策定、自社の現状分析などが含まれます。自社の成長や後継者問題の解決などの目的を明確にし、取引条件を整理しましょう。

また、M&Aの準備段階では、オーナー経営者自身が主導して必要な情報収集や情報の整理を行うことが一般的です。必要に応じて信頼できる社内の幹部や、顧問の税理士・会計士などに相談しながら、M&A仲介会社やアドバイザーなどの外部の専門家と連携することで、M&Aプロセス全体をスムーズに進められる体制を整えることがおすすめです。

M&A仲介会社や専門家への相談

複雑なM&Aの取引では、専門知識を持つプロのサポートが不可欠であり、専門家のサポートにより取引の円滑さが確保されます。

M&A仲介会社や専門家は豊富な経験と専門知識を持ち、特に企業間の大規模な取引で大きく貢献します。また、弁護士や会計士、M&Aアドバイザーなどの協力で、法的リスクや財務面の問題を事前に回避することが可能です。

【参考】中小企業庁「事業承継ガイドライン(第3版)」

アドバイザリー契約の締結

アドバイザリー契約の締結とは、M&Aを進める際に、売り手企業または買い手企業がM&Aの専門家(アドバイザー)と締結する契約のことです。アドバイザリー契約により、専門家や仲介会社からのサポートを正式に受けられます。

アドバイザリー契約を結べばM&Aプロセスを円滑に進められる点も、この契約の大きなメリットです。専門家は豊富な経験と知識を活かしてサポートするため、プロセスの様々な障害を迅速に解決できます。

アドバイザリー契約については以下の記事で詳しく解説しているので併せてご覧ください。

【参考】アドバイザリー契約とは?契約形態や契約書の内容、注意点を紹介

相手先の選定とアプローチ準備

M&Aにおいて、適切な相手先の選定とアプローチの準備は重要です。相手先の選定が不適切だと後々の取引に問題が生まれやすく、交渉が難航するケースも考えられます。そのため、まずは市場調査や企業評価を行い、複数の候補をリストアップし、それぞれ詳細に分析するのです。

具体的な選定内容は、業界の動向や競争環境の調査を行い、対象企業の財務状況や成長性、シナジー効果※1の有無などです。そして、選定した候補に対してアプローチ方法を戦略的に計画します。

適切な相手先を選定し準備を整えることでM&Aプロセスの成功確率が高まります。事前に十分な調査と分析を行えば、無用なトラブルを避け、交渉をスムーズに進められ、結果的により良い条件での契約締結につながるでしょう。

※1…相乗効果。M&Aにおいては、合併や買収において、それぞれの企業が単独で事業を行うよりも大きな効果を生みだすことを指す

相手先への打診とNDAの締結

秘密保持契約(NDA)とは企業間で秘密情報を保護するために締結される契約です。NDAを結ぶことで、機密情報の漏えいを防止したり、契約情報の使用目的や契約違反時の処置などを明確化したりします。

たとえば、企業が相手先に打診を行う際には、秘密保持契約をあらかじめ用意し、取引の前提条件として提示します。これにより、双方が共通の前提に基づいて安心して情報を共有し、取引を進めることができるのです。

秘密保持契約(NDA)については以下の記事で詳しく解説しているので併せてご覧ください。

【参考】M&Aの秘密保持契約(NDA)とは?基本から締結のメリットまで解説

トップ面談と条件交渉

M&Aにおけるトップ面談とは、売り手企業と買い手企業の経営者同士が直接対面し、相互の理解を深めるために行う重要な面談です。

トップ面談では、単に経済的な条件だけではなく、企業文化やビジョンの共有も重要なテーマとなります。

経営者が自社の文化や長期的なビジョンをしっかりと語り合い、両者の合意が単なるビジネス取引を超えた相互理解や協力関係に基づくものであることを確認します。また、取引条件の初期提案について話し合った上で、双方が納得するまで丁寧に交渉を繰り返します。

トップ面談と条件交渉を成功させるためには、信頼関係を築きながら明確な取引条件の設定をしましょう。双方の経営者がオープンな対話を心がけ、真摯に相手の意図を尊重する姿勢を持つことで、M&Aプロセスが円滑に進む環境が整います。

意向表明書(LOI)と基本合意書(MOU)の締結

M&Aプロセスが進み、条件交渉が一定段階に達すると、まず買い手企業から売り手企業に対して「意向表明書(LOI: Letter of Intent)」が提出されることがあります。意向表明書とは、買い手企業がM&Aの意思と基本的な条件(買収価格の概算レンジ、スキーム、スケジュールなど)を表明する文書です。

意向表明書が提出される段階では、デューデリジェンス前の予備的な評価に基づく条件提示であり、守秘義務など一部条項を除いて、書面に法的拘束力は基本的にありません。

意向表明書の提出と受諾の後、より詳細な条件交渉を経て「基本合意書(MOU: Memorandum of Understanding)」の締結へと進みます。

基本合意書は、売り手と買い手の間で基本的な取引条件に合意したことを文書化したもので、デューデリジェンスや最終契約に向けた交渉を進めるためのガイドラインとなります。

基本合意書には通常、取引の対象、取引の方法(株式譲渡や事業譲渡など)、想定される取引価格やその算定方法、独占交渉権の有無とその期間、デューデリジェンスの実施、最終契約締結までのスケジュールなどが記載されます。一般的に、価格や取引実行の義務などの本質的な部分については法的拘束力を持たせず、守秘義務や独占交渉権などの手続き的な部分のみに法的拘束力を持たせることが多いです。

条件交渉が成功した後は、基本合意書(LOI)の締結が必要です。基本合意書を締結することで、取引の方向性が明確になり、取引の成功に向けた道筋がしっかりと築かれていくのです。

意向表明書と基本合意書は、M&Aプロセスにおいて段階的に交渉を進める重要な文書です。特に基本合意書の締結により、取引の方向性が明確になり、取引の成功に向けた道筋がしっかりと築かれていきます。したがって、これらの文書の内容が双方の期待と一致しているか、また何に法的拘束力があるのかを明確に理解し、後々のトラブルを避けるために十分に注意しましょう。

基本合意書(MOU)と意向表明書(LOI)について以下の記事で詳しく解説しているので併せてご覧ください。

【参考】M&Aにおける基本合意書とは?最終契約書との違いや主な記載内容を解説
【関連記事】M&Aの意向表明書とは?目的や基本合意書との違い、書き方について

デューデリジェンスの実施

基本合意書(MOU)の締結後、次に行うのがデューデリジェンスです。デューデリジェンスは、M&Aにおける重要なプロセスで、買い手企業が売り手企業の財務状況や法的リスク、契約内容、業務運営の実態などを詳しく調査するものです。

この調査を通じて、買い手は企業価値の正確な評価を行い、取引に伴うリスクを洗い出します。

売り手企業にとって、デューデリジェンスの準備は非常に重要です。調査に必要な書類や情報を整理し、迅速に提供できる体制を整えることで、プロセスをスムーズに進めることができます。デューデリジェンスの結果、問題が発見されることもありますが、事前に十分な準備をしておくことで、後々のトラブルを避けることができます。

デューデリジェンスについて以下の記事で詳しく解説しているので併せてご覧ください。

【参考】デューデリジェンスとは?M&Aにおける意味や種類、進め方をわかりやすく解説

最終契約の締結とクロージング

最終契約の締結とクロージングは、M&Aプロセスにおける重要なステップであり、全体の集大成です。最終契約とクロージングを行うことで、取引の正式な合意が書面として成立し、企業の所有権や経営権が正式に移転します。

クロージングでは、必要な書類の正式な提出や、取引金額の支払いのみならず、所有権の移転手続きなども実施されます。そして手続きが完了することで、買収または合併契約の実施が法的に確認されるのです。

また最終契約書には、違約金の規定や支払いの精算方法、要件などの具体的な条件が記載されます。

最終契約の締結とクロージングの段階をスムーズに進めるためには、関係者間の綿密なコミュニケーションと緊密な調整が欠かせません。最終契約とクロージングが無事に完了することで、M&Aが目指す本来の目的を達成できるのです。

クロージングについて以下の記事で詳しく解説しているので併せてご覧ください。

【参考】M&Aのクロージングとは?流れや前提条件、成功させるためのポイントを解説

PMI(統合プロセス)の実施

PMI(統合プロセス)とは、合併や買収が成立した後に行われるステップで、企業文化の統合や業務プロセスの整合を図ることに焦点を当てた、企業統合を円滑に進めるためのプロセスです。

PMIの主な目的は、経営統合、業務統合、意識統合を通じて、M&Aで期待される効果を実現することにあります。具体的には、経営理念や戦略の統合、業務プロセスや人材の統合、企業文化の融合が含まれます。

PMIのプロセスでは組織再編やシステム統合を中心に、経営理念や戦略、マネジメントフレームの統合、企業文化や風土の統合を図り、また従業員へのコミュニケーションも重視した統合計画を策定、実施します。

PMIを適切に実施すれば、買収後のシナジー効果を最大化し、企業成長を促進できます。PMIにより、M&Aが単なる事業の延長ではなく、新たな相乗効果を生み出す原動力となるのです。

M&Aの仲介会社の実務内容

ここでは、仲介会社の具体的な役割とその流れについて深掘りして解説します。

仲介会社が担当する実務内容は多岐にわたりますが、各ステップごとにその役割や重要性について詳しく見ていきましょう。

候補の選定と打診

候補の選定と打診は、M&Aの成功を左右する重要なステップです。M&A仲介会社は、この段階で専門的な知識と豊富なネットワークを活かした重要な役割を担います。

M&A仲介会社は、まず売り手企業の意向や条件をヒアリングし、その企業にとって最適な買い手候補を探します。

業界や事業内容、企業文化、売却規模などの要素を慎重に分析し、企業にとって理想的な相手候補をリストアップします。この際、M&A仲介会社は自社のネットワークや専用のデータベースを活用して、非公開情報も含めた幅広い候補から選定するのです。

候補企業のリストが完成したら、M&A仲介会社は売り手企業の意向を確認しながら、買い手候補への打診を行います。この段階では、案件の概要情報(企業規模、業種、地域など)のみを匿名で開示し、関心を示した企業とはNDA(秘密保持契約)を締結した上で、より詳細な情報を開示していきます。

M&A仲介会社は、打診の際に売り手企業の条件(売却価格、取引の進め方、譲渡後の関与の仕方など)を踏まえて交渉を進め、買い手候補から出される条件や質問に適切に対応します。このプロセスを通じて、M&A仲介会社は売り手企業と買い手候補の間の調整役として、双方のニーズを満たす最適なマッチングが実現されるのです。

バリュエーション

M&Aにおけるバリュエーションとは、企業の価値を公正かつ客観的に評価することです。企業の収益性、成長性、資産状況などを財務諸表から詳しく分析し、市場の競合状況や業界全体のトレンドを考慮した上で、より正確な企業価値を導き出します。

分析によって得られた結果は、買収価格を妥当なものとするだけでなく、投資後のリスクを軽減するためにも役立ちます。

適正なバリュエーションを行えば、無理な価格設定がない限り、買い手と売り手の双方が納得できる形で交渉が進められます。結果として、最終契約やクロージングの段階においても、双方の合意がスムーズに得られ、企業買収における手続きを円滑に行うことが可能です。

バリュエーションは以下の記事で詳しく解説しているので併せてご覧ください。

【参考】M&Aのバリュエーションとは?行うタイミングや種類、主な手法

デューデリジェンス

デューデリジェンスとは、企業の財務、法務、税務・ビジネスなどの観点からリスクや問題点を洗い出し、企業価値を判断するプロセスです。

デューデリジェンスでは、企業の契約書、現在の財務状況を精査したり、企業の法的リスクや潜在的な義務を明確にしたりして、潜在的なトラブルを特定します。

企業の情報が豊富であればあるほど、買収後の統合や運営に対する不確実性が減少し、M&Aの成功につながります。

相手先との交渉

M&Aのプロセスにおいて、買い手企業との交渉もM&A仲介会社の実務の範囲です。買い手企業との交渉では、双方の条件を細かく調整し、合意を形成するための話し合いが行われます。交渉によって、買い手と売り手の双方の要求を満たす条件を整えることが目的です。

交渉で話し合われる具体的な内容としては、価格や支払い条件が主なものとして挙げられます。例えば、売買価格が妥当であるか、お互いが納得できる支払い方法やスケジュールとなっているかなどが焦点となります。

また、従業員の雇用をどのように維持するかといった条件などの要素も詳細に議論対象です。

交渉は、双方が納得できる形で進めることが、円滑なM&A成立に繫がります。M&A仲介会社は買い手企業との交渉をサポートし、売り手企業の利益を最大限に守りながら、適切な取引条件を引き出す役割を果たします。

契約準備

契約準備では、契約書の作成と最終的な調整が必要です。M&A取引の最終段階で契約内容が不明確なままだと、後々トラブルを引き起こす可能性があるため、契約書を細部にわたって精査し、明確にまとめる必要があります。

具体的には、法務専門家やM&Aに精通したアドバイザーと連携し、契約書の内容を詳細に確認し、必要に応じて修正を加えます。また、契約書に含まれる重要な条項については、双方がしっかりと理解し合意していることを確認しましょう。

契約準備が整った後、M&Aの最終クロージングへ進みます。

中小企業におけるM&Aの実務の注意点

中小企業がM&Aを実施する際には、特有の注意点や課題が存在します。

以下でM&Aの実務の中で特に注意すべきポイントをしっかりと理解し、必要な対策を講じることがM&A成功への鍵です。

M&Aの初期段階で情報を収集し準備を整える

M&Aの初期段階では、情報の収集と準備が不可欠です。十分な情報を持たずに進めると、正しい判断ができず、結果的にM&Aの失敗というリスクが高まる可能性があります。

例えば、同業他社のM&A事例を詳しく調査したり、市場環境や競争状況を理解するための情報を収集したりすることで、適切な戦略を立てられます。また、M&Aに関する法的規制や税務上の事情も事前に把握しておきましょう。これにより、法令や規制を遵守しながら安全にM&Aを進められます。

しっかりと時間と労力をかけて準備を整えることで、リスクを回避し、後のプロセスを円滑に進められるのです。

企業価値を適切に評価して正当な価格を導き出す

企業価値の正確な評価がなければ、取引条件が不利になる可能性が高まります。企業価値の過大評価や過小評価は、取引を不利に進める要因になりかねないからです。そのため、正確な評価に評価しましょう。

具体的には、専門の評価会社を活用し、時価純資産+営業権法※2や、マルチプル法※3などの手法を使った評価方法があります。特に日本の中小企業のM&Aでは、これらの評価方法が採用される可能性が高いです。

上場企業同士やスタートアップのM&Aの場合は、DCF法なども活用されます。これらの適切な方法で、企業の実際の価値をより正確に算出できます。

正しい企業価値を知ることは、買い手側との交渉において、取引条件を有利に進められるメリットとなるでしょう。

※2…時価純資産+営業権法とは、貸借対照表上の資産・負債を時価に修正して時価純資産を算出し、そこに営業権(のれん価値)を加えて企業価値を評価する方法。営業権は一般的に過去の利益実績をもとに計算され、これにより収益性も加味した評価が可能になる
※3…マルチプル法とは、類似する上場企業の財務指標や株価の倍率を利用して価値を算定する手法

DCF法について以下の記事で詳しく解説しているので併せてご覧ください。

【参考】DCF法とは?計算方法や企業価値の算出に活用するメリット・デメリットをわかりやすく解説

契約締結からクロージングまでの手続きを確実に進める

M&Aにおいて契約締結後からクロージングまで売り手が実務面で注意すべき点は、まず必要書類や印鑑、許認可証などの準備・管理を徹底することです。また、契約書に定められたクロージング条件(前提条件)の履行状況を逐一確認し、表明保証の内容に虚偽や漏れがないよう正確な情報開示を行いましょう。

契約締結からクロージングまでの手続きを計画通りに確実に進めることが、最終的な成功を決定づける重要なステップです。契約締結からクロージングまでに遅延や問題が起こると、案件全体に大きな影響を及ぼし、最悪の場合、取引の失敗を招くリスクがあります。

これらを専門家と連携しながら進めることで、トラブルを未然に防ぎ、円滑なクロージングを実現できます。

M&Aの実務で役立つおすすめの書籍やハンドブック

M&Aの実務においては、適切な知識と情報が非常に重要です。以下では、実務で役立つおすすめの書籍やハンドブックを紹介します。

これらの書籍は、M&Aの基本から高度な専門知識まで幅広くカバーしており、M&Aの成功に向けて非常に役立ちます。それでは詳しく見ていきましょう。

中小M&Aハンドブック(中小企業庁)

中小企業庁が発行する「中小M&Aハンドブック」は、中小企業がM&Aを進める際の実務ガイドとして非常に有用です。このハンドブックは中小企業に特化しており、具体的な事例を数多く取り上げているため、経営者にとって参考になる情報が豊富に含まれています。

企業価値の評価方法に関する具体例や、取引を進める際の手順、その過程で注意すべき法的・税務的な留意点についても詳細に解説しています。

中小企業の特性に応じた具体的なアドバイスや、実務的な知識を提供しているため、M&Aを成功に導くツールとして役立つでしょう。

【参考】中小企業庁「中小M&Aハンドブック」

M&A実務ハンドブック〈第9版〉 会計・税務・企業評価と買収契約の進め方

「M&A実務ハンドブック〈第9版〉 会計・税務・企業評価と買収契約の進め方」は、M&Aの全プロセスにおける包括的な解説を提供する書籍です。

会計、税務、企業評価、買収契約といった重要な分野ごとに詳細な説明を行っており、実務で必要とされる知識を網羅しています。特に、会計や税務の面については、法制度の変化や実務での取り扱いに関する情報が最新のものとして反映されています。

企業評価の方法や税務上の留意点、契約書の作成プロセスといったトピックが詳細に解説されており、具体例も豊富に交えているため、読む側にとって実際の業務に活用しやすい構成です。

【参考】中央経済グループパブリッシング「M&A実務ハンドブック〈第9版〉 会計・税務・企業評価と買収契約の進め方」

改訂5版 M&A実務のすべて

「改訂5版 M&A実務のすべて」は、M&Aの基礎から応用まで幅広くカバーする総合的な参考書です。この書籍は、初心者からプロフェッショナルまでを対象とし、読者がM&Aの実務に必要な知識を網羅的に理解できるように構成されています。

この書籍の魅力の一つは、最新の法規制や市場の動向を反映しているため、現代のM&A実務に即した情報が豊富である点です。近年、M&Aに関連する法律や市場環境は変化が激しく、それに対応した知識を持つことは実務において必須です。この参考書では最新の動向を踏まえた内容が整理されており、実務に役立つ情報を継続的に学べるよう工夫されています。

「改訂5版 M&A実務のすべて」では、特に、実務ですぐに役立つ具体的な事例や解説が多数含まれているため、読者自身のスキルアップに大いに貢献する一冊となっています。

【参考】日本実業出版社「改訂5版 M&A実務のすべて」

M&Aの実務スキルを高める民間資格

以下では、M&Aの実務スキルを向上させるための代表的な民間資格を紹介します。

M&Aの実務に関連する資格には公認会計士や税理士、中小企業診断士などの国家資格などがありますが、以下の民間資格を取得することで、M&Aのさまざまな側面に関する深い理解を得られ、実務に直接役立つスキルを身につけられるでしょう。

M&Aスペシャリスト資格

M&Aスペシャリスト資格は、日本経営管理協会(JIMA)が認定する資格で、M&Aに関する専門知識と実務能力を有することを証明するものです。この資格は、M&Aの基本概念から、実務の詳細に至るまで広範囲にわたる知識やスキルを身につけられます。

売り手企業にとって、M&Aの基本的な流れや専門用語や、注意点を理解し、専門家とのコミュニケーションが円滑になるメリットがあります。また、M&Aに伴うリスクを把握することで、適切な判断ができるでしょう。

買い手企業にとっても、メリットがあります。まずM&Aプロセス全体や法務、財務、税務、企業価値評価、交渉戦略、PMIなど、幅広い知識を体系的に学ぶことができます。また、M&A戦略の立案から実行、そして統合後の対応まで、各段階で役立ちます。

さらに、専門家との連携も円滑になり、M&Aプロセスが効率的に進行できるでしょう。

M&Aエキスパート認定資格

M&Aエキスパート認定資格は、一般社団法人金融財政事情研究会が認定する資格制度で、事業承継やM&Aに関する基本的な知識を身につけることを目的としています。この資格は、中小企業の経営者や従業員が事業承継やM&Aを円滑に進めるための専門家としてのスキルを養成することを目指しています。

M&Aエキスパート認定資格の取得により、事業承継やM&Aに関する幅広い知識を得ることができ、実務に役立ちます。また、合併・買収を含むあらゆる交渉プロセスを円滑に進めるスキルや判断力、状況分析力を強化できるでしょう。

買い手企業にとっては、M&Aを戦略的に推進し、成功の確率を高めるためのより直接的で実務的なメリットが大きいです。

売り手企業にとっては、M&Aを円滑に進め、専門家とのコミュニケーションを円滑にするための基礎知識として役立つと考えられます。ただし、買い手企業ほど資格を直接的に活用する場面は多くないかもしれません。

事業承継士

事業承継士は、事業承継に関する専門知識を持つことを証明する民間資格であり、一般社団法人事業承継協会が認定しています。この資格は、中小企業の事業承継を支援するための専門家としての役割を果たします。

中小企業における事業承継は、M&Aと同様に複雑なプロセスであり、特別な知識とスキルが必要です。この資格では、事業承継のプロセス全体を理解するとともに、実務に対応できる能力を養います。

事業承継士の資格は、事業承継という課題に直面している売り手企業にとって、その解決に向けた知識習得や計画立案能力の向上に直接的に貢献する点で、より大きなメリットがあると言えます。

一方、買い手企業にとっては、事業承継を目的としたM&A案件をより深く理解し、友好的な関係構築に役立つ可能性がありますが、M&A戦略全体の知識としては、M&Aエキスパート認定資格などの方がより直接的なメリットが大きいかもしれません。

ただし、買い手企業においても、今後のM&A戦略において中小企業の事業承継を重要なターゲットと捉えている場合、事業承継士の知識は非常に役立つでしょう。

まとめ|実務の知識をつけて、スムーズなM&Aの実現を

M&Aは企業の成長や事業承継の重要な手段ですが、その実務は非常に複雑で専門的な知識が求められます。この記事では、M&Aの基本的な手順から、仲介会社の役割、また実務に役立つ書籍や資格について解説しました。

売り手企業にとっては、事前準備や専門家との連携が重要で、特にM&Aの流れやリスクを理解しておくことで、より主体的に交渉に臨めます。資格取得や書籍を活用して、知識を深め、より円滑にM&Aを進めるための助けとなります。

自社の未来を見据え、専門家と協力しながら確実なステップを踏むことで、M&Aを成功に導きましょう。

CINC CapitalはM&A仲介協会会員および中小企業庁のM&A登録支援機関として、M&Aのご相談を受け付けております。業界歴10年以上のプロアドバイザーが、お客様の真の利益を追求します。

この記事の監修者

阿部 泰士

CINC Capital取締役執行役員社長

阿部 泰士

リクルートHRマーケティング、外資系製薬メーカーのバクスターを経て、M&A業界へ転身。 日本M&AセンターにてM&Aアドバイザーとして経験を積み、ABNアドバイザーズ(あおぞら銀行100%子会社)では執行役員営業本部長として営業組織を牽引。2024年10月より上場会社CINCの100%子会社設立後、現職に就任。

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