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M&Aのクロージングとは?流れや前提条件、成功させるためのポイントを解説

手続き・契約

  • 公開日2025.04.24
  • 更新日2025.04.24

M&Aのクロージングとは?流れや前提条件、成功させるためのポイントを解説

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M&Aのクロージングについて詳しく知りたいと考えていませんか?

最終契約を締結した後も、資金決済や必要書類の準備、取引先との調整など、多くの重要な手続きが残っています。適切に進めなければ、取引が破談になる可能性もあり、不安に感じている方も少なくありません。

本記事では、M&Aのクロージングとは何か、その流れや成功させるためのポイントについて詳しく解説します。

M&Aにおけるクロージングとは

M&Aにおけるクロージングとは、最終契約に基づき、資金決済や必要手続きを完了し、所有権や経営権の移転が確定する段階を指します。具体的には、資金決済の実施や株式・資産の引き渡し、各種法的手続きの完了を含みます。M&A取引が法的に有効になるには、クロージングを適切に進めることが必要です。

この段階で問題が発生すると、取引自体が無効になるリスクがあるため、慎重に進めなければなりません。以下では、クロージングの重要性や所要期間、月末に集中する理由について詳しく解説します。

クロージングの重要性

クロージングはM&A取引の成功を決定づける重要なプロセスであり、資産や株式の所有権移転だけでなく、リスクの最終確認と法的手続きの完了が求められます。契約を締結しただけでは取引は成立せず、クロージングを経て初めて資産や株式の所有権が移転します。資金決済や法的手続きを適切に完了させないと、取引が無効となるリスクがあるため注意が必要です。

特に、大規模なM&Aでは取引額が大きく、関係者も多いため、クロージングのミスが取引全体に影響を与えます。適切なクロージングの実施は、M&Aの成功を確実なものにするだけでなく、取引後の統合(PMI)を円滑に進めるためにも欠かせません。

クロージングにかかる期間

クロージングにかかる期間は案件によって大きく異なります。クロージング条件(Condition of Closing:COC)が設定されていない場合、最終契約の締結と同時にクロージングが行われることもあります。

一方で、クロージング条件がある場合には、最終契約締結からクロージングまでに1週間から6か月程度を要するケースもあります。たとえ小規模なM&Aであっても、許認可の取得や取引先からの同意が必要な場合には、1〜3か月程度の期間がかかることがあります。

さらに、大企業間のM&Aや、金融機関・官公庁の承認が求められる場合には、半年から1年以上を見込む必要があります。

スムーズなクロージングを実現するには、クロージング条件の有無にかかわらず、事前準備を十分に行い、必要書類を揃えておくことが重要です。特に売り手側は、早期に準備を開始することで、計画通りに取引を完了させることが期待できます。

クロージングが月末に集中する理由

M&Aのクロージング日は、案件ごとに異なる複数の要素を踏まえて決定されます。一般的に「月末に集中する」といわれることがありますが、この認識は必ずしも正確とはいえません。

決算期や四半期末にクロージングを設定するのは、主に買い手企業側の財務処理上の都合によるものです。例えば、連結財務諸表への取り込みを簡便にしたり、会計処理を整理しやすくしたりする目的があります。

しかし、近年ではこうした期末へのこだわりが薄れてきており、必ずしも月末に設定されるとは限らないのが実情です。実際のクロージング日程は、以下のような要素を考慮して決定されることが一般的です。

  • クロージング条件(CP)の充足時期
  • 両社の経営陣や関係者のスケジュール
  • 資金決済の準備状況
  • 法的手続きの完了タイミング

売り手としては、税務上の計画や次の事業展開を見据えたうえで、最適なクロージング時期を提案することも可能です。M&A仲介会社やアドバイザーと連携しながら、売り手にとって有利なタイミングでの取引完了を目指すことが重要です。

M&Aのクロージング条件とは

M&Aのクロージング条件とは、最終契約を締結した後にクロージングを実行するための前提条件を指します。これらの条件が満たされない場合、取引は成立せず、契約が解除される可能性もあります。

代表的なクロージング条件としては、法的要件の充足や取引先からの承認取得などが挙げられます。たとえば、独占禁止法の審査通過や、主要顧客との契約継続の同意取得が必要となることがあります。

クロージング条件を明確に定め、事前に履行状況を確認することで、取引の確実性が高まり、スムーズなクロージングが実現できます。売り手としては、過度に厳しい条件が設定されないよう、M&A仲介会社などの専門家と連携して慎重に交渉を進めることが重要です。

M&Aのクロージング手続きの内容

M&Aのクロージング手続きは、取引の種類によって大きく異なります。代表的な手法には「株式譲渡」「事業譲渡」「合併・会社分割」「第三者割当増資」があり、それぞれに応じた手続きが必要です。

本章では、それぞれのクロージング手続きについて詳しく解説します。

株式譲渡

株式譲渡は、売り手が保有する株式を買い手に移転することで経営権を引き渡すM&A手法です。この方法のメリットは、事業そのものを引き継ぐため、従業員や取引先との契約をそのまま維持できる点です。

クロージングでは、売り手から買い手へ株式を正式に移転し、株主名簿の書き換えや譲渡対価の支払いを実施します。株券発行会社であれば株券の引き渡しも必要になります。

また、譲渡制限がある株式の場合、取締役会や株主総会で承認を得なければならないため、スムーズなクロージングのためには事前準備が欠かせません。

事業譲渡

事業譲渡は、会社全体ではなく特定の事業や資産・負債を切り離して譲渡するM&A手法です。この方法では、譲渡対象の資産や契約ごとに個別の承継手続きを行う必要があります。

クロージングでは、契約書の締結後に売り手から買い手へ資産を引き渡し、不動産や知的財産権の名義変更、取引先との契約承継手続きを進めます。

また、従業員を引き継ぐ場合は、個別の雇用契約の締結が必要です。事業譲渡は、契約ごとに個別の手続きが必要になるため、他のM&A手法と比較してクロージングが複雑になりやすい点に注意が必要です。

合併・会社分割

合併は、売り手と買い手の会社が統合され、一つの法人として存続するM&A手法です。一方、会社分割は、特定の事業や資産を分離し、別の会社に移転する手法を指します。

クロージングにおいては、合併契約・分割契約を締結し、債権者保護手続きを経た後、存続会社または新設会社の登記を行います。合併・分割は法的な手続きが多いため、特に債権者への通知や官報公告などを確実に実施することが重要です。

また、効力発生日をクロージング日と一致させるために、手続きを慎重に進める必要があります。

第三者割当増資

第三者割当増資とは、売り手企業が新株を発行し、買い手がそれを引き受けることで経営権を取得するM&A手法です。この方法は、企業の資本増強と経営権移転を同時に実現できる点が特徴です。

クロージングでは、株主総会の承認を得た上で、新株発行の手続きを進めます。公開会社であれば、取締役会決議のみで増資を実行できますが、譲渡制限のある株式を発行する場合は特別決議が必要になります。

また、発行された株式の代金払い込みが完了した後に、資本金額の変更登記を行います。適切な法的手続きを踏むことで、買い手は正式に新たな株主となり、経営に関与できるようになります。

① M&Aのクロージングまでの流れ

M&Aのクロージングに至るまでには、いくつかの重要なステップを踏む必要があります。主なステップは、基本合意書(MOU)の締結、デューデリジェンスの実施、最終契約書の作成と締結(SPA/APA)、クロージング条件の確認・履行準備、の4つです。

本章では、クロージングまでの各段階について詳しく解説します。

基本合意書(LOI)の締結

基本合意書(LOI)は、M&Aの取引条件や進め方について、当事者間の合意を文書化したものです。この合意書は法的拘束力を持たない場合が多いですが、秘密保持や独占交渉権の付与など、一部の条項には拘束力があることが一般的です。

LOIの締結により、売り手と買い手は取引の方向性を明確にし、デューデリジェンスの実施や最終契約書の交渉へと進むことができます。M&Aの成功には、この初期段階で主要条件を明確に定めることが重要です。

デューデリジェンスの実施

デューデリジェンス(DD)は、M&Aの買い手が売り手企業の財務、法務、業務、税務、ITなどを詳細に調査するプロセスです。この調査を通じて、買収対象のリスクや問題点を洗い出し、最終契約の条件を調整します。

もし重大な問題が発覚した場合、価格交渉の見直しや取引の中止を検討することもあります。適切なデューデリジェンスを実施することで、M&A後の予期せぬリスクを回避し、スムーズな統合ができるでしょう。

最終契約書の作成と締結(SPA/APA)

デューデリジェンスが完了すると、売り手と買い手は最終契約書(DA:Definitive Agreement)を作成し、取引条件を正式に確定させます。株式譲渡の場合には「株式譲渡契約書(SPA:Share Purchase Agreement)」が、事業譲渡の場合には「事業譲渡契約書」が用いられます。

最終契約書には、売却対象、譲渡価格、表明保証、補償条項、クロージング条件などが記載されます。適切な契約内容を設定し、双方が合意することで、クロージングに向けた準備が完了します。

クロージング条件の確認・履行準備

最終契約書の締結後、クロージングに向けて必要な条件を満たしているか確認し、履行準備を行います。例えば該当するものは、法的許認可の取得、取引先の承認、資産や負債の整理、従業員の移籍手続きなどです。

クロージング条件をすべて満たしたことを確認した後、買い手は資金決済の準備を整えます。この段階で問題が発生するとクロージングが遅延するため、事前にスケジュールを管理し、円滑な実行を目指すことが重要です。

② M&Aのクロージング当日の流れ

M&Aのクロージング当日は、売り手と買い手が正式に取引を完了させる重要な日です。この日には、クロージング条件の最終確認、資金決済、必要書類の署名・受領、株式や資産の引き渡しなどが行われます。これらの手続きを適切に進めることで、取引の確定が法的に認められます。

当日に問題が発生すると取引の遅延や契約解除のリスクが生じるため、事前の準備が欠かせません。本章では、クロージング当日に実施すべき重要な手続きを詳しく解説します。

クロージング条件の最終確認

クロージング条件の最終確認は、取引を確定させる前に不可欠なステップです。この確認を怠ると、後に法的な問題が発生する可能性があります。具体的には、売り手が契約で定めた表明保証を維持しているか、必要な許認可が取得されているか、主要取引先の承認が得られているかなどをチェックします。

買い手が資金を用意できていることも確認事項の一つです。すべての条件が満たされていることを双方が確認したうえで、次の手続きに進みます。

資金決済の実施

資金決済は、買い手が売り手に対して譲渡対価を支払うプロセスです。取引の最終的な成立は、資金の受領をもって確定します。一般的には、銀行振込を利用して決済が行われます。特に日本の中小企業M&Aにおいては、クロージング時に全額一括で決済される形式が採用されるのが一般的です。

なお、海外企業が関与する大規模なM&Aや、訴訟・簿外債務などのリスクが想定される案件では、第三者が資金を一時的に預かる「エスクロー口座」を利用するケースもあります。ただし、日本国内の中小企業M&Aでは、エスクロー口座の活用はあまり一般的ではありません。

支払いが完了すると、売り手はその証明として領収書を発行し、取引が正式に成立したことを記録します。万が一、決済が遅延した場合は、契約で定めたペナルティが適用されることもあるため、決済スケジュールの管理が重要です。売り手としては、決済条件を契約書に明確に記載しておくことが、トラブル防止の観点からも非常に重要です。

必要書類の署名・受領

クロージング当日には、必要書類の署名・受領が行われます。この手続きにより、売り手と買い手は取引の合意を正式に証明できます。代表的な書類は、株式譲渡契約書、事業譲渡契約書、クロージング書類受領書、株主名簿書換請求書などです。

これらの書類には双方が署名し、売り手は買い手に原本を引き渡します。署名漏れや書類不備があると手続きが遅れるため、事前にチェックリストを作成し、確認を徹底することが必要です。

株式・資産の引き渡し

クロージングの最終段階では、売り手が買い手に対して株式や資産を正式に引き渡します。株式譲渡の場合は、株券(発行会社のみ)または株主名簿の書き換えが行われ、買い手が正式な株主として登録されます。

事業譲渡では、不動産や設備、知的財産権などの名義変更手続きが必要です。また、売り手が持つ銀行口座の切り替えや重要書類の受け渡しも行われます。すべての資産移転が完了した時点で、M&Aのクロージングは正式に成立します。

③ M&Aのクロージング後の流れ

M&Aのクロージングが完了した後も、多くの重要な手続きが残っています。クロージング後の対応を適切に進めることで、M&Aの効果を最大限に引き出し、事業の安定を確保できるでしょう。

本章では、それぞれの対応について詳しく解説します。

引き渡し後の統合作業(PMI)

M&Aの成功は、取引成立だけでなく、買収後の統合作業(PMI)によって決まります。PMIは、買収企業と被買収企業の業務や組織、文化を統合し、シナジーを最大化するとともに、従業員の適応を促し、業務プロセスを円滑に進めることを目的としています。これが適切に実施されないと、従業員の士気低下や取引先の離脱が発生し、M&Aの目的が達成できなくなる可能性があります。

具体的には、業務プロセスの統一、新しい経営体制の確立、ITシステムの統合、ブランド戦略の見直しなどを計画的に進めることが求められます。

法務・税務上の手続き(登記・届出)

クロージング後には、法務・税務関連の手続きを速やかに完了させる必要があります。代表取締役の変更がある場合は、法務局で登記変更を行います。

また、合併や会社分割の場合は、法人の存続や新設に伴う各種届出が必要です。税務面では、譲渡益の計算と申告が必要になり、消費税や法人税の取り扱いについても適切な対応が求められます。

これらの手続きを怠ると、法的リスクが発生する可能性があるため、専門家と連携しながら迅速に進めることが重要です。

従業員や取引先への通知・対応

M&A後の従業員や取引先への対応は、事業の安定に直結する重要なプロセスです。従業員に対しては、買収の意図や今後の雇用条件を明確に伝えることで、不安を軽減できます。特に、待遇の変更がある場合は、早期に説明し、信頼関係を築くことが不可欠です。

取引先には、M&Aによって事業の継続性が保たれることを伝え、契約の見直しが必要な場合は速やかに対応します。適切なコミュニケーションを行うことで、M&A後の混乱を防ぎ、関係者との良好な関係を維持できます。

M&Aのクロージングに必要な書類

M&Aのクロージングには、売り手と買い手が準備するべき書類が多数あります。これらの書類は、取引の法的有効性を確保し、スムーズな資産・株式の移転を実現するために不可欠です。売り手側は株式譲渡に関する承認や証明書を、買い手側は登記手続きに必要な書類を準備します。

特に、株式譲渡の場合は名義書換に関する書類が多く、事業譲渡の場合は契約書や許認可の承継に関する書類が必要です。本章では、売り手側・買い手側の必要書類について詳しく解説します。

売り手側の必要書類

M&Aのクロージングで売り手が準備すべき書類は、株式譲渡の正式な承認と取引の成立を証明するものが中心です。取締役会や株主総会での承認が必要なケースでは、その決議を記録する書類も求められます。これらの書類が不備なく揃っていることで、スムーズなクロージングが可能になります。

株式譲渡承認の議事録

株式譲渡に取締役会や株主総会の承認が必要な場合、議事録を作成し、会社として正式に承認したことを記録

株式譲渡承認書兼承認通知書

取締役会や株主総会で株式譲渡が承認されたことを証明し、売り手が買い手に対して正式に通知する書類

株主名簿記載事項書換請求書

株式譲渡が完了した後、会社に対して株主名簿の書き換えを請求するために提出する書類

株主名簿の写し(会社実印押印済みのものを含む)

譲渡前後の株主の情報を証明するために提出。実印が押されていることで、法的な証拠としての効力を持つ

株式譲渡代金の領収書

買い手から売り手に対して支払われた譲渡代金の受領を証明するための書類。金融機関の振込明細とともに、決済の証拠として残す

株式譲渡に関する名義書換の委任状

売り手が株式名義の変更手続きを代理人に委任する場合に作成する書類

印鑑証明書

売り手の本人確認や契約の信頼性を確保するために必要な書類

株式譲渡承認申請書

譲渡制限株式の場合、売り手が会社に対して事前に譲渡承認を申請するための書類

株式譲渡承認書(譲渡制限株式の場合)

譲渡制限株式の売却を会社が承認したことを証明する書類

売主の証明書(案件によって必要)

特定の取引条件を満たしていることを証明するために作成される書類です。法的要件や取引先の要請に応じて作成されることがあります。

買い手側の必要書類

買い手が準備する書類は、M&Aの取引を正式に確定し、新たな経営者としての立場を確立するために必要です。

クロージング当日に適切な書類を揃え、迅速に手続きを完了させましょう。

顧問契約書

売り手の経営陣がM&A後も一定期間顧問として関与する場合に締結する契約書

クロージング書類受領書

買い手が売り手から引き渡された書類を確かに受領したことを証明するための書類

印鑑証明書(譲受会社・買手企業)

買い手の企業が正式な法人であることを証明するために提出

登記簿謄本(または登記事項証明書)

買い手企業の法人情報を証明するために提出する書類

M&Aのクロージングを成功させるためのポイント

M&Aのクロージングの成功には、多くの手続きを正確に遂行し、契約条件を満たすことが重要です。しかし、条件の不備や想定外のリスク、資金決済の遅延などが原因でトラブルが発生すると、取引自体が破談になる可能性もあります。

本章では、M&Aのクロージングを確実に成功させるための重要なポイントについて解説します。

クロージング条件(CP)を明確化し、履行状況を管理する

クロージング条件(CP:Condition Precedent)は、最終契約締結後に取引を実行するための前提条件です。これが明確でないと、売り手と買い手の認識がずれ、取引の遅延や契約解除のリスクが高まります。

クロージング条件には、法的許認可の取得、取引先との契約継続の確保、売り手の財務状況の維持などが含まれます。これらを具体的に定め、進捗を管理することで、クロージング当日の混乱を防げます。

特に、大規模なM&Aでは条件をリスト化し、チェックリストを活用することで、履行状況の確認を徹底することが重要です。

デューデリジェンスでリスクを洗い出し、対策を立てる

デューデリジェンス(DD)は、M&Aのリスクを最小限に抑えるための重要なプロセスです。事前に売り手企業の財務、法務、税務、業務、ITなどを徹底的に調査し、潜在的なリスクを特定します。リスクが見つかった場合は、価格交渉の見直しや契約条項の追加により対策を講じることが可能です。

DDを疎かにすると、買収後に簿外債務や法的問題が発覚し、大きな損失を招くことがあります。徹底したデューデリジェンスを実施し、問題点を事前に解決することで、安全な取引を実現できます。

資金調達計画と決済スケジュールを確立する

クロージング当日に資金決済が滞ると、M&A取引は失敗に終わる可能性があります。買い手は、金融機関からの融資や自己資金の準備を含め、資金調達の計画を早期に確立することが求められます。

また、決済のタイミングや方法(銀行振込など)を事前に決めておくことで、当日の混乱を防ぐことができます。取引のスムーズな実行には、資金の流れを明確にし、決済トラブルを回避するための対策を事前に講じることが重要です。

関係者間で密にコミュニケーションを取る

M&Aは、多くの関係者が関与する取引のため、情報共有が不十分だと手続きの遅延や誤解を招く可能性があります。売り手と買い手だけでなく、弁護士、税理士、M&Aアドバイザー、金融機関など、関係者との連携を密にすることが不可欠です。

特にクロージング前後は、定期的なミーティングを設け、進捗状況を確認しながら、課題の早期解決を図ることが求められます。適切なコミュニケーションを維持することで、クロージングを円滑に進められます。

想定外のトラブルに備えてバックアッププランを準備する

M&Aのクロージングは、多くの要因が絡み合うため、想定外のトラブルが発生することがあります。例えば、資金決済の遅延、必要書類の不足、取引先からの同意未取得などが原因でクロージングが延期されるケースもあります。

これを防ぐために、トラブル発生時の代替策を事前に準備しておくことが重要です。決済手段の複数確保、主要関係者の代理人選定、緊急対応のフロー策定など、リスクに応じた対応策を用意しておきましょう。

M&Aのクロージングに関するよくある質問

M&Aのクロージングは、契約を最終的に成立させる重要なプロセスですが、実務ではさまざまな疑問やトラブルが発生することがあります。特に、クロージング前に取引が撤回されるケース、当日のトラブルへの対処、クロージング後の契約不履行への対応については、十分に理解しておくことが必要です。

これらのポイントを事前に把握し、適切な準備をすることで、M&A取引をスムーズに進められます。本章では、それぞれの疑問について詳しく解説します。

クロージング前に撤回されるケースはあるのか?

クロージング前にM&A取引が撤回されるケースは、一定の条件下で発生します。最も一般的なのは、クロージング条件(CP)が満たされなかった場合です。例えば、規制当局の許可が得られない、重要取引先の承認が得られない、またはデューデリジェンスの結果、想定外の財務リスクが発覚した場合、取引が中止されることがあります。

さらに、最終契約に「MAC条項(重大な悪影響条項)」が含まれている場合、売り手の業績悪化や重大な法的問題が発生した際に、買い手が契約を解除できることがあります。クロージング前の撤回は契約内容に依存するため、事前に条件を明確にし、必要な対策を講じることが重要です。

クロージング当日にトラブルが発生した場合は?

クロージング当日は、資金決済や書類の受け渡しなど多くの手続きが集中するため、トラブルが発生するリスクがあります。例えば、買い手の資金決済が遅れる、売り手側の書類に不備がある、または株式譲渡の名義変更手続きが予定通り完了しない場合、クロージングを延期する必要が生じます。

こうした問題を回避するには、事前にバックアッププランを用意し、緊急時の対応策を決めておくことが大切です。例えば、決済トラブルに備えて代替の送金手段を確保し、書類の不備が判明した場合に迅速に対応できる体制を整えておくと、当日の混乱を最小限に抑えることができます。

クロージング後に契約不履行が発覚した場合の対応は?

クロージング後に契約不履行が発覚した場合、最終契約の条項に基づいて対応する必要があります。例えば、売り手が財務状況を偽っていたり、隠れた負債が発覚した場合、買い手は契約上の「表明保証違反」を理由に損害賠償を請求できます。

また、エスクロー口座を利用している場合は、クロージング時に一部の対価を保留し、リスクが解決されるまで支払いを停止することが可能です。M&A後のトラブルを最小限に抑えるには、契約段階で補償条項を明確に設定し、不測の事態に対応できる仕組みを構築することが重要です。

まとめ|クロージングを確実に進め、成果を最大化しましょう

M&Aのクロージングは、取引を正式に完了させるための重要なプロセスです。適切に進めるためには、クロージング条件を明確にし、デューデリジェンスでリスクを洗い出し、資金決済や書類の準備を万全にすることが欠かせません。

また、クロージング後の統合作業(PMI)や法務・税務手続きを迅速に行うことで、取引の円滑な移行が可能になります。万一のトラブルにも対応できるよう、事前準備を徹底し、関係者間のコミュニケーションを密に取ることも大切です。M&Aのクロージングを確実に進め、取引の成果を最大化しましょう。

CINC Capitalは、M&A仲介協会会員および中小企業庁のM&A登録支援機関として、M&Aのご相談を受け付けております。業界歴10年以上のプロアドバイザーが、お客様の真の利益を追求します。M&Aの相談をご希望の方はお気軽にお問い合わせください。

この記事の監修者

阿部 泰士

CINC Capital取締役執行役員社長

阿部 泰士

リクルートHRマーケティング、外資系製薬メーカーのバクスターを経て、M&A業界へ転身。 日本M&AセンターにてM&Aアドバイザーとして経験を積み、ABNアドバイザーズ(あおぞら銀行100%子会社)では執行役員営業本部長として営業組織を牽引。2024年10月より上場会社CINCの100%子会社設立後、現職に就任。

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