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M&Aに必要な資料とは?買い手・売り手ごとの資料一覧と作成時の注意点を解説

M&A / 基礎知識

  • 公開日2025.04.30
  • 更新日2025.04.30

M&Aに必要な資料とは?買い手・売り手ごとの資料一覧と作成時の注意点を解説

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近年、事業承継や成長戦略としてM&Aに注目する企業が増えています。しかし、実際の取引では準備不足により交渉が難航したり、企業価値が適正に評価されなかったりするケースが少なくありません。特に売り手側にとって、適切な資料準備はM&Aの成果を出すための重要なポイントといえます。

本記事では、M&A取引において必要な書類や内容について詳しく解説します。

買い手・売り手共通でM&Aに必要な資料

M&Aにおいては、買い手・売り手の双方が内容を理解し、準備すべき共通の書類があります。資料は取引の透明性を確保し、相互の信頼関係を構築するために必要です。また、法的な保護や取引条件の明確化にも不可欠な役割を果たします。ここでは、M&A取引の各段階で必要となる資料をご紹介します。

フェーズ

資料名

概要

初期接触

秘密保持契約(NDA)

機密情報の保護

初期検討

意向表明書(LOI)

買収意志と条件を提示

基本合意

基本合意書

条件面の仮合意、独占交渉権を付与する

最終契約

最終契約書

株式譲渡契約/資産譲渡契約などの法的契約書

全期間

スケジュール表

プロセスの進行管理と認識共有

DD期間

デューデリジェンス質問票

買い手側から売り手に対する情報リクエスト一覧

初期検討~DD

インフォメーション・メモランダム(IM)

売り手企業の全体像・事業内容の説明資料

秘密保持契約(NDA)

「秘密保持契約(Non-Disclosure Agreement)」は、M&A交渉の初期段階で締結される重要文書です。交渉過程で開示される機密情報の取扱いを定め、不正利用や情報漏洩を防止するために結ばれます。主に情報開示の範囲、使用目的、守秘義務の期間、情報管理方法、違反時のペナルティなどが明記されます。

意向表明書(LOI)

「意向表明書(Letter of Intent)」は、買い手が売り手に対してM&A取引を進める意思を示す文書です。希望する取引条件やスケジュール、譲受対象、価格レンジなどが記載されます。通常は法的拘束力を持たない場合が多いですが、秘密保持や独占交渉権などの一部条項には拘束力を持たせることもあります。

基本合意書

基本合意書は、M&A交渉が具体的に進展した段階で作成される文書で、取引の基本的な枠組みを定めるために作成します。譲渡価格の目安、交渉スケジュール、独占交渉権の有無と期間、デューデリジェンスの実施範囲などが主な記載事項です。

最終契約書

M&A取引の最終段階で締結される文書であり、すべての条項に法的拘束力を持ちます。株式譲渡契約書や事業譲渡契約書など複数の種類があり、確定した取引価格、支払条件、クロージング条件、表明保証条項、補償条項などが詳細に記載されます。契約書の作成・確認には法務知識が必要となるため、専門家のサポートが不可欠です。

スケジュール表

取引の全体像と時間軸を明確にするために作成します。初期接触から最終契約締結、クロージングまでの各段階の予定期間や主要なマイルストーンをまとめるのが一般的です。

デューデリジェンス質問票

「デューデリジェンス質問票」は、買い手が売り手企業の調査を行うための質問事項をまとめた文書です。財務、法務、税務、事業、IT、人事など多岐にわたる領域について詳細な質問が含まれます。売り手は質問票にもとづき、さまざまな資料を準備します。

インフォメーション・メモランダム(IM)

「インフォメーション・メモランダム(IM)」は、売り手企業の詳細情報を体系的にまとめた文章です。会社概要、事業内容、財務状況、市場ポジション、将来展望などが包括的に記載され、買い手が投資判断を行うための基幹資料となります。

M&Aで買い手側のみが準備・使用する資料

M&A取引において、買い手側は取引の意思決定と実行に向けて多くの内部資料を準備します。資料は投資判断の根拠となり、経営陣への説明や社内承認などのために使われます。

フェーズ

資料名

概要

初期接触

M&A検討レポート

案件評価・戦略的意義の社内説明用資料

初期検討

買収スキーム比較表

株式取得、事業譲渡、合弁などの選択肢評価

バリュエーション

企業価値評価レポート

DCF法、マルチプル法などによる評価額算定

DD後

DDレポート

専門家が実施した調査報告書(外注が多い)

社内承認

稟議書・取締役会資料

投資判断の内部承認プロセスに必要な資料

資金計画

買収資金計画書

自己資金、金融機関からの借入、出資など

ROI試算

シナジー評価・ROI分析

投資対効果(収益性、回収年数)の見積もり

統合準備

PMI計画書

買収後の経営統合プラン

M&A検討レポート

買収候補企業の概要や市場分析、買収の戦略的意義をまとめた初期段階の内部資料です。買収検討の背景、目的、候補企業の選定理由などを整理し、M&A戦略が自社の経営方針や中期計画と整合しているかを検証します。

特に重要なのは、買収によって得られる売上増加・コスト削減・市場シェア拡大などの「シナジー効果」の明確化です。また、想定されるリスクや課題についても言及し、対応策を検討することで、経営陣が適切な判断を下せるような内容にすることが重要です。

買収スキーム比較表

「買収スキーム比較表」は、株式取得や事業譲渡、合併など複数の買収手法のメリット・デメリットを比較検討するための資料です。税務上の影響、法的手続きの複雑さ、買収後の統合難易度などの観点から最適な手法を選択するための判断材料となります。

企業価値評価レポート

買収対象企業の適正価値を算定したレポートです。DCF法、類似企業比較法、純資産法など複数の評価手法を用いて算出した結果や、各評価の前提条件、感度分析が含まれます。

DDレポート

「デューデリジェンス(DD)レポート」は、買収対象企業の詳細調査結果をまとめた報告書です。財務、税務、法務、事業、IT、人事などの観点からリスク要因や問題点などを精査し、買収判断に活用します。一般的に買い手が専門家へ依頼して作成してもらいます。

稟議書・取締役会資料

社内の正式な意思決定を得るための申請書類です。稟議書は主に上層部への承認を得るための文書であり、取締役会資料は取締役会での判断に用いられるものです。いずれもM&Aの目的、対象企業の概要、買収価格や妥当性、想定されるシナジー効果などを簡潔に整理してまとめます。

買収資金計画書

M&Aの資金調達方法と返済計画を示した計画書です。自己資金、銀行借入、社債発行などの資金調達手段の組み合わせや、買収後のキャッシュフロー予測にもとづく返済スケジュールが含まれます。

シナジー評価・ROI分析

M&Aによって期待される付加価値と投資回収見通しを示した資料です。コスト削減、収益向上、市場拡大などの定量的シナジーと、技術・ノウハウ獲得などの定性的シナジーを試算し、投資対効果を評価します。

PMI計画書

「PMI(Post Merger Integration)計画書」は、買収後の統合計画を示した資料です。組織統合、システム統合、業務プロセス統合などの具体的なアクションプランとスケジュールなどをまとめます。

M&Aで売り手側のみが準備・提出する資料

売り手側もまた、自社の価値を適切に伝え、スムーズな取引を進めるために多くの資料を準備します。必要な資料を確認しておきましょう。

フェーズ

資料名

概要

初期接触

ノンネーム資料

匿名で概要提示し、買い手の関心を引く

初期検討

会社概要書

沿革、組織、事業概要、強み・特色の説明資料

初期検討〜DD

インフォメーション・メモランダム(IM)

企業詳細情報を盛り込んだ売却提案資料

DD期間

財務諸表(3〜5年分)

貸借対照表、損益計算書、キャッシュフローなど

DD期間

税務申告書(3〜5期)

税務リスクや繰延税金資産の確認

DD期間

契約書一式

継続契約、秘密保持、取引条件などの確認

DD期間

株主名簿・株式異動履歴

株主構成と権利関係の確認

DD期間

許認可証・登録証明

特定業種での事業継続に必要

DD期間

不動産・設備台帳

資産の保有状況、担保の有無など

DD期間

従業員名簿・人件費一覧

人事コスト・雇用条件の精査に活用

DD期間

訴訟・係争案件一覧

潜在リスクの洗い出し

DD期間

顧客リスト(匿名化可)

売上構成や依存度の把握

提案時

売却理由の説明書

買い手に安心感を与える目的での背景開示

提案時

成長戦略・中期経営計画

企業の将来性をアピールするための資料

ノンネーム資料

企業名を伏せた匿名の概要書です。業界、事業規模、収益性などの基本情報のみを記載し、秘密保持契約締結前に買い手候補に提供します。

会社概要書

社名、創業年、資本金、株主構成、役員構成、従業員数、所在地などの基本情報をまとめた資料です。会社の沿革や事業内容の概略も含め、買い手が対象企業の全体像を把握するための基礎資料となります。

インフォメーション・メモランダム(IM)

「インフォメーション・メモランダム」は、企業の詳細情報を包括的にまとめた資料です。事業内容、市場環境、競争優位性、組織体制、財務状況、将来展望などを体系的に記載します。売却価格に大きな影響を与える可能性があるため、M&A専門家の助言をもとに作成することが重要です。

財務諸表(3〜5年分)

貸借対照表、損益計算書、キャッシュフロー計算書などの財務情報を含む資料です。通常3〜5年分を提出し、財務トレンドや収益構造を示します。

税務申告書(3〜5期)

法人税確定申告書や消費税申告書などの税務情報です。財務諸表との整合性確認や、税務リスクの把握に使用されます。

契約書一式

取引先、仕入先、販売先、リース会社、金融機関などとの契約書類をまとめます。特に重要な取引先との契約条件、期間、契約解除条件などは、買収後の事業継続性に直結します。

株主名簿・株式異動履歴

現在の株主構成と過去の株式移動状況を示す資料です。所有権の明確化と適切な株式譲渡手続きの実施に不可欠で、株式に関する制限や優先権の有無などが明記されています。

許認可証・登録証明

事業運営に必要な法的資格を証明する資料です。業種によっては事業継続の前提となる重要な資産であり、買収後も継続して有効かどうか、譲渡制限の有無なども含めて精査されます。

不動産・設備台帳

保有資産の詳細情報を記載した資料で、所在地、面積、取得価額、簿価、建物・設備の状態、修繕履歴、賃貸借状況などが明記されます。資産価値評価や将来的な設備投資計画の策定に活用される資料です。

従業員名簿・人件費一覧

人材構成や労務コストを明記します。役職、年齢、勤続年数、給与水準、福利厚生などの情報が含まれ、買収後の人事戦略や統合計画を立案する際の参考情報となります。

訴訟・係争案件一覧

現在進行中または将来発生する可能性のある法的リスクを示す資料です。訴訟内容、請求額、進捗状況、見通しなどを記載します。

顧客リスト(匿名化可)

顧客リストは、取引先の構成や売上集中度をまとめた資料です。機密性が高いため初期段階では匿名化されることが多く、取引段階に応じて開示範囲を拡大します。

売却理由の説明書

事業売却を決断した背景や目的を記載します。後継者不在、事業戦略の転換、資金需要など、真摯で合理的な理由を説明することで買い手の信頼を獲得し、スムーズな交渉につながります。

また、売却理由の説明書は、買い手にとっての懸念を払拭する資料としての役割も果たします。特に売却理由が「業績不振」の場合は、具体的な改善策や今後の見通しも併せて示すことで、買い手の不安を軽減できるでしょう。ただし、表現方法には注意が必要です。

過度にネガティブな表現や売り急ぎ感を与える内容は避け、ポジティブな面も適切に伝えるバランスの取れた内容にすることが望ましいでしょう。

成長戦略・中期経営計画

将来の事業展望を示した資料です。新商品開発、新市場開拓、設備投資計画などを具体的に提示することで、買収後の成長可能性を示します。

M&Aの資料を作成する際の注意点

M&A交渉における資料の質は、交渉の成否や条件に大きく影響します。ここでは、資料作成時の注意点をご紹介します。

正確かつ最新の情報を記載する

資料には正確かつ最新の情報を記載することが重要です。誤った情報や古いデータは信頼関係の構築を阻害し、後のデューデリジェンスで「サプライズ」が発見されると交渉が難航する恐れがあります。

相手視点を意識した構成にする

資料は相手の関心事や懸念点を予測し、それに応える構成にすることがポイントです。自社の魅力や価値を効果的に伝える内容を心がけましょう。また、相手にとってなじみのない専門用語は避け、シンプルでわかりやすい資料を作成することも重要です。

機密情報の取り扱いに細心の注意を払う

情報開示の段階・範囲を慎重に設計し、適切な秘密保持契約の下で開示を進めましょう。特に競合他社との交渉では、情報管理の重要性がさらに高まります。

VDR(バーチャルデータルーム)を活用する

近年のM&AではVDR(バーチャルデータルーム)を利用するケースも珍しくありません。VDRとは、セキュリティ対策が行われたクラウド上にて、機密性の高いファイルを関係者間で安全に保存・共有できる仮想空間です。特にコロナ禍以降、リモートでのデューデリジェンスが一般的になっていることから、資料の電子化を推進し、VDRを活用することも視野に入れましょう。

まとめ|専門家の支援を受けて、必要資料の準備を始めましょう

M&Aを成功させるためには、適切な資料を用意することが求められます。ただし、資料作成には専門知識が必要となるため、経験豊富なM&Aアドバイザーのサポートが事実上必須です。M&A仲介会社をはじめとする専門家の支援を受けて、必要資料の準備を始めましょう。

CINC Capitalは、M&A仲介協会会員および中小企業庁のM&A登録支援機関として、M&Aのご相談を受け付けております。業界歴10年以上のプロアドバイザーが、お客様の真の利益を追求します。M&Aの相談をご希望の方はお気軽にお問い合わせください。

この記事の監修者

阿部 泰士

CINC Capital取締役執行役員社長

阿部 泰士

リクルートHRマーケティング、外資系製薬メーカーのバクスターを経て、M&A業界へ転身。 日本M&AセンターにてM&Aアドバイザーとして経験を積み、ABNアドバイザーズ(あおぞら銀行100%子会社)では執行役員営業本部長として営業組織を牽引。2024年10月より上場会社CINCの100%子会社設立後、現職に就任。

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