CINC CapitalはCINC(証券コード:4378)のグループ会社です。
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業種
- 公開日2025.04.10
- 更新日2025.04.14
ドラッグストア業界のM&Aの現状と動向|事例も紹介
ドラッグストア業界は、少子高齢化や健康志向の高まりにより需要が大きく伸びています。
一方でドラッグストア同士の競争が激化しています。各企業は規模の拡大や市場シェアの拡大を目的として、積極的にM&A※を行っています。そしてドラッグストア業界のM&Aは今後ますます重要になるでしょう。
しかし、M&Aをはじめて実施する方にとっては、ドラッグストア業界の現状や動向についてまだまだ不明点が多いかもしれません。
本記事ではドラッグストア業界の現状や動向、そしてM&A増加の背景を解説します。また、具体的なドラッグストア業界のM&A事例についてもお伝えします。
※M&A…「Mergers and Acquisitions」の略で、日本語では「合併と買収」です。企業または事業の全部や一部の移転を伴う取引で、一般的には「会社もしくは経営権の取得」を意味します。
目次
ドラッグストア業界の現状や動向
ドラッグストアは、薬の販売だけでなく、化粧品や食品を販売する店舗・業態です。企業によっては雑貨や家電製品を販売するところもあります。
薬の販売はあくまで一部で、日用品で集客を試みるディスカウントストアとして認識している方も多いかもしれません。
ここでは、経済産業省が提供しているデータを基にドラッグストアの現場や動向を解説します。
ドラッグストア業界の売上と店舗数
【出典】経済産業省「商業動態統計調査 ドラッグストア商品別販売額等及び前年(2014年~2023年)」
上記のグラフは経済産業省が提供している「商業動態統計調査」のドラッグストア業界の売上と店舗数をグラフで表現したものです。
ドラッグストア全体の出店数は毎年増加しており、2023年は2014年と比べると、おおよそ6,000店舗増加しています。
商品販売数も新型コロナウィルスが大流行した2020年から2021年を除き、毎年増加しています。数値に置き直すと、3兆4,000万円という売上の伸びです。
都市の中心街(大商圏)に出店するドラッグストアに加え、近年郊外(住宅街)や小商圏に出店するドラッグストアも増えており、出店余地が増えています。
今後さらに需要が高まれば、特に出店数はまだまだ増えることが予測されます。
ドラッグストア業界が伸びる3つの要因
ドラッグストア業界の需要が伸びている要因は以下の3つです。
- 少子高齢化
- 豊富な販売バリエーション
- インバウンド需要の増加
どれも要因として非常に大きなものです。
少子高齢化
【出典】厚生労働省「我が国の人口について 日本の人口の推移」
厚生労働省が発表する「我が国の人口について」によると、高齢化率は2020年で28.6%であったものが、2070年には38.7%になると予想されています。
高齢になると健康上のリスクは上がります。高齢になった人口が多くなるということはそれだけ健康に関わる需要が伸びます。ドラッグストア業界は今後日本にとって、欠かせない業界となりそうです。
豊富な販売バリエーション
近年、ドラッグストアは「ワンストップショッピング」の商業形態を取る企業が増えています。ワンストップショッピングは、1つのお店で多様な商品を購買できる形態を取り入れている企業や施設を指します。
医薬品や健康食品の他に、化粧品や雑貨などを取り扱うことで幅広いニーズに応えつつ、一度の入店で、買い物が完結できるような形が成り立っています。
インバウンド需要の増加
【出典】WorldShoppingBIZ「【図解】訪日外国人数、2024年9月は287万2,200人!9月時点で2023年累計を突破!-日本政府観光局(速報) 年別訪日外国人数推移」
WorldShoppingBIZおよび日本政府観光局の調べによると、新型コロナウイルスが流行する以前は訪日外国人が右肩上がりに増加していました。2020~2022年は大きく減少したものの、2023年から再び増加の兆しが見られます。
外国人観光客による国内化粧品や国内医薬品をはじめとした日本ブランド品の購入の需要が高まっていることから、多くの企業において売上や商品販売数が伸びています。
ドラッグストア業界のM&A増加の背景
ドラッグストア業界は、「競争の激化」によりM&Aが増加しています。
業界の競争が激しくなり、大手企業が市場シェアを拡大するためにM&Aを積極的に行っていると考えられます。
【出典】業界動向サーチ「ドラッグストア業界の動向や現状、ランキング等を研究 ドラッグストア業界売上高&シェアランキング 2022年~2023年」
ドラッグストア各社 2024年 第3四半期決算短信 売上高(億円)一覧
会社名 |
売上(億円) ※1,000万円は四捨五入で表示 |
ウエルシアホールディングス |
9,195億円 |
ツルハホールディングス |
7,741億円 |
マツキヨココカラ&カンパニー |
7,703億円 |
株式会社コスモス薬品 |
7,153億円 |
株式会社サンドラッグ |
5,660億円 |
スギホールディングス |
5,513億円 |
株式会社富士薬品 |
3,730億円 |
クスリのアオキホールディングス |
3,267億円 |
株式会社クリエイトエス・ディー(クリエイトSD) |
3,131億円 |
株式会社カワチ薬品 |
2,158億円 |
ドラッグストア業界上位10社「2,024年第3四半期 決算短信〔日本基準〕(連結) 売上高(億円) 」より作成 ※1,000万円単位は四捨五入で計算
2024年第3四半期 決算短信〔日本基準〕(連結) 売上高(億円)上位10社をもとに、表とグラフを作成しました。
ウエルシアHD※・ツルハHD・マツキヨココカラ&カンパニーの3社が売上高の上位を占めています。
ランキング10位の中にある企業は、コスモス薬品を除いてM&Aを行っています。M&Aの実施は事業規模の拡大とコストの削減が見込めます。
他社も絶えずM&Aを行っているため、積極的なM&Aを行わないとシェアを奪われる状況となっています。そのため、M&Aの実施は今後も更に増えそうです。
なお、コスモス薬品は独自の商圏(小商圏)に店舗を拡大しながら、商品の低額販売の実現・自社推奨品の注力を行うことで売上の上昇・店舗拡大を実現しています。
もし、「自社のシェアや規模を拡大したい」「他社と提携してコスト削減を図りたい」「1社で事業展開をしていくことが難しく、M&Aが必要」と思っている方は、まずは自社がどの程度の価値なのか把握してみましょう。
CINC Capitalでは企業価値シミュレーションというサービスを無料で提供しています。
※HD(ホールディングス)…持株会社のことを指します。持株会社は、他の会社の株を持つことで、その会社の事業活動を支配する会社のことを意味します
調剤薬局業界の現状や動向|M&Aについて
ここではドラッグストアとよく比較されることもある、調剤薬局業界の現状や動向、そして今後の展望について考察します。
調剤薬局業界の現状と動向
ドラッグストア業界同様、少子高齢化による健康需要の増加で、調剤薬局業界も規模や店舗数が拡大しています。
まずは、調剤薬局が併設されることの多い病院や診療所の推移を確認してみます。
【出典】厚生労働省「2022年 医療施設(動態)調査・病院報告の概況 診療所数の年次推移」
厚生労働省の調べによると、2008年から現在にかけて一般診療所※や無床一般診療所は毎年上昇しています。一般診療所は2008年から2022年にかけておよそ5,000施設増加しています。
※(一般)診療所は病床を有さないものまたは19床以下の医療施設を指します。一方で病院…20床以上の病床を有する医療施設を指します。
診療所の増加に伴い、薬の提供数も当然上がるので、その提供数増加に合わせて、調剤薬局も増やしていかなければなりません。【出典】厚生労働省「図表1-2-28 薬局薬剤師数と薬局数の推移 薬局薬剤師数と薬局数の推移」
厚生労働省は薬剤師や薬局の推移についても発表しています。
1970年の統計開始以降、薬剤師の数は毎年上昇しています。薬局についても数が減る年はあっても、令和2年度の薬局数は1970年と比べると、2倍以上の数です。
診療所だけでなく、薬剤師も増加すれば、その薬剤師が勤務できる調剤薬局の数も増やしていかなければなりません。今後、薬剤師の居場所は大きな課題となりそうです。
調剤薬局業界のM&Aについて
薬局や診療所が増加する一方で、少子高齢化に伴う人口減少により薬代や医療費を支払う人が減少しています。
健康需要が伸びてはいるものの、調剤薬局があまり必要とされない立地に調剤薬局がある場合は、維持費や人件費がかかる一方で、売上が少なくなります。
コスト削減や経営のための維持費の確保が必要となり、その手段としてM&Aが必要になるケースが増えそうです。
また、個人で経営する調剤薬局に関しては後継者への引き継ぎも必要です。事業承継の手段としてM&Aの実施も検討しましょう。
全国的にどの業界も事業承継をするケースが増えています。下記の記事で後継者不足や事業承継について解説しています。併せてご覧ください。
【参考】事業承継成功の3つのポイント│後継者不足に悩む企業必見!
【2024年】ドラッグストア業界のM&Aの事例
2024年におけるドラッグストア業界のM&Aの事例をいくつか紹介します。各事例を参考にして、今後のM&Aに役立てましょう。
イオンがオアシスからツルハHDの株式を取得
イオン株式会社は、オアシス・マネジメント(香港)からツルハホールディングスの株式約13.6%を1023億円で取得しました。(2024年2月)
ツルハホールディングスは北日本を中心に店舗展開してきたドラッグストアです。香港のオアシス・マネジメントがツルハの株式を13%取得している状況で、今後の経営がどうなるか騒がれていました。
2024年2月にイオンがツルハの株式約13.6%の取得に成功しました。既に子会社であるウエルシアホールディングスの完全子会社になることを目標に、まずは経営統合のために3社間で資本業務提携を結びました。
今後、イオン・ツルハ・ウエルシアの3社の統合が実現すれば、売上高2兆円規模のドラッグストアグループとなります。M&Aにある売上上昇・シェア拡大の代表的な例となりそうです。
マツキヨココカラ&カンパニーの子会社がAppBrewを子会社化
マツキヨココカラ&カンパニーの子会社である株式会社MCCマネジメントは、株式会社AppBrewの全株式を取得し、子会社化しました。(2024年12月)
株式会社AppBrewでは、デジタルマーケティングツールを活用し、顧客に対してよりパーソナライズドなサービスを提供しています。代表的なサービスに化粧品メディア「リップス(LIPS)」があります。
一方、マツキヨココカラ&カンパニーは日本を代表するドラッグストアの1つで、大商圏や都市を中心に店舗展開するグループ企業です。そのマツキヨココカラ&カンパニーの子会社に、株式会社MCCマネジメントがあります。
MCCマネジメントのデータと基盤と、ユーザーの嗜好データやオンライン上の行動データを蓄積する「リップス」が統合することで、現実とデジタルを融合した新たな顧客体験を創出できると、その点が合致してM&Aに至りました。
スギHDが関西を中心に調剤薬局事業を展開するI&Hを子会社化
スギホールディングスは27日、I&H株式会社を子会社化しました。(2024年9月)
I&H株式会社は、関西を中心に調剤薬局事業を展開する会社です。調剤薬局以外にも「認定栄養 ケア・ステーション」「介護・福祉」などの事業も行っており、幅広い事業展開で地域に貢献しています。
一方、スギホールディングスは、「スギ薬局」という調剤併設型ドラッグストアでスタートしております。セルフケアから医療・服薬・介護・生活支援など、トータルサポートで地域貢献しており、I&Hと親和性があることが分かります。
スギホールディングスの事業の方向性が似ていること、そしてI&Hにはないフォーマットやバックグラウンドを持っていることが魅力となり、のちにM&Aに至りました。
マツモトキヨシグループがケイポートを子会社化
マツキヨココカラ&カンパニーのグループ会社「マツモトキヨシグループ」が、株式会社ケイポートを子会社化しました。(2024年4月)
株式会社ケイポートは東京都内で事業展開をするドラッグストアです。化粧品施設や調剤薬局なども展開しています。化粧品コーナーや調剤薬局をドラッグストアに併設するのではなく、個別営業している点は特徴的です。
一方、マツモトキヨシグループは店舗数・売上ともに日本最大級の、日本を代表するドラッグストアです。
マツモトキヨシグループがグループ競争力とドミナント戦略の一環として、東京を中心に展開するケイポートとM&Aに至りました。
このM&Aにより、マツモトキヨシグループは更なる成長と市場拡大を実現しました。
【2023年以前】ドラッグストア業界のM&Aの事例
ここでは、2024年以前に実施されたM&A事例を紹介します。各事例を参考にして、自社のM&Aに活かしていきましょう。
ウエルシアHDがププレひまわりを子会社化
ウエルシアホールディングスは、株式会社ププレひまわりを子会社化しました。(2021年12月)
株式会社ププレひまわりは広島県を中心にドラッグストアを134店舗展開しています。直近ではWoltや処方箋の予約受付をネットで対応するなど、最新のニーズを意識した経営を行っています。
一方でウエルシアホールディングスは介護や地域医療を意識した調剤併設型ドラッグストアを目指しています。また、「かかりつけ薬局」をコンセプトしており、薬局の要素が強い点が印象的です。
ウエルシアホールディングスは中国・四国地方でのドミナント強化を考えていました。対するププレひまわりは仕入れや物流網を利用し運営の効率化を図りたいと考えていました。
お互いのニーズが合致したことで資本業務提携が実現しました。
クスリのアオキHDがフクヤを子会社化
クスリのアオキホールディングスが株式会社フクヤの株式94.8%で買収し、子会社化しました。(2020年10月)
株式会社フクヤは京都府北部の舞鶴市や宮津市を中心に、複数のスーパーを経営する企業です。一方でクスリのアオキホールディングスは利便性と専門性の強化をコンセプトに、全国展開をするドラッグストアです。
クスリのアオキはフクヤの買収をすることで生鮮食品の調達網を活用し、食品や生鮮食品の強化できると判断し、M&Aをに至りました。
また当時、クスリのアオキは京都府内の店舗も少なかったため、ドミナント強化の目的もあったとされています。
ドラッグストア業界でM&Aを成功させるポイント
ドラッグストア業界は、成長を続ける一方で競争が激化しています。そのため、業界でのM&Aがますます重要な戦略となっています。
ここでは、ドラッグストア業界でM&Aを成功させるためのポイントについて詳しく解説します。
強みと経営課題を整理する
売却・M&Aを実施する前に自社の強みや経営課題を整理することで、円滑な譲渡の実現はもちろん、高い売却益を得ることが期待できます。
- 地域性はあるのか:地域密着型であれば、地域にどれだけ根付いているのか
- サービスは充実しているか:他店にはない独自のサービス展開があるか
- 多くの人材を確保しているか:人手があるか。多くの店舗で人手不足が起こっており、その人手不足の解消につながるか
これらの点に注目することで、買い手企業に譲渡した後もシナジー効果が期待できます。
また併せて自社の課題を整理することで、信頼性のある取引ができるでしょう。
M&A仲介会社の支援を受ける
M&Aを進める際には、M&A仲介会社の支援を受けることが有効です。
M&A仲介会社は、市場動向や適切な買い手の選定に関する専門知識を持っているため、自社だけでは難しい部分を補うことができます。これにより、より円滑で成功率の高い取引が可能になります。
M&A仲介会社の選び方は以下の記事で詳しく解説しています。併せてご覧ください。
【参考】M&Aはどこに相談する?相談先の選び方やメリット・デメリットを解説
まとめ|ドラッグストア業界の需要は年々高まる。戦略的なM&Aが必要
ドラッグストア業界の需要が増加している現状を考慮すると、M&A戦略を強化することがビジネスの成長に欠かせない要素です。
多くの事例が示すように、成功するM&Aは市場シェアの拡大や企業の競争力向上に大いに貢献しています。
本記事をご覧いただき、M&Aを検討している方は以下の点を意識してM&Aに望みましょう。
- 自社の強みと経営課題を整理する
- 地域性はあるのか
- サービスは充実しているか
- 多くの人材を確保しているか
- M&A仲介会社の支援を受ける
CINC CapitalはM&A仲介協会会員および中小企業庁のM&A登録支援機関として、M&Aのご相談を受け付けております。業界歴10年以上のプロアドバイザーが、お客様の真の利益を追求します。M&Aの相談をご希望の方はお気軽にお問い合わせください。
この記事の監修者

CINC Capital取締役執行役員社長
阿部 泰士
リクルートHRマーケティング、外資系製薬メーカーのバクスターを経て、M&A業界へ転身。 日本M&AセンターにてM&Aアドバイザーとして経験を積み、ABNアドバイザーズ(あおぞら銀行100%子会社)では執行役員営業本部長として営業組織を牽引。2024年10月より上場会社CINCの100%子会社設立後、現職に就任。