CINC CapitalはCINC(証券コード:4378)のグループ会社です。
CINC CapitalはCINC(証券コード:4378)のグループ会社です。

業種
- 公開日2025.07.02
- 更新日2025.07.02
電気通信工事業界のM&A動向は?事例や成功のポイントを解説【2025年】
電気通信工事業界でM&Aを検討しているけど、「進め方が分からない」と悩んでいませんか?M&Aは企業の未来を左右する大きな決断だからこそ、正しい情報と業界に即した判断軸が求められます。
本記事では、電気通信工事業界におけるM&Aの最新動向や、M&A成功のためのポイントを詳しく解説します。
目次
電気通信工事業界の市場動向
電気通信工事業界は、5Gや光ファイバー整備の進展により、市場規模が拡大傾向にあります。
2022年度の完成工事高は約3.6兆円で、前年比4%の増加を記録しました。
主要な工事はNTTグループやKDDIといった通信キャリアからの受注が中心で、コムシスホールディングス、協和エクシオ、ミライトホールディングスなど、通信インフラ構築を多く担う独立系の大手企業が上位を占めています。
全国には地域密着型の中小企業も多数存在しており、業界全体の施工体制を支えています。今後はIoTや6Gを見据えた通信環境の高度化に対応するため、インフラ投資の継続が見込まれています。
電気通信工事業界が抱えている課題
電気通信工事業界は、市場としては拡大傾向にある一方で、構造的な課題を複数抱えています。特に深刻なのは、「人材の高齢化と人手不足」「業務効率化の遅れ」「収益性の低下を招く多重下請け構造」の3点です。
本章では、それぞれの課題が業界に与える影響と背景について詳しく解説します。
人手不足と技術者の高齢化
電気通信工事業界では、技術者の高齢化と若手人材の不足が深刻な課題となっています。特に中小企業では、後継者がいないまま経営者が高齢を迎えるケースが増えており、事業を継続できないまま廃業に至る例も少なくありません。
また、現場で活躍してきた熟練の技術者たちが引退する一方で、そのノウハウを受け継ぐ若年層が十分に確保されていないのです。この状況が、業界の持続性に大きな影響を与えています。
DXの遅れによる生産性課題
電気通信工事業界では、業務のデジタル化が進まず、生産性の低下が課題となっています。多くの企業が紙管理や口頭連絡に依存し、情報共有に時間がかかっているのです。
一部ではクラウド型管理ツールの導入で効率化が進んでいますが、全体には広がっておらず、中小企業では導入コストやIT人材不足が障壁となっています。
多重下請け構造と価格競争の激化
電気通信工事業界では、価格競争の激化と多重下請け構造により、末端企業の利益が圧迫されています。孫請けなどに細分化された案件では十分な利益が得られず、資材費や人件費が上昇する中でも元請けからのコスト削減要請が続いています。
この構造が常態化すれば、施工品質や人材育成への投資が難しくなり、業界全体の健全な成長が阻害される恐れがあるでしょう。
電気通信工事業界のM&A最新動向(2025年)
2025年現在、電気通信工事業界ではM&Aの動きが見られるようになっています。背景には、高齢化にともなう事業承継問題や、慢性的な人材不足、そして新規分野への進出を図る企業のニーズがあります。
本章では主に3つの観点から詳しく解説します。
人材確保・承継目的のM&Aが加速
電気通信工事業界では、人手不足や経営者の高齢化を背景に、事業承継を目的としたM&Aが広がっています。
たとえば、電気工事大手の中電工が、首都圏で事業を展開する杉山管工設備をM&Aにより子会社化した事例があります。この買収により、中電工は管工事分野のノウハウを取り込みつつ、首都圏における営業基盤の強化を実現しました。
後継者不在による廃業や人材不足への対策として、M&Aが有効な手段として注目されています。特に地方の中小企業では、熟練技術者の引退と若手不足が深刻です。
大手による地方・中堅企業の買収が活発化
電気通信工事業界では、大手企業による地方や中堅企業の買収が活発化しています。背景には、施工エリアの拡大や人材・リソース確保の狙いがあります。
たとえば、業界大手のきんでんが白馬ウインドファームおよび白滝山ウインドファームをM&Aにより傘下に収めた事例があります。同社は、東京オリンピック後の需要減少を見越し、新たな収益源として風力発電事業への参入を図りました。地方の中堅企業は地域のネットワークやノウハウを持ち、魅力的な買収対象となっています。
異業種からの参入・多角化型M&Aの台頭
電気通信工事業界では、異業種からの参入や多角化を目的としたM&Aが増えています。特にIT企業やセキュリティ事業者が、通信インフラとの親和性を活かして工事会社を買収し、シナジー効果を狙う動きが活発です。
2021年2月、技術者派遣やシステム開発受託などを手がけるアウトソーシングテクノロジーは、電気工事・電気通信工事を中心に展開するアイテックの全株式を取得し、グループに迎え入れました。
今回のM&Aにより、アウトソーシングテクノロジーが保有する人材や教育インフラと、アイテックの幅広い顧客ネットワークを掛け合わせることで、グループ全体の成長を促進するとともに、事業領域のさらなる多様化を進める狙いがあります。
電気通信工事業界でM&Aを成功させるためのポイント
電気通信工事業界におけるM&Aは、事業承継や人材確保の手段として活用されています。しかし、業界特有の構造や実務上の課題に配慮しなければ、期待した効果を得られないケースも少なくありません。
本章では、M&Aを成功させるための5つのポイントについて解説していきます。
現場ノウハウと管理手法の継承
電気通信工事は、施工品質・安全管理・納期厳守が求められる分野であり、属人的なノウハウの継承が企業の競争力を大きく左右します。特に中小企業では、熟練技術者に依存した作業手法が一般的であり、M&A後に技術が途絶えるリスクも指摘されています。
こうしたリスクを回避するには、引き継ぎ期間を十分に設け、現場ルールや施工手順をマニュアル化することが重要です。
従業員の信頼獲得と人材流出の防止
M&Aは経営陣の変更を伴うため、従業員に不安を与える可能性があります。特に、従来の社風や待遇が維持されるのか不明確なままだと、退職希望者が増えるリスクが高まります。
そこで重要になるのが、M&Aに至る背景や今後の事業方針を、現場社員と丁寧に共有することです。雇用条件の維持や評価制度の説明など、誠実な対応を重ねることで、信頼が生まれ人材の定着につながるでしょう。
有資格者・許認可の維持と確認
電気通信工事業の継続には、施工管理技士などの国家資格者の在籍が必要です。M&Aで資格者が退職すると営業許可の維持が困難になるため、事前に人数や在職状況を確認することが重要です。
また、建設業許可の名義変更などの手続きも必要なため、準備を怠ると業務停止のリスクがあるので注意しましょう。
主要顧客・元請けとの関係維持
電気通信工事業では、大手通信会社や官公庁との取引関係が収益の大部分を占める企業も少なくありません。M&Aによって経営体制が変わることで、元請や重要顧客からの信頼が一時的に揺らぐ可能性があります。
そのため、M&A後も営業・施工・品質の体制が維持されることを、早い段階で元請や主要顧客に説明し、安心感を与える必要があります。
PMI(統合)でのシナジー最大化
電気通信工事業界では、施工管理や工程設計、設備の標準化といった業務が多岐に渡るため、統合による業務効率化とリソース最適化は欠かせません。
財務・人事・ITシステムの統一はもちろん、現場レベルでの教育・文化の融合にも配慮が必要です。事前に統合計画を設計し、スピーディーかつ丁寧に推進することが、M&A成功に繋がるでしょう。
電気通信工事業界のM&A事例
セキュアによるジェイ・ティー・エヌのM&A
株式会社セキュアは、2024年1月5日付で、電気・電気通信工事を手がける株式会社ジェイ・ティー・エヌの全株式を取得し、同社を子会社化しました。
セキュアは物理セキュリティ領域において、ハードとソフトを組み合わせた監視カメラや入退室管理システムの提供を展開。
一方、ジェイ・ティー・エヌは神奈川県を拠点に豊富な施工ノウハウと資格者を有し、現場力に強みを持っています。本件は、セキュアが直面していた施工人材不足を補うとともに、技術的専門性の獲得によって対応力の強化と競争力向上を狙ったものです。両社の連携により、今後の拡大が見込まれる物理セキュリティ市場での優位性を確保する戦略的M&Aといえます。
【出典】株式会社セキュア「セキュアが株式会社ジェイ・ティー・エヌの株式を取得し、子会社化」
エクシオグループによる北日本通信のM&A
エクシオグループ株式会社は、2023年11月、岩手県盛岡市に本社を置く北日本通信株式会社の全株式を取得し、同社を連結子会社化しました。
北日本通信は、通信・電気・土木分野における公共工事を中心に事業を展開しており、地域密着型の実績と技術力を有しています。
エクシオグループは、これまでICTや都市インフラに強みを持っており、今回の買収を通じて東北地方におけるインフラ事業の基盤強化と事業領域の拡充を図る狙いです。
地方の専門企業との連携により、地域課題の解決力を高め、全国的な展開にも弾みをつける戦略的なM&Aといえます。
【出典】エクシオグループ株式会社「北日本通信株式会社の株式の取得に関するお知らせ」
きんでんによるフジクラエンジニアリングのM&A
株式会社きんでんは、2021年7月30日付で株式会社フジクラエンジニアリングの全株式を取得し、子会社化しました。フジクラエンジニアリングは電力・通信エンジニアリングを手がける企業で、設計から施工まで一貫対応できる体制と豊富な実績を有しています。
本件は、きんでんが掲げる中期経営計画「Sustainable Growth 2026」の一環で、再生可能エネルギーや次世代通信インフラ分野への事業拡大を目指す戦略的M&Aです。
両社の経営資源を統合することで施工力や技術力の強化を図り、インフラ分野における持続的成長を目指す動きといえます。社会インフラの高度化とカーボンニュートラルへの対応を見据えた事業基盤の強化が狙いです。
【出典】株式会社きんでん「株式会社フジクラエンジニアリングの株式取得(子会社化)に関するお知らせ」
まとめ|電気通信工事業界のM&A動向を押さえてM&Aを成功させましょう
電気通信工事業界では、人材不足や高齢化、拠点確保、異業種の参入などを背景に、M&Aの活用が広がっています。
現場ノウハウの継承や許認可対応など、業界特有の実務に配慮した戦略が求められます。M&A成功させるためのポイントは、統合後まで見据えた準備と計画です。
CINC Capitalは、M&A仲介協会会員および中小企業庁のM&A登録支援機関として、M&Aのご相談を受け付けております。業界歴10年以上のプロアドバイザーが、お客様の真の利益を追求します。M&Aの相談をご希望の方はお気軽にお問い合わせください。
この記事の監修者

CINC Capital取締役執行役員社長
阿部 泰士
リクルートHRマーケティング、外資系製薬メーカーのバクスターを経て、M&A業界へ転身。 日本M&AセンターにてM&Aアドバイザーとして経験を積み、ABNアドバイザーズ(あおぞら銀行100%子会社)では執行役員営業本部長として営業組織を牽引。2024年10月より上場会社CINCの100%子会社設立後、現職に就任。