CINC CapitalはCINC(証券コード:4378)のグループ会社です。
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- 公開日2025.07.02
- 更新日2025.07.02
段ボール業界のM&A動向は?事例や成功のポイントを解説【2025年】
段ボール業界の今後の経営に不安を感じていませんか?「原材料費が高騰している」「人材確保が難しい」など、業界を取り巻く課題は年々複雑化しています。
本記事では、段ボール業界における市場動向、直面している課題などを詳しく解説しますので、是非最後までご覧ください。
目次
段ボール業界の市場動向
段ボール業界は、国内生産量ベースで2022年に約146億平方メートルを記録しており、これは2002年と比較して約10%増加しています。
コロナ禍で一時的な落ち込みはあったものの、EC市場の拡大や宅配便の需要増に支えられ、近年は緩やかな回復傾向を示しています。
市場の中心は、レンゴー株式会社と王子ホールディングスの二強体制で、レンゴーの段ボール関連売上は業界最大手です。
これらの大手企業が市場の多くを占めており、中堅・中小企業との統合・再編が進んでいます。
段ボール業界が抱えている課題
段ボール業界は安定した需要が見込まれる一方で、構造的な課題が山積しています。本章では、業界が現在直面している三つの主要課題について解説します。
原材料やエネルギー価格の高騰によるコスト圧迫
段ボール業界では、原材料およびエネルギー価格の高騰が大きなコスト負担となっています。業界の利益率を圧迫するだけでなく、価格転嫁による顧客離れのリスクが生じるでしょう。
例えば、主原料である古紙の国際価格は、中国や東南アジアの需要拡大により上昇しています。加えて、製造に必要なガス・重油・電力といったエネルギーの調達コストも2022年以降に急騰しました。
人手不足と作業員の高齢化
製造現場における人材不足は、段ボール業界の深刻な課題です。特に中小の工場では作業員の高齢化が進んでおり、技能継承の停滞と生産効率の低下が懸念されています。
その背景には、労働人口の減少や3K(きつい・汚い・危険)職場のイメージがあり、若年層の採用が難航している現状があります。
これに対応するため、多くの企業がDX(デジタルトランスフォーメーション)や自動化設備の導入を加速させています。
脱炭素や環境配慮への対応プレッシャー
環境配慮に対する社会的要請が急速に高まっている現在、段ボール業界にもその影響は広がっています。
具体的には、製造過程におけるCO₂排出量の削減や、水使用量・エネルギー消費量の最小化が求められています。段ボールはリサイクル率が95%を超える環境負荷の低い素材とされていますが、その一方で製造時のボイラー燃料や乾燥工程などで多くのエネルギーを消費します。
段ボール業界のM&A最新動向(2025年)
段ボール業界では、事業承継や地域戦略、海外展開といったさまざまな目的のM&A事例が見られるようになっています。
本章では、主に三つの動向に着目し、実際の企業の動きや背景を交えて紹介します。
大手による中小企業の買収と地域シェアの拡大
段ボール業界では、大手による中小企業の買収が進んでいます。地域密着の企業を取り込むことで、販路やネットワークを効率的に拡大できるためです。
たとえば、レンゴーは2023年に埼玉の⽇藤段ボールを子会社化し、関東での供給力を強化しました。トーモクも長野などでM&Aを実施しており、物流効率や販路再構築を目的とした地域戦略が加速しています。
後継者不足を背景とした事業承継型M&Aの増加
中小段ボール企業では、後継者不足を理由に大手への売却が増えています。経営者の高齢化が進む中、廃業を避ける現実的な手段としてM&Aが選ばれています。
たとえば、大王製紙グループは2022年に新潟の吉沢工業を子会社化しました。M&Aは企業再編だけでなく、事業継続の手段としても活用されており、この動きは今後も続く見通しです。
海外進出やアジア戦略としてのM&A活用
段ボール業界の大手企業は、国内市場の成熟を背景に、東南アジアやインドなどの成長市場に活路を見出す動きを強めています。その理由は、人口増加とEC市場の成長が続く海外市場では、段ボール需要が今後も拡大すると見込まれているためです。
具体例として、レンゴー株式会社は2023年11月、インドの段ボールメーカー「Velvin Containers Private Limited」の株式を取得し、合弁会社の設立に踏み切りました。この取り組みにより、同社は2024年に現地で新工場を稼働させ、インド国内での本格展開をスタートさせる予定です。
段ボール業界でM&Aを成功させるためのポイント
段ボール業界におけるM&Aを成功に導くためには、製造設備の統合や環境対応、物流拠点の最適化、明確な戦略設計などの実施が重要です。
本章では、それぞれのポイントを詳しく解説していきます。
製造設備と技術の統合による生産効率の向上
M&A後の製造設備や技術の統合は、生産効率の向上に寄与します。例えば、双方の工場設備や生産ラインを統合し、稼働率の最適化を行うことで、無駄なコストを削減できます。
また、技術導入により製品品質が向上することで、クレーム率の減少につながるでしょう。
環境対応力の統一とSDGs推進
環境配慮は企業価値を高める要素の一つです。M&A後は、グループ全体での環境基準を明確化し、リサイクル率やCO2削減目標の共有が重要です。
また、サステナビリティ対応を強化するために、M&Aを活用する企業が増えています。社会・環境課題への対応には新たな能力が求められ、それを補う手段としてM&Aが選ばれているのです。
工場・物流拠点の再配置と最適化
段ボールは輸送効率が重要であるため、地域ごとの拠点配置を見直し、物流コスト削減を狙った最適化が必要です。
M&Aを通じて生産拠点や物流ネットワークの統合を行えば、設備や人員の重複なども避けられるようになり、全体の運営コストの削減も達成できるでしょう。
明確な戦略とシナジー設計
M&Aは単なる拡大ではなく、企業戦略に基づいた明確な目的が必要です。技術補完、地域展開、人材確保など、具体的なシナジー設計を行うことが成功において重要になります。
M&Aによるシナジー効果とは、2社の統合で売上増やコスト削減などの価値が生まれることを指します。
徹底したデューデリジェンスと財務・法務リスクの洗い出し
買収先の財務・法務・環境リスクの調査はM&A成功に直結します。特に設備老朽化や法令順守、労働環境などの点を丁寧に確認することが重要です。
デューデリジェンスは、買収先の財務や法務などを専門家が調査し、適正な取引とM&A後のトラブル回避に役立つ重要なプロセスです。
段ボール業界のM&A事例
トーモクによる大和段ボールのM&A
株式会社トーモクは、2024年9月30日付で大和段ボール株式会社の全株式を取得し、同社を子会社化しました。
大和段ボールは1953年設立の段ボール・シート専業メーカーで、千葉県野田市に拠点を置き、首都圏近郊における物流・包装需要に対応してきた企業です。
今回のM&Aにより、トーモクは埼玉・千葉・茨城エリアでのグループ内の連携を強化し、生産・配送などのオペレーション効率を高めることを狙っています。
地域密着型の製造・供給体制を整えることで、物流費削減や納期短縮、サービス品質の向上が期待され、グループ全体の競争力強化に寄与する戦略的な買収といえます。
【出典】株式会社トーモク「大和段ボール株式会社の株式取得(子会社化)に関するお知らせ」
レンゴーによる柴田段ボールのM&A
レンゴー株式会社は、2024年7月、愛知県豊橋市に本社を置く株式会社柴田段ボールの全株式を取得し、同社を完全子会社化しました。柴田段ボールは1962年創業の段ボールケースメーカーで、地域密着型の営業基盤と長年の実績を有しています。
今回の買収により、レンゴーは愛知県東部および周辺エリアでの供給体制を強化し、自社の直営工場やグループ会社との連携を促進。生産・物流の最適化とサービス品質の向上を図り、段ボール事業のさらなる拡充を目指しています。
地域戦略とグループ一体運営を重視した、堅実かつ着実なM&Aといえます。
【出典】レンゴー株式会社「株式会社柴田段ボールの子会社化について」
旭段ボールによる城西・城西パックのM&A
ダイナパック株式会社は、2024年7月1日付で連結子会社同士の再編として、旭段ボール株式会社が同じく連結子会社の城西パック株式会社を吸収合併しました。
城西パックはこれまで西東京市に本社工場を構えていましたが、合併後は「旭段ボール 城西物流センター」として再編され、物流および軽作業拠点として機能することになります。
製造機能は旭段ボールの厚木工場に集約され、より効率的な生産・物流体制の構築が図られています。グループ内の経営資源の最適化と、拠点機能の明確化を目的とした今回の吸収合併は、運営コストの削減とサービス品質の向上を狙った合理的な組織再編といえます。
【出典】ダイナパック株式会社「旭段ボール株式会社による城西パック株式会社の吸収合併のお知らせ」
まとめ|段ボール業界のM&A動向を押さえてM&Aを成功させましょう
段ボール業界では、原材料高騰や人手不足、環境対応の課題を背景に、M&Aの重要性が高まっています。
地域拡大や事業承継、海外展開など、目的に応じたM&Aが加速するなか、物流や設備の統合でシナジーを最大化できれば、成長のチャンスになります。
CINC Capitalは、M&A仲介協会会員および中小企業庁のM&A登録支援機関として、M&Aのご相談を受け付けております。業界歴10年以上のプロアドバイザーが、お客様の真の利益を追求します。M&Aの相談をご希望の方はお気軽にお問い合わせください。
この記事の監修者

CINC Capital取締役執行役員社長
阿部 泰士
リクルートHRマーケティング、外資系製薬メーカーのバクスターを経て、M&A業界へ転身。 日本M&AセンターにてM&Aアドバイザーとして経験を積み、ABNアドバイザーズ(あおぞら銀行100%子会社)では執行役員営業本部長として営業組織を牽引。2024年10月より上場会社CINCの100%子会社設立後、現職に就任。