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商社業界のM&A動向(2025年)メリットデメリット/事例/成功のポイントを解説

業種

  • 公開日2025.04.07
  • 更新日2025.04.09

商社業界のM&A動向(2025年)メリットデメリット/事例/成功のポイントを解説

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商社業界では、食品卸や医療機器の販売、製造業など幅広い分野での事業承継や会社売却の案件が注目されています。

M&A成約事例を見ると大手企業から中小企業まで多様なニーズが存在していますが、強みを活かした交渉や適切な手法の選択が成功の鍵といえるでしょう。

この記事では、商社業界の特徴を踏まえながら、M&Aのメリットやデメリット、具体的な事例を解説します。未来のビジネスチャンスを掴むために、ぜひお読みください。

商社業界の市場動向

商社業界では、三菱商事や三井物産などの総合商社が業界を牽引する一方、専門商社も医薬品や食品卸など特定分野で高い売上を記録しています。しかし、国内市場が飽和状態にあることから、商社のトレーディング事業は縮小傾向です。

また、ECサイトの普及によりメーカーと小売業者の直接取引が増えたことも業界に影響を及ぼしています。商社業界は、新たな事業モデルや取引方法への適応が求められています。

商社業界が抱える課題

商社業界が直面する課題は多岐にわたります。資源関連事業と非資源関連事業のバランスの見直し、デジタルトランスフォーメーション(DX)の推進など、重要なテーマについて見ていきましょう。

資源関連事業と非資源関連事業のバランス

総合商社はこれまで資源関連事業を中心に利益を上げてきましたが、近年の資源価格の変動は業績に大きな影響を及ぼしています。特に2020年の原油や天然ガスの価格下落は、多くの商社にとって厳しい状況を生み出しました。

一方で、非資源分野に経営資源を注力した商社は比較的影響を軽減でき、業績も良好だったといいます。このような背景から、資源と非資源の事業ポートフォリオをどのように最適化するかが、今後の商社の成長を左右する鍵となっています。

DX(デジタルトランスフォーメーション)の強化

デジタル技術の活用は、商社業界の競争力向上において欠かせない要素となっています。例えば、「伊藤忠商事株式会社」がコンビニ大手の「ファミリーマート」で実施している広告ビジネスの強化やデータ活用はその好例です。

店舗にサイネージを設置し、アプリと連動させた個別広告配信を行うことで、顧客の興味や嗜好に合わせたマーケティングを実現しています。こうしたデジタル化の取り組みは、商社の新たな収益源として注目されています。

【出典】伊藤忠商事株式会社「ファミリーマート事業の進化」

事業投資から事業経営への移行

従来の商社は事業投資を主な活動としてきましたが、近年では投資先の事業経営に積極的に関与する動きが見られます。単なる投資先としての関係を超えて経営に携わることで、商社としての強みを活かしながら新たな価値を創出する取り組みが広がっています。

商社のM&A最新動向(2025年)

商社業界では、M&Aがますます活発化しています。特に、同業者や関連分野のメーカー間での取引が盛んです。ここでは、2025年時点での商社のM&A動向について解説します。

大手商社への傘下入りが目的の売却

経営基盤の強化を目指し、大手商社への傘下入りを目的とした売却が増加しているといわれています。特に中小規模の専門商社において、大手の総合商社のネットワークや資金力を活用することで、生き残りを図るケースが目立ちます。

このような取引は、買収側の商社にとっても市場シェアの拡大や多角的な事業展開につながるのがメリットです。

サプライチェーンにおける川上・川下企業の買収

商社業界では、サプライチェーン全体を効率化するための川上・川下企業の買収が重要な戦略となっています。

例えば、メーカーによる専門商社の買収で、原材料調達から販売まで一貫して行えるようになるケースがあります。また、専門商社が小売りやサービス業といった川下企業を買収し、消費者に近い視点での事業運営を強化する動きもあるようです。

資本提携・業務提携による事業の拡大

M&Aだけでなく、資本提携や業務提携を通じた協業も活発化しています。同業他社や関連企業との提携により、新たな市場への参入や既存事業の強化を目指す商社も見られます。

完全な買収に比べてリスクを抑えつつ、相互に補完的な関係を築けるのがメリットです。

海外のエネルギー分野への新規参入

エネルギー価格の変動が続く中で、商社は海外市場への新規参入を進めています。エネルギー分野における収益基盤を多様化し、資源価格の変動リスクを軽減することを目指しているのです。

例えば、特定の地域での電力事業や天然ガスプロジェクトへの参入が具体例として挙げられます。

商社がM&Aをするメリット

商社におけるM&Aには、売り手・買い手に多くのメリットをもたらします。ここでは、商社がM&Aを行う際の主な利点について解説します。

【売り手側】事業の承継

後継者不足に悩む売り手側の商社にとって、M&Aは事業を存続させ、自社の商権を価値化する重要な手段です。第三者への事業引き継ぎにより、従業員の雇用を維持しつつ、会社の成長を中長期的に図る道が開かれます。

特に、大手商社や資本力のある企業に引き継ぐことで、仕入先ネットワークを活用し、経営基盤が強化される点も大きな魅力です。

【売り手側】財務基盤の安定

売り手側がM&Aを通じて大手商社のグループ傘下に入ることで、財務基盤が安定するだけでなく、取引先の信用度向上や資金調達力の強化も期待できます。

また、異業種との提携による資本注入やノウハウ共有を活かし、新たな事業分野への展開を実現するケースも増えています。

【買い手側】取引先の拡大

取引ネットワークの拡充は、買い手側の商社にとっての重要な目的の一つです。M&Aを通じて、買収先企業の取引先や市場を自社のネットワークに取り込むことで、さらなる事業拡大が見込まれます。

特に、地域に根ざした商社を買収することで、新規エリアでの事業展開を迅速に進めることが可能です。

【買い手側】特定商材分野の強化

買い手側が自社の得意分野をより強化するために、特定の商材分野に特化した商社を買収する事例も多く見られます。例えば、非資源分野における事業強化や、中期経営目標における重点分野を拡大するために、専門商社を取り込む例があります。

【買い手側】消費者ニーズに立脚した事業展開

消費者に近い立場の商社を買収することで、市場ニーズに迅速に対応できる体制を整え、競争力を強化することが可能です。

例えば、メーカーや川上企業が川下に位置する商社を買収することで、消費者ニーズを事業に反映しやすい一気通貫体制を構築するケースがあります。

商社がM&Aをするデメリット

商社にとってM&Aは多くのメリットがある一方で、デメリットやリスクも存在します。ここでは、商社がM&Aを行う際に直面し得る主なデメリットについて解説します。

【売り手側・買い手側】統合の難しさ

M&A後の企業統合は、時間と労力を要するプロセスです。特に、異なる企業文化や経営スタイルを持つ企業同士が統合を進める場合、相互理解を深め、組織を一体化するための取り組みが必要となります。

例えば、大手商社と地域密着型の専門商社では、経営方針や業務の進め方が大きく異なることもあるでしょう。こうした違いを克服するためには、双方の文化を尊重しながら新たな価値観を構築する必要がありますが、相当な時間と努力を要する場合があります。

統合プロセスがスムーズに進まない場合、従業員の士気低下や業務効率の低下、仕入先との関係変化、商権喪失といった問題を引き起こすリスクもあります。

【買い手側】市場環境の変動リスク

M&A後に市場環境が変動することで、買い手側が当初期待していた成果が得られないケースがあります。

例えば、買収した商材分野が市場縮小の影響を受けたり、競争が激化したりすることで、収益が減少する可能性があります。

また、原材料価格や為替の変動が、事業収益に大きく影響を及ぼすケースもあるでしょう。このため、M&Aを行う際には市場環境の慎重な分析とリスクマネジメントが不可欠です。

商社がM&Aを成功させるためのポイント

売り手側の商社がM&Aを成功させるためには、買い手企業のニーズを的確に捉え、シナジー効果や経営資源などの魅力を十分にアピールすることが重要です。

ここでは、売り手側の商社がM&Aを成功させるために押さえておくべき具体的なポイントを解説します。

マイナス要素を減らす

法務、労務、会計上の問題は、買い手企業がもっとも懸念するポイントです。未払い残業代や訴訟リスク、税務上の問題などが存在すると企業評価が低くなり、破談となる可能性もあります。マイナス要素を事前に洗い出し、解消しておくことが重要です。

特に、プレデューデリジェンス(プレDD)によって潜在的なリスクを早期に発見し、買い手企業に安心感を与える準備を進めることが求められます。取引がスムーズに進むだけでなく、売却価格の上昇にもつながるでしょう。

買い手側の事業とのシナジー効果をアピールする

買い手企業が商社を買収する主な目的の一つは、シナジー効果による事業拡大や効率化です。買い手企業が他業種のメーカーであれば、商社との提携によって原材料調達の効率化やコスト削減を実現できます。

また、同業の商社が買い手の場合、相互送客やクロスセルにより売上を拡大できる可能性があります。具体的なデータやシナリオを示してシナジー効果をアピールすることで、買い手企業にとっての魅力を最大化できるでしょう。

経営資源をアピールする

魅力的で希少性の高い経営資源を持つことは、商社が高い評価を受けるための大きなポイントです。特に、専門性の高い知識や取引ネットワーク、独自の商品ラインナップなどは、他社には真似できない価値として買い手企業にアピールできます。

さらに、これらの資源の価値を買い手企業に正確に伝えるため、客観的なデータや具体的な実績を提示することが重要です。

デューデリジェンスでは、「販売先・仕入先との契約関係」「独占販売権の承継」「在庫評価」「為替リスクヘッジ状況」などがチェックポイントとなります。買い手企業は経営資源を評価しやすくなり、取引条件の向上が期待できます。

事業の業績や市場での成長をアピールする

買い手企業は、売り手企業の現状の業績だけでなく、将来的な成長性を重視します。商社が属する市場が成長している場合や、売上や利益の伸び率が高い場合は、積極的にアピールすることが必要です。

営業利益の成長率や市場でのシェア拡大を具体的なデータで示すことで、買い手企業に今後の成長性を納得してもらえる可能性が高まります。

また、市場トレンドや業界動向を踏まえた将来の成長シナリオを提示することで、買い手企業からの評価をさらに引き上げられるでしょう。

商社のM&A事例

株式会社GSIクレオスによる桜物産株式会社のM&A

2022年4月1日、株式会社GSIクレオス(東京都)は、仙台市を拠点とする包装資材商社桜物産株式会社の全株式を取得し、完全子会社化したと発表しました。

桜物産は、1985年の創業以来、印刷加工会社や食品製造メーカー向けに包装用フィルパッケージ資材を提供し、東北地区で高い信頼を築いてきました。GSIクレオスとは長年取引があり、今回の買収により、同社の強みを活かしながら東北・北海道市場におけるフィルム製品の販売を強化する狙いがあります。

また、GSIクレオスは、環境保全型ビジネスにも注力しており、生分解性プラスチック**「マタビー」や防錆フィルム「バイオコア」**などの機能性フィルムの拡販を推進予定です。桜物産の地域密着型の営業力を活用し、より迅速な提案・販売を実現しながら、市場での競争力を高める方針です。

本買収により、GSIクレオスグループはフィルム製品事業の拡大を加速し、持続可能な包装資材の普及に貢献することが期待されます。

【出典】株式会社GSIクレオス「桜物産株式会社の株式取得(完全子会社化)に関するお知らせ」

伊藤忠商事株式会社によるほけんの窓口グループ株式会社のM&A

2019年10月29日、伊藤忠商事株式会社(東京都港区)は、来店型保険ショップを運営する**ほけんの窓口グループ株式会社(東京都千代田区)の株式を追加取得し、持株比率を57.7%**まで引き上げ、連結子会社化したと発表しました。

ほけんの窓口は、全国約740店舗を展開する業界最大手で、生命保険や損害保険の相談・販売を行う来店型保険ショップ事業を展開しています。伊藤忠商事は2014年に資本・業務提携を開始し、段階的に株式を取得。今回の連結子会社化により、さらなる経営支援を強化し、事業の拡大を図る方針です。

本買収により、伊藤忠商事はほけんの窓口の顧客基盤とブランド力を活用し、デジタル技術の導入や**インシュアテック(InsurTech)**の活用を推進。また、同社の国内外ネットワークを活かし、新たな保険商品の開発やリテール分野でのシナジー創出を目指します。

近年、消費者の保険選びにおいて中立的な比較サービスの需要が高まる中、本件は総合商社が金融リテール分野へ本格参入する戦略的M&Aとして注目されました。

【出典】伊藤忠商事株式会社「ほけんの窓口グループ株式会社の連結子会社化について」

任天堂株式会社によるジェスネット株式会社のM&A

2016年8月25日、任天堂株式会社(京都府)は、ビデオゲーム卸売業を展開するジェスネット株式会社(北海道札幌市)の株式を取得し、連結子会社化することを発表した。同時に、ジェスネットが株式会社アジオカ(愛知県)のビデオゲーム卸事業を譲り受けることも決定した。

ジェスネットおよびアジオカは、長年にわたり任天堂製品の販売を担う国内有数のゲーム機専門商社として、全国的な流通ネットワークを築いてきた。本件のM&Aにより、任天堂は開発から流通までを一貫して管理できる体制を構築し、製品供給の最適化と販売戦略の強化を図る狙いがある。

本件では、任天堂がジェスネットの株式70%を取得し、残り15%ずつをJホールディングスとアジオカが保有する形となった。また、アジオカのビデオゲーム卸事業を約10億円で譲受し、ジェスネットを通じて流通網を拡大。これにより、全国的な販売網を自社グループ内で統括できる体制を整えた。

ゲーム業界では、流通の効率化が重要課題となっている。本件は、メーカーによる直接的な流通網の管理を強化する戦略的M&Aとして注目され、今後、任天堂はグループ内での物流最適化を進め、さらなる市場競争力の向上を目指すとみられる。

【出典】任天堂株式会社「ジェスネット株式会社の子会社化及び株式会社アジオカからの事業譲受に関するお知らせ」

まとめ|商社のM&A動向を押さえてM&Aを成功させましょう

商社におけるM&Aは、事業拡大や効率化を図るための重要な手段となっています。成功させるためには、買い手企業が求めるシナジー効果や経営資源の魅力を十分にアピールすることが必要です。

また、法務や労務上のリスクを最小限に抑え、業績や市場の成長性を具体的なデータで示すことで、買い手企業からの評価を高めることができます。事前の準備と買い手企業のニーズを的確に捉えた戦略的なアプローチを徹底し、M&Aを成功に導きましょう。

CINC Capitalは、M&A仲介協会会員および中小企業庁のM&A登録支援機関として、M&Aのご相談を受け付けております。業界歴10年以上のプロアドバイザーが、お客様の真の利益を追求します。M&Aの相談をご希望の方はお気軽にお問い合わせください。

この記事の監修者

阿部 泰士

CINC Capital取締役執行役員社長

阿部 泰士

リクルートHRマーケティング、外資系製薬メーカーのバクスターを経て、M&A業界へ転身。 日本M&AセンターにてM&Aアドバイザーとして経験を積み、ABNアドバイザーズ(あおぞら銀行100%子会社)では執行役員営業本部長として営業組織を牽引。2024年10月より上場会社CINCの100%子会社設立後、現職に就任。

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