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調剤薬局業界のM&A動向(2025年)メリットデメリット/事例/成功のポイントを解説

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  • 公開日2025.04.21
  • 更新日2025.04.21

調剤薬局業界のM&A動向(2025年)メリットデメリット/事例/成功のポイントを解説

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業界では、調剤薬局を売却・譲渡する動きが増加しています。コンビニエンスストアよりも軒数が多いとされる調剤薬局。どのような背景から、M&Aが積極的に活用されているのでしょうか。

今回は、国内の調剤薬局業界におけるM&A最新動向やメリット・デメリット、成功させるためのポイントを徹底解説します。

調剤薬局の市場動向

医薬分業の進展にともない、調剤薬局業界は急速な成長を遂げました。厚生労働省が公表する資料「調剤医療費(電算処理分)の動向」によると、2023年度の調剤医療費は8兆2,678億円となっています。前年度同期と比較して、5.5%の上昇となりました。

また、日本薬剤師会が公表する医薬分業進捗状況に関する資料によると、2023年度の処方箋受取率の推計は、全国平均で80.3%です。前年度の76.4%から上昇しています。

近年、調剤薬局の軒数はコンビニエンスストアよりも多いとされます。市場拡大の主な要因は、高齢化社会の進行による医療ニーズの増大です。一方で、2年ごとに実施される薬価改定や調剤報酬の見直しが薬局の経営に大きく影響し、収益性の低下が社会問題となっています。

【出典】厚生労働省「調剤医療費(電算処理分)の動向~令和5年度版~」

【出典】公益財団法人日本薬剤師会「処方箋受取率の推計 『全保険(社保+国保+後期高齢者)』」

【出典】公益財団法人日本薬剤師会「医薬分業進捗状況(保険調剤の動向) 処方箋受け取り状況の推計 令和5年度集計」

調剤薬局市場が抱える課題

調剤薬局業界は、薬剤師不足、後継者問題、そして薬価改定や調剤報酬の引き下げにともなう収益性の悪化という三つの大きな課題に直面しています。それぞれ具体的に見ていきましょう。

深刻な薬剤師不足

調剤薬局業界では、慢性的な薬剤師不足に陥っています。これには薬学部の6年制移行による供給減少、薬局数の増加による需要増などの要因があるとされています。特に地方では薬剤師不足が顕著であり、地域医療の維持が難しくなりつつあります。

後継者問題と経営者の高齢化

経営者の高齢化が進む中で、後継者不足が深刻化しています。親族から後継者を検討する際、候補者が薬剤師資格を持たなかったり、持っていても事業を継ぐ意志がなかったりする場合、事業承継は困難です。

後継者問題は地域医療の継続性にも影響を及ぼしており、廃業による医療サービスの空白が懸念されます。

収益性の低下

薬価改定と調剤報酬の引き下げは、調剤薬局の収益性に大きな影響を与えています。近年においてはジェネリック医薬品の普及促進政策により、薬価差益が縮小し、収益が減少しました。

また、調剤基本料の大幅な引き下げが、特定の医療機関に依存する門前薬局に大きな打撃を与えています。

調剤薬局業界のM&A最新動向(2025年)

2025年の調剤薬局業界では、経営環境の変化や後継者不足を背景に、M&Aがさらに加速しています。ここでは、調剤薬局業界におけるM&A最新動向をご紹介します。

大手ドラッグストアチェーンによる個人薬局の買収

大手ドラッグストアチェーンは、個人経営の調剤薬局を積極的に買収しています。これは業界全体が成熟期に入り、特定企業の寡占化が進む中で、市場シェアの拡大を図るための戦略的な取り組みです。

新規出店よりも既存店舗の買収が選ばれる理由として、既存の顧客基盤や地域での信頼をそのまま引き継げる点が挙げられます。

地域医療連携を見据えた戦略的なM&A

地域医療連携を強化するため、調剤薬局のM&Aが戦略的に進められています。調剤薬局のM&Aの場合は、単なる経営権の移転ではなく、地域医療における役割の引き継ぎが重視されます。

地域の医療資源を有効活用することで、売り手側の経営者は社会的責任を果たすことが可能です。

医療モール型への業態転換

医療モール型施設への業態転換が進む中、調剤薬局の再編が活発化しています。医療モールは、特定の敷地内や建物内などに複数の医療機関が集まることで、患者の利便性が向上する点が大きな特長です。業態転換した調剤薬局は、処方箋を確保しやすい立地で事業を継続できます。

調剤薬局がM&A・事業譲渡をするメリット

M&Aは、業界特有のさまざまな課題を解決する戦略的意思決定です。ここでは、調剤薬局のM&A・事業譲渡のメリットを売り手企業目線で解説します。

従業員の雇用維持

調剤薬局のM&Aによって、従業員の雇用条件を維持しながら買い手企業に引き継げる可能性があります。既存従業員の雇用維持は、地域医療の安定性確保につながります。地域密着型の薬局の場合、患者との信頼関係を維持しながらサービスを継続することが可能です。

慢性的に不足している人材の確保

薬剤師不足が深刻な調剤薬局業界では、人材確保や採用コストが経営の大きな負担となっています。売り手側が保有する人材が、買い手側から高く評価される可能性があるでしょう。また、大手チェーンへのM&Aでは、既存の採用ルートや研修制度を活用できるため、薬局運営の安定化が期待されます。

薬価改定リスクや設備投資負担の軽減

2年ごとの薬価改定は調剤薬局の収益を大きく圧迫しています。加えて、電子薬歴システムの導入や在宅医療対応といった、デジタル化に向けた設備投資も急がれます。M&Aによる統合で、買い手側と連携して負担を軽減できるのは、メリットだといえるでしょう。

調剤薬局がM&Aをするデメリット

ここでは、調剤薬局がM&A・事業譲渡をするデメリットや注意点について、売り手側の目線で解説します。

地域医療への貢献が難しくなる可能性

新しい経営者の考えのもとで、地域住民に密着したサービスが減少し、調剤薬局の収益性を優先する経営に転換する可能性があります。例えば、大手調剤薬局チェーンによる買収が行われた際、独自の地域貢献活動や健康相談サービスが縮小されるケースが少なくありません。

方針転換にともなう従業員の離職リスク

M&Aにともない、従業員は新しい経営者と再契約を結ぶ必要があり、その過程で待遇や勤務条件が変更される場合があります。特に長年勤務している従業員にとっては、新しい環境への適応が困難で、離職につながることも少なくありません。

調剤薬局がM&Aを成功させるためのポイント

M&Aを成功させるには、専門知識と適切な事前準備が欠かせません。ここでは、調剤薬局がM&Aを成功させるためのポイントを解説します。

適切なM&A手法の選択

調剤薬局のM&A手法には、主に事業譲渡と株式譲渡の2種類があります。事業譲渡は店舗の資産・負債・契約関係のみを移転する方法で、株式譲渡は法人そのものの所有権を移転する方法です。

株式譲渡では許認可の再取得が不要なため手続きが比較的シンプルですが、会社の簿外債務も引き継ぐリスクがあります。

一方、事業譲渡では資産・負債を選択的に引き継げますが、各種契約や許認可の承継手続きが必要になります。両者の税務上・法務上の違いを理解し、自社に適した手法を選択しましょう。

患者情報や処方データの適切な引き継ぎ

調剤薬局の事業譲渡では、設備や在庫薬品に加えて、患者リストや処方データなどの無形資産も重要な譲渡対象となります。譲渡対象であるこれらの無形資産を明確にして、買い手側へ適切な引き継ぎを行いましょう。

その際、患者情報や処方データは特に慎重な取り扱いが求められます。個人情報保護法に加え、「医療・介護関係事業者における個人情報の適切な取扱いのためのガイダンス」(個人情報保護委員会・厚生労働省)に準拠した対応が必要です。特に患者情報の引継ぎについては、以下のような対応が求められます。

  • 事前に患者への告知を店頭掲示等で適切に行う
  • 譲渡契約書に秘密保持条項と個人情報保護条項を明記する
  • 個人情報保護法の事業承継に関する例外規定を踏まえた適切な手続きを踏む

譲渡後のトラブルを避けるためにも、専門家の助言を受けながら慎重に進めましょう。

保険薬局指定の適切な承継

調剤薬局のM&Aでは、事業譲渡後も保険薬局として継続して営業するために、保険薬局指定の承継手続きが不可欠です。具体的には、以下のような行政手続きが必要とされます。

  • 地方厚生局への「保険薬局の事業譲渡に係る届出」
  • 所在地の都道府県への「薬局開設許可の変更届」
  • 保険医療機関との再契約 など

特に保険薬局指定の承継は事前協議が必要なケースも多く、手続きに数カ月を要することもあるため、クロージングスケジュールに余裕を持たせることが重要です。これらの手続きを滞りなく行うためにも、M&A専門家と薬事関連の行政書士などの連携が推奨されます。

専門資格保有者の処遇整理

調剤薬局のM&Aでは、薬剤師という専門職の継続的な確保が事業価値の維持に直結します。買い手企業に対して、譲渡後の従業員の処遇についてしっかりと確認しておきましょう。

また、離職を防ぐためには、①管理薬剤師の継続就業に関する特別条項の設定、②重要な役割を担う薬剤師向けのリテンションボーナスの検討、③薬剤師のキャリアパスと研修制度の明確化といった施策が効果的です。

管理薬剤師が高齢のオーナーである場合は、一定期間の顧問契約を結び、患者や医療機関との関係性を円滑に引き継ぐための移行期間を設けると良いでしょう。薬剤師の処遇について買い手と明確な合意を形成しておくことで、事業価値の毀損を防ぎ、スムーズな統合を実現できます。

専門家への相談

調剤薬局の譲渡は一般的なM&Aと比べて専門性が高く、業界特有の知識や経験が必要となります。そのため、調剤薬局の仲介事例が豊富なM&A仲介会社などのサポートを受けるのが望ましいでしょう。

M&A仲介会社では、譲渡先の紹介・選定、譲渡先との交渉、契約書の作成、譲渡の際の相談、手法のアドバイスなど、多岐にわたる支援を行っています。独自のネットワークを活用し、最適な買い手候補とのマッチングが期待できます。

また、M&A仲介会社へ相談すれば、適正な企業価値評価を受けることも可能です。調剤薬局のM&A評価では、一般的に「EBITDA×マルチプル」方式や「時価純資産+営業権」方式が採用されます。特に処方箋枚数や立地条件、保険薬局指定の有無などが重要な評価要素となり、通常は年間EBITDA(営業利益に減価償却費を加えた額)の3~5倍程度が相場となります。

門前薬局や医療モール内の好立地店舗では、より高いマルチプルが適用されることもある点が違いです。適切な企業価値評価を実施するためには、薬局業界に精通した専門家による査定が不可欠といえるでしょう。

調剤薬局業界のM&A事例

最後に、調剤薬局業界のM&A事例をご紹介します。自社のM&A検討時の参考にしてみましょう。

総合メディカルグループ株式会社による株式会社ライフアートのM&A

2024年12月、総合メディカルグループ株式会社は、広島県を拠点とする地域密着型調剤薬局チェーン・株式会社ライフアートの全株式を取得し、子会社化しました。ライフアートは「康仁薬局」「さんくす薬局」などの屋号で62店舗を展開しており、医療モールへの出店を強みとしています。

あわせて、同グループ会社である株式会社エス・エム・イーが、ライフアートグループの株式会社サンクスネットからジェネリック医薬品卸売事業を吸収分割で承継しました。

本件により、総合メディカルグループは調剤薬局網の拡充と医療モール事業のさらなる推進、卸売機能の獲得により、地域医療プラットフォームとしての総合力を一層強化。医師紹介や医業継承支援と組み合わせることで、持続可能な地域医療モデルの構築を目指します。医療連携を軸にした統合型M&Aの好例といえます。

【出典】総合メディカルグループ株式会社「株式会社ライフアートの株式取得(子会社化)および株式会社サンクスネットのジェネリック医薬品卸売業の吸収分割による承継に関するお知らせ」

株式会社コム・メディカルと株式会社ダイチクの吸収合併

2024年5月、アインホールディングス株式会社はグループ内再編として、連結子会社間での吸収分割および吸収合併を実施しました。

具体的には、子会社の株式会社コム・メディカルの調剤薬局事業の一部を同じく子会社の株式会社ダイチクへ承継し、その後コム・メディカルを消滅会社、株式会社アインファーマシーズを存続会社とする吸収合併を実施。また、有限会社ABCファーマシーもダイチクへ吸収合併されました。

本再編は、グループ内の事業・管理機能の集約を通じて薬局運営の効率化と重複業務の削減を図り、経営資源の最適配置による競争力強化を目的としています。M&Aを積極活用して拡大してきた同社が、次の成長フェーズに向けて内部統合を進める動きとして注目される事例です。

【出典】株式会社アインホールディングス「グループ内再編(連結子会社間の吸収分割及び連結子会社間の吸収合併) に関するお知らせ」

株式会社ココカラファインによる有限会社クレストファーマシーのM&A

2020年8月、株式会社ココカラファインの連結子会社であるココカラファインヘルスケアは、東京都内で調剤薬局を運営する有限会社クレストファーマシーから、調剤薬局1店舗の事業を譲り受けました。

本件は、ココカラファインが推進する「健康サポート薬局」の展開と、地域に根差したヘルスケアネットワーク構築の一環として実施されたものです。事業取得価格はDCF法等を用いて算定されましたが、非開示となっています。

ココカラファインはドラッグストア事業と調剤薬局事業の両輪で地域密着型のサービス提供を強化しており、本件もエリアドミナント戦略を支える形で、地域の健康インフラ整備に寄与するM&A事例といえます。

【出典】株式会社ココカラファイン「調剤薬局事業の譲受に関するお知らせ」

まとめ|調剤薬局市場のM&A動向を押さえてM&Aを成功させましょう

調剤薬局市場では、大手チェーンによる買収が進む中、個人薬局の価値が高く評価される可能性があります。将来的にM&A・事業譲渡を考えている薬局経営者の方は、地域医療の継続と雇用維持を両立させる戦略的M&Aをご検討ください。

調剤薬局の事業承継には高度かつ専門的な知識が必要です。M&A仲介会社に相談し、適切なアドバイザーの支援を受けるようおすすめします。

CINC Capitalは、M&A仲介協会会員および中小企業庁のM&A登録支援機関として、M&Aのご相談を受け付けております。業界歴10年以上のプロアドバイザーが、お客様の真の利益を追求します。M&Aの相談をご希望の方はお気軽にお問い合わせください。

この記事の監修者

阿部 泰士

CINC Capital取締役執行役員社長

阿部 泰士

リクルートHRマーケティング、外資系製薬メーカーのバクスターを経て、M&A業界へ転身。 日本M&AセンターにてM&Aアドバイザーとして経験を積み、ABNアドバイザーズ(あおぞら銀行100%子会社)では執行役員営業本部長として営業組織を牽引。2024年10月より上場会社CINCの100%子会社設立後、現職に就任。

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