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買収ファンドとは?企業を買収する目的やメリットデメリット、M&Aの流れを解説

M&A / スキーム

  • 公開日2025.09.30

買収ファンドとは?企業を買収する目的やメリットデメリット、M&Aの流れを解説

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買収ファンドは、企業の成長や再建の手段として注目されています。

特に近年は、事業承継問題や経営再建の手段として活用されるケースが増えています。

一方で、買収ファンドに企業を売却することには、メリットだけでなくデメリットや注意点も存在します。

本記事では、買収ファンドの基本から、目的や種類、買収によって企業がどのように変わるのか、さらにはM&Aの流れや注意点までをわかりやすく解説します。

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買収ファンドとは?

買収ファンドとは、企業価値の向上を目的として、企業を買収・再生するファンドです。

金融業界およびM&Aにおいては主に「PEファンド」と呼ばれます。

買収(PE)ファンドの基本的な役割として、企業の価値を最大化することが挙げられます。

そのために専門家が集まり、経営改善や収益の向上を目指すのが特徴です。

さらに、買収(PE)ファンドは投資家から資金を集め運営されており、リターンを得ることが目的なため、企業の再編や新しい経営戦略の策定に力を入れる運営方法です。

投資ファンドとの関係性

買収ファンドは、投資ファンドの中でも特化した目的を持つ一種として位置付けられており、企業の買収に特化し、その企業の経営改善や成長を図る使命があります。

企業の価値を向上させて、最終的には売却して収益を得ることを目指しています。

買収ファンドの活動は、経営難に直面している企業を買収して、経営資源を集中的に注ぎ込んで、その企業を再生させるプロセスを伴います。

結果として企業の市場価値を再び高めて売却することが狙いです。

また、投資ファンドの中でも買収ファンドは、特定の企業に焦点を当てて投資を行う点が大きな特徴となっています。

これは、無作為に多くの企業に投資するのではなく、選定した特定の企業に対して深く関与し、その企業の成長に直接貢献するというアプローチをとるものだからです。

この方法により、買収ファンドはより大きな成長を促進し、投資家に対しては高いリターンを提供することができます。

【関連記事】ファンド会社とは?種類やファンドが企業を買収する理由、M&Aで活用するポイントを解説

投資ファンドの種類

投資ファンドにはさまざまな種類があり、それぞれが異なる目的と戦略を持っています。

これらのファンドの種類を理解することは、自社に最適な投資家を選定する際に非常に重要です。

適切なファンドを選ぶことで、企業にとって有益なパートナーシップを築けて、より良い

成長や収益性向上につながります。

主な投資ファンドの種類には、プライベート・エクイティファンド(バイアウトファンドを含む)、ベンチャーキャピタル、ヘッジファンドなどが挙げられます。

  • プライベート・エクイティファンド(PEファンド)

企業の買収や資本投資を通じて経営改善を目指すファンドです。特に、バイアウトファンド(企業買収型PEファンド)では、資本を大量に投入して企業の経営効率を高め、収益性を向上させることを目的とします。また、PEファンドは高いリターンを期待できる一方で、リスクも伴います。

  • ベンチャーキャピタル(VCファンド)

成長が期待されるスタートアップ企業に投資し、企業の成長を支援することを目的としています。VCファンドは、初期段階の企業に対して資金を提供し、その株価上昇や企業価値向上を狙います。

  • ヘッジファンド

リスクを管理しながら、さまざまな投資手法を駆使して高いリターンを追求するファンドです。ヘッジファンドは、株式や債券、デリバティブなどを活用し、マクロ経済的な視点から柔軟に運用します。

また、上記以外にも、投資信託(ミューチュアルファンド)や不動産ファンド、ファンド・オブ・ファンズ(ほかのファンドに投資するファンド)など、さまざまなファンドの形態があります。

しかし、上記のファンドは特に私募型ファンド(非公開企業向けファンド)に関連しています。

各ファンドには異なるリスクとリターンの特性、投資対象があるため、企業としては自社のニーズや戦略に適したファンドを選ぶことが重要です。

投資家とのパートナーシップを結ぶ際には、ファンドの特徴や投資目的をよく理解したうえで選定することが、事業成長に向けた鍵となります。

【関連記事】ベンチャーキャピタル(VC)から資金調達するには?

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買収ファンドが企業を買収する目的

買収ファンドは企業を買収することで、企業価値の向上を目指しています。

ファンドは、企業の業績改善や成長戦略をサポートして、その価値を最大化しようとします。

企業の買収によって、最終的にファンド自体の利益を増やすことが目的です。

具体的には、買収ファンドは経営が困難に陥っている企業をターゲットにするケースが多いです。

こういった企業に対し、資金援助や経営ノウハウを提供し、新しい経営層を導入して経営の効率化を図ります。

そして、新規市場の開拓や製品ラインの拡充を積極的に行うことにより、業績改善を実現します。

例えば、特定の技術や製品が市場で注目を集めている企業に資本を注入して、国際展開を支援するなどが具体的な施策です。

企業が再建や成長を遂げることで、収益性や市場のポジションが上がると、資産価値も上昇します。

結果として、買収ファンドは投資回収時に大きな利益を得られる見込みが高まります。

したがって買収ファンドの主な目的は、企業価値を向上させ、ファンドの利益を最大化することにあるのです。

ファンドによる買収で企業はどう変わる?

ファンドによる買収は企業の経営体制や従業員、ブランド、そして事業内容に至るまで多岐にわたる影響があります。

ここでは、これらの変化について解説します。

経営体制

ファンドによる買収のあと、企業の経営体制が大きく変わる可能性があります。

買収を行ったファンドは、通常、企業の業績を向上させることを目的とした施策を打ち出します。

効果的な経営を推進するために、外部から専門家を送り込んで現行の経営陣を刷新する場合が一般的です。

例えば、新しいCEOやCFOを外部から迎えることで、より効率的な経営を狙います。

これにより、企業は新しい視点や手法を取り入れて成長と安定に期待できます。

ファンドによる経営陣の変更は、特に経営の効率化や企業の短・中期的な成長を目指すうえで重要です。

大胆な経営体制の見直しを行うことで、企業が持続的成長を遂げる基盤を整えられます。

既存の経営陣が持つ柔軟でない習慣に依存してしまうと、企業の成長潜在力を十分には引き出せない場合があります。

そのため、新しい人材を活用することで、革新的な戦略を導入し市場での競争力を高める機会を増大させられるのです。

従業員

ファンドによる買収は、従業員にとっても大きな変化をもたらします。

新しい経営陣や戦略の下で、会社の経営方針や目標が変わることにより、従来の業務方法や組織構造が適合しない可能性があります。

そのため、組織改編に伴い従業員の役割や業務内容が見直される場合が多いです。

具体的には、業務効率化を図る目的で従業員の再配置や整理が行われる際には、新たなポジションへの異動や職務変更が実施される可能性が高いです。

業務内容や組織構造の変化は、一部の従業員にとっては負担となる可能性がある一方で、新たなスキルを習得しキャリアを広げる機会にもなります。

従業員にとっては、このような変化に適応しなければならないという挑戦が生じます。

新しい環境では、これまでの経験やスキルが必ずしもそのまま通用するとは限らないため、柔軟性や学習能力が求められます。

企業としても、従業員がスムーズに新しい環境に適応できるよう、適切な支援やトレーニングを提供することが重要です。

ブランド

買収ファンドによる買収時には、ブランド戦略の見直しが重要です。

ブランドは企業のアイデンティティを表し、市場での競争力に大きく影響します。

ファンドはその価値を踏まえ、ブランドを再構築・刷新し、市場でのポジションを強化します。

ブランディングの刷新は単なる外観の変更ではなく、企業の存在意義や市場での役割を再定義する深い戦略的取り組みです。

これには、ブランド価値やミッションの明確化、ターゲット市場の再定義、新しい顧客層の開拓が含まれます。

さらに、企業のコアバリューを再評価し、社会的責任への取り組みを強調することで、社会的信頼を得ることも重要です。

ブランド戦略の再構築や市場ポジションの明確化によって、企業は長期的なブランド価値と競争優位性の確率が可能となります。

事業内容

買収ファンドによる企業の買収では、事業内容が再編成されることがあります。

この再編成は、企業の強みを最大限に活かし収益性を高めるために行われます。

具体的には、不採算事業の売却や新しい成長分野への参入が推進されることが一般的です。

企業は、収益を上げていない不採算事業を撤退し、新しい技術分野に進出することで、事業の組み合わせの最適化を図ります。

事業内容の見直しは、単に収益改善を目的とするだけでなく、企業の競争力を強化し、持続可能な成長を目指すためでもあります。

これにより、市場での優位性を保ちながら、企業が長期的に成長を続けていく基盤を築くことが期待されます。

ファンドによる事業再編は、企業とその利害関係者全体にとって有益な結果をもたらす可能性がありますが、変化に伴う短期的な混乱を最小限に抑える努力も重要です。

買収ファンドの対象となる企業

買収ファンドが対象とする企業は、主に経営に課題を抱えている企業、事業承継の問題を抱える企業、そして成長の見込みがある企業の3つに分類されます。

以下、各タイプの企業について詳細に説明します。

経営に課題を抱えている企業

経営に課題を抱えている企業は、買収ファンドの主要なターゲットの一つです。

経営に課題がある企業は、売上が落ち込んでいる、資金繰りが悪化している、または内部統制が弱いなどの問題を抱えていることがあります。

買収ファンドは、そのような問題を抱える企業に対し、有利な資金や専門的な経営ノウハウを提供することができるため、企業の経営改善を図ることが可能です。

買収ファンドが経営に課題を抱える企業に注目する理由は、企業の再生とともに投資成果を得ることができるからです。

ファンドはプロフェッショナルな支援を行い、企業の経営効率を向上させるためのさまざまな施策を実施します。

例えば、資本増強やコスト削減、新しい市場への進出策の提案、経営陣の強化、内部統制の強化などが挙げられます。

買収ファンドの投資は企業を再生し、経営課題の解決を手助けするとともに、その企業の成長を促進します。

結果として、経営に課題を抱える企業は新たな発展の機会を得ることができ、ファンド自身もその成功により利益を享受できるのです。

事業承継の問題を抱えている企業

事業承継の問題を抱えている企業は、買収ファンドが注目する主要なターゲットの一つです。

特に日本では、少子高齢化の進行に伴い、経営者の高齢化が進中で、後継者の確保が深刻な課題となっています。

中小企業庁のデータによると、中小企業における後継者不在率は2018年以降、徐々に減少傾向にあるものの、2023年時点でも依然として54.5%と高水準にあり、全体の半数以上の企業で後継者が不在の状態が続いています。

特に若い年代の経営者においてこの傾向が顕著であり、年代が上がるにつれて後継者不在率は低下する傾向が見られます。

これは、年齢が高い経営者ほど事業承継への準備を進めている一方で、若年経営者は承継計画を先送りにしている実態を反映しています。

そこで買収ファンドによる買収が、事業承継問題の解決策として注目されます。

ファンドは企業を買収し、安定的な経営基盤を築くことで、事業の存続と継続を可能にします。

経営基盤が安定することで、オーナー経営者は安心して退職でき、従業員や関係者にとってもより良い環境を維持することができるのです。

ファンドによる買収は、企業が次の世代に確実にバトンタッチする手段として、有効な選択肢といえるでしょう。

【参考】中小企業庁「第6節 事業承継」

成長の見込みがある企業

成長の見込みがある企業は、買収ファンドが特に注目する対象です。

その理由は、買収ファンドが成長の可能性が高い企業に投資することで、大きなリターンを期待できるためです。

成長見込みのある企業は、革新的な製品やサービスを提供している場合や、新興市場に進出しつつあることが多く、このような成長ポテンシャルはファンドにとって非常に魅力的です。

具体的には、独自の技術を持ち市場でユニークな立ち位置を築いているベンチャー企業や、斬新なアイデアで急成長を遂げつつあるスタートアップなどが、買収ファンドのターゲットです。

これらの企業は、市場拡大の余地が広がっており、さらなる成長のための資金供給を受けることで、事業規模の拡大や海外市場の開拓を加速させる可能性があります。

買収ファンドは、成長ポテンシャルのある企業に支援を行い、その成長ポテンシャルを最大化することを目指します。

ファンドは、経営ノウハウやネットワークを提供することで企業の成長をサポートし、結果として投資した資金を大きく回収する戦略をとっています。

買収ファンドの種類

買収ファンドは、投資戦略や企業の特性に応じて異なる種類に分類されます。

それぞれのファンドがどのような目的を持ち、どのように企業を支援するのか詳しく見ていきましょう。

バイアウトファンド

バイアウトファンドは、PEファンドの一種であり、企業の過半数の株式を取得し、その企業をコントロールすることを目的としています。

外部人材の登用によって、新たな経営視点や手法が導入され、企業の持続的な成長と経営の安定が実現します。

バイアウトファンドは、特に成熟企業を対象にすることが多く、投資ファンドの中でも積極的な経営介入を行うスタイルが特徴的です。

PEファンドはバイアウトだけでなく、成長企業への投資や事業承継支援など多様な投資形態を取ります。

中小企業を買収して、経営改革を実行することで企業価値を向上させるケースが一般的です。

具体的には、PEファンドは買収後、専任の管理チームを送り込み、業績改善や戦略的方向性の転換を図ることが多いです。

その結果、事業の生産性が向上し、将来的な成長が見込まれるように変貌を遂げます。

バイアウトファンドは、企業の価値を最大化するため、さまざまな戦略を駆使します。

具体的な手法としては、コスト削減、新規市場への進出、ビジネスプロセスの再構築などがあります。

企業再生ファンド

企業再生ファンドは、経営危機に直面している企業を救済し、再生を図ることを目的としたファンドです。

企業再生ファンドは、経営改善や資本構成の見直し、コスト削減、新たな成長戦略の立案など、さまざまな手法を駆使します。

企業再生ファンドの特徴は、単なる資金提供にとどまらず、企業の再生に向けた多面的な支援を行う点にあります。

企業再生ファンドは、企業の財務的な支援だけでなく、経営改革のための専門的なアドバイスやコンサルティングを提供することが一般的です。

このような支援は、企業の財務体質を改善し、再び健全な経営を取り戻すために不可欠です。

資金提供に加え、経営陣に対する教育や人材の育成などの側面も含めた全体的な支援を行うケースも多くあります。

具体的な事例としては、倒産寸前の企業を買収し、ターンアラウンドプラン(経営再建計画)と呼ばれる経営再建計画を策定し、実行することで再生に導きます。

ターンアラウンドプランとは、経営危機や業績不振に陥った企業が根本的な事業改革や経営改革を行い、再び成長軌道に乗せるための再建計画を指します。

ターンアラウンドプランの実行によって、企業は危機的状況から回復し、事業の継続と雇用の維持を実現します。

さらに、新たな成長機会を見出し、企業としての活力を再び取り戻せます。

ディストレスファンド

ディストレスファンドとは、経営難や財務破綻など特定の問題を抱えた企業の債権(ディストレスト・デット)や株式を安価に取得し、企業価値を再建・回復させることで高い投資リターンを狙うファンドのことです。

財務状況が悪化した企業の債権や株式は、市場での取引価格が大きく下落しているため、それらを低価格で取得し、経営再建に成功すれば大きな収益を得られる可能性があります。

ただし、再建に失敗すると投資の全額あるいは大部分が失われるリスクもあります。

一般的な戦略としては、企業の経営再建プロセスに深く関与し、経営の立て直しを主導することで資産価値を高め、投資収益を実現します。

このため、ディストレスファンドを運営する投資家やファンドマネージャーには、投資分析能力に加え、経営再建に関する高度な専門知識や実務経験が求められます。

ディストレスファンドは、主に財務破綻または倒産した企業の「負債」を中心に、財務再編や法的整理を通じて利益を得る手法を採用します。

一方で、企業再生ファンドは経営不振だが破綻していない企業の「株式」を取得し、経営再建や事業再構築を行って企業価値を高め、利益を得る違いがあります。

買収ファンドのメリット

買収ファンドの活用には企業、株主、そしてファンド自身にとって多くのメリットがあります。

これらのメリットを理解することで、企業買収の効果的な戦略を見極め、成功の可能性を高められます。

企業のメリット

買収ファンドの活用で、企業は経営の効率化や事業拡大が期待できます。

これは、ファンドによる資本注入が実施されることで、設備投資や研究開発などのための資金が確保され、企業の成長を促進できるからです。

さらに、買収ファンドを通じて経営ノウハウの獲得、後継者問題の解決、ブランド価値の向上、企業の競争力の向上が期待できます。

結果として、企業はより持続的な成長が可能になり、競争力を一層強化できます。

株主のメリット

株主にとって買収ファンドは、資産価値を最大化する手段として大きな魅力を持っています。

ファンドが企業を買収する際、企業のパフォーマンスを向上させ、企業価値を高める可能性があります。

結果として、株価の上昇にも期待でき、株主にとって、高値での売却機械を提供することにもつながります。

具体的には、買収ファンドによる革新的な経営手法の導入により、収益性が向上し、企業の市場競争力が強化されます。

こうした変化によって、株価が大きく上昇したケースも少なくありません。

また、ファンドが新たな経営体制や戦略をもたらすことで、企業はポジティブな変革を促進し、株主還元が進可能性も高まります。

買収ファンドによる企業価値向上が、株主にとっての実質的な利益へとつながるのです。

さらに、買収ファンドによる企業再編や戦略的な投資により、企業リスク分散を図れるため、リスクの低減という面でも株主にとって大きなメリットがあります。

つまり、ファンドの介入によって株主は企業価値の増加を通じて資産価値の向上を享受し、より安定したリターンを得られるのです。

ファンドのメリット

ファンドは買収を通じて高い収益を得られる可能性があります。

これは、成功した企業の売却やIPO(新規株式公開)を通じて投資資金を回収し、リターンを得ることができるからです。

例えば、ファンドが企業に資本を注入し、経営改善を図ることで企業価値が倍増し、その後売却して大きな利益を得るケースがあります。

このプロセスはリスク分散を図るため、複数の企業に投資することが一般的です。

さらにファンド運営者はファンド報酬として、成功報酬(キャリードインタレスト)を得る仕組みになっており、これが運営者にインセンティブを与えます。

成功した場合、ファンドは投資資金の回収と追加の利益を両立させ、投資家に高いリターンを提供できます。

キャリードインタレストとは、プライベートエクイティファンドやベンチャーキャピタルにおいて、ファンドの運営会社がファンドの利益の一定割合を受け取る報酬です。

これは、出資者が当初の投資額および、あらかじめ設定された一定の収益率(ハードレート)を超えるリターンを回収した後に初めて支払われる仕組みです。

【関連記事】IPOとM&Aの違いは?

買収ファンドのデメリット

買収ファンドには多くのメリットがある一方で、デメリットも存在します。

企業、株主、そしてファンド自身に影響を及ぼす可能性があるため、慎重に検討する必要があります。

ここでは、買収ファンドのデメリットについて、企業、株主、そしてファンドのそれぞれの観点から解説します。

企業のデメリット

買収ファンドによる企業のデメリットとして、企業の経営方針が変わるリスクが挙げられます。

通常、ファンドは投資リターンを最大化することを目的としています。

そのため、短期的な利益を重視した経営方針を採用するケースが多いのです。

このような方針転換は、投資期間内に高い収益を確保するために必要とされています。

具体的には、ファンドによる経営方針の変更に伴って、人員削減や事業内容の見直しが行われる場合があります。

経営方針の変更により、従業員のモラルが低下し、企業全体の士気に悪影響を与える可能性が生まれます。

また、経営者が買収ファンドの要求に応じざるを得ない状況が発生するケースもあります。

ファンドが企業の大株主となった場合、経営者はその指示に従う義務を負うことになり、場合によっては企業本来の理念やビジョンが損なわれたり、企業文化の変化や取引先・顧客へ影響するリスクもあります。

株主のデメリット

買収ファンドによる企業買収は、株主にとっていくつかのデメリットをもたらす場合があります。

まず、買収ファンドの関与によって株価の変動リスクが高まる場合があります。

これは、ファンドが短期的な利回りを求める投資を行うことが原因です。

このアプローチは、企業の長期的な成長を損なう可能性があり、それが株価に影響を及ぼします。

具体的には、突然の経営方針の変更や資産の売却が行われ、これにより株価が大きく変動する場合があります。

経営方針の急変や資産売却といった不確定要素は、株主にとって予測困難であり、計画された投資成果を得られない要因となります。

さらに、買収ファンドによる経営が株主の期待に応えられない場合、企業に対する信頼が失われる可能性があります。

株主は企業の成長性や安定性に期待して投資するため、それらが変わると投資意欲が減退し、株式市場での価値が下がるリスクも伴います。

このように、買収ファンドの関与は株主にとってリスクの高い要素と考えられる場合があるのです。

ファンドのデメリット

買収ファンドにはさまざまなリスクやデメリットが存在します。

1つの大きなリスクは、買収した企業の再建が計画通りに進まない可能性があることです。

もし経営再建が思うように進まない場合、最終的には投資した資金の回収が難しくなることがあります。

例えば、再建に時間がかかり、ファンドの運営期間内に投資の出口(エグジット)に到達できないケースがあります。

さらに、ファンドが期待通りのパフォーマンスを発揮できなかった場合、その評判が悪化し、将来的に新たな投資資金の調達が困難になることも少なくありません。

特に、ファンドが公約していたリターンを実現できず投資家の信頼を損ねた場合、新たな投資家を呼び込むのが難しくなります。

これにより、買収ファンドのさらなる拡大計画が狂う場合もあるでしょう。

【売り手企業側】買収ファンドによるM&Aの流れ

買収ファンドによるM&Aのプロセスは、売り手企業にとっても非常に重要な局面です。

ここでは、その一連の流れを解説します。

買収の検討と企業価値算定

M&Aプロセスの初期段階として、買収の検討と企業価値の算定が行われます。

この段階では、売却を進めるために重要な役割を果たす企業価値の算定が、適正な取引の基盤を築くための基本です。

企業価値の算定を行う際には、専門家を交えた企業価値評価(バリュエーション)や市場分析が不可欠です。

企業の真の価値を詳しく理解し、売却に向けた意思決定を確立します。

企業価値評価では、将来のキャッシュフローの予測やリスクの評価、競争優位性の分析などを通じて企業の可能性やリスクを見極めます。

初期交渉

初期交渉の段階では、売り手企業と買収ファンド間で基本的な条件のすり合わせが行われます。

このプロセスでは両者の基本的な合意が得られないと、後続のプロセスが進めづらくなります。

具体的には、秘密保持契約(NDA)の締結や意向表明書(LOI)の取り交わしがこの段階で行われます。

これらの手続きは、情報の適正かつ安全な取扱いを保証するために重要です。

また、初期交渉は、売り手企業と買収ファンドの信頼関係を構築するための第一歩となります。

デューデリジェンスの実施

デューデリジェンスとは、買収ファンドが対象企業の詳細を調査する重要なプロセスです。

デューデリジェンスを通じて、企業の財務状況やリスク要因を正確に把握することが可能になります。

デューデリジェンスでは、さまざまな角度から企業の詳細な調査が行われます。

具体的には、財務法務ビジネス、環境面などがあります。

財務調査では、企業の過去の収益状況や負債、資産の評価が行われ、法務調査では、契約や知的財産権、訴訟のリスクについて分析されます。

また、ビジネス調査では、競争環境やビジネスモデルの評価が進められ、環境調査では、環境規制の遵守状況やリスクが確認されます。

デューデリジェンスは、買収条件の最終決定に大きな影響を与えるプロセスでもあります。

デューデリジェンスの結果によっては、買収価格の再評価や契約条件の再調整が必要になるケースもあります。

契約の締結・クロージング

契約の締結とクロージングは、M&Aプロセスの中で重要なステージの一つです。

事前に行われたデューデリジェンスなどの調査結果を基に、最終的な買収契約が締結されます。

そして、その契約に従ってクロージング、つまり取引の完了が行われます。

クロージングが行われることで、買収取引は法的にも完了し、企業は正式に新しいオーナーのもとに移ります。

クロージングの過程では、最終契約書の締結、資金の移動、そして所有権の移転が含まれます。

最終契約書は、買収の詳細条件を明確にし、両者の同意に基づいて作成されます。資金移動は、買収額が買収対象の企業に支払われるプロセスであり、資金の着金をもって取引が進みます。

所有権の移転では、法律的に企業の所有権が新しい買い手に引き渡され、企業の新しい事業体がスタートします。

契約の締結とクロージングは、M&Aプロセスの集大成であり、これまでの交渉や調査の成果が形となる瞬間です。

クロージングの完了をもって、M&Aは新たなステージへと進み、企業は次なる目標に向かって動き始めます。

買収の実行

クロージングが完了した後、買収ファンドによって実際に企業の経営権が移行します。この段階では、買収後の経営体制が新たに構築され、ファンドの描く事業計画が具体的に始動するタイミングです。

具体的には、新経営陣が就任し、新たな体制が発表されます。

これにより、企業内部の方向性が明確になり、今後の運営方針がスタッフや関係者に伝えられます。

この新しい指導者の下で、買収ファンドが掲げる戦略の実行が求められるようになります。

買収の実行は、買収ファンドの戦略が実際の事業運営に反映される重要なステージです。

計画された施策を現場で実施して、企業が成長を遂げることを目指します。

統合プロセス

買収ファンドによる企業買収後には、統合プロセスが重要な段階に入ります。

統合プロセスでは、企業の経営体制や業務プロセスの再編と統合が進められます。

具体的には、経営陣と買収ファンドによる統合会議が開かれ、双方のビジョンや目標を共有し、戦略的にどのように統合を進めていくかが話し合われます。

また、企業の業務プロセスには新しいシステムの導入が行われることもあり、データ処理の効率が向上し、意思決定の迅速化が期待されます。

統合プロセス自体は、買収によるシナジー効果を最大化するための鍵となっています。

適切に統合が進められると、業務の効率化やコスト削減が実現し、ひいては企業全体の収益性や市場競争力が向上します。

ファンドのエグジット

プライベートエクイティファンド(PEファンド)は、一定期間の保有後、企業を売却したり、上場させたりすることにより「エグジット(退出)」を行うのが一般的です。

エグジットはファンドが利益を確定し、投資家へのリターンを実現するための重要なプロセスであり、多くのファンドの投資戦略の一環として位置づけられています。

ただし、中にはエグジットせずに長期保有を目的とするファンドや、市場環境などの理由により計画通りのエグジットが困難なケースもあります。

具体的なエグジットの手法には、IPO(新規株式公開)や、第三者への売却が一般的に採用されています。

買収ファンドに売却する際の注意点

企業を成功裏に売却するためには、経営の自由度やファンドによる関与、売却後の経営陣との関係、契約条件、従業員や取引先への影響など、さまざまな要素を慎重に検討する必要があります。

経営の自由度やファンドによる関与について把握する

買収ファンドに企業を売却する際には、その後の経営の自由度とファンドの関与レベルについて事前にしっかりと把握することが求められます。

なぜなら、ファンドが経営に深く関与しすぎると、企業の持つ独自性を損なうおそれがあるためです。

ファンドからの過度な関与があれば、企業の経営自由度が著しく制限される場合があります。例えば、ファンドが経営戦略に対して強く介入してくると、元の経営陣の意思決定プロセスが妨げられ、企業文化とファンドの方針の間で摩擦が生じる可能性があります。

これにより、従来の価値観や企業内の雰囲気が変わってしまうケースがあります。

したがって、事前に経営の自由度やファンドの関与の程度を明確にし、両者の期待値を揃えることが重要です。

具体的には、どのような経営方針が許可されるのか、またどの領域において自由な判断ができるのかを明確にして、ファンドとの良好な関係を築き、売却後も企業の強みを維持しつつ、新たな成長を図ることが可能になります。

売却後の経営陣との関係性を明確にする

企業が買収ファンドへ売却を行った際、売却後の経営陣との関係性を事前に明確にしておくことが非常に重要です。

特に、経営陣の協力体制が崩れると、企業の運営に大きな支障が出る可能性があります。

例えば、売却後に経営陣が全員退職すると、業務の引継ぎが困難となり、組織内に深刻な混乱が発生します。

この混乱は、企業の業績低下や業務停滞といった影響をもたらします。

そのため、事前に経営陣の役割や報酬、継続期間などを明確にし、売却後も企業をしっかりと支える体制を築くことが必要です。

契約条件や表明保証の内容を十分に確認する

売却契約の条件や表明保証の内容の確認は、買収ファンドに企業を売却する際に極めて重要です。

確認を怠ると契約後にトラブルが発生すると、法的紛争に直結します。

例えば、売却契約の際に確認されていなかった債務問題が後で明らかになり、それが原因となって法的問題に発展したケースがあります。

法的問題になり得る事態を避けるためには、契約前に契約条件や表明保証の内容をしっかりと確認することが必要です。

また、契約条件や表明保証を確認する際は、専門家の助言を受けることをおすすめします。

法律や財務の専門家への相談で、契約に潜むリスクを事前に把握し、適切な対策を講じることができます。

従業員や取引先への影響を事前に想定しておく

従業員や取引先への影響を事前に想定し、対応策の準備が重要です。

買収ファンドに企業が売却される際には、従業員や取引先に予期しない影響を与える場合があります。

このため、売却によって従業員の不安が高まったり、取引先の信頼が失われたりするリスクがあるため、事前にどのような影響が起こりうるのかを慎重に想定することが求められます。

事例として、買収後の統合プロセスにおいて従業員の大量退職が発生し、事業運営が一時的に滞るケースが見られる場合があります。

このような事態を未然に防ぐためには、具体的な対応策を準備し、社員が安心できる環境の整備が重要です。

さらに、従業員や取引先には透明性を持ってコミュニケーションを実施し、影響を最小限に抑える対応策が不可欠です。

情報の共有を通じて、売却の背景や目的、今後の見通しを明確に伝えることにより、混乱や不安を減らせるでしょう。

まとめ|買収ファンドの仕組みを知り、納得のいく売却を目指しましょう

買収ファンドの仕組みを理解することで、企業は自社に適切な売却方法を選択できます。

また、役割や目的、種類、M&Aの流れ、注意点を把握することにより、より効果的な経営判断が可能になります。

このような知識を備えることで、将来を見据えた判断を下せるようになります。

将来的な成長を見据える企業にとっては、買収ファンドへの深い理解が不可欠です。

自社に最も適した選択を行うためには、必要に応じて専門のアドバイザーに相談し、専門的な知見を取り入れる姿勢も重要です。

自社にとって最適な選択肢を見極めるためには、専門的な知識と客観的な視点が必要不可欠です。

買収ファンドへの売却を検討している企業様は、まずは実績あるM&A仲介会社にご相談いただくことで、適切なパートナー選定やスムーズな交渉を進める第一歩となるでしょう。

納得のいくM&Aを実現するためには、経験豊富な専門家のサポートを受けることが成功の鍵となります。

CINC Capitalでは業界歴10年以上のプロアドバイザーが、お客様にとって最適な選択肢をご提案いたします。

まずはお気軽にご相談ください。

この記事の監修者

阿部 泰士

CINC Capital取締役執行役員社長

阿部 泰士

リクルートHRマーケティング、外資系製薬メーカーのバクスターを経て、M&A業界へ転身。 日本M&AセンターにてM&Aアドバイザーとして経験を積み、ABNアドバイザーズ(あおぞら銀行100%子会社)では執行役員営業本部長として営業組織を牽引。2024年10月より上場会社CINCの100%子会社設立後、現職に就任。

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