CINC CapitalはCINC(証券コード:4378)のグループ会社です。
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M&A / スキーム
- 公開日2025.04.30
- 更新日2025.04.30
バイアウトファンドとは?PEやベンチャーキャピタルとの違い、利用するメリット・デメリットを解説
企業が成長や再生を目指す中で、資本の調達方法としてバイアウトファンドが注目されています。しかし、経営者にとってその仕組みや他の投資ファンドとの違いは理解しづらく、難しいと感じている方は大変多いです。
この記事では、バイアウトファンドの基本的な知識、利用するメリットについて解説します。また、バイアウトファンドと比較されることの多いベンチャーキャピタルやPEとの違いについてもお伝えします。
目次
バイアウトファンドとは?
バイアウトファンドは、企業の株式を買収して経営権を取得し、企業価値が向上した後に売却して利益を得る投資ファンドのことを指します。
ここでは、このバイアウトファンドの仕組みについて解説します。また、このバイアウトファンドが以前「ハゲタカ」と呼ばれていた理由について併せて解説します。
バイアウトファンドの仕組み
バイアウトファンドの仕組みは、主に「買収→改革→売却」の3ステップで構成されています。
まず投資家から集めた資金と金融機関からの借入を活用して対象企業の株式過半数を取得します。経営権を獲得した後は、経営陣の刷新、事業再編、コスト削減などの施策を実行し、企業価値を高めていきます。
投資期間を経て、戦略的売却(事業会社への売却)やIPO※などの方法で投資を回収し、当初投資額を上回るリターンを目指します。この一連のプロセスにより、企業の再生や成長を促進しながら投資家に利益をもたらします。
※IPO…企業が初めて株式を公開し、一般投資家が購入できるようになる手続きのことを指します。企業が資金調達するための重要な手段です。公開株式とも言う。
「ハゲタカ」と呼ばれていた理由
以前、バイアウトファンドは動物の「ハゲタカ」と呼ばれていました。
1980~90年代の米国で、一部のファンドが財務的に苦しむ企業を安価に買収し、大規模なリストラや資産売却を行い、短期間で利益を得て撤退する手法を取ったためです。弱ったものを餌とする「ハゲタカ」のような存在であったため、ハゲタカという悪い異名がありました。
しかし現在は、長期的な企業価値向上を目指す投資手法が主流となり、単なる「ハゲタカ」というイメージから脱却しています。現在のバイアウトファンドは「企業価値向上パートナー」として認識され、成長戦略支援や経営ノウハウ提供など建設的役割を担っています。特に日本では事業承継や成長支援の面で評価が上昇中です。
バイアウトファンドとほかのファンドとの違い
バイアウトファンドは、他の投資手法や投資家と比較されることが多く、違いを明確に理解することが大切です。ここでは、VCやヘッジファンド、PEの違いについてお伝えします。
VC(ベンチャーキャピタル)との違い
ベンチャーキャピタル(VC)は、新興企業やスタートアップ企業に対して出資を行う投資会社の一種です。
バイアウトファンドは成熟企業をターゲットにする一方、ベンチャーキャピタルはスタートアップ企業に投資します。
目的・業務 |
|
バイアウトファンド |
既存の安定した企業を買収して再生や成長を促すことに注力 |
ベンチャーキャピタル(VC) |
成長ポテンシャルの高い新興企業を発掘し、その成長を支援 |
また、バイアウトファンドは安定した収益源を重視し、ベンチャーキャピタルは高リスク・高リターンを期待するという点で異なります。
ヘッジファンドとの違い
ヘッジファンドは、富裕層や機関投資家から資金を集め、様々な投資戦略を用いて高いリターンを目指す投資ファンド(仕組み)です。バイアウトファンドは企業の実質的な経営権を取得して企業価値を向上させる一方、ヘッジファンドは短期的な投資収益を狙います。
目的・業務 |
|
バイアウトファンド |
対象企業を買収し、経営改善や構造改革を通じて企業価値を高める |
ヘッジファンド |
①市場の動向を見極めて多様な投資戦略で利益を追求する |
PE(プライベート・エクイティ)との違い
プライベート・エクイティ(PE)は、非上場企業への投資を専門とし、企業の株式を取得して経営改善後に高値で売却して利益を得る投資手法です。事業承継時に活用されることが増えています。
バイアウトファンドはPEの一種であり、特に企業の経営権取得を伴う買収に特化した投資形態です。
なお、先ほど解説したヘッジファンドやプライベートエクイティはオルタナティブ投資という投資手法の中に含まれます。
オルタナティブ投資とは、株式や債券などの伝統的な資産以外の投資対象や投資手法を指します。各投資手法の関係や位置づけは、よく理解しておきましょう。
バイアウトファンドを利用するメリット
ここでは、バイアウトファンドを利用するメリットについて解説します。メリットを理解することで、自社にもたらされる利益が描きやすくなります。
後継者不在の中小企業でも事業承継が可能になる
適切な後継者が見つからずに、事業承継が難しいと感じている中小企業は大変多いです。このような事業承継にもバイアウトファンドを活用できます。
バイアウトファンドを利用して事業承継が成功した事例の一つとして、浜松米穀株式会社を紹介します。
浜松米穀株式会社は、静岡県西部地区を中心に米や麦、一般食品などを取り扱う企業です。業界内での人手不足や高齢化、過当競争による低収益化といった多くの課題に直面していました。こうした背景の中で、同社はSBI地域事業承継投資株式会社が運営する事業承継ファンドを活用しました。
浜松米穀株式会社は、ファンドの支援を受けて経営の改善に取り組み、事業承継問題を解決しました。経営上の問題を洗い出し、販路の拡大や新規事業への参入を図ることで、企業の成長を促進しました。バイアウトファンドを利用することで、後継者不足という課題を解決し、事業の継続性を確保することができます。
【出典】浜松米殻株式会社「事業承継ファンドによる資本提携のお知らせ」
経営改善や成長支援により企業価値の向上が期待できる
バイアウトファンドの介入により企業の経営改善や成長支援が行われます。バイアウトファンドは、企業の経営状況を詳細に分析し、改善策を実施するノウハウや専門知識を持っています。これにより、経営改善や成長支援が実現し、企業の価値を高めることができるのです。
資金力を活かして事業再生や新規投資が実行しやすくなる
バイアウトファンドはそのファンドサイズに応じた資金力を持っており、企業の債務解消や新規プロジェクトへの投資のための資金供給が可能です。ただし、ファンドによって投資可能額や投資方針は大きく異なるため、自社のニーズに合ったファンドを選定することが重要です。
カーブアウトによる非中核事業の整理が進められる
バイアウトファンドはカーブアウトを通じて、企業の非中核事業の整理を支援します。
カーブアウトとは、企業の非中核事業を切り離して独立させるプロセスです。これにより、企業はリソースを中核事業に集中させ、効率的な経営が可能になります。カーブアウトにより以下のような戦略を立てることができます。
- バイアウトファンドの支援を受けて非中核部門をカーブアウト
- 企業は残った中核事業に専念させる
- その結果、事業全体の効率と収益性を向上する
カーブアウトによって非中核事業の整理が進み、企業は効率的なリソース配分が可能になります。
カーブアウトについては別記事で詳細に解説しています。こちらも併せてご覧ください。
【関連記事】カーブアウトとは?目的やメリット・デメリット、スピンオフやスピンアウトとの違いも解説
バイアウトファンドを利用するデメリット
バイアウトファンドには多くのメリットがある一方で、いくつかのデメリットも存在します。
ここでは、バイアウトファンドのデメリットについて詳しく解説します。
経営権がファンド側に移ることで意思決定の自由度が下がる
ファンドが投資のリターンを最大化するために、経営への直接的な関与を強めることが多いです。
バイアウトファンドは、ファンドや投資家の利益を確保するために企業価値を向上させることを目指します。その過程で会社の方向性が変わることはありますが、近年は長期的な視点で企業価値を高めるアプローチを取るファンドも増えています。
一方で、ファンドの投資方針や運用スタイルによっては、短期的な成果を求められるケースもあるため、ファンドの選定は慎重に行う必要があります。経営権はファンド側にあるため、ファンドの意向を拒否するのはなかなか難しいです。経営権の移行に伴い、企業の意思決定の自由度を一部削ぐことになる可能性があるので、その点には十分に理解しておきましょう。
ファンドによる経営介入や再編で従業員の不安や反発を招くことがある
バイアウトファンドの経営介入により経営方針の変更が行われることは多いです。その際に、組織再編や人員削減が実施されることも少なくありません。
例えば、ファンドの意向で突然のリストラや部署の閉鎖などが行われた場合、以下のことが起こる可能性があります。
- 従業員の士気が低下する
- 会社全体のパフォーマンスに影響が出る
- 従業員の不安や反発を招く
まずは、バイアウトファンドが必要か考えましょう。そして、実施する場合は従業員に対し手厚いフォローができる体制を整えましょう。
まとめ|会社の価値向上だけでなく、事業承継にもつながる。バイアウトファンドはメリットが豊富
バイアウトファンドは、企業の価値向上や事業承継の手段として多くのメリットを提供します。
詳細 |
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メリット |
・後継者不在の中小企業でも事業承継が可能になる |
デメリット |
・経営権がファンド側に移ることで意思決定の自由度が下がる |
一方で意思決定の自由度が下がるなどのデメリットも存在します。デメリットに不安に感じる方は、バイアウトファンドに詳しい専門家に相談することをおすすめします。
CINC Capitalは、M&A仲介協会会員および中小企業庁のM&A登録支援機関として、ご相談を受け付けております。業界歴10年以上のプロアドバイザーが、お客様の真の利益を追求します。相談をご希望の方はお気軽にお問い合わせください。
この記事の監修者

CINC Capital取締役執行役員社長
阿部 泰士
リクルートHRマーケティング、外資系製薬メーカーのバクスターを経て、M&A業界へ転身。 日本M&AセンターにてM&Aアドバイザーとして経験を積み、ABNアドバイザーズ(あおぞら銀行100%子会社)では執行役員営業本部長として営業組織を牽引。2024年10月より上場会社CINCの100%子会社設立後、現職に就任。