CINC CapitalはCINC(証券コード:4378)のグループ会社です。
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- 公開日2025.09.29
沖縄県のM&A動向は?事例や信頼できる相談先/M&Aを進める時の注意点を解説
M&A(Mergers and Acquisitions)とは、企業の合併・買収を通じて、経営資源の引継ぎや事業拡大を行う手法です。人口減少や高齢化が進む中で、企業の「出口戦略」としてM&Aが注目されています。
日本の最南端に位置する沖縄県も、その例外ではありません。後継者不在の深刻化を背景に、事業の継続や地域経済の維持を目的としたM&Aが、現実的な選択肢として関心を集めています。
本記事では、沖縄県におけるM&Aの最新動向を踏まえ、信頼できる相談先や実務上の注意点についてわかりやすく解説します。
目次
沖縄県のM&Aの最新動向【2025年】
沖縄県では、後継者不足や地域特有の産業構造を背景に、M&Aが注目されています。ここでは、同県におけるM&A最新動向をご紹介します。
後継者不足によりM&Aが注目されている
沖縄県では、後継者不足が深刻な課題となっています。「株式会社帝国データバンク」の2024年の調査によると、同県の後継者不在率は65.3%にのぼり、全国第5位という高い水準にあります。
とりわけ石垣島や宮古島などの離島地域では、進学や就職を機に若年層が本島や本土へ移住しており、地元企業の後継者候補が不足し課題となっています。さらに、沖縄県では家族経営の会社が多く、血縁承継が一般的だったことも後継者不在に拍車をかけています。こうした背景から、事業承継の難しさが浮き彫りになっているのが現状です。
【出典】帝国データバンク「九州・沖縄地区「後継者不在率」動向調査(2024 年)」
沖縄県独特の産業構造がM&Aを促している
沖縄県の産業構造は、本土と比較して独自の特性を持っています。これがM&Aのきっかけとなるケースが少なくありません。
たとえば観光業では、ホテル・飲食店・土産品製造業などが密接に関わりあっており、地域性を生かした一体的な承継が求められます。なかでも特産品を扱う企業において、ブランド価値の継承と販路拡大の両立を目指したM&Aが注目されています。
加えて、泡盛・沖縄そば・紅芋関連商品など、食文化に根ざした製品を扱う製造業の場合、単なる設備の引継ぎではなく、技術・ストーリーを含めたブランド承継が大きな課題となるでしょう。
沖縄県でM&Aの相談どこにする?
本土とは異なる経済環境を持つ沖縄では、適切な相談先の選定がM&Aの成否を左右します。ここでは、沖縄県における代表的なM&Aの相談先をご紹介します。
M&A仲介会社に相談する
沖縄でM&Aを進める際には、仲介会社への相談が効果的です。地域密着型の仲介会社であれば、沖縄県特有の感覚や、地元の商慣習、コミュニティとの関係性など、地域ならではの要素を踏まえた取引が期待できるでしょう。
一方、全国展開型の仲介会社は、本土企業とのマッチングに強みがあり、県外からの出資や業務提携を検討している際に適しています。どの仲介会社を選ぶにしても、業界知識や沖縄県内での支援実績を確認することが大切です。
案件によっては、地域特化型の仲介会社と全国展開型の仲介会社を併用し、県内外の双方から幅広く候補を募る方法も検討しましょう。
金融機関や公的機関を利用する
沖縄県には、本土にはない金融機関・公的機関があり、地域に特化した融資制度や支援策を展開しています。いずれも地域特有の制度や税制優遇、補助金の情報などが得られるため、地元企業のM&Aの相談先におすすめです。
M&Aマッチングサイトで探す
M&Aマッチングサイトは、場所を問わず売り手・買い手をつなげるオンラインサービスです。沖縄県では、観光業や物流業を中心として本土企業からの進出ニーズが高まっており、プラットフォームの活用が有効といえます。
一方、離島地域への進出では、物流インフラや人材確保の難易度が高いため、マッチングサイトを通じての情報収集と並行して、実地調査や専門家のアドバイスを受けることを推奨します。
沖縄県で信頼できるM&Aの相談先一覧
ここでは、沖縄県内で利用できる信頼性の高いM&A相談先と、その特徴についてご紹介します。
沖縄県事業承継・引継ぎ支援センター
「沖縄県事業承継・引継ぎ支援センター」は、中小企業庁の全国支援ネットワークの一環として設置された公的機関です。県内全域を対象に、無料かつ秘密厳守で相談を受け付けており、外部後継者の紹介やM&Aによる承継提案など、幅広い支援を行っています。
受付時間 |
月〜金(祝祭日を除く)8時30分〜17時00分 |
住所 |
〒900-0015 那覇市久茂地1-7-1 琉球リース総合ビル5階 |
電話 |
098-941-1690 |
Webサイト |
沖縄振興開発金融公庫
「沖縄振興開発金融公庫」は、沖縄県の特殊な地理的・経済的環境に対応するために設立された政策金融機関です。同公庫では「事業承継コネクト」というマッチング支援システムを運営しており、県内企業と本土企業との橋渡し役を担っています。
受付時間 |
平日9時〜17時(年末年始を除く) |
住所 |
〒900-8520 那覇市おもろまち1-2-26 |
電話 |
098-941-1785(融資第二部 中小企業融資第一班※中小・小規模事業者向け窓口) |
Webサイト |
CINC Capital
「CINC Capital」は、マーケティングテクノロジーとデータ分析を生かしたM&A仲介会社です。最大の特徴は、独自開発のビッグデータとAI技術を使ったマッチングシステムにあり、従来の手法では発見が困難な最適な譲渡先・譲受先の提案を実現しています。
同社は沖縄県の主要産業である観光業・建設業に対する知見があり、業界特有の課題や機会を踏まえた戦略的なアドバイスを行います。沖縄県のM&A案件にも対応しているため、本土企業とのマッチングを希望する際は、相談することをおすすめします。
受付時間 |
平日9時~18時(年末年始を除く) |
住所 |
〒105-0001 東京都港区虎ノ門1丁目21-19 東急虎ノ門ビル6F |
電話 |
03-4500-7072 |
Webサイト |
沖縄県のM&A事例
沖縄県のM&A事例をご紹介します。自社のM&A検討時の参考にしてみましょう。
YKK AP株式会社による金秀アルミ工業株式会社のM&A
YKK AP株式会社は、2024年5月10日付で金秀建設株式会社から子会社・金秀アルミ工業株式会社(沖縄県西原町)の全株式を取得し、完全子会社化しました。
金秀アルミ工業は沖縄県内に押出、アルマイト塗装、加工・組立といった一貫した生産設備を持つアルミサッシメーカーで、地域に根差した供給力を強みとしています。
今回の買収により、YKK APは自社ビジョン「Evolution2030」に掲げる“Architectural Productsの進化で世界のリーディングカンパニーへ”の実現に向け、沖縄およびアジア地域での安定供給体制を強化する方針です。
両社の技術・販売面でのシナジーに加え、金秀アルミ工業の有資格者の専門技術とYKK APのノウハウを融合させることで、生産効率や技術力の向上が期待されます。
地域供給基盤を拡充しつつ、国際展開も視野に入れた戦略的なM&Aといえます。
【出典】YKK AP株式会社「沖縄のアルミサッシメーカー「⾦秀アルミ⼯業」の全株式を取得 アジア地域での展開を視野に⼊れた製造拠点の強化」
株式会社大塚製薬工場による株式会社ニューロシューティカルズ沖縄のM&A
大塚製薬工場は、2024年1月31日付で株式会社ニューロシューティカルズ沖縄の全株式を取得し、完全子会社化したと発表しました。
新社名は「大塚クリニカルソリューションズ株式会社」となり、沖縄県うるま市を拠点に事業を展開します。
同社は医療現場の課題解決を目的に、革新的な医療機器の開発・提供を進めており、その第一歩として経鼻胃管先端位置確認システム「タムガイドⓇ」の製造販売元となりました。
これにより、大塚グループは同製品の販売までを一貫して担う体制を整え、事業基盤の強化や新製品開発の加速を目指します。
臨床栄養領域における信頼を軸に、医療現場のニーズに対応するソリューション事業を拡大する本件は、大塚製薬工場が医療機器分野において存在感を強める戦略的M&Aといえます。
【出典】株式会社大塚製薬工場「大塚製薬工場、株式会社ニューロシューティカルズ沖縄の全株式を取得し完全子会社化」
株式会社琉球銀行による株式会社リウコムのM&A
株式会社琉球銀行は、2022年8月26日開催の取締役会において、株式会社リウコムが会社分割により新設するIT事業会社(新リウコム)の全株式を取得し、完全子会社化することを決議しました。
新リウコムは同年11月14日に設立予定で、IT事業を承継し、旧リウコムは「RCMアセットマネジメント」へ商号変更されます。
琉球銀行は、デジタルトランスフォーメーションの進展を背景に、自行グループおよび取引先企業の多様化・高度化するデジタル戦略ニーズに応える体制強化を狙っています。
リウコムのIT技術力と銀行の事業性評価に基づくソリューション提案力を融合し、地元企業の経営課題解決やIT化推進に貢献する方針です。
本件は銀行法に基づく「他業銀行業高度化等会社」として認可を受けたうえで実行され、琉球銀行グループにおけるデジタル事業の中核を担うことになります。
地域金融機関によるIT企業の子会社化は、地元企業支援とデジタル対応力強化の両立を目指す動きとして注目されます。
【出典】株式会社琉球銀行「株式会社リウコムが会社分割により設立する IT 関連企業の株式取得(完全子会社化)に関するお知らせ
沖縄県でM&Aを進めるときの注意点
ここでは、主に売り手企業の経営者に向けて、沖縄県でM&Aを進める際の注意点をご紹介します。地域特有の地理的・文化的要因や産業構造を十分に理解した上で、事業承継の戦略を立てましょう。
沖縄特有の地理的・文化的要因を考慮する
沖縄県は、離島を多く含む島嶼県であるため、本土と比べて物流コストや輸送時間がかかりやすい特性があります。こうした影響で、原材料の調達や製品の出荷に追加コストが発生することが多く、事前の収支見積もりには注意が必要です。
さらに、沖縄県の労働市場は非正規雇用率が高く、正社員の確保や定着が難しい傾向にあります。M&Aを検討する際は、人材の安定性や定着策についても計画を立てることが重要です。
また、「うちなータイム」と称される独自の時間感覚や商慣習は、意思決定や業務の進行スピードに影響を及ぼすことがあります。
併せて、気候条件にも注意が必要です。特に台風シーズンには、施設の被害や物流停止による業務遅延、売上減少といった影響が出やすく、あらかじめリスク対応策を講じておきましょう。
観光業・建設業特有の課題を把握する
観光業は沖縄県を代表する主要産業ですが、売却を検討する際には、季節変動による収益のばらつきに注意が必要です。特に夏季の繁忙期と冬季の閑散期で売上に大きな差が生じやすく、買い手からは収益の安定性に不安を持たれることがあります。
そのため、事前に通年の収支データを整理し、リピーター戦略やオフシーズンの収益確保策など、安定化への取り組みを説明できるようにしましょう。
また、建設業においては公共事業への依存度が高い傾向があるため、入札資格の承継や自治体・地域コミュニティとの関係維持を考慮した事業引継ぎ戦略が求められます。
適切な専門家に相談する
沖縄でのM&Aを成功させるには、地域特有の産業特性や法制度に精通した専門家の支援が欠かせません。M&A仲介会社に在籍するアドバイザーとの連携を通じて、地域の実情に即した事業承継・会社売却に取り組みましょう。
M&Aを検討する際に知っておきたい基礎知識
沖縄県でのM&Aは、後継者不足や観光業を中心とした産業構造といった背景を把握しておくことで、実効性の高い戦略を立てやすくなります。このほかに、M&Aを検討する際に知っておきたい基礎知識をご紹介します。
M&Aと事業譲渡の違いはなんですか?
M&Aにはさまざまな手法がありますが、代表的なものとして「株式譲渡」と「事業譲渡」が挙げられます。
株式譲渡は、会社の株式を第三者に譲ることで経営権を移転する手法です。企業全体の権利義務が包括的に引き継がれます。
一方、事業承継は会社の特定事業や資産・負債のみを譲渡する手法です。譲渡対象を柔軟に設定できる点が特徴といえるでしょう。
【関連記事】M&Aとは?意味や目的、手法ごとのメリットデメリットをわかりやすく解説
M&Aのメリットとデメリットはなんですか?
売り手企業の主なメリットとして、後継者不足の解決、創業者利潤の確保、従業員雇用の継続が挙げられます。反面、M&A後に生じる、本土企業との文化的違いが大きな課題となるかもしれません。
【関連記事】M&Aのメリットとデメリットは?買い手と売り手の立場別にわかりやすく解説
M&Aの相場はどのくらいですか?
M&Aの相場は企業の規模や業種により大きく異なります。一般的な算出方法は時価純資産に営業権を加算する方法、マルチプル法などが使われます。なお、DCF法は主に上場企業同士やスタートアップのM&Aで用いられる手法です。
M&Aへ向けて自社の企業価値を知りたい方は、以下のページから「企業価値算定シミュレーション」をご利用ください。
【参考】企業価値算定シミュレーション
M&Aでおすすめの相談先はどこですか?
実績豊富なM&A仲介会社、金融機関、公的機関などが挙げられます。特に沖縄県では地域特性を理解し、観光業や建設業に精通したM&A仲介会社を選ぶのがポイントです。
【関連記事】M&Aはどこに相談する?相談先の選び方やメリットデメリットを解説
沖縄県のM&Aのポイントまとめ
沖縄県でM&Aを進めるには、地域特有の産業構造や文化的背景を踏まえた対応が必要です。観光業の季節性や建設業の公共依存、地域との信頼関係など、事前に理解しておくべき点が少なくありません。
また、沖縄県では特区制度や税制優遇措置、補助金制度などが充実しているため、これらを活用した事業承継やM&Aの戦略立案を支援してくれる相談先を選ぶとよいでしょう。こうした地域の事情に詳しい専門家へ相談することが、M&Aを成功へ導くポイントです。信頼できるパートナーと連携して、スムーズに事業承継を進めましょう。
この記事の監修者

CINC Capital取締役執行役員社長
阿部 泰士
リクルートHRマーケティング、外資系製薬メーカーのバクスターを経て、M&A業界へ転身。 日本M&AセンターにてM&Aアドバイザーとして経験を積み、ABNアドバイザーズ(あおぞら銀行100%子会社)では執行役員営業本部長として営業組織を牽引。2024年10月より上場会社CINCの100%子会社設立後、現職に就任。