CINC CapitalはCINC(証券コード:4378)のグループ会社です。
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M&A / 基礎知識
- 公開日2025.04.10
- 更新日2025.04.14
合同会社は売却できる?困難と言われる理由や売却方法、手続きについて解説
合同会社を経営しているものの、事業の継続が難しくなったり、新たな挑戦のために売却を検討したりすることは珍しくありません。
しかし、「合同会社は売却が難しい」といわれることも多く、具体的な方法がわからず困っている方も多いのではないでしょうか。
本記事では、合同会社の売却が困難とされる理由や、売却を成功させる方法、手続きの流れについて解説します。売却を検討している方は、ぜひ参考にしてください。
目次
合同会社は売却できる?
合同会社は、2006年の会社法改正により新たに設けられた会社形態です。アメリカで見られる会社形態のLLC(Limited Liability Company)を参考に取り入れられました。株式会社とは異なり、出資者と経営者が同一である点が特徴であり、所有と経営が分離していません。そのため、合同会社の「社員」とは従業員のことではなく、出資者を指します。
合同会社のM&Aは可能ですが、株式会社とは異なるスキームや手続きが必要です。会社法ではM&Aに関する会社形態の制限はないため、事業譲渡や持分譲渡を通じて経営権の移転を行えます。しかし、合同会社の売却は、株式会社と比較すると一般的ではなく、容易ではないのが実情です。
合同会社のM&Aが難しいと言われる理由
合同会社のM&Aはハードルが高いといわれる最大の要因は、持分譲渡や事業譲渡に関する厳しいルールがあることにあります。ここでは、合同会社のM&Aが難しい具体的な理由を解説します。
事業譲渡の場合でも社員の半数の同意を得る必要がある
合同会社では、事業譲渡を行う際に原則として総社員の同意が必要です。これは株式会社の特別決議(議決権の3分の2以上の賛成)よりも厳しい要件であり、複数の社員がいる場合、全員の合意を得ることが難しい場合もあります。ただし、定款で別段の定めを置くことにより要件を緩和することが可能です。
社員全員の同意がなければ持分の譲渡ができない
合同会社の持分を譲渡する場合、社員全員の同意が必要です。そのため、複数の社員がいる合同会社では、1人でも反対すれば売却が実現できません。株式会社のように、取締役会や株主総会の承認だけで株式を譲渡できる仕組みとは大きく異なります。このように、合同会社は少人数の経営を前提としているため、持分の譲渡に高いハードルが設定されているのです。
株式会社への組織変更が難しい
合同会社を売却しやすくするために株式会社へ組織変更する方法もありますが、これには社員全員の同意が必要です。また、組織変更計画書の作成、官報公告、債権者保護手続きなど、多くの手続きを経る必要があり、時間とコストがかかります。そのため、M&Aを前提とした組織変更は、実務的に難易度が高いとされています。
合同会社を売却する方法と手続き
合同会社を売却する方法にはいくつかの選択肢があり、それぞれ手続きや必要な合意が異なります。売却を検討する際には、会社の資産や負債の状況、買い手の意向、スムーズな手続きを進めるための準備などが重要です。ここでは、合同会社の売却方法として代表的な「事業譲渡」「持分譲渡」「株式譲渡(組織変更後)」「吸収合併」について解説します。
社員の同意を得て事業譲渡を行う
事業譲渡は、事業の一部または全部を買い手に譲渡する方法です。持分譲渡と異なり、特定の事業のみを選んで売却できるのが特徴です。主な手続きは以下の通りになります。
- 事業譲渡契約書の作成
- 事業譲渡に関する総社員の同意を取得(原則。合同会社の場合)
- 事業譲渡契約の締結
- 資産・負債の移転手続きの実施
事業譲渡契約書には、譲渡対象となる資産や負債、譲渡金額、譲渡実行日、表明保証、補償などが記載されます。また、個々の資産や契約ごとに承継手続きが必要となるため、クロージングのスケジュールに影響を与える点に注意が必要です。税理士や弁護士と相談しながら進めることが推奨されます。
合同会社のままで持分譲渡を行う
合同会社の持分を第三者に譲渡することで、会社の経営権を引き継ぐことができます。持分は一部だけでなく、すべてを譲渡することも可能であり、株式会社における株式譲渡と同様の効果が得られます。主な手続きは以下のとおりです。
- 持分譲渡契約書の作成
- 社員全員の承認を取得(定款で別段の定めがない場合)
- 登記手続きの実施(業務執行社員や代表社員が変更になる場合)
持分譲渡契約書には、譲渡対象となる持分額や譲渡金額、譲渡実行日などが記されます。また、持分譲渡を行う際には、契約の内容や手続きを事前に確認し、必要に応じて専門家のサポートを受けることが重要です。
株式会社に変更して株式譲渡を行う
合同会社から株式会社へ組織変更を行った後に、株式譲渡を通じて会社を売却する方法です。買い手が合同会社のまま買収するのではなく、株式会社に変更することを前提としている場合、このスキームが適しています。主な手続きは以下のとおりです。
- 組織変更計画の作成
- 組織変更計画に対する全社員の同意を取得
- 官報公告の実施
- 債権者への個別催告
- 株式会社への組織変更後、代表取締役の選任
- 登記手続き
組織変更には多くの手続きが必要であり、債権者への対応や公告のスケジュール調整が求められます。また、全社員の同意が必要なため、社内調整も重要なポイントになります。
吸収合併を検討する
合同会社の吸収合併も、M&Aの手法の一つとして活用できます。買い手企業が存続会社となり、売り手の合同会社が消滅会社となる形で合併を行います。主な手続きは以下の通りです。
- 合併契約書の作成
- 合併契約に対する全社員の同意を取得
- 合併契約書の締結
- 官報公告の実施
- 債権者への個別催告
- 登記手続き
合併契約書には、存続会社および消滅会社の情報、効力発生日、対価の内容などが記載されます。合同会社の合併には全社員の同意が必要であるため、持分譲渡や組織変更と同様に慎重な社内調整が大切です。
合併手続きは会社法に基づいて厳格に定められており、不備があると法的リスクを抱える可能性があります。弁護士などの専門家と相談しながら進めることが重要です。
合同会社の売却にかかる税金
合同会社を売却する際に発生する税金は、売却方法によって異なります。一般的な方法として、持分譲渡と事業譲渡の2つを例に解説しましょう。
持分譲渡では、売却益を受け取るのは出資者である個人となり、譲渡所得として課税されます。税率は所得税15%、住民税5%、復興特別所得税0.315%で、合計20.315%です。また、持分譲渡で所有期間が5年を超える場合は長期譲渡所得(税率20.315%)、5年以下の場合は短期譲渡所得(税率39.63%)として区分されます。課税対象となる売却益は、持分の売却金額から取得費や譲渡費用などを差し引いた金額で計算されます。
一方、事業譲渡では、法人が得た譲渡益に法人税がかかります。税率は会社の規模や利益額によって異なり、中小規模の法人で約23.2%、大規模の法人で約30%が目安です。また、株式や土地など、売却対象の資産によっては消費税も発生することがある点に留意しましょう。
例えば、棚卸資産や器具備品などは課税、株式や土地などは非課税となります。買い手が負担するのが一般的ですが、売り手による納税が必要とされます。そのため、契約時に消費税を考慮した価格設定を行うことが重要です。どの方法を選ぶかで税負担が大きく異なるため、事前に税理士に相談し、最適な売却方法を検討しましょう。
まとめ|合同会社の売却に関するご相談はCINC Capitalへ
合同会社の売却は、持分譲渡と事業譲渡のどちらを選択するかによって手続きや税負担が大きく異なります。それぞれのメリット・デメリットを理解し、適切な方法を選ぶことが重要です。また、売却を成功させるためには、適切な相手を見つけ、スムーズな交渉を進めることが欠かせません。
CINC Capitalでは、合同会社のM&Aに関する豊富な実績を持ち、売却の流れや適切なスキームの提案、買い手探しまで丁寧にサポートいたします。合同会社の売却を検討されている方は、ぜひCINC Capitalへご相談ください。
この記事の監修者

CINC Capital取締役執行役員社長
阿部 泰士
リクルートHRマーケティング、外資系製薬メーカーのバクスターを経て、M&A業界へ転身。 日本M&AセンターにてM&Aアドバイザーとして経験を積み、ABNアドバイザーズ(あおぞら銀行100%子会社)では執行役員営業本部長として営業組織を牽引。2024年10月より上場会社CINCの100%子会社設立後、現職に就任。