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債務超過でも会社売却はできる?買収側が評価する基準や成功のポイントを解説

売却 / 会社売却

  • 公開日2025.06.03
  • 更新日2025.06.03

債務超過でも会社売却はできる?買収側が評価する基準や成功のポイントを解説

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「債務超過の会社でも売却できる?」そんな不安を抱えている経営者の方も多いことでしょう。資産よりも負債が上回る状態では、倒産や清算しか選択肢がないと思われがちですが、実は適切な手法を選び、会社の持つ価値を正しく伝えることで、売却を実現できる可能性は十分にあります。

本記事では、債務超過の企業でも会社売却が可能な理由や、実際に売却を成功させるためのポイントを、買い手側の評価基準や支援制度の紹介も交えながら、わかりやすく解説します。

債務超過とは?

債務超過は企業の負債が資産を超える状態であり、深刻な財務問題を示しています。債務超過の状況では、企業が持つ資産をすべて売却しても全ての負債を返済できないため、企業の財務状況が非常に厳しく経営上のリスクが高まります。

結果として、成長戦略や事業計画の見直しを余儀なくされる場合が多く、また外部からの信用低下や資金調達が困難になるケースがあります。企業としての存続には大きなリスクが伴い、将来的な経営戦略の再考が求められる重要な局面です。

資産と負債の関係性

債務超過という状態は、企業の持つ資産がその負債よりも少ない場合を指します。

資産とは企業が所有する資源で、現金・設備・在庫などが含まれます。資産とみなされるものは将来的に収益を生む可能性があるため、企業の価値を支える重要な要素です。

また、負債とは企業が返済しなければならない金額で、借入金や買掛金などが含まれます。負債は企業の資金調達手段の一つですが、過剰になると財務リスクが高まり、信頼性や信用度に悪影響を及ぼすのです。

債務超過は、企業の貸借対照表を見れば確認できます。貸借対照表で資産総額と負債総額を比較し、負債が資産を超えている場合、その企業は「簿価債務超過※1」と判断されます。さらに、資産総額から負債総額を引いた純資産がマイナスであれば、純粋に債務超過であることが分かります。

しかし、貸借対照表における資産や負債の金額は過去の評価に基づいており、現在の実態が反映されていない場合もあるので、現実の状況を反映するために「実態貸借対照表」を使用し、資産や負債を時価で換算して評価することが重要です。この実態貸借対照表で負債が資産を超え、純資産がマイナスであれば、「実質債務超過※2」となります。

※1…簿価債務超過とは、企業が保有する資産をすべて売却しても、負債を返済しきれない状況を意味し、企業の負債総額が資産総額を上回っている状態を指す

※2…実質債務超過とは、企業が保有する資産の中に不良債権や評価損が含まれている場合に発生する、企業の財務諸表上では債務超過ではないように見えるが、資産を時価で評価し直すと負債が資産を上回る状態のこと

債務超過と赤字の違い

債務超過と赤字は、企業の財務状態を示す際にしばしば混同されがちですが、実は異なる概念です。赤字とは、企業の一定期間における収益が、同期間の費用を下回っている状態を指します。つまり、企業が収入以上に支出をしてしまった場合に発生するのが赤字です。

赤字は短期間の間に発生し、損益計算書で判断されます。

一方、債務超過とは、上記で説明した通り貸借対照表上で判断されるものでああり、企業の資産では負債をすべて返済できない状態を指すのです。

例えば、ある企業が1年間に1千万円の赤字を出したとしましょう。ただし、その企業が資産を2億円持ち、負債が1億円である場合、債務超過にはなりません。

しかし、注意すべき点は、赤字が続くと企業の資金が減少したり、負債の増加により、最終的には債務超過に陥る可能性があるということです。したがって、赤字が企業の財務基盤に与える影響を考慮する際には、債務超過のリスクも視野に入れる必要があります。

債務超過と赤字は相互に関連し得るものの、基本的には異なる財務状態を示す用語です。経営判断を行う際には、両者の違いを理解し、それぞれの影響を正しく把握することが求められます。

債務超過でも会社が売却できる理由と条件

債務超過の企業でも、売却が可能な場合があります。ここでは、なぜそのような状況でも会社が売却できるのか、そしてそのための条件について解説します。

具体的な理由と条件について詳しく見ていきましょう。

買い手のニーズや事業再生の可能性について

債務超過の企業でも、優れた人材を多く抱えている場合、その人材を目的として買収を検討する企業が存在します。特に特定の技術やノウハウを持つ従業員が多い場合、買い手はその人材の価値を重視します。

また、買い手が自社の事業とシナジー効果※3を見込んで債務超過の会社を買収するケースもあります。コスト削減や収益増加を期待した上で、負債を引き受けるリスクを上回るメリットがあると判断される場合があるのです。

そして、事業再生や立て直しを専門とする企業や投資家が、債務超過の企業を低価格で買収し、その後の経営改善を目指す場合があります。彼らは、企業の潜在的な価値を見出し、積極的に買収を進めるのです。

債務超過の状態でも、適切な買い手が見つかれば会社の売却は十分に可能です。人材の価値やシナジー効果、再生の可能性を重視する買い手が存在するため、債務超過だからといって売却を諦める必要はありません。

※3…シナジー効果とは、相乗効果。M&Aにおいては、合併や買収において、それぞれの企業が単独で事業を行うよりも大きな効果を生みだすことを指す

連帯保証債務について

連帯保証債務とは、会社が借入金の返済を行えない場合に、経営者などの連帯保証人がその返済責任を全額負う契約です。通常の保証契約と異なり、連帯保証人は主債務者の財産に関わらず、直接返済を求められます。経営者が会社の借入に連帯保証人として名を連ねている場合、売却後も債務の責任を負う可能性があります。

会社売却時には、連帯保証債務が自動的に解除されるわけではありません。売却後も債務が残るケースがあり、元経営者がその負担を負うことになります。そのため、会社の売却を進める際には、事前に金融機関と連帯保証の解除に関して交渉し、解決策を見つけることが重要です。

また、会社売却プロセスの初期段階で連帯保証債務の問題を詳細に検討し、専門家の協力を得て適切な対応策を講じることで、売却後のリスクを軽減できるできます。

債務超過で会社を売却する手法

債務超過の会社を売却する場合、株式譲渡、事業譲渡、吸収分割などいくつかの手法が考えられます。それぞれの手法について理解し、最適な売却方法を選びましょう。

株式譲渡

株式譲渡は、売り手側の株主が保有する株式を、そのまま他社に譲渡、売却する方法です。売り手側は買い手側の子会社となり、買い手側に経営権が移ります。

そして会社の所有権をまるごと新しいオーナーに移すことで、債務超過の状態も一緒に引き継がれるという特徴があります。そのため、債務超過の問題を抱えた企業でも、株式譲渡を通じて新たな所有者に負担を引き渡します。

また、売り手側の経営者が負債の保証人になっている場合は、保証人の解除を行わなければなりません。解除を行うには買い手側による借り換えもしくは負債の返済を行うケースが比較的多いです。

株式譲渡は、現行の経営体制や従業員をそのまま維持できるというメリットを持っています。企業の継続性を重視しながら、新しいオーナーにその会社の財務的な状況を受け入れてもらうことで、一連の運営をスムーズに移行させるのです。

株式譲渡は以下の記事で詳しく解説しているので併せてご覧ください。

【参考】株式譲渡とは?メリットやデメリット、事業譲渡との違いも解説

事業譲渡

事業譲渡は、売り手側企業の特定の事業だけを売却する方法です。会社全体ではなく、一部の事業や資産を売却するか選択できる柔軟性があるため、債務超過の状況でも、特定の事業を引き渡しつつ、最適な形で負債の負担を軽減できます。

ただし、売却後の負債処理に関しては、選択肢があるので注意が必要です。

まず、売却側が負債を引き続き保有する場合、事業譲渡で得た売却益を負債返済に充てるか、負債を保有したまま経営を続けることになります。

一方、負債を買収側が引き継ぐ場合には、譲渡金額にその負債を反映させるため、価格がゼロに近くなる場合もあります。しかし、買収側が事業の無形資産やシナジー効果を評価する場合、負債が多い事業でも一定の譲渡金額がつく場合もあるでしょう。

事業譲渡を行い、売り手は特定の部門を適切な価格で譲渡することで資金調達が可能となり、買い手は自社の事業とのシナジー効果を見込んで特定の部門を取得します。

事業譲渡は以下の記事で詳しく解説しているので併せてご覧ください。

【参考】事業譲渡とは?メリットやデメリット、手続きをわかりやすく解説

吸収分割

吸収分割は、組織再編に用いられる会社分割の方法で、売り手企業の事業の権利義務の全部または一部を買い手側へ承継させる方法です。

吸収分割を利用すると、会社全体を清算する前に、会社の収益性の高い部分のみを他社に移転でき、持続的な運営を図ることができます。

さらに、吸収分割は特定の事業を売却しやすくするだけでなく、残る部門の資産や債務を的確に管理できるというメリットがあります。

吸収分割は以下の記事で詳しく解説しているので併せてご覧ください。

【参考】吸収分割とは?事業譲渡や吸収合併、新設分割との違い、手続きの流れを解説

新設分割と株式譲渡

新設分割と株式譲渡を併用する手法で、この手法では売り手企業が特定の事業を新たな会社へ移行し、新設した会社の株式を買い手側に譲渡します。

企業が特定の事業を他の企業と切り離して運営しやすくし、新たな株主を探す際にも有効で、事業のリスクを分散し、安定した運営の下地を作ることが可能です。

新設分割と株式譲渡を併せた手法では、株主や投資家、または顧客や従業員などの多くの利害関係者に対して、それぞれが目的を達成できるような柔軟な経営が実現できます。

新設分割は以下の記事で詳しく解説しているので併せてご覧ください。

【参考】新設分割とは?仕組みや吸収分割との違い、手続き、メリットデメリットをわかりやすく解説

第二会社方式

第二会社方式とは、売り手側の優良事業を受け皿となる第二会社に承継させ、第二会社の株式を買い手側に譲渡する手法です。売り手側は不要な事業や負債を清算します。

この方法は、旧会社の清算を前提に進められ、新会社が事業や資産を承継する形で再スタートを切ることが可能です。

新たに設立した会社が旧会社の資産や事業を引き継ぎ、旧会社自体は債務整理や破産手続きを進められるため、新会社は債務の重圧から解放され、資産や事業の運営に注力できます。したがって、新しい会社が経営資源を用いて再出発できるというメリットがあります。

第二会社方式は以下の記事で詳しく解説しているので併せてご覧ください。

【参考】第二会社方式とは?メリットやデメリット、スキーム、債務免除益や税務処理のポイントを解説

吸収合併

吸収合併は、売り手企業の全ての権利義務を買い手側企業へ承継・合併する手法です。この方法を用いることにより、買い手企業は債務超過の会社の全ての資産と負債を引き受けますが、その一方でシナジー効果に期待して承継・合併を行うのです。

例えば、ある業界で競合している企業が市場シェアを拡大し、競争力を高めるために債務超過の会社を吸収するケースなどがあります。

吸収合併は、特定の技術や人的資源、顧客基盤を迅速に獲得する手段として活用される場合があり、承継した赤字で黒字の相殺が可能なため、場合によっては法人税の負担を抑えられる可能性があります。

吸収合併については以下の記事で詳しく解説しているので併せてご覧ください。

【参考】吸収合併とは?メリットやデメリット、手続きの流れをわかりやすく解説

債務超過で会社を売却するメリット

債務超過の状態にある会社でも、売却には多くのメリットがあります。売り手側と買い手側のそれぞれの視点からメリットを見てみましょう。

売り手側のメリット

債務超過に陥っている企業にとって、売却は倒産を回避するための重要な手段です。事業譲渡の場合、売却によって得た売却益を法人が債務返済に充てることで、財務健全化を図ります。

一方、株式譲渡の場合は、売却益はオーナー個人や株主に帰属しますので、売却益の活用方法は異なります。M&Aの手法によって、売却のアプローチや考慮すべき点は大きく異なるのです。

まず、事業譲渡や第二会社方式では、買い手企業がどの範囲の資産と負債を引き継ぐのかを柔軟に設計できます。売り手は、どの債務を移転し、どの債務を自社に残すかを交渉できるため、債務整理の観点からも戦略的な検討が必要です。

次に、株式譲渡では、会社の法人格がそのまま移転するため、原則としてすべての資産と負債が買い手に引き継がれます。この場合、オーナー経営者の連帯保証の解除が重要な交渉ポイントとなります。

いずれのスキームでも、債務超過の状態では売却価格が想定よりも低くなるリスクがあります。しかし、事業の将来性や保有する技術・人材・顧客基盤などの強みを適切にアピールし、買い手企業との相乗効果を明確に示すことで、より良い条件での売却が可能となる場合もあります。

事前の準備や専門家との連携を通じて、最適なスキームと条件を見極め、計画的に売却を進めることが成功の鍵となります。

この修正により、株式譲渡と事業譲渡等の違いが明確になり、それぞれのスキームにおける考慮点や戦略が読者に伝わりやすくなります。また、債務超過企業の売却における価格交渉のポイントについても、より実践的な情報を提供できます。

買い手側のメリット

債務超過の企業は、市場での評価額が低いため、買い手は少ない資本で事業資産を取得できるチャンスがあります。特に、売却を急ぐ債務超過企業の場合、買収価格が割安となるケースが多く見られます。

債務超過であってもシナジー効果を期待できる企業の買収により、新たな市場や販路を開拓し、新しい顧客基盤や未開拓地域へのアクセスを獲得できます。また、売り手企業が持つ特許や技術、ノウハウを取り入れれば、競争力を高め、市場での優位性を確保できるのです。

ただし、債務超過企業の買収にはリスクも伴います。特に、負債の引き受けや経営の立て直しが求められる場合には、買い手はそのリスクを十分に認識し、買収後に事業統合や効率化を進めるシナジー効果を実現することが不可欠です。

債務超過で会社を売却するリスク

債務超過の状態で会社を売却することには、多くのリスクが伴います。特に、売却後の債務残高や詐害行為とみなされるリスクに注意が必要です。

以下では、リスクの具体的な内容とその対策について解説します。

売却後も債務は残る

債務超過企業の売却では、選択するスキームによって債務の扱いが大きく異なります。

株式譲渡の場合は、会社の法人格はそのままで株主が変わるため、すべての債務は自動的に買い手企業に引き継がれます。売り手オーナーは、自身が連帯保証人となっている債務について、金融機関との交渉により保証債務を解除してもらう必要があります。この保証解除が得られない場合、売却後も元オーナーに保証債務が残るリスクがあります。

事業譲渡や第二会社方式では、選択的に資産や負債を移転できるため、一部の債務が元の会社に残ることがあります。この場合、売却で得た対価が債務の返済に不十分だと、残存債務について債権者から弁済を求められる可能性があります。

債務超過の状態にある企業を売却する際に、売却後も債務が残るケースはしばしば見られる状況です。売却時に全ての債務の清算が難しい場合に発生する可能性があり、債務が残った場合、売却後に新しい経営体が債務を引き継ぐことになります。

したがって、債務超過企業の売却を検討する際には、事前に債権者との協議を行い、適正な価格での取引を心がけ、透明性のある手続きを踏むことが重要です。専門家の支援を得て、債権者の利益も考慮した売却計画を立てることで、売却後のトラブルを防ぐことができます。

詐害行為とみなされるおそれがある

債務超過企業の売却において、「詐害行為」とみなされるリスクはスキームによって大きく異なります。詐害行為とは、債権者を害する意図をもって行われた法律行為のことで、民法上で取り消しの対象となります。

事業譲渡では、会社の資産を本来の価値よりも著しく低い価格で売却し、その結果として債務の適切な返済を回避しようとすると、詐害行為に該当する可能性が高まります。債権者は詐害行為取消権を行使して売却を取り消したり、損害賠償を求めたりする可能性があります。

第二会社方式では、優良資産のみを新会社に移転させ、不良資産や債務を旧会社に残すような場合、特に詐害行為のリスクが高まります。資産の移転が適正な対価なしに行われると、債権者を害する意図があると判断される可能性があります。

株式譲渡では、会社の法人格が変わらず債務もそのまま引き継がれるため、原則として詐害行為のリスクは低くなります。ただし、株式の売却価格が著しく低い場合や、売却代金が債権者への弁済に使われない場合には、株主レベルでの詐害行為が問題となる可能性があります。

詐害行為を避けるための対策としては:

  1. 適正な価格での取引を行う(第三者機関による企業価値評価の活用)
  2. 主要な債権者との事前協議を行い、同意を得る
  3. 債権者への公平な弁済計画を立てる
  4. 取引の透明性を確保する
  5. M&A専門家や法務専門家の助言を受ける

などに注意しなければなりません。

債務超過企業のM&Aでは、債権者保護の観点も重要であり、専門家のサポートを受けながら適切なプロセスを踏むことで、詐害行為のリスクを最小限に抑えることができます。

債務超過の会社を売却するときに買収側が評価するポイント

下記の表は、買収を検討する企業が、対象となる売り手企業の価値や将来性を評価する際の主要なポイントをまとめたものです。

事業の市場での強さや成長性、顧客基盤の安定性、独自の技術力、優秀な人材、ブランド力、販売チャネル、保有資産、契約状況、そして買収後の統合による相乗効果などが、総合的に判断されます。これらの要素を多角的に分析し、買収が検討されます。

【買収側が評価するポイント一覧】

事業価値・将来性

・特定の市場でのポジションやシェア
・成長可能性(売上拡大や市場拡大余地)
・競合との差別化要素
・市場環境やトレンドとの親和性

顧客基盤・取引先

・安定した既存顧客数や継続率(リピート率)
・特定の大手企業との取引実績
・サブスクリプションモデルやストックビジネス構造※4の有無

知的財産・技術力

・特許や商標、ノウハウの保有
・ITシステムや自社開発ツール
・技術者、エンジニアなど専門人材の在籍
・技術的障壁の有無(参入障壁)

人材・組織

・キーマンの存在(経営者、営業トップなど)
・組織体制や社員の定着率
・従業員のスキルや経験
・労務問題や訴訟リスクの有無

ブランド・評判

・業界内でのブランド価値や認知度
・評判や口コミ、取引実績
・Webサイト、販促物などのマーケティング資産

販売チャネル・販路

・自社ECや営業網、代理店ネットワークの有無
・SNSやメルマガなどのリスト資産
・海外展開や輸出実績

設備・資産

・工場や設備、不動産などの有形固定資産
・ソフトウェアやライセンスなどの無形資産
・備品や車両、リース契約の状況

契約・ライセンス関連

・有効な契約関係(仕入れ先、販売先)
・行政許可や業種ライセンス(特に建設業、介護、運送など)

M&A後のシナジー

・買収後の統合により生まれるコスト削減・売上拡大効果
・地域や業界、顧客層の補完関係
・クロスセル※5やアップセル※6の可能性
・人材や設備、顧客の共有による効率化


※4…ストックビジネス構造とは、顧客との長期的な契約を基に、継続的に収益を得ることができるビジネスモデルの仕組みのこと。顧客が一度契約を結ぶと、解約されない限り安定した収入が得られ、時間とともに収益が蓄積されていくことが特徴。

※5…クロスセルとは、顧客が購入を検討している商品や、すでに購入した商品に関連する別の商品を提案し、追加購入を促す営業手法のこと。M&Aにおいては、異なる商品を扱う企業が統合することで、双方の顧客に対して新たな商品を提案する機会が生まれる。

※6…アップセルとは、顧客が購入を検討している商品やサービスに対して、より高価格帯の上位モデルや追加機能を提案し、購入を促す営業手法のこと。M&Aにおいては、アップセルを通じて、既存の顧客に対してより高価格帯の製品やサービスを提案することで、売上を増加させること。

債務超過でも会社売却を成功させるポイント

債務超過の状態でも会社を売却することは可能ですが、取引を成功させるためにはいくつかのポイントが重要です。

例えば、適切なスキームの選択や買い手企業の選定などが挙げられます。以下に、成功のポイントを具体的に解説します。

自社の状況に合った適切なスキームを選択する

自社の状況に最適な売却スキームの選択は、債務超過の状態から会社を売却する際に最も重要な要素の一つといえます。

会社の財務状況や業態に応じて、選択可能な売却手法が異なるため、事前に適切なスキームを選び出すことで、売却プロセスが円滑に進み、理想的な結果につながるでしょう。

例えば、事業譲渡は特定の事業部門や資産を分割して売却するため、部分的に切り離して処理したい場合に効果的です。一方、株式譲渡は会社全体を買い手に引き継ぐ際に適しています。また、第二会社方式を用いれば、新たな法人を設立し、そこに事業資産を移行させて新しいスタートを切れるのです。

スキームの最適性は、会社それぞれの状況により異なります。

自社の状況に応じて最適なスキームを選択して、債務超過の状況にあっても、最大限の利益を生むことができます。その結果、会社の財務状況を改善し、関係者にとっても負担が少ない形で円滑に売却が進められます。

シナジー効果を見込める買い手企業を探す

債務超過で会社を売却する際には、シナジー効果を見込める買い手企業を見つけることが成功の鍵です。債務超過の企業が買収される際、買い手企業が自社の事業と統合することで、コスト削減や収益増加が期待できる場合、買収が進む可能性が高まります。

例えば、同じ業界や関連業種の企業が買い手になると、リソースや顧客基盤を共有することで相乗効果を発揮できる場合があります。

また、同じ業界で市場シェアを拡大したいと考えている企業が債務超過の会社を買収することで、市場シェアを拡大し、経済的なメリットを得ることができます。

上記のようなシナジー効果が明確に見込める場合、買い手企業は積極的に買収に動く場合が多いです。

したがって、シナジー効果を見込める買い手を見つけることが、会社の評価を高め、たとえ債務超過であっても有利な条件で売却できるポイントなのです。売却を検討する際には、シナジー効果を活用し、自社の価値を買い手にしっかりと伝えることが重要となります。

買い手側の与信を確認しておく

買い手側の与信を確認しておくことは、債務超過の会社を売却する際に非常に重要なステップです。買い手企業の与信状況の事前確認が、売却後の代金回収リスクを減らすことにつながります。これは、会社売却後に発生する可能性のあるトラブルを未然に防ぎ、安心して取引を完了させるために欠かせないプロセスです。

買い手企業の信用リスクの評価によって、信頼できる企業に売却できるという安心感が増します。具体的には、買い手企業の財務諸表を確認や、信用調査レポートの取得、業界内での評判を調べるなどが一般的な方法です。

予期しない代金未回収のリスクを避けるためには、売却前に十分な調査を行い、買い手の信頼性を評価することが重要です。

会社売却を決めるタイミングを逃さないようにする

会社を売却する際には、そのタイミングの見極めが非常に重要です。売却を考えている場合、タイミングを逃すと市場環境や会社の財務状況が悪化し、売却条件が悪くなる可能性があります。

市場が好調な時期や競合企業の買収意欲が高い時期に売却を決断すると、より高い評価を受けやすくなります。タイミングを活かすことで、売却の条件がより有利となり、債務超過状態であってもその影響を軽減できるでしょう。

売却を考えている場合、市場の動向や業界の状況を常に把握し、適切なタイミングで決断することが欠かせません。特に債務超過の状態にある企業にとっては、早めの決断が重要です。

まとめ|債務超過で会社売却を検討している際は早めに専門家へ相談を

債務超過の会社でも売却は不可能ではありませんが、成功させるためには適切な手法を選び、リスクをしっかりと管理することが重要です。

本記事でご紹介したように、買い手は「今の数字」だけではなく、「その先にある可能性」に注目します。シナジー効果や人材、技術力、事業基盤なの強みが評価され、買収という形で再スタートを切るチャンスも十分にあります。

また、売却や再建を検討する企業の支援として、中小企業庁が提供する「プレ再生支援」や「再生支援」も活用できます。

「プレ再生支援」は、早期の段階で経営の立て直しに向けたアドバイスや事業分析を受けられるもので、倒産や法的整理に至る前に有効な支援策を講じることが可能です。

「再生支援」では、地域の中小企業再生支援協議会が中心となり、金融機関との調整や事業再生計画の策定を支援してくれます。これらの支援は公的機関が行っているため、安心して相談できます。

債務超過の会社を売却しようと考えている場合は、まずは経験豊富な専門家や、こうした公的支援制度の利用を検討することをお勧めします。

【参考】中小企業庁「プレ再生支援・再生支援」

専門家から適切なアドバイスが、会社にとって最も有利な方法を見つけられるポイントとなります。早めの相談が成功への第一歩となりますので、積極的に動きましょう。

CINC CapitalはM&A仲介協会会員および中小企業庁のM&A登録支援機関として、M&Aのご相談を受け付けております。業界歴10年以上のプロアドバイザーが、お客様の真の利益を追求します。

この記事の監修者

阿部 泰士

CINC Capital取締役執行役員社長

阿部 泰士

リクルートHRマーケティング、外資系製薬メーカーのバクスターを経て、M&A業界へ転身。 日本M&AセンターにてM&Aアドバイザーとして経験を積み、ABNアドバイザーズ(あおぞら銀行100%子会社)では執行役員営業本部長として営業組織を牽引。2024年10月より上場会社CINCの100%子会社設立後、現職に就任。

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