CINC CapitalはCINC(証券コード:4378)のグループ会社です。
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M&A / スキーム
- 公開日2024.12.17
- 更新日2024.12.19
成功するM&A戦略とは?種類とフレームワーク、事例と注意点を徹底解説
M&Aは事業の成長や目的達成へ導く手段として注目を集めています。M&Aを成功させるためには適切な戦略が必要です。
戦略を立てる際に「目的にあった手法は何か」「どういった対応が必要か」など、十分な知識と事前準備が要求されます。
本記事では、M&A戦略に必要な基本知識、売り手企業とM&A戦略について解説します。内容を理解し、今後のM&Aに活かしましょう。
目次
M&A戦略の重要性
M&A戦略とは、M&Aを成功に導くために必要な準備や計画のことを指します。
M&Aは事業承継として用いられる手段である一方、事業の拡大や事業の見直しなどにも活用されます。
「事業を譲渡して、セカンドライフを送りたい」「事業の1つを譲渡して、新規事業に集中したい」などの”目的”に合わせて、M&A戦略を考えることが大切です。
これらの目的の先には次のステップ「M&Aの後のビジョン」が存在します。M&Aはあくまで通過点となります。
目的は何か、自社がどの立ち位置にありどこを目指しているのか、改めて確認が必要です。
M&A戦略の策定方法
M&Aを成功させるためには、戦略の策定が必要です。以下の6つの策定方法に沿って戦略を練ることを推奨します。
- 自社の分析をする
- M&Aの目的を定める
- 市場調査を行う
- 戦略を明確する
- 買い手企業候補の企業リストを作る
- 買い手企業候補へのアプローチ方法を考える
ここでは、各策定方法について解説していきます。
自社の分析をする
M&Aを成功させるためには、まず自社の強みや弱み、資産状況を把握することが大切です。
自社の現状を理解することで、どのような企業とM&Aを行うべきか、どのような戦略が適しているかといった判断ができます。分析方法として、SWOT分析を活用することはおすすめです。
SWOTは、「Strengths(強み)」「Weakness(弱み)」「Opportunity(機会)」「Threat(脅威)」の略です。四象限の図を用いて自社の立ち位置を理解することで、戦略の策定に活かすことができます。
M&Aの目的を定める
目的を明確にすることで、連携するべき企業や方向性が明確になり、効率的なM&Aが可能となります。
売り手企業あれば、後継者への事業の承継、不採算事業の切り離しなどが挙げられます。
市場調査を行う
市場の特性や競争環境を把握することで、成功確率の高い買い手企業候補を見つけることができます。
必ずしも同業種ではない場合もあるので、もし買い手候補企業が他業種に該当する場合は念入りな市場調査が必要です。
戦略を明確にする
分析を終え、方向性や目的が定まったら、戦略を明確にしていきます。
M&Aの手法の決定はもちろん、買い手企業候補のイメージ、PMI(M&A後の統合プロセス)、会計・税務上のリスクについても考えていくことが大切です。
買い手企業候補の企業リストを作る
買い手企業候補(譲渡先)の企業をリスト化することで、比較・検討が容易になります。より適した企業を選定することが可能です。
この買い手企業候補が一覧となったリストのことを「ロングリスト」と呼び、その中から更に買い手企業候補を厳選したリストのことを「ショートリスト」と言います。
ロングリストについては以下の記事で詳しく解説していますので、併せてご覧ください。
【関連記事】ロングリストとは?ショートリストの違いや作成方法を解説
買い手企業候補へのアプローチ方法を考える
買い手企業候補のイメージがついたら、いよいよその買い手企業候補にアプローチをしていきます。アプローチ方法は以下の3つに分類できます。
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直接アプローチ:買い手企業に直接交渉します
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M&Aアドバイザーを介したアプローチ:M&A仲介会社などのM&Aアドバイザーを通して、買い手企業と交渉します
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M&Aマッチングサービスを利用したアプローチ:M&Aマッチングサービス(サイト)上で、買い手企業と交渉します
多くの買い手企業候補にアプローチしたい企業は、M&A仲介会社やFA(ファイナンシャルアドバイザー)に相談することをおすすめします。
【売り手企業向け】3つのM&A戦略
ここでは、売り手企業のM&A戦略について解説します。
立ち位置が売り手企業なのか、買い手企業なのかで戦略が異なります。自社の立場を確認し、ぜひ今後の参考にしてください。
第三者承継
後継者がいない企業は、持続的な成長や従業員の雇用を守るために、第三者に事業を承継することを考える必要があります。
売り手企業の創業者が高齢となり、家族に後継者がいない場合、他の企業に事業を譲渡することで企業の存続を図ることができます。
選択と集中
売り手企業が所持する事業の中に生産性が高い事業と低い事業がある場合、生産性が低い事業を切り離して、生産性の高い事業に集中するためにM&Aを活用することもおすすめです。
また、新規事業を始めるとなれば、その新規事業に集中するにあたり、既存の事業を切り離すという目的でM&Aを行うケースもあるでしょう。
将来のビジョンを描いた時に、不要と感じる事業がある場合は、M&Aの実施を検討することも有効です。
イグジット
イグジットはM&AやIPO(新規上場)で利益を得ることを指します。IPOを目標にし、事業成長を続けていても、なかなかIPOに至らない企業は多いです。その場合は、M&Aを実行した方が利益を得られる可能性が高まることもあります。
利益を目的としている場合は、M&Aを適切なタイミングで実行することが大切です。
M&A戦略策定のフレームワーク
M&A戦略を効果的に策定するためには、フレームワークを活用することが大切です。
ここでは、代表的なM&A戦略策定のフレームワークについて解説します。
アンゾフの成長マトリックス
アンゾフの成長マトリックスは、市場と製品という二軸で分析し、企業の成長戦略を整理するフレームワークです。戦略を明確にするためにも、市場と製品の関係性を整理することが欠かせません。
このフレームワークは以下の4つに分類することができます。
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既存製品×既存市場:「市場浸透戦略」
これまでの市場に、既存の製品やサービスを投入して、売上高や市場シェアの拡大を目指す戦略。製品の認知の引き上げ、購入意欲の向上が課題となる。 -
新規製品×既存市場:「新製品開発戦略」
これまでの市場に、新しい製品やサービスを投入して、売上拡大を目指す戦略。
競合と差別化を図ることができる製品やサービスを開発することができるかどうかが課題となる。 -
既存製品×新規市場:「新市場開拓戦略」
既存の製品やサービスを新しい市場に投入して、売上拡大を目指す戦略。
営業力・販売などの「売る力」が課題となる。 -
新規製品×新規市場:「多角化戦略」
新しい市場に新しい製品やサービスを投入する戦略。
既存製品の実績や情報もないため、競合調査や市場調査が課題となる。
バリューチェーン分析
バリューチェーン分析は、企業の価値創造活動を分解し、どの部分が価値や利益につながっているのか確認ができるフレームワークです。
戦略を立てる上で、どこから価値や利益が生まれているか把握することで、適切な手法や売却するべき事業が見えてきます。
バリューチェーンは大きく2つに分類できます。
-
個社のバリューチェーン
1つの会社の業務やプロセスを細分化することで、どこに一番力を入れるべきか、利益が生まれているか把握がしやすくなります。 -
業界(産業)のバリューチェーン
業界全体にバリューチェーンを落とし込むことで、どのプロセスから利益が生まれているのか判断することができます。
また利益を生む主要な企業、提携先についても把握することができます。
マイケル・ポーターの競争優位の戦略
マイケル・ポーターの競争優位の戦略は、差別化戦略、コストリーダーシップ戦略、集中戦略の3つのアプローチから競争優位を築くフレームワークです。
産業構造を理解し、長期的な視点からどの戦略を取るか考えることが大切です。
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差別化戦略:自社サービスを性能や品質などで差別化することによって、価格を上げ、マーケットにおける競争優位を確立します。
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コストリーダーシップ戦略:他社よりも低コストで製造と販売を行うことで、マーケットにおける競争優位を確立します。
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集中戦略:特定の市場や特定の消費者に限定し、経営資源の配分を集中させることで競争優位を確立します。マーケットは全体ではなく、特定分野・マーケットとなります。
M&Aを行う際の注意点
ここでは、M&Aを行う時に注意するべき2つのポイントを解説します。
各注意点を理解して望むことで、円滑な事業の譲渡や売買につながります。
適切な手法を選択する
M&Aはいくつかの手法が存在します。各手法は特徴が異なります。目的により手法が異なるので、まずは目的を明確にすることおすすめします。
誤った手法を選ぶと、譲渡が煩雑になったり、多大な税金がかかったりすることもあります。M&Aに詳しい専門家の助言をもらいながら、適切な手法を選ぶことが重要です。
リスク対策が必要である
M&Aには多くのリスクが伴います。今後考えられるリスクを予測し、対策を考えておくことが大切です。
M&Aは他社に機密情報を伝えるため、特に情報漏洩には注意しないといけません。情報漏洩の対策として、秘密保持契約の締結が挙げられます。
自社や事業を守るために、買い手企業と必ず秘密保持契約を締結しましょう。
秘密保持契約は、以下の記事でご紹介しています。こちらも併せてご覧ください。
【関連記事】M&Aの秘密保持契約(NDA)とは?基本から締結のメリットまで解説
目的を見失わない
M&Aの目的を見失うと、統合後のビジョンが曖昧になり、シナジーを生み出しづらくなります。
M&A実施する前に目的を考えることはもちろん大切ですが、M&A実施中もその後も最終的な目的を見据えながら、柔軟に進めることが大切です。
また、M&Aの後の事業拡大に重点をおいている企業は、PMI(M&A後の統合プロセス)についてよく理解しておく必要があります。
PMIは、以下の記事でご紹介しています。こちらも併せてご覧ください。
【関連記事】M&AにおけるPMIとは?意味や目的、タイミング、成功させるためのポイント
まとめ|目的を振り返り、自社に適した手法を選択することが大切
M&A戦略を成功させるためには、目的を明確にし、自社に最も適した方法を選ぶことが不可欠です。これにより、企業の成長や競争力の向上が期待できます。
目的の決定を含め、M&A戦略は以下の流れで進めていきます。
- 自社の分析をする
- M&Aの目的を定める
- 市場調査を行う
- 戦略を明確する
- 買い手企候補業の企業リストを作る
- 買い手企業候補へのアプローチ方法を考える
M&Aは事業を譲渡するというだけあり、複雑かつ規模の大きい作業です。リスクを抑えながら、円滑に進めるためにもM&A仲介会社などの専門家の助言をもらうことをおすすめします。
CINC Capitalでは、M&A仲介協会会員および中小企業庁のM&A登録支援機関として、M&A戦略策定のご相談を受け付けております。業界歴10年以上のプロアドバイザーが、お客様の真の利益を追求します。M&A戦略策定の相談をご希望の方はお気軽にお問い合わせください。
この記事の監修者
CINC Capital取締役執行役員社長
阿部 泰士
CINC Capital取締役執行役員社長。リクルート関連会社や外資系製薬会社、大手・ベンチャー独立系M&A仲介会社で営業組織を牽引。 特にM&A実績の多い業界は調剤・IT・運送業。