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ノンネームとは?主な記載事項や作成する際に注意すること

M&A / 基礎知識

  • 公開日2024.10.01
  • 更新日2024.10.31

ノンネームとは?主な記載事項や作成する際に注意すること

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M&Aのプロセスのうち、はじめの段階でやり取りする資料がノンネームです。ノンネームは売り手側企業の情報がまとまっているのですが、企業名が特定されないよう秘匿性が高くなっている特徴があります。

この記事ではノンネームにはどのようなことを記載するのか、作成の際は何に注意すべきなのかをまとめています。M&Aで会社の売却を検討している人はぜひ参考にしてください。

ノンネームの概要

まずはノンネームのことについて広く解説します。そもそもノンネームとはどのようなものなのか、なぜ必要なのかを見ていきましょう。

ノンネームとは

ノンネームは、企業の機密情報を保護しながら、買収を検討している人に対して情報を提供する資料です。秘密保持を維持しつつ、企業がどのような業種でどの程度の市場シェアを持ち、財務の健全性はどうなのかといったポイントを伝える役割を果たしています。ノンネームが用いられるのはM&Aの本格的な交渉に入る前です。交渉の前にノンネームを開示し、買い手となるかもしれない企業は記載情報をもとにM&Aに踏み切るかどうかを検討します。

ノンネームシートの作成目的

ノンネームシートは、企業の機密情報を保護しつつ、買い手に必要な情報を伝えるために作成されます。ノンネームに記載される情報は、売り手側の企業が特定されない範囲に限られています。したがって詳細な企業名や具体的な所在地などの機密情報は含まれません。これは売り手側の企業の情報漏洩を防ぐためです。

IM(企業概要書)との違い

ノンネームとIM(企業概要書)の最大の違いは、情報の詳細度とその利用目的です。IMは、企業買収における最終的な判断を下すための詳細な情報を提供する資料です。買い手に企業の全体像を理解してもらうため、詳細なデータを網羅しています。具体的には、財務データ、事業戦略、経営指標、そして企業の成長計画などが記載されており、買収候補者はこれらを基に企業の価値を評価し、買収の可否を判断することができます。

一方、ノンネームはIMに至る前の段階で使われるもので、企業名や具体的な所在地などの詳細情報は記載されていません。ノンネームには、業種や基本的な事業内容、売上高、従業員数、希望する譲渡額といった情報が、企業を特定できないような書き方でまとめられています。

このように、ノンネームとIMは異なる役割を担っており、それぞれが求められる段階と目的が異なっています。

ノンネームの主な記載事項

ノンネームに記載される主要な項目について、続けて具体的に説明していきます。

業種・事業内容

業種や事業内容を、社名が特定されないように記載します。しかし、あまりにも漠然とした情報では、買い手側の企業が判断するのが難しくなってしまいます。そのため、どこまで詳しく書くかは、業種や同業者の数の多さによって決めることが多いです。

ニッチな業種や同業者が少ない場合には、情報を詳しく書きすぎると社名が特定されやすくなりますので、特に注意が必要です。

所在地

通常は企業が位置している場所として都道府県名を記載することが多いです。しかし、企業名の秘匿性を高めたい場合には、「東北地方」や「九州地方」といった地域名のみを記載することもあります。

資本金・売上高

資本金や売上高はあまり明確には記載しないことが一般的です。具体的な数字をはっきりと示すのではなく、「2億円以上」や「3億円から5億円」といった幅を持たせた表現を活用します。

従業員数

従業員数は概算で記載することが望ましいです。正確な従業員数を載せてしまうと、特に特定の業界や地域によっては企業が特定されてしまう可能性があります。多くの企業では、webサイトに従業員数を公開しているため、その情報と照らし合わせることにより容易に特定できてしまうからです。具体的な情報をぼかすことで、企業を特定されるリスクを軽減し、情報漏洩を防げます。

企業の特徴

企業の特徴は買い手側に対して企業のことをアピールできる項目です。繰り返しになりますが、情報は社名が特定されない範囲で提供する必要があります。

例えば、「事業基盤が地元に根付いている」や「上場企業との取引がある」といった内容は、企業の強みを示しつつ、個別の特定を避ける良い例です。特定はできないけれど魅力が伝わる絶妙なバランスがポイントです。

希望する譲渡額

譲渡額については、買い手側が交渉の余地があると感じるような記載が望ましいです。一方的な提示ではなく、柔軟さを持たせた金額を設定することで、より多くの買い手候補が興味を持ち、交渉に名乗りを上げてくれる可能性が高まります。

譲渡の理由

M&Aを行う動機を簡潔に記載します。ただし多くの場合は「後継者不在のため」や「企業の成長・発展のため」といった一般的な表現を用いることが多いです。

具体的な理由や詳細な背景は、ノンネームでは公表せず、交渉が本格化した後で伝えます。

ノンネームを作成する際の注意点

ノンネームはM&Aにおいて重要な役割を果たす資料です。しかし、適切に作成されていないと情報漏洩の発生や誤解を招く可能性があります。そのため、作成時にはいくつかの重要な注意点があります。

自社が特定できない程度の情報を記載する

ノンネームを作成する際には、匿名性を高めるために、自社が特定されない程度の情報を記載することが重要です。自社が特定されてしまうと、M&Aを行おうとしている事実が外部に漏れる可能性があります。もし情報が漏洩してしまえば、従業員が動揺して離職したり、取引先が不安を抱いて取引を中止したりすることがあります。

特に、企業の規模や同業の多さによっては、情報の出し方次第では簡単に自社が特定されてしまう可能性があります。そのため、ノンネームには自社の活動内容が外部から簡単に判断されないように工夫が必要です。

とはいえ、情報が曖昧すぎると、M&Aの相手企業に興味を持ってもらうことが難しくなります。したがって、自社の特定を防ぎつつも、魅力や強みを伝えることが大切です。自社の独自の技術や市場における優位性など、応募者にとって興味を引く情報を的確に伝えることが重要になります。

譲渡方法を特定する

ノンネームには譲渡方法を明確に記載しましょう。これはM&Aの交渉をスムーズに進めるために欠かせないからです。

具体的には、「株式譲渡」「事業譲渡」「事業継続譲渡」といった具体的な譲渡方式を明示します。譲渡方法を正確に記載して不確定要素を減らし、双方の意思をスムーズにすり合わせることが可能になります。

ノンネームの提出先の数を制限する

ノンネームを作成する際には、提出先の数を制限することが重要です。提出先が多すぎると、情報が思わぬところで漏洩するリスクが高まります。このため、ノンネームを提示する先を選ぶ際には慎重に選定する必要があります。

また、ノンネームを提示したからといって、相手と交渉を進められるとは限りません興味を持つ企業は増えるかもしれませんが、実際に交渉が進むかどうかは別問題です。そのため、交渉に進む可能性がある企業をある程度絞ってからノンネームを提示することが望ましいです。

まとめ丨ノンネームは情報を公開するバランスが大切

今回はノンネームについて広く解説しました。ノンネームは自社を特定されない範囲で企業情報を提供する方法です。

ノンネームを作成する際には、業種や事業内容、所在地、資本金、売上高、従業員数、企業の特徴、希望する譲渡額、譲渡の理由などを記載しますが、大切なのは自社が特定されないよう工夫することが求められる点です。

今回紹介したポイントを押さえた上で、ノンネームを作成すれば、M&Aを検討している企業に有効な情報を伝えられるでしょう。

 

この記事の監修者

阿部 泰士

CINC Capital取締役執行役員社長

阿部 泰士

CINC Capital取締役執行役員社長。リクルート関連会社や外資系製薬会社、大手・ベンチャー独立系M&A仲介会社で営業組織を牽引。 特にM&A実績の多い業界は調剤・IT・運送業。

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