CINC CapitalはCINC(証券コード:4378)のグループ会社です。
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M&A / 基礎知識
- 公開日2024.10.01
- 更新日2025.01.31
ノンネームとは?主な記載事項や作り方、作成時の注意点を解説
M&Aのプロセスのうち、はじめの段階でやり取りする資料がノンネームです。ノンネームは売り手側企業の情報がまとまっているのですが、企業名が特定されないよう秘匿性が高くなっている特徴があります。
この記事ではノンネームにはどのようなことを記載するのか、作成の際は何に注意すべきなのかをまとめています。M&Aで会社の売却を検討している人はぜひ参考にしてください。
目次
ノンネームとは?
ノンネームとは、M&A(合併・買収)において売却企業の具体的な社名を伏せた状態で提供される情報のことです。通常、M&Aの初期段階では、売却企業の詳細を明かさずに「業種」「売上規模」「所在地」などの概要のみを提示し、関心を持った買い手候補と秘密保持契約(NDA)を締結したあとに詳細情報を開示します。これにより、情報漏洩のリスクを抑えつつ、適切な買い手を選定することができます。
ノンネームシートと企業概要書(IM)との違い
ノンネームシートはM&Aの初期段階で活用され、売却企業の社名を伏せた状態で基本的な情報のみを提供するのに対し、企業概要書(IM:Information Memorandum)は、秘密保持契約(NDA)締結後に提供される詳細な資料です。
具体的には、財務データ、事業戦略、経営指標、そして企業の成長計画などが記載されており、買収候補者はこれらを基に企業の価値を評価し、買収の可否を判断することができます。
ノンネームは、情報漏洩のリスクを抑えながら広く買い手を募るために用いられ、一方で企業概要書(IM)は、M&Aの次のステップに進むための具体的な判断材料として使用されます。
ネームクリアとは
ネームクリアとは、M&Aのプロセスにおいて売却企業の社名を買い手候補に開示するプロセスのことです。通常、M&Aの初期段階ではノンネーム情報のみが提供され、買い手候補は業種や売上規模などの概要情報を基に検討を進めます。しかし、一定の関心を示した買い手候補に対し、売却企業が慎重に選定を行ったうえで、秘密保持契約(NDA)を締結したあとにネームクリアが行われます。
ネームクリアが完了すると、買い手候補は企業概要書(IM)を受け取り、詳細な財務データや事業戦略を確認します。その後、デューデリジェンスを経て、最終的な買収の可否を判断する流れとなります。
ノンネームの主な記載事項
ノンネームに記載される主要な項目について、説明していきます。
- 業種・事業内容
- 所在地
- 資本金・売上高
- 従業員数
- 企業の特徴
- 希望する譲渡額
- 譲渡の理由
業種・事業内容
業種や事業内容を、社名が特定されないように記載します。しかし、あまりにも漠然とした情報では、買い手側の企業が判断するのが難しくなってしまいます。そのため、どこまで詳しく書くかは、業種や同業者の数の多さによって決めることが多いです。
ニッチな業種や同業者が少ない場合には、情報を詳しく書きすぎると社名が特定されやすくなりますので、特に注意が必要です。
所在地
通常は企業が位置している場所として都道府県名を記載することが多いです。しかし、企業名の秘匿性を高めたい場合には、「東北地方」や「九州地方」といった地域名のみを記載することもあります。
資本金・売上高
資本金や売上高はあまり明確には記載しないことが一般的です。具体的な数字をはっきりと示すのではなく、「2億円以上」や「3億円から5億円」といった幅を持たせた表現を活用します。
従業員数
従業員数は概算で記載することが望ましいです。正確な従業員数を載せてしまうと、特に特定の業界や地域によっては企業が特定されてしまう可能性があります。多くの企業では、Webサイトに従業員数を公開しているため、その情報と照らし合わせることにより容易に特定できてしまうからです。具体的な情報をぼかすことで、企業を特定されるリスクを軽減し、情報漏洩を防げます。
企業の特徴
企業の特徴は買い手側に対して企業のことをアピールできる項目です。繰り返しになりますが、情報は社名が特定されない範囲で提供する必要があります。
例えば、「事業基盤が地元に根付いている」や「上場企業との取引がある」といった内容は、企業の強みを示しつつ、個別の特定を避ける良い例です。特定はできないけれど魅力が伝わる絶妙なバランスがポイントです。
希望する譲渡額
譲渡額については、買い手側が交渉の余地があると感じるような記載が望ましいです。一方的な提示ではなく、柔軟さを持たせた金額を設定することで、より多くの買い手候補が興味を持ち、交渉に名乗りを上げてくれる可能性が高まります。
譲渡の理由
M&Aを行う動機を簡潔に記載します。ただし多くの場合は「後継者不在のため」や「企業の成長・発展のため」といった一般的な表現を用いることが多いです。
具体的な理由や詳細な背景は、ノンネームでは公表せず、交渉が本格化した後で伝えます。
ノンネームの作り方
ノンネームを作成する際は、M&Aの初期段階で買い手候補に適切な情報を提供し、関心を引くことが重要です。以下の手順で作成します。
①基本情報の整理する
まず、売却企業の基本情報を整理します。以下の項目を明確にしておきます。
- 業種・事業内容
- 所在地
- 資本金・売上高
- 従業員数
- 企業の特徴
- 希望する譲渡額
- 譲渡の理由
②企業名を伏せた形で概要を作成する
売却企業の特定を防ぐため、具体的な社名や詳細な固有名詞は記載せず、一般的な表現に置き換えます。
例:「〇〇業界の中堅企業」「関東地方に拠点を持つ〇〇事業」など。
③買い手にとって魅力的なポイントを明記
売却企業の強みや成長性を簡潔にまとめ、買い手にとってのメリットを明示します。
例えば、以下のような情報を記載します。
- 競争優位性(特許・ブランド力・独自技術など)
- 成長性のある市場・事業領域
- 事業の安定性(主要取引先・契約状況)
④法務・財務情報を最小限記載する
財務情報は、大まかな売上高や営業利益などにとどめ、詳細なデータはIMに含める形にします。企業の特定につながる情報は省略し、範囲を広めに記載します。
⑤記載内容のチェックとブラッシュアップを行う
情報が適切に整理されているか、企業名が特定されないかを確認しながら、分かりやすい文章に仕上げます。
また、買い手が興味を持ちやすい表現を意識して調整します。
ノンネームを作成する際の注意点
ノンネームはM&Aにおいて重要な役割を果たす資料です。しかし、適切に作成されていないと情報漏洩の発生や誤解を招く可能性があります。そのため、作成時にはいくつかの重要な注意点があります。
自社が特定できない程度の情報を記載する
ノンネームを作成する際には、匿名性を高めるために、自社が特定されない程度の情報を記載することが重要です。自社が特定されてしまうと、M&Aを行おうとしている事実が外部に漏れる可能性があります。
もし情報が漏洩してしまえば、従業員が動揺して離職したり、取引先が不安を抱いて取引を中止したりすることがあります。
特に、企業の規模や同業の多さによっては、情報の出し方次第では簡単に自社が特定されてしまう可能性があります。そのため、ノンネームには自社の活動内容が外部から簡単に判断されないように工夫が必要です。
とはいえ、情報が曖昧すぎると、M&Aの相手企業に興味を持ってもらうことが難しくなります。
したがって、自社の特定を防ぎつつも、魅力や強みを伝えることが大切です。自社の独自の技術や市場における優位性など、応募者にとって興味を引く情報を的確に伝えることが重要になります。
譲渡方法を特定する
ノンネームには譲渡方法を明確に記載しましょう。これはM&Aの交渉をスムーズに進めるために欠かせないからです。
具体的には、「株式譲渡」「事業譲渡」「事業継続譲渡」といった具体的な譲渡方式を明示します。譲渡方法を正確に記載して不確定要素を減らし、双方の意思をスムーズにすり合わせることが可能になります。
ノンネームの提出先の数を制限する
ノンネームを作成する際には、提出先の数を制限することが重要です。提出先が多すぎると、情報が思わぬところで漏洩するリスクが高まります。このため、ノンネームを提示する先を選ぶ際には慎重に選定する必要があります。
また、ノンネームを提示したからといって、相手と交渉を進められるとは限りません興味を持つ企業は増えるかもしれませんが、実際に交渉が進むかどうかは別問題です。
そのため、交渉に進む可能性がある企業をある程度絞ってからノンネームを提示することが望ましいです。
まとめ|ノンネームは情報を公開するバランスが大切
今回はM&Aにおけるノンネームについて解説しました。ノンネームは自社を特定されない範囲で企業情報を提供する方法です。
ノンネームを作成する際には、業種や事業内容、所在地、資本金、売上高、従業員数、企業の特徴、希望する譲渡額、譲渡の理由などを記載しますが、大切なのは自社が特定されないよう工夫しながらも、魅力や強いを提示する点です。
今回紹介したポイントを押さえて、ノンネームを作成すれば、M&Aを検討している企業に有効な情報を伝えられるでしょう。
この記事の監修者

CINC Capital取締役執行役員社長
阿部 泰士
CINC Capital取締役執行役員社長。リクルート関連会社や外資系製薬会社、国内最大手M&A仲介会社で営業組織を牽引。 特にM&A実績の多い業界は調剤・IT・運送業。