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人材派遣とは?業界のM&A・事業承継の動向と事例、メリットを解説

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  • 公開日2025.04.28
  • 更新日2025.04.28

人材派遣とは?業界のM&A・事業承継の動向と事例、メリットを解説

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少子高齢化や働き方改革の進展に伴い、人材派遣業界は人材不足や市場の変化に柔軟に対応することが求められています。そのため、M&Aや事業承継は重要な戦略となっています。

本記事では、人材派遣業界の現状やM&Aの動向、メリット、具体的な事例について解説します。

人材派遣業界の現状

人材派遣とは、人材派遣会社(派遣元)が雇用する労働者を、依頼企業(派遣先)に派遣し、派遣先の指揮命令のもとで働く雇用形態です。人材派遣が始まったのは「労働者派遣法」が施行された1986年です。正社員やアルバイトなどの既にあった雇用形態に新しく加わりました。

国内における各雇用形態の比率は以下の通りです。

【引用】一般社団法人 日本人材派遣協会「雇用者に占める派遣社員の割合」

総務省労働力調査2021年度のデータによると、派遣社員は全体2.5%の比率となっています。国内の雇用の大部分は正社員が占めるような形となっています。

また、派遣労働者の増加と減少の有無については厚生労働省が以下のように発表しています。

【令和5年6月1日現在の状況概要】

1 派遣労働者数・・・・・・・・・・・・・・・約192万人(対前年比: 3.4%増)

 (1)無期雇用派遣労働者     791,293人(対前年比:6.0 %増)
    うち協定対象派遣労働者*  758,657人(対前年比:6.8 %増)

 (2)有期雇用派遣労働者     1,133,162人(対前年比:1.6%増)
    うち協定対象派遣労働者*    1,056,870人(対前年比:2.3%増)

【引用】厚生労働省「労働者派遣事業の令和5年6月1日現在の状況(速報)」

2023年6月の発表では、派遣労働者数は前年の2022年と比べて、3.4%増加したと発表しています。少子高齢化が進行し、労働人口は毎年減少傾向にはあるものの、派遣労働者数は増加傾向にあります。IT系の業務やエンジニアなどをはじめとした新たな職種の登場で、新しい需要が生まれていることが要因となります。

※労働者派遣法…1985年に制定された法律で、人材派遣事業を規制し、派遣労働者の権利を保護することを目的としています。

人材派遣業界のM&Aの動向

人材派遣業界は売上を上げるために、人材の獲得や雇用が必須となるため、人材が不足すると利益が伴いづらくなります。少子高齢化により人材は不足しやすい状況となっています。

また、今後注目するべき点はAI技術の進展です。特定の業務が自動化されることで、派遣業務の内容が変化する可能性があります。特にデータ入力業務などの単純作業はAIに置き換えられると考えられています。

一方で医療や介護などの専門職では依然として人材派遣の需要が高まると予測されています。

【引用】厚生労働省「介護人材確保に向けた取組 9期介護保険事業計画に基づく介護人材の必要数について(令和6年7月12日)」

厚生労働省は2040年に向けて、介護人材の必要数について発表しています。

情報を発表した2022年度の介護必要人数の215万人から、2040年の272万人に向けて、およそ57万人の人材が必要とされています。少子高齢化は人材派遣業界の需要に大きな変化をもたらします。

M&Aはこれらの人材派遣業界の課題を解決へ導きます。M&Aは、M&AはMergers and Acquisitionsの略称で、合併と買収を指します。企業または事業の全部や一部の移転を伴う取引で、会社もしくは経営権の取得をします。

M&Aの実施により、需要と課題について以下のことが期待できます。

人材派遣業界の課題

M&Aがもたらす解決策

少子高齢化による人材の不足

他社から人材の獲得

AI技術の進展による変化

他社からAIノウハウ・技術を入手

介護・医療人材の需要の上昇

他社から人材の獲得

M&Aを行うことで、人材獲得やノウハウ・技術の入手が期待でき、人材派遣業の今後の課題が解決されるケースがあります。

M&Aについては以下の記事でも解説しています。併せてご覧ください。
【関連記事】M&Aとは?意味や目的、手法ごとのメリットデメリットをわかりやすく解説

人材派遣会社が売却・譲渡するメリット

ここでは、人材派遣会社が売却・譲渡するメリットについて詳しく解説します。

従業員の雇用を維持できる

事業の売却や譲渡により、他の企業に承継することで、従業員の雇用を維持できる可能性が向上します。

なお、従業員の雇用の引継ぎについてM&Aの手法により異なります。ここでは「株式譲渡」と「事業譲渡」について紹介します。

株式譲渡

事業譲渡

特徴

①法人格に変更がないため、雇用契約は自動的に維持される

②労働条件や就業規則は原則としてそのまま継続する

③従業員の同意は原則として不要

④会社の権利義務関係が包括的に承継されるため、退職金や年功序列などの既得権も維持される

①法人格が変わるため、従業員の雇用契約は自動的には引き継がれない

②従業員の雇用を継続するためには、以下の手続きが必要
・譲渡元での退職手続き
・譲渡先での新規雇用契約の締結
・従業員の個別同意の取得

③労働条件の変更がある場合は、従業員との協議・合意が必要

④退職金や勤続年数などの取り扱いについては、個別に取り決める必要がある

M&Aを実施することが決まり、従業員を第三者に引き継ぐ場合は、事前に従業員に丁寧な説明と情報提供をすることを推奨します。

経営の安定化ができる

売却や譲渡によって、経営資源や資金を得ることで、経営の安定性が高まり、長期的な視点での事業運営が可能です。例えば、資金繰りが厳しい会社が大手企業に買収されることで、新たな資金投入や経営改善が行われ、経営が安定します。

競争が激化する人材派遣業界で安定して経営するためにM&Aはおすすめです。

事業の選択と集中ができる

売却や譲渡により、リソースを集中させるべき事業に投下し、余計な事業を整理することで、経営の効率化が進みます。複数の事業を経営していると、社会の影響などが要因となり、不採算事業が出るケースがあります。

M&Aによって不採算事業を切り出して売却すれば、経営資源をメインとする事業へ集中させることができます。不採算事業の売却のポイントとして、単なる損切りではなく、全てのステークホルダーへの影響を考慮した上で、企業価値の向上につながるように実行します。

※不採算事業…事業活動によって十分な利益を生み出せない、または継続的に損失を計上している事業のことを指します。
※ステークホルダー…組織や企業の活動によって影響を受ける、または組織に影響を与える利害関係者のことを指します。

人材派遣会社を買収・譲受するメリット

ここでは、人材派遣会社が売却・譲渡するメリットについて詳しく解説します。

人材を確保できる

既存の人材派遣会社を買収することで、人材リソースとネットワークを利用することができます。同業種・異業種で、それぞれ買収するメリットが異なります。

【同業種の人材派遣会社の場合】
買収先の人材を一度に獲得することができ、自社の人材として派遣や雇用することができ、人材不足の解消につながります。
【異業種の人材派遣会社の場合】
教育が不要となるケースが多く、異業種でもすぐに人材として派遣できます。

専門性の高い人材やスキルはより確保が難しいですが、M&Aにより容易な確保を実現できます。

事業・エリア拡大ができる

新しい人材派遣会社を買収することで、既存の市場以外のエリアにも進出でき、事業の規模を容易に拡大することができます。買収した会社が持つ既存顧客や営業基盤の引き継ぎも可能です。新規でエリア外に事業を進出させた時と比べると、労力や時間の大幅削減が見込めます。

さらにシナジー効果を意識して他社と協業することで、さらなる事業拡大ができるでしょう。

※シナジー効果…2つ以上の要素が組み合わさることで、個々の要素の単純な合計以上の効果が生まれることを指します。

コスト削減ができる

新たに人材派遣事業を立ち上げるよりも、既存のシステムやスタッフを利用することで初期投資や運営コストを抑えられます。重複する部門や業務がある場合、買収後に1つに集約することで経費が削減できます。また統合による業務効率化も期待できます。

また、システムや技術インフラの共有ができれば、さらにコストの削減が可能です。

人材派遣業界でM&Aを行う際の3つの注意点

ここでは、人材派遣業界のM&Aで特に大切な3つの注意点について詳しく解説します。注意点を押さえて、円滑な譲渡を実現しましょう。

派遣労働者の継続雇用と労働条件の維持をする

M&Aの後も派遣スタッフが安心して働き続けられる環境を整備することが、事業の継続性と成長に直結します。労働者派遣法に基づき、派遣スタッフの雇用契約や労働条件を適切に引き継ぐ必要があります。

また、スタッフとのコミュニケーションを丁寧に行い、不安を解消することで、優秀な人材の流出を防ぐことができます。

派遣先企業との取引関係の維持・強化をする

人材派遣業界では、派遣先企業との長年の信頼関係に基づく取引が一般的であり、M&A後もこれらの関係を維持することが大切となります。特に、大口顧客との取引継続の確保は最優先事項といえます。

そのためには、M&A前の段階から主要取引先への説明と理解を得る努力が必要で、取引条件の継続性についても慎重な検討が求められます。

コンプライアンス体制の徹底的な精査と統合を実施する

人材派遣業界は労働者派遣法をはじめとする様々な法規制の対象となっており、これらの遵守状況は事業の継続性に直接影響します。

  • 対象企業の許認可取得状況
  • 法令遵守体制
  • 過去の労働関連トラブルの有無 など

これらを詳細に調査し、必要に応じて是正措置を講じる必要があります。また、M&A後のコンプライアンス体制の統合計画も事前に策定しておくことが望ましいでしょう。これらの注意点に適切に対応することで、人材派遣業界におけるM&Aを成功に導くことができます。

※コンプライアンス…法令順守を指します。

人材派遣会社のM&A・事業承継の事例

ここでは過去に実施された人材派遣業界のM&A・事業承継の事例をご紹介します。各事例を参考に、今後のM&A実施に役立てましょう。

メイホーHDがイギアルホールディングスを子会社化

メイホーホールディングスがイギアルホールディングスの株式を取得し、子会社化しました。(2024年1月)

イギアルホールディングスは東京都渋谷区を拠点とし、レゾナゲートを子会社として人材派遣事業を展開しています。一方でメイホーホールディングスは、建築・設計の事業を中心に、複数の事業を全国展開するグループ会社です。パートナー型M&Aという手法で提携会社を現在も増やし続けています。

そして、メイホーホールディングスは子会社にメイホーアティーボという会社があります。メイホーアティーボは、「人材関連サービス事業で地域を支える」を経営ビジョンに事業展開しています。

メイホーホールディングスの営業基盤とレゾナゲートの人材派遣事業におけるマネジメントシステムを組み合わせることで更なる発展が見込まれると考え、メイホーアティーボがイギアルホールディングスを買収する形でM&Aが行われました。

【出典】株式会社メイホーホールディングス「当社子会社によるイギアルホールディングス株式会社の株式の取得(孫会社化)に関するお知らせ」

レックスアドバイザーズがおかやまキャリアデザインを子会社化

株式会社レックスアドバイザーズは、株式会社おかやまキャリアデザインの株式を取得し、子会社化しました。(2024年6月)

おかやまキャリアデザイン(現在:レックスキャリアデザイン)は、岡山県を中心に人事コンサルティングや人事研修、キャリアコンサルティング事業を経営しています。

一方でレックスアドバイザーズは、「人と企業の成長支援」を経営理念とし、会計人材の人材紹介や人材派遣、パートアルバイト採用支援を行っています。人的資本経営を重視する顧客への価値提供手段を拡張すると同時に、中四国エリアにおけるサービス提供拠点の拡大を目指し、M&Aが行われました。

おかやまキャリアデザインとしても、質の高いサービスの提供など、シナジー効果が期待されたため、M&A合意に至りました。

【出典】株式会社レックスアドバイザーズ「株式会社おかやまキャリアデザインのM&Aに関するお知らせ」

キットがアイワエンジニアリングを子会社化

株式会社キットは、株式会社アイワエンジニアリングの株式を取得し、子会社化しました。(2024年3月)

アイワエンジニアリングは広島県広島市を拠点とし、自動車大手の生産ライン関連の設備設計などを手掛けています。36人の従業員は全員が技術者で独自のノウハウも持っています。

一方でキットは神奈川県横浜市を拠点とし、技術と製造といった専門性の高い事業形態を持っています。業務を高度化・効率化する人材を育て、スペシャリストとして派遣しています。

自動車業界向けの製造設備に関する設計業務のノウハウや人材、販売網の強化を目指し、M&Aが行われました。アイワエンジニアリングも、取引先が大手1社に偏っていることからリスクを低減するために、取引先の分散としてM&Aの合意に至っています。

【出典】日本経済新聞「広島のアイワエンジニアリング、人材派遣キット子会社に」

碧海スタッフがマルコビジネスサポートを子会社化

碧海スタッフがマルコビジネスサポートの株式を取得し、子会社化しました。(2023年11月)

マルコビジネスサポートは、サービス業向けの人材派遣や人材紹介を中心に事業を展開しており、百貨店やスーパーの販売員、試飲試食補助など多岐にわたる業務を手掛けています。一方で碧海スタッフは、製造業や物流業への外国人派遣を主な事業としています。自分にあったドライバーのお仕事が見つかる求人メディア「ドラシェア」も提供しており、注目を集めています。

当時、マルコビジネスサポートは後継者不在の問題を抱えていたため、承継先を探していました。碧海スタッフの業務内容は異なるものの、隣接する地域での取引先の拡大が見込まれたため、M&Aが行われました。

【出典】PR TIMES「製造業とサービス業に特化した人材サービス業同士が、M&Aで事業拡大を目指す(事業承継M&Aプラットフォーム『ビズリーチ・サクシード』経由)」

テンプHDがインテリジェンスHDを子会社化

テンプホールディングス(現在:パーソルホールディングス)は、インテリジェンスホールディングスの株式を取得し、子会社化しました。(2013年3月)

インテリジェンスホールディングスは、人材紹介や派遣、転職支援、求人広告、アウトソーシングなどを手掛ける人材サービス企業です。
DODAやanといったブランドを展開しており、正社員領域の人材紹介サービスで強い地位を持っています。

一方でテンプホールディングスは東京都港区に本社を置く労働者派遣や人材紹介、求人広告など、総合人材サービスの会社です。
2017年に商号を変更し、現在はパーソルホールディングスとなっています。

テンプホールディングスは、インテリジェンスホールディングスの持つ人材紹介や求人情報サービスの強みを活かし、相互のインフラやブランド力を活用することで、シナジー効果を生み出すことを目指して、M&Aを行いました。

また、業界内での競争力を高め、リクルートホールディングスに対抗する狙いもありました。

【引用】東洋経済オンライン「テンプHD、大型M&Aで王者リクルート追う」

まとめ|人材不足で経営が難航しやすい時代。M&Aは効率化・安定化を図れる

多くの人材派遣会社が人材不足に直面し、経営が難航するケースが増えています。その中で、M&Aは効率化と経営の安定化を図るための有効な手段となります。

M&Aは多くのメリットをもたらします。

譲渡・売却するメリット

譲受・買収するメリット

メリットの詳細

・従業員の雇用を維持できる
・経営の安定化ができる
・事業の選択と集中ができる

・人材を確保できる
・事業・エリア拡大ができる
・コスト削減ができる

人材不足で悩む企業は、経営戦略としてM&Aを検討し、M&A仲介会社への相談を積極的に行いましょう。

弊社はM&A仲介協会会員および中小企業庁のM&A登録支援機関として、M&Aのご相談を受け付けております。業界歴10年以上のプロアドバイザーが、お客様の真の利益を追求します。M&Aの相談をご希望の方はお気軽にお問い合わせください。

この記事の監修者

阿部 泰士

CINC Capital取締役執行役員社長

阿部 泰士

リクルートHRマーケティング、外資系製薬メーカーのバクスターを経て、M&A業界へ転身。 日本M&AセンターにてM&Aアドバイザーとして経験を積み、ABNアドバイザーズ(あおぞら銀行100%子会社)では執行役員営業本部長として営業組織を牽引。2024年10月より上場会社CINCの100%子会社設立後、現職に就任。

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