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歯科業界のM&A・事業承継の最新動向|成功事例と売却のメリットを解説

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  • 公開日2025.04.28
  • 更新日2025.04.28

歯科業界のM&A・事業承継の最新動向|成功事例と売却のメリットを解説

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近年、多くの歯科医院が後継者不在や資金難などの理由で、経営に困難を抱えています。これらの課題の解決策として、M&Aが大変注目を集めています。

本記事では、歯科業界のM&Aの動向や具体的な事例、さらに歯科医院を売却するメリットについて解説します。

歯科業界の現状や動向

歯科(しか)は口腔の健康を守る医療分野です。そして、口腔を守るために医療を提供する施設に「歯科医院」「歯科診療所」などが該当します。

歯科業界に勤務する医療従事者は以下のように分類できます。

  • 歯科医師:診断・治療の中心的役割
  • 歯科衛生士:予防処置や歯科保健指導を担当
  • 歯科技工士:補綴物の製作を専門とする
  • 歯科助手:診療補助や院内業務を担当

※補綴(ほてつ)物…虫歯や歯周病などで歯を失ったり、欠けてしまったりした部分を人工的な材料で補うものを指します。

また、これらの医療従事者に加え、歯科器材を扱うメーカーや流通業者が歯科業界に含まれます。歯科業界は近年、大きな変化を見せています。

【引用】厚生労働省「令和4年 歯科疾患実態調査結果の概要 被調査者数の推移(口腔診査受診者のみ)」

厚生労働省の調べによると、口腔について受診をする人は急激に減少しています。

2022年は統計を開始した1957年のおよそ30,000人と比べると、10分の1にあたるおよそ2,500人を割る状態です。現在は1900年代と比べると、受診者数は非常に少ないと言えます。従来の治療中心の歯科受診は減少傾向にあるものの、予防歯科や審美歯科のニーズは拡大しています。セカンドオピニオンや定期健診が需要にあたります。

※セカンドオピニオン…患者が現在の主治医以外の医師から、診断や治療方針について意見を求めることを指します。

厚生労働省は歯の重要性について以下のように述べています。

80歳高齢者を対象とした統計分析等から、歯の喪失が少なく、よく噛めている者は生活の質および活動能力が高く、運動・視聴覚機能に優れていることが明らかになっている。
また、要介護者における調査においても、口腔衛生状態の改善や、咀嚼能力の改善を図ることが、誤嚥性肺炎の減少や、ADLの改善に有効であることが示されている。

【引用】厚生労働省「歯の健康」

歯が健康であることで、年を重ねても生活の質や運動能力、病気のリスク軽減につながります。

また、歯への健康意識の変化は数値にも現れています。

【引用】厚生労働省「かかりつけ歯科医を持とう 歯を健康に保つ秘訣」

国や自治体が中心となって行われた「80歳になっても自分の歯を20本以上保とう」という取り組みを「8020(ハチマル・ニイマル)」と言います。1989年から推進しており、2016年の厚生労働省の調べでは、75~84歳までの回答者の約50%が20本以上の歯があるという結果になりました。

歯の健康の意識の高まりにより、歯科の需要が伸びています。需要に合わせて、歯科診療所は現在も開設が続いています。

【引用】厚生労働省「施設の種類別にみた動態状況の年次推移」より 作成

厚生労働省の調べによると、2023年も歯科診療所を開設する人は多く、開設数が大きく減少していないことが読み取れます。ただし、廃止数が少ないわけではありません。2023年の歯科診療所の廃止数は統計開始の2014年以降で、過去最大の2,000件を超えました。

廃止の増加については全産業に言えることです。東京商工リサーチの調べによると、2023年の「休廃業・解散」は過去最多の4.97万件と発表しており、その原因について以下のように述べています。

支援策の縮小で営業外利益や特別利益が剥げ落ちたことに加え、人件費や原材料価格の高騰が暗い影を落としている。

【引用】東京商工リサーチ

新型コロナウイルス流行の支援策の縮小で営業外利益などが落ち、人件費や原材料費の高騰したことが要因と伝えています。施設の運営や雇用の維持が課題となっており、この課題の解決策が歯科業界全体で求められています。

歯科業界のM&Aの必要性

近年、歯科業界では後継者不足や経営難などの問題が深刻化しています。

特に大きな要因となっている少子高齢化は、経営者が高齢になる一方で、承継先となる若年層の減少を加速させます。その結果、後継者不在となって倒産してしまうこともあります。
【引用】帝国データバンク「全国「後継者不在率」動向調査(2024 年)」

帝国データバンクの調べによると、2024年の後継者難倒産の件数推移(1月~10月)は統計開始以降2番目に多い、455件と深刻な結果となりました。また、現在物価の高騰や人件費の上昇が著しい状況にあり、これらの要因が経営の悪影響を与えています。

これらの問題を解決するためにM&Aは有効な手段となります。M&AはMergers and Acquisitionsの略称で、合併と買収を指します。企業または事業の全部や一部の移転を伴う取引で、会社もしくは経営権の取得をします。

M&Aを行うことで、お伝えした課題は以下の解決に向かいます。

  • 後継者不足の問題:他社に承継することで、事業が存続
  • 経営難:他社のリソースや経営ノウハウを活用し、キャッシュフローの安定

M&Aはメリットが多く、事業に良い影響を与えます。

M&Aについては以下の記事でも解説しています。併せてご覧ください。
【関連記事】M&Aとは?意味や目的、手法ごとのメリットデメリットをわかりやすく解説

歯科業界のM&A・売却のメリット

ここでは、歯科業界がM&Aや事業の売却をするメリットについて解説します。メリットを参考に、今後のM&Aに役立てましょう。

後継者不足の解決

歯科診療所や歯科医院の多くが現状、後継者不足に直面しています。

【引用】厚生労働省「年齢階級別にみた病院に従事する医師数及び平均年齢の年次推移」

厚生労働省の調べによると、病院に従事する医師数の平均年齢は毎年増加しています。

平均年齢の高さより、どの医療機関も後継者不足の課題になっていることが読み取れます。医療機関内や親族に承継者がいない場合は、他の企業や医療機関に承継することで、後継者不足の解決につながります。

売却益の確保

医療施設を売却することで、売却した時の利益を得られる可能性があります。売却により得た資金を利用して、リタイア後の生活資金や新たな事業への投資などが可能です。

この売却益はM&Aの手法により、対価と売却益を貰う立場が異なります。代表的なM&A手法の「株式譲渡」と「事業譲渡」の違いを見てみましょう。

株式譲渡

事業譲渡

対価

株主が保有する株式の売却による利益
譲渡益 = 売却価額 – 取得価額(簿価)

【税務上の取り扱い】

▼法人株主の場合
譲渡益に対して
法人税課税

▼個人株主の場合
申告分離課税(税率20.315%)
└所得税15.315% + 住民税5%

個々の資産・負債ごとに計算
譲渡益 = 売却価額 – 資産の帳簿価額

【税務上の取り扱い】

・法人税課税対象
・個別資産の譲渡として扱われる
・消費税の課税対象となる可能性

売却益を得る立場

・株主に直接帰属
・株式を保有している株主が売却益を得る
・会社には売却益は発生しない

・会社に帰属
・事業を売却した法人に売却益が計上
・株主には直接の売却益は発生しない

債務や廃業費用などの解消

診療所が債務を抱えている場合、M&Aによりその負担を軽減することができます。買収側に債務を引き継がれ、さらには売却益で債務を返済を返済することも期待できます。債務の借り換えや条件変更の交渉が可能もできるでしょう。

また、事業が継続することになるので多くの廃業費用が不要となります。従業員の雇用継続が可能となり、退職金の支払いがその場では発生しないケースがあります。

歯科業界のM&Aの事例

ここでは2024年に実施された歯科業界のM&A事例をご紹介します。各事例を参考に、今後のM&A実施に役立てましょう。

歯愛メディカルがニッセンHDを子会社化

株式会社歯愛メディカルがニッセンホールディングスの株式を取得し、子会社化しました。(2024年5月)

ニッセンホールディングスは、衣料品や美容グッズ、インテリア雑貨の通販事業を運営する会社で、他にも複数事業を持つグループ会社です。
セブン&アイ・ホールディングスの傘下にありましたが、業績不振により債務超過の状態が続いていました。

一方で歯愛メディカルは、歯科医院向けの通販事業を展開しており、特に女性医療従事者に焦点を当てています。ニッセンホールディングスの持つアパレル商品やサービスは、歯科医院で働く女性従業員にとって魅力的であると考え、セブン&アイ・ホールディングスから買収する形でM&Aが行われました。

歯愛クリニックはニッセンホールディングスの顧客基盤を活用し、女性の潜在的なニーズに応える商品展開を図る狙いがあります。また今後は収益性や経営面での改善を行っていく方針です。

【出典】exciteニュース「【歯愛メディカル】ニッセンの子会社化で事業が急拡大」

医療法人社団新緑会が地域ヘルスケア連携基盤に事業承継

医療法人社団新緑会が株式会社地域ヘルスケア連携基盤(CHCP)に事業を承継しました。(2024年3月)

新緑会は、静岡県焼津市にある「もも歯科」を運営しており、地域に根ざした医療サービスを提供しています。
M&A実施前の当時、経営の効率化や質の向上が求められていました。特に、医療業界全体が直面する後継者不足や人材確保の課題に対処する必要がありました。

一方で地域ヘルスケア連携基盤は、医療・介護分野における経営支援を専門とする企業であり、地域包括ケアの推進を目指しています。地域ヘルスケア連携基盤とのM&Aは、新緑会の後継者不足や人材確保の課題の解決につながるとされ、譲渡が行われました。

またこの事業承継により、経営の効率化やサービスの質向上、患者に対する医療の質の向上が期待されています。

【出典】PR TIMES「【事業承継支援】『地域医療を存続させる。』静岡県焼津市にある歯科医院の事業承継を支援」

日本ピストンリングが石福金属興業の歯科インプラント事業を譲受

日本ピストンリング株式会社が石福金属興業株式会社の歯科インプラント事業を買収しました。(2014年6月)

石福金属興業は、1988年に「IATインプラントシステム」を開発し、26年間にわたり国産の歯科インプラントメーカーとして事業を展開してきました。

一方で日本ピストンリングは、主に自動車用および船舶用のピストンリングを製造・販売しています。本社は埼玉県さいたま市に位置し、国内外の自動車メーカーに対して高品質なエンジン部品を提供しています。

日本ピストンリングが医療分野で事業開拓、事業拡大したいという目的がある中で、石福金属興業も貴金属製品分野に経営資源を集中させたいという、お互いのニーズが合致し、M&Aが行われました。

【出典】日本ピストンリング株式会社「歯科インプラント事業の譲受について」

メディカルネットがタイのNU-DENTTを子会社化

株式会社メディカルネットがタイのNU-DENTTを子会社化しました。

NU-DENTは、タイのバンコクを拠点に歯科器械材料や医薬品の販売を行っています。一方でメディカルネットは、2001年に設立された日本のヘルステック企業で、主に歯科医療に特化した情報サービスを提供しています。

メディカルネットは2017年からタイで歯科医院を運営しています。歯科事業の展開を目的に、NU-DENTの買収が行われました。今後もタイ国内での歯科医療の普及と事業化を進めていく予定で、地域の歯科医療環境の健全な発展に寄与します。

また、メディカルネットは同じタイミングで、タイにあるD.D.DENTの買収を行っています。

【出典】株式会社メディカルネット 「連結子会社の異動を伴う子会社による株式取得(孫会社化)に関するお知らせ」

歯科業界でM&Aを成功させるためのポイント

ここでは、歯科業界でM&Aを成功させるためにおさえるべきポイントについて解説します。

M&Aの目的を明確にする

M&Aを行う際は、まずその目的を明確にすることが大切です。目的が曖昧では、その後の手続きや戦略がブレる可能性があり、成功に結びつきません。

目的を達成できるように譲渡の手続きをしましょう。買い手とのシナジー効果PMIについて意識すると、よりM&A成功に近づきます。

※シナジー効果…2つ以上の組織や要素が統合することで、個々の力を単純に足し合わせた以上の価値や効果を生み出すことを指します。

自社のメリットや強みを整理する

自社の強みや特徴を理解することで、買い手に対して効果的にアピールでき、条件交渉でも有利になります。自社の強みを整理し、それを効果的にアピールすることが成功への鍵です。

メリットや強みを把握できていないという方は、ぜひ企業価値を分析しましょう。

弊社CINC Capitalでは、企業価値を知ることができるサービスを提供しています。算定は無料なのでぜひご活用ください。

>企業価値算定はこちら

M&A仲介会社の支援を受ける

専門的な知識と経験を持つM&A仲介会社の支援により、適切な買い手を見つけやすく、手続きも円滑に進みます。特に売却に伴う税務面は大変複雑なため、この点は税務に詳しい専門家への相談が求められます。

M&A仲介会社は国内に複数あるので、自社の状況にあった適切な企業を選ぶことが大切です。

M&A仲介会社の選び方については以下の記事で解説しています。併せてご覧ください。
【関連記事】M&A仲介とは?FAとの違いやメリット、会社選びのポイントを解説

まとめ|歯科医院は増加の一方で後継者不足が課題。M&Aの活用が解決の鍵

毎年、歯科医院の開設が行われています。一方で、後継者不足が深刻な問題として浮上しています。後継者不足の解決策としてM&Aの活用が注目されています。

またM&Aは、売却益の確保、債務や廃業費用などの解消などのメリットもあり、手段として取り入れる事業は増えています。M&Aを成功させるためにもM&A仲介会社の支援を貰い、準備や情報収集を積極的に行いましょう。

弊社はM&A仲介協会会員および中小企業庁のM&A登録支援機関として、M&Aのご相談を受け付けております。業界歴10年以上のプロアドバイザーが、お客様の真の利益を追求します。M&Aの相談をご希望の方はお気軽にお問い合わせください。

この記事の監修者

阿部 泰士

CINC Capital取締役執行役員社長

阿部 泰士

リクルートHRマーケティング、外資系製薬メーカーのバクスターを経て、M&A業界へ転身。 日本M&AセンターにてM&Aアドバイザーとして経験を積み、ABNアドバイザーズ(あおぞら銀行100%子会社)では執行役員営業本部長として営業組織を牽引。2024年10月より上場会社CINCの100%子会社設立後、現職に就任。

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