CINC CapitalはCINC(証券コード:4378)のグループ会社です。
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業種
- 公開日2025.07.01
- 更新日2025.07.01
ゴム製品業界のM&A動向は?事例や成功のポイントを解説【2025年】
ゴム製品業界におけるM&Aを検討している方々にとって、業界特有の課題や成功のポイントを把握することは非常に重要です。
本記事では、ゴム製品業界の市場動向、抱えている課題、最新のM&A動向などを詳しく解説します。M&Aを検討している方は是非最後までご覧ください。
目次
ゴム製品業界の市場動向
2025年の日本のゴム市場は、グローバル経済の減速や素材価格の不安定化により、不確実性の高い状況が続いています。特に自動車業界をはじめとする工業分野では、ゴム製品の需要が高まる一方で、原料供給の不安定さが大きな課題です。
2024年末の時点では、需要は前年同月比で3.2%増加と安定に推移しており、2025年も緩やかな拡大傾向が続くと予想されます。ただし、価格上昇や生産コストの増大が続けば、消費者価格へ転嫁されるリスクが高まるため、企業側の戦略的対応が求められています。
ゴム製品業界が抱えている課題
ゴム製品業界は、熟練技術者の高齢化と人材不足、原材料価格の高騰と調達リスク、脱炭素・環境対応への遅れといった課題に直面しています。本章では、それぞれの課題について詳しく解説します。
熟練技術者の高齢化と人材不足
ゴム製品業界では、熟練技術者の高齢化が進行しており、若手人材の確保が難しくなっています。この状況は、技術継承の停滞や生産効率の低下を招き、業界全体の競争力を弱める要因となっています。
特に中小企業では、若者の製造業離れが顕著であり、人材育成の時間やリソースの不足が課題となっています。このような人材不足は、製品の品質低下や納期遅延、コスト増加といった問題を引き起こす可能性があります。
原材料価格の高騰と調達リスク
ゴム製品の主要な原材料である天然ゴムや合成ゴムの価格は、気候変動や国際的な需給バランスの変化、政策の影響などにより大きく変動しています。特に天然ゴムは、熱帯地域での生産が主であり、気候変動による収穫量の減少や品質の低下が懸念されています。
また、合成ゴムの原料である石油価格の変動も、製品コストに直結するのです。これらの要因により、原材料の調達リスクが高まり、企業の収益性や価格競争力に影響を与えています。
脱炭素・環境対応への遅れ
地球温暖化対策や持続可能な社会の実現に向けて、企業には脱炭素や環境対応が求められています。ゴム製品業界においても、製造過程でのCO2排出削減や、使用済み製品のリサイクルなど、環境負荷の低減が課題です。
しかし、これらの取り組みには新たな設備投資や技術開発が必要であり、特に中小企業にとっては大きな負担となっています。環境対応の遅れは、企業のブランドイメージや市場での競争力にも影響を及ぼす可能性があります。
ゴム製品業界のM&A最新動向(2025年)
2025年のゴム製品業界では、事業環境の変化や競争激化に対応するため、M&Aが活発化しています。本章では、大きく分けて3つの動向について詳しく解説します。
大手による戦略的な再編・買収の活発化
大手ゴム製品メーカーは、事業基盤の強化や新市場への進出を目的として、積極的にM&Aを実施しています。この動きは、グローバル競争の激化や技術革新への対応を背景に、経営資源の最適化を図る戦略の一環です。
例えば、住友ゴム工業は、米グッドイヤーから欧米・オセアニアでの「ダンロップ」ブランドを取得し、ブランド戦略の強化を進めています。このような大手企業によるM&Aは、業界全体の再編を促進し、競争力の向上につながっています。
地方・中小企業の事業承継型M&Aが加速
地方や中小企業では、後継者不足や経営者の高齢化により、事業承継を目的としたM&Aが増えています。ゴム製品製造業界では、技術力や地域密着の強みを持つ企業が多く、こうした企業へのM&Aが活発です。
事業承継型M&Aは、企業の存続や雇用の維持、地域経済の安定にもつながります。
異業種連携による技術補完・販路拡大
ゴム製品業界では、異業種とのM&Aを通じて技術や販路を獲得し、製品開発や市場拡大を進める動きが広がっています。IT企業との連携による製造のデジタル化や、医療・食品分野への展開などが代表例です。
こうした異業種連携は、競争力の強化と新たな成長機会の創出に貢献しています。
ゴム製品業界でM&Aを成功させるためのポイント
ゴム製品業界でM&Aを成功させるには、商習慣や製造工程の理解、取引先との関係維持、技術の継承、地域との共生などが重要です。
本章では、各ポイントを詳しく解説します。
主要取引先との関係維持を重視する
ゴム製品業界のM&Aでは、取引先との関係維持が事業継続として重要になります。長年の信頼が取引の基盤であるため、経営変更に伴う不安を和らげるには、早期の情報共有が重要です。
例えば、産業資材を扱うA社は後継者不在を機に異業種のB社とM&Aを行い、従業員の雇用と取引先との関係を維持しながら事業を承継しました。
技術・ノウハウの継承体制を整備する
ゴム製品業界では、熟練技術者による高度な技術やノウハウが製品の品質や生産性に直結しています。M&Aにより経営体制が変わる際には、これらの技術やノウハウを確実に継承する体制を整備することが求められます。
具体的には、技術者の早期引継ぎやマニュアルの整備、教育研修の実施などが効果的です。これにより、製品の品質維持と生産性向上を図ることができます。
業界特有の商習慣や製造工程への理解を深める
ゴム製品業界には、独自の商習慣や製造工程が存在します。M&Aを成功させるためには、これらの業界特有の慣習やプロセスを深く理解し、尊重する姿勢が重要です。
例えば、製造工程における品質管理の基準や取引先との契約慣行などを把握し、円滑な事業運営を図ることが求められます。業界の特性を正しく理解することで、M&A後の統合プロセスをスムーズに進めることが可能です。
地域社会との共生を意識する
地方のゴム製品メーカーでは、地域との関係が企業の成長を支えています。M&Aで経営が変わる場合も、地域経済への貢献を続ける姿勢が重要です。
雇用の維持や地元企業との連携、地域イベントへの参加などを通じて、地域の信頼を得ることが企業価値の向上につながるでしょう。
従業員の雇用とモチベーションを確保する
M&Aで組織が変わると、従業員は不安を感じやすくなります。雇用の安定ややる気を保つには、早めに話し合いを行い、待遇や今後の働き方をしっかり伝えることが大切です。
特に製造業では、技術を持つ人の離職がそのまま会社の損失につながるため、M&A後すぐに実行できる定着の計画をあらかじめ準備しておく必要があります。
ゴム製品業界のM&A事例
最後に、ゴム製品業界のM&A事例をご紹介します。自社のM&A検討時の参考にしてみましょう。
クリヤマジャパンによる株式会社ミトヨのM&A
2025年2月、クリヤマホールディングスの子会社であるクリヤマジャパンは、自動車部品やホース・パイプ製造を手がける株式会社ミトヨの全株式を取得し、孫会社化することを決定しました。
ミトヨは樹脂製タンクなどを手がけ、尿素SCR関連商材の分野でクリヤマグループとも既に取引がありました。今回のM&Aにより、尿素水品質センサーからタンクまでの一気通貫製造が可能となり、製品開発力やコスト競争力の強化が期待されています。
また、ミトヨが有するタイ・中国の拠点や環境関連製品群との連携を通じ、グループ全体の提案力や生産・物流の最適化も図られます。製造から販売、施工に至る包括的な体制の強化は、今後のグローバル展開に向けた競争力向上に寄与するM&Aといえます。
【出典】クリヤマホールディングス株式会社『株式会社ミトヨの株式取得(孫会社化)に関するお知らせ』
横浜ゴム株式会社によるグッドイヤーのM&A
2024年7月、横浜ゴム株式会社は米グッドイヤー社の鉱山・建設用車両向けタイヤ(OTR)事業を約1,294億円で買収する契約を締結しました。本件は横浜ゴムが掲げる中期経営計画「YX2026」の成長戦略の一環であり、高成長が期待されるOHT(オフハイウェイタイヤ)市場への注力を示すものです。
グッドイヤーのOTR事業は年間売上約954億円、EBITDAマージン19%と高収益で、特に大型・超大型タイヤに強みがあります。本買収により横浜ゴムは商品ラインアップの拡充と価格帯の多様化を実現し、農業用途以外の市場でも競争力を強化します。
製造拠点や専門人材も獲得し、開発から販売までの全工程でシナジーが期待されます。OHT分野でのグローバル展開を加速する戦略的M&Aといえるでしょう。
【出典】横浜ゴム株式会社『横浜ゴム、グッドイヤー社の鉱山・建設用車両向けタイヤ事業を買収』
三光産業株式会社による有限会社五反田ゴム工業のM&A
2023年8月、シール・ラベル印刷を主力とする三光産業株式会社は、工業用ゴム製品を製造・販売する有限会社五反田ゴム工業の全株式を取得し、同社を完全子会社化しました。五反田ゴムは広島県に本社を構え、安定した売上を維持してきた老舗企業です。
今回の買収は、三光産業のグループ企業であるベンリナーの製造工程におけるシナジー創出を狙ったもので、今後の事業規模拡大や既存事業との相乗効果も見込まれています。専門家の視点では、製造工程の内製化や材料供給の安定化を通じた収益性の向上が期待される案件です。
【出典】三光産業株式会社『株式取得(子会社の取得 )に関するお知らせ』
まとめ│ゴム製品業界のM&A動向を押さえてM&Aを成功させましょう
ゴム製品業界では、熟練技術者の高齢化や原材料価格の高騰といった構造的課題に直面するなか、M&Aが事業承継や成長戦略の有効な手段として注目されています。特に、技術・販路の補完や地域企業との共生を意識したM&Aが増加しており、今後もその重要性は高まっていくと予想されます。
CINC Capitalは、M&A仲介協会会員および中小企業庁のM&A登録支援機関として、M&Aのご相談を受け付けております。業界歴10年以上のプロアドバイザーが、お客様の真の利益を追求します。M&Aの相談をご希望の方はお気軽にお問い合わせください。
この記事の監修者

CINC Capital取締役執行役員社長
阿部 泰士
リクルートHRマーケティング、外資系製薬メーカーのバクスターを経て、M&A業界へ転身。 日本M&AセンターにてM&Aアドバイザーとして経験を積み、ABNアドバイザーズ(あおぞら銀行100%子会社)では執行役員営業本部長として営業組織を牽引。2024年10月より上場会社CINCの100%子会社設立後、現職に就任。