CINC CapitalはCINC(証券コード:4378)のグループ会社です。
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業種
- 公開日2025.07.01
- 更新日2025.07.01
プラスチック業界のM&A動向は?事例や成功のポイントを解説【2025年】
プラスチック業界でM&Aを進めたいけど、業界の事情やリスクがわからず悩んでいませんか?環境規制や原材料高騰、技術者不足などにより、業界は今まさに大きな変革期を迎えています。
本記事では、市場動向や直面する課題、最新のM&A事例と成功のポイントを詳しく解説します。
目次
プラスチック業界の市場動向
日本のプラスチック業界では、環境規制の強化や技術革新を背景に、高付加価値製品への転換が進んでいます。2024年のバイオプラスチック市場は約8.2億ドルで、2033年には約24億ドルへと成長が見込まれています。
射出成形プラスチックも、2024年の市場規模が約186億ドルから2033年には約253億ドルに拡大すると予測されています。環境対応や高機能性への需要が増え、業界は全体として成長が続くでしょう。
プラスチック業界が抱えている課題
日本のプラスチック業界は、環境規制の強化、原材料価格の高騰、人材不足と技術継承の停滞など、複数の課題に直面しています。本章では、これらの主要な課題について詳しく解説します。
環境規制と脱プラスチックへの対応
プラスチック業界は、環境配慮の高まりを背景に大きな転換期を迎えています。2022年4月施行の「プラ新法」により、企業はプラスチック使用の削減やリサイクル促進を義務づけられました。
これにより、製品設計や原材料の選定において環境対応が不可欠となり、ビジネスモデルの見直しが進んでいます。容器包装には再生可能資源やリサイクルしやすい素材の活用が求められ、新しい技術の導入や仕入れ体制の見直しが必要になっています。
原材料価格の高騰と安定調達の難しさ
プラスチックの主な原料である石油由来のナフサは、原油価格や国際情勢の影響を受けやすく、最近は価格が大きく上がっています。特に中小企業では、材料費の上昇を販売価格に反映させるのが難しく、利益が減る原因になっています。
また、原料を安定して確保するのも難しくなっており、仕入れが滞ることで生産の遅れや品質の不安定さが生じる可能性があるのです。
人材不足と技術継承の停滞
製造業全体の人材不足は、プラスチック業界にも深刻な影響を与えています。特に熟練技術者の高齢化と若手の確保難により、技術継承が進まず、品質や生産効率の低下が懸念されています。
高度な技術を要する工程では経験が不可欠ですが、若者の製造業離れや3Kのイメージも採用の妨げになっています。企業には、職場環境の改善や教育体制の充実による人材の定着と育成が求められています。
プラスチック業界のM&A最新動向(2025年)
近年、日本のプラスチック業界では、事業承継問題や環境対応の必要性から、M&A(合併・買収)が活発化しています。本章では、3つの主要な動向について詳しく解説します。
事業承継を目的とした中小企業の売却が増加
日本の中小企業では経営者の高齢化が進み、後継者不在によるM&Aが増えています。ゴム・プラスチック製品の製造業では約15,000社の非上場企業が存在し、半数近くが小規模事業者のため、今後もM&Aの動きが広がる見通しです。
大手企業による事業再編と選択と集中
プラスチック業界では、価格競争の激化や環境規制の強化を背景に、大手企業が事業の選択と集中を進めています。
例えば、積水化成品工業や朝日印刷といった大手企業が積極的にM&Aを実施しており、業界再編の動きが活発になっています。また、伊藤忠系のタキロン化学も業界再編の一環としてM&Aや事業売却に踏み切っています。
これらの動きは、高機能樹脂や環境対応素材への経営資源の集中を図るための戦略的な再編といえるでしょう。
リサイクル・環境分野における買収が拡大
環境意識の高まりやESG投資の拡大により、プラスチック業界ではリサイクル分野でのM&Aが活発になっています。たとえば、TREホールディングスはリサイクル事業者タッグを子会社化し、技術の強化を進めています。
環境関連業界でも、過当競争の解消を目的としたM&Aが増加し、環境技術を持つ企業の買収が広がっているのです。
プラスチック業界でM&Aを成功させるためのポイント
プラスチック業界におけるM&Aを成功に導くためには、業界特有の課題や特性を踏まえた戦略的な対応が求められます。本章では、M&Aを成功させるためのポイントについて詳しく解説します。
環境対応技術やノウハウを確実に引き継ぐ
プラスチック業界のM&Aでは、リサイクル技術や省エネ設備など環境対応のノウハウ継承が重要です。環境規制が厳しくなる中、これらの技術は企業の強みとなるため、引き継げるかどうかがM&Aの成否を大きく左右します。
特にリサイクル分野では分別や再資源化に関する独自のノウハウが多く、文書化や人材教育による継承体制の整備が求められます。
主要取引先との関係継続を確認する
プラスチック業界では大口顧客との取引が収益の大半を占めるため、M&Aでは関係継続の確認が重要です。買収後に契約終了や注文減少が起これば、想定していた効果が得られない可能性があります。
そのため、事前に契約内容や関係性を精査し、必要に応じて継続の意思を確認しておくことが求められます。
PMI(統合プロセス)では品質・環境管理も統合する
M&Aの成功には、買収後のPMI(統合プロセス)を円滑に進めることが欠かせません。プラスチック業界では、企業ごとに品質や環境基準が異なるため、ルールの統一が重要です。基準がバラバラなままだと、品質トラブルや行政指導のリスクが高まります。
PMIの初期段階で両社の運用状況を比較し、統一ルールを明確にして社内に浸透させることが求められます。
現場技術者の離職防止と技能継承を重視する
プラスチック製造では、熟練技術者が品質や生産の要となるため、M&A後の離職リスクに注意が必要です。統合による環境の変化で不安を感じ、優秀な人材が転職することもあります。
これを防ぐには、M&Aの目的や方針を丁寧に伝え、待遇やキャリア支援を明確にすることが効果的です。
事業構造と規制リスクを精査する
プラスチック業界では環境規制が年々強化されており、M&Aでは対象企業の製品や工程が規制に対応しているかを見極めることが必要です。
使い捨て容器や排出量の多い工程がある場合、技術転換や追加投資が求められることがあります。事前に規制リスクを把握しないと、想定外のコストが発生し、収益計画が崩れる恐れもあるでしょう。
そのため、M&A前に事業構造とリスクを丁寧に分析することが重要です。
プラスチック業界のM&A事例
最後に、プラスチック業界のM&A事例をご紹介します。自社のM&A検討時の参考にしてみましょう。
ウェーブロックHD株式会社による有限会社ミネのM&A
2025年4月、ウェーブロックホールディングスは、子会社である株式会社イノベックスを通じて、有限会社ミネの全株式を取得し、同社を孫会社化しました。
ミネは新潟県に拠点を置く射出成型技術に強みを持つ企業で、中国に生産拠点を有し、プラスチック製品の開発・製造を手掛けています。これまでイノベックスは、ミネから防草用シート関連パーツなどを仕入れてホームセンター向けに販売しており、今回のM&Aにより製品開発の連携強化と販路拡大を目指しています。
ホームセンター業界の多様化する需要に応えるべく、グループ内の製造から流通までの一貫体制を構築し、マテリアルソリューション事業の成長加速を図る動きといえます。
【出典】ウェーブロックホールディングス株式会社『子会社による有限会社ミネの株式の取得(孫会社化)に関するお知らせ』
双日株式会社による日本エイアンドエル株式会社のM&A
2025年5月、双日株式会社は、住友化学と三井化学が出資する合弁会社・日本エイアンドエル株式会社の株式66.5%を取得し、同社を子会社化することで合意しました。
日本エイアンドエルは、リチウムイオン電池向けSBRラテックスやABS樹脂で高い技術力を持つ企業です。EV市場の成長を背景に、同分野への事業強化を図る双日にとって、戦略的な投資といえます。
住友化学と三井化学は事業ポートフォリオ見直しの一環として譲渡を決定し、今後は双日の知見とネットワークを活かし企業価値の向上が期待されます。化学業界では、環境対応やEV関連市場へのシフトがM&Aの主要な動機となりつつあります。
【出典】双日株式会社・住友化学株式会社・三井化学株式会社『双日、日本エイアンドエル株式を取得し、子会社化』
株式会社エッチ・ピー・エスによる豊田合成インテリア・マニュファクチュアリング株式会社のM&A
2023年11月、豊田合成株式会社は、子会社である豊田合成インテリア・マニュファクチュアリング株式会社(TGIM)の全株式を、取引先の浜名プラスチックの親会社である株式会社エッチ・ピー・エスへ譲渡することを決定しました。
TGIMは自動車用内装部品を手がけており、変化の激しい市場環境の中で豊田合成グループ内での収益拡大が難しいと判断されたことが背景にあります。一方、譲渡先のHPSグループは同業であり、生産・物流面での効率化によるシナジー創出が期待されています。
本件は、大手自動車部品メーカーが事業ポートフォリオを見直し、競争力のある体制への再編を進める中堅企業とのM&A事例として注目されます。
【出典】豊田合成株式会社『子会社の株式譲渡に関するお知らせ』
まとめ│プラスチック業界のM&A動向を押さえてM&Aを成功させましょう
プラスチック業界は、環境規制の強化や原材料高騰、人材不足などの課題に直面し、事業承継や再編を目的としたM&Aが活発になっています。特に、リサイクル技術や環境対応素材を持つ企業の買収が増え、持続可能な事業への転換が進んでいます。
CINC Capitalは、M&A仲介協会会員および中小企業庁のM&A登録支援機関として、M&Aのご相談を受け付けております。業界歴10年以上のプロアドバイザーが、お客様の真の利益を追求します。M&Aの相談をご希望の方はお気軽にお問い合わせください。
この記事の監修者

CINC Capital取締役執行役員社長
阿部 泰士
リクルートHRマーケティング、外資系製薬メーカーのバクスターを経て、M&A業界へ転身。 日本M&AセンターにてM&Aアドバイザーとして経験を積み、ABNアドバイザーズ(あおぞら銀行100%子会社)では執行役員営業本部長として営業組織を牽引。2024年10月より上場会社CINCの100%子会社設立後、現職に就任。