CINC CapitalはCINC(証券コード:4378)のグループ会社です。
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- 公開日2025.09.29
【2025年】ファッション業界の事業承継とは?動向や手法、メリットデメリット、成功のためのポイントを解説
ファッション業界の事業承継についてお悩みではありませんか?
「後継者がいない」「ブランドの価値をどう受け継げばいいかわからない」など、経営者や後継者候補が抱える不安は少なくありません。
本記事では、ファッション業界に特化した事業承継のポイントを、最新の業界動向や事例をもとにわかりやすく解説します。
目次
ファッション業界の市場動向と課題
日本のファッション業界は、コロナ禍による影響から脱しつつあり、回復の兆しを見せています。
本章では、3つの観点から市場動向と課題について見ていきましょう。
市場規模は縮小後、回復傾向に
矢野経済研究所の調査によると、2020年にはコロナ禍の影響で市場規模が約7兆5,158億円まで縮小しましたが、2023年には8兆3,564億円まで回復し、3年連続のプラス成長です。
現在は2019年の水準に近づいていますが、人口減少や高齢化の影響で今後は再び縮小する可能性があります。
中長期的には、回復と停滞が交差する不安定な市場構造が続く見通しです。
【出典】矢野経済研究所「国内アパレル市場に関する調査を実施(2024年)」
EC化進む一方、実店舗も復活
経済産業省によると、2023年のアパレルEC化率は23.38%に達し、オンラインでの購入が一般化しています。
一方で、外出需要やフォーマル需要の回復により、百貨店や専門店などの実店舗売上も戻りつつあります。
今後はECとリアル店舗を併用したオムニチャネル戦略が主流になっていくと考えられるでしょう。
【出典】経済産業省「令和6年度電子商取引に関する市場調査の結果を取りまとめました」
価格競争と供給過多による圧迫
ファストファッションの浸透と商品の供給過多により、アパレル業界全体の価格競争が激しいです。
特に中小ブランドでは差別化が難しく、収益が圧迫される傾向が強まっています。
そのため、独自性やブランド価値を明確に打ち出す戦略が生き残るために重要です。
【2025年】ファッション業界の事業承継の最新動向
ファッション業界では、経営者の高齢化と後継者不足が深刻化しており、事業承継への関心が一段と高まっています。
本章では、事業承継の最新動向を3つの観点から見ていきましょう。
後継者不足で承継ニーズ急増
経済産業省の「繊維ビジョン」でも指摘されているように、繊維産業は国内産地の就業者減少や経営者の高齢化が進み、事業承継が大きな課題となっています。
実際、中小企業全体でみても後継者が決まっていない企業は依然として半数を超えており、事業の存続に向けた承継準備は急務です。
とくに小規模事業者では後継者不在が深刻であり、繊維産業の川下を担うファッション・アパレル分野においても、早期の対応と持続可能な経営基盤づくりが求められています。
【出典】経済産業省「繊維産業の現状と2030年に向けた繊維産業の展望(繊維ビジョン)の概要」
M&Aによる事業承継が活発化
ファッション・アパレル業界では、事業承継の方法としてM&Aを活用するケースが近年増えています。
たとえば、大手商社やIT企業が中堅ブランドを買収し、経営資源や販路を強化する動きが加速しているのです。
中小企業白書でも、社員や親族による承継よりも、第三者によるM&Aが選ばれる傾向が強まっているとされています。
公的支援やマッチング支援の拡充
中小企業庁が運営する事業承継・引継ぎ支援センターや地域金融機関の相談窓口が全国に整備され、第三者承継を支援する仕組みが充実しています。
その結果、特に親族内に後継者がいない企業でも、社外候補者やM&Aを通じた承継を検討しやすい環境が整いつつあります。
これにより、従来承継が難しいとされていた中小・小規模事業者にも門戸が広がり、承継実行率向上が期待されるでしょう。
ファッション業界で事業承継を実施する方法は?
ファッション業界で事業承継を進める際には、大きく分けて「親族内承継」「第三者承継(社員など)」「M&Aによる外部承継」の3つの手段があります。
それぞれに特徴や適性があり、経営者の状況や会社の将来像に合わせた選択が重要です。
本章では、それぞれの方法について解説していきます。
親族内承継
親族に事業を引き継ぐ方法は、企業理念や文化を継承しやすいというメリットがあります。
また、事業承継税制など税制上の優遇措置を受けられる点も魅力です。
ただし、適任者がいないケースが増えており、実施率は約30%と減少傾向にあります。
従業員承継
社内の役員や主要社員を後継者とする方法は、社内文化・顧客理解を持つ人材に継ぐため、業務の連続性と現場の納得感を得やすいのが特徴です。
社内文化やブランド理解のある人材に引き継ぐことで、事業の安定が期待されます。
一方で、契約手続きや社内の同意形成を丁寧に進める必要があるでしょう。
M&A
他社への事業譲渡や買収による承継は、経営基盤や販路の拡大に役立ちます。
成長戦略の一環として活用されることも増えており、再成長の機会を生み出すのです。
ただし、ブランド価値の維持や従業員・取引先への配慮など、業界特有の注意が求められます。
ファッション業界で事業承継するメリット
ファッション業界において事業承継を行うことは、単に経営者を交代させることではありません。
継続的にブランドを守りながら、次世代へと価値を引き継ぐ重要なプロセスです。
本章では、ファッション業界で事業承継するメリットを5つ解説していきます。
ブランド資産を維持できる
事業承継によって、自社ブランドのアイデンティティや歴史を保持したまま次世代へ引き継ぐことができます。
たとえば、類似する業界の企業への承継では、ブランドコンセプトを尊重し価値を発展させるといった選択肢が可能です。
そうした方法によって、創業者の理念を損なわずにブランド継続を支えられます。
従業員や取引関係を継続できる
M&Aや承継によって事業を停滞させずに継続することで、従業員の雇用が維持される可能性が高まります。
多くの買い手企業は既存スタッフを引き継いで、人材流出を避けながら業務の安定性を確保したいと考えるのが多いです。
その結果、取引先との信頼関係も維持され、サプライチェーンも安定します。
デザイン・技術ノウハウを継承できる
M&Aや事業承継を通じて事業を途切れさせずに続けることで、従業員の雇用を守れる可能性が高まります。
多くの買い手企業は、これまで働いてきたスタッフをそのまま引き継ぎ、仕事の流れを変えずに運営したいと考えています。
そのため、人材の流出を防ぎながら、取引先との信頼関係やサプライチェーンも維持しやすくなります。
経営基盤・販路を強化できる
事業承継を通じて大手企業のグループに入ることで、資金力や販路、物流体制といった経営資源が活用可能です。
親会社が持つ販売チャネルを活かすことで、新しい市場への展開やブランドの拡張もスムーズに進められます。
さらに、スケールメリットにより仕入れコストの削減や、需要変動への柔軟な対応も可能になるでしょう。
創業者が安心してリタイアできる
事業承継が完了すれば、オーナーは経営責任を引き渡すことができ、引退後の生活設計や資産の整理に集中できます。
M&Aによる承継では、株式譲渡の場合は売却益は株主(オーナー)に、事業譲渡の場合は法人に帰属します。
どちらの手法を選ぶかで、引退後の資金計画や法人の財務状況への影響が異なる点に注意が必要です。
こうした安心感が、円滑な引退につながります。
ファッション業界で事業承継するデメリット
ファッション業界における事業承継は多くのメリットがある一方で、慎重な対応が必要なデメリットも存在します。
本章では、事業承継で生じるデメリットを3つ見ていきましょう。
ブランド価値が毀損する恐れ
事業承継において、売り手と買い手のブランド戦略が合わない場合、これまで築いてきたブランドのイメージが変わってしまう可能性があります。
たとえば、大量生産を優先する方針に切り替えることで、これまでのファンが離れてしまうこともあるでしょう。
ブランドの方向性がぶれると、長年の信頼や価値が一気に失われるリスクがあるのです。
組織文化の衝突や人材流出が起こる可能性
承継後に経営スタイルや社内文化が変わることで、従業員が新体制に馴染めずに離職してしまうことがあります。
特にデザイナーや職人など、ファッション業界に欠かせない人材が流出すると、商品の品質やブランドの魅力に大きな影響を与えます。
組織文化の違いは、承継の成否を左右する大きな要素となるでしょう。
承継プロセスにかかるコストと時間の負担
M&Aや第三者への承継では、事前の調査や契約、株式評価など多くの作業が必要になり、時間もコストもかかります。
十分な準備ができていないと、スケジュールが遅れたり、予想外の費用が発生したりするリスクがあります。
こうした負担が積み重なることで、承継そのものが失敗に終わる可能性も出るでしょう。
ファッション業界で事業承継を成功させるためのポイント
ファッション業界で事業承継を成功させるには、業界特有のブランド性や技術、人材、消費者ニーズを踏まえた戦略が欠かせません。
単なる経営者の交代ではなく、ブランドの「世界観」や「価値」を未来へつなげる視点が重要になります。
本章では、事業承継を成功させるためのポイントを5つ見ていきましょう。
ブランド理念を言語化・共有する
事業承継を成功させるには、創業者の価値観やブランドに込めた想いを明確に言葉で表すことが重要です。
理念が言語化されていれば、後継者や社員がブランドの方向性を正しく理解し、判断に迷いが生じにくくなります。
社内外で理念を共有することで、新体制でもブランドの一貫性を保ちやすくなるのです。
技術・デザインノウハウを体系化し見える化
ファッション業界には、職人の技術やデザインノウハウなど属人的なスキルが多いです。
それらをマニュアルや教育体制として仕組み化することで、誰でも再現できる技術として残すことができます。
技術の見える化は、品質の安定や若手育成にもつながる重要な取り組みです。
主要顧客・取引先との関係を引き継ぐ
信頼関係のある顧客や取引先との関係を後継者に引き継ぐことは、事業を安定させるうえで欠かせません。
承継前から挨拶や紹介の機会を設け、後継者の存在を認知してもらうことが理想です。
連絡先や取引履歴などの情報も整理しておくと、スムーズな関係維持が実現できます。
デジタル戦略やサステナビリティ対応を組み込む
現代の消費者は、ECやSNSの利便性や環境に配慮したブランド姿勢を重視しています。
事業承継を機に、ECサイトの見直しや環境対応素材の導入などを計画に盛り込むことが有効です。
新しい時代のニーズを取り入れることで、承継後もブランドの競争力を維持できます。
専門家と連携して計画的に進める
事業承継では、税務・法務・M&Aなど多くの専門知識が求められます。
経験豊富な専門家や支援機関と連携しながら、承継の計画書を作成することが成功において重要です。
準備から実行まで段階を追って進めることで、リスクを減らしながらスムーズな承継が可能になります。
まとめ|ファッション業界の承継成功は「準備」と「専門性」が鍵
ファッション業界では、ブランドや技術の継承が重要である一方で、後継者不足や市場変化といった課題も抱えています。
事業承継は経営者交代にとどまらず、ブランドの価値を未来へつなぐ経営戦略として考えることが重要です。
CINC Capitalは、ファッション業界を含む中小企業の事業承継を多数支援しており、それぞれの企業に合った方法でスムーズな承継を実現します。
まずはお気軽にご相談ください。
この記事の監修者

CINC Capital取締役執行役員社長
阿部 泰士
リクルートHRマーケティング、外資系製薬メーカーのバクスターを経て、M&A業界へ転身。 日本M&AセンターにてM&Aアドバイザーとして経験を積み、ABNアドバイザーズ(あおぞら銀行100%子会社)では執行役員営業本部長として営業組織を牽引。2024年10月より上場会社CINCの100%子会社設立後、現職に就任。