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動物病院の事業承継とは?動向や承継方法、手続きの流れ、メリットやデメリットを解説

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  • 公開日2025.04.10
  • 更新日2025.06.26

動物病院の事業承継とは?動向や承継方法、手続きの流れ、メリットやデメリットを解説

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動物病院業界では近年、院長の高齢化や後継者不足を背景に、事業承継の重要性が急速に高まっています。

市場は成長を続ける一方で、経営環境は大きく変化しており、適切な承継戦略を講じることが求められています。

本記事では、動物病院における最新の事業承継動向と成功のポイントを解説します。

動物病院業界の市場動向は?

ペットの飼育数は減少傾向に

動物病院業界は、近年大きな変化を迎えています。市場規模は一定の成長を維持していますが、その背景にはペット飼育数の減少や、動物医療の高度化による支出額の増加といった要因が影響しています。

日本国内におけるペットの飼育数を見ると、特に犬の飼育頭数は減少傾向です。一般社団法人ペットフード協会の調査によると、2013年には犬の飼育頭数が約870万頭と報告されていました。

しかし、2023年には約685万頭と減少しています。猫は2013年が約840万頭、2023年が約907万頭と、毎年増減を繰り返しながら横ばいの状態です。今後もこの傾向が続く可能性があるとされています。

一方、動物病院の数は増加傾向

動物病院は、2024年末時点で全国に16,993院が存在しています。特に首都圏や大都市圏では動物病院の集中が進んでおり、供給過多の懸念が指摘されています。

ペットの飼育数が減少する一方で、動物医療への支出額は増加の傾向があります。理由はペットの高齢化に伴い、慢性疾患の治療や先進的な医療技術の導入が進み、1件あたりの診療単価が上昇しているためです。

高度な医療機器を導入した病院や、専門診療を提供する動物病院は成長を続けており、市場の二極化が進んでいるといえます。

このような市場動向の中で、経営が厳しくなる動物病院も増えており、今後は事業承継やM&Aによる病院の存続がますます重要になっていくでしょう。

【出典】農林水産省「飼育動物診療施設の開設届出状況(診療施設数)」

動物病院業界が抱える課題

動物病院業界は、市場規模が一定の成長を維持しているものの、経営環境は厳しさを増しています。ここでは、動物病院業界が直面している主要な課題について解説します。

1病院あたりの患者数の減少

動物病院業界の大きな課題の一つが、1病院あたりの患者数の減少です。ペットの飼育頭数は年々減少しており、それに伴い1病院あたりの犬猫の来院数も減少傾向にあります。

また、動物病院の数は増え続けているため、需要よりも供給が上回る状況になっています。その結果、飼い主が病院を選ぶ基準が厳しくなり、質の高い医療サービスや専門性の強化が求められています。

院長の高齢化と後継者不足

動物病院業界では、院長の高齢化と後継者不足が深刻な課題となっています。特に地方では若手獣医師を募集しても確保が難しく、後継者不在のために廃業を余儀なくされる病院も少なくありません。

親族内での事業承継が難しいケースでは、従業員や外部の獣医師への引き継ぎが検討されますが、それも困難を極めます。

動物病院業界の事業承継の最新動向【2025年】

近年、動物病院業界では経営者の高齢化や後継者不足を背景に、事業承継の動きが活発化しています。この1〜2年で顕著になった最新の動向について、主要なポイントを解説します。

大手グループによる動物病院の買収が本格化

2023年から2025年にかけて、大手動物病院グループによる個人経営の動物病院の買収が本格化しています。大手グループの中には年間30件以上の買収を実施する企業も現れ、業界再編が急速に進行しています。

買収後は、診療システムの統一化やブランディングの強化、専門診療の充実などが進められ、動物医療の質向上と効率化が同時に図られています。2025年には大手グループ間での合併・買収も見られるようになり、業界の寡占化が進んでいます。

獣医師個人によるM&Aの増加と多様化

最新の傾向として、開業を目指す獣医師個人が単に動物病院を購入するだけでなく、複数の病院を同時に取得して小規模グループ化を進める事例が増えています。2025年には、グループ内で専門診療を分担しながら地域医療を支える「地域連携型」の事業承継モデルも登場しました。

特に30〜40代の獣医師を中心に、従来の「一人開業」ではなく、複数の獣医師でパートナーシップを組み、共同で事業を継承するケースも目立ちます。これにより、休日診療の充実や専門分野への特化など、新たな診療体制の構築が可能になっています。

M&Aの一般化と市場拡大

現在では親族による承継のほか、M&Aによる第三者承継が一般化しつつあります。背景には、動物医療の市場規模拡大や、M&A仲介サービスの発展があります。特に都市部を中心に、経営難に陥る前にM&Aを活用し、スムーズな承継を目指す病院が増加しているのが特徴です。

動物病院の事業承継にはどんな種類がある?

動物病院の事業承継には、大きく分けて「親族内承継」「第三者承継」「M&A」という3つの方法があります。それぞれの特徴や向いているケースを理解することが、円滑な承継の第一歩です。

親族内承継

親族内承継は、子どもや親戚といった血縁者に動物病院の経営を引き継ぐ方法です。経営理念や治療方針を継続しやすく、信頼関係が築かれている点が大きなメリットです。

例えば、院長の子どもが獣医師免許を取得している場合、事業をスムーズに受け継ぎやすく、既存のスタッフや顧客にとっても安心感があります。また、長期的な引き継ぎ計画を立てやすく、経営方針の共有もしやすい点が特徴です。

ただし、後継者の意思や能力、家族間の関係性によっては承継が難航するケースもあるため、早期からの準備が不可欠です。事業の価値を客観的に評価し、感情に左右されない判断が求められます。

親族内承継は信頼と継続性を重視する動物病院に適した承継方法と言えるでしょう。

【関連記事】親族内承継とは?

第三者承継

第三者承継は、親族以外の従業員や外部の獣医師に病院を引き継ぐ方法です。後継者が見つかれば、動物病院の独立性を保ちながら承継が可能です。

特に近年では、院内で長く勤めているスタッフや副院長などが後継者として名乗りを上げるケースも増えています。院の運営方針やスタッフ構成を熟知しているため、引き継ぎがスムーズであることが多いです。

一方で、外部から後継者を探す場合には、理念の共有や信頼関係の構築に時間がかかることがあります。また、資金面や承継後の経営支援体制を整える必要もあります。

第三者承継は、親族に適任者がいない場合や、従業員の独立を支援したい場合に有効な選択肢です。

M&A

M&A(企業の合併・買収)は、動物病院を法人や他の経営者に売却することで事業を引き継ぐ方法です。スピーディーに事業を譲渡できるうえ、経営資源の有効活用も可能です。

例えば、大手動物病院グループや異業種から参入を目指す企業とのM&Aが進めば、施設や設備の刷新、人材確保の面で大きなメリットがあります。

また、経営者は引退後に資産を確保できるため、老後資金や新たな事業展開に活用することもできます。

しかし、M&Aでは買い手側の企業文化や経営方針との整合性が重要であり、従業員の不安や顧客離れにつながるリスクもあります。専門家のアドバイスを受けながら慎重に交渉を進める必要があります。

M&Aは、後継者が見つからない場合や事業価値を最大限に評価して売却したい場合に効果的な手法です。

【関連記事】M&Aとは?意味や目的、手法など基本をわかりやすく解説

動物病院を事業承継するメリット

動物病院を事業承継することで、単なる引退にとどまらず、多くの価値を地域や関係者に残すことができます。ここでは代表的なメリットについて解説します。

メリット① 
長年の病院運営を地域に残すことができる

動物病院を承継することで、これまで築いてきた地域との信頼関係や運営の実績を未来につなぐことができます。

長年にわたって積み重ねてきた「地域に愛される動物病院」というブランドは、承継によって継続され、地域医療の安定にも寄与します。特に高齢化や過疎化が進む地域では、新規開業よりも既存病院の継続が求められるケースが多く、承継は社会的にも意義のある選択です。

実際、地域密着型の動物病院では、飼い主との信頼が資産そのものです。信頼を維持するには、閉院ではなく承継による継続が効果的です。

事業承継は、病院を単なるビジネスではなく、地域資産として次世代に残す手段となります。

メリット② 
スタッフや飼い主との関係を守りながら引退できる

承継によって、長年働いてきたスタッフや通い続けてくれた飼い主との関係性を維持したまま引退することが可能です。

経営者が急な廃業や売却を選ぶと、従業員の雇用不安や飼い主の不信感を招くおそれがあります。しかし、段階的な事業承継を行えば、信頼関係を壊さずに自然な形で次の世代にバトンを渡せます。

例えば、引退前に後継者との共同診療期間を設けることで、スタッフや飼い主も新体制にスムーズに馴染みやすくなります。

円滑な事業承継は、単なる退職ではなく、関係性の継続と安心感をもたらす方法です。

メリット③ 
診療理念や治療方針を後継者に伝えることができる

事業承継を通じて、院長自身の診療理念や動物への想い、治療方針を後継者にしっかりと引き継ぐことができます。

動物病院にとって、医療技術だけでなく「動物とどう向き合うか」という姿勢が非常に重要です。理念やポリシーが共有されることで、病院のカラーがぶれることなく、これまでの信頼を維持できます。

例えば、「動物にも家族と同じケアを」という考えを持つ病院では、同じ価値観を持つ後継者と共に診療することで理念を体現し続けることが可能です。

理念継承は、単なる経営の引き継ぎではなく、動物医療における文化の継続でもあります。

メリット④ 
第三者売却よりも安心して任せられる場合が多い

親族や院内スタッフへの承継であれば、第三者への売却よりも信頼感を持って経営を任せやすい傾向があります。

売却による承継では、買い手の経営スタイルや価値観が異なることが多く、方針転換によるリスクもつきものです。しかし、長年働いてきたスタッフや家族であれば病院の内部を熟知しており、安心して引き継ぎを行うことができます。

特にスタッフが後継者になる場合、患者との関係性も継続されるため、急激な環境変化が避けられます。

信頼できる相手への承継は、退任後の安心感と患者やスタッフの満足度を両立させる選択です。

メリット⑤ 
引退時期を柔軟に調整できる

事業承継を選ぶことで、自分の体調やライフスタイルに合わせて柔軟に引退時期を設定することが可能になります。

突発的な廃業と違い、計画的な承継ならば後継者育成や引継ぎ期間を段階的に設けることができるため、経営者自身も余裕を持って次の人生設計を描けます。

例えば、「60歳から後継者に徐々に任せ、65歳で完全引退」といったプランニングが可能で、心理的にも、経済的にも負担が軽減されます。

承継は、経営者が自分のタイミングで安心して退くための戦略的手段です。

動物病院を事業承継するデメリット

一方で、動物病院の事業承継にはリスクや課題も伴います。失敗を避けるためには、以下のようなデメリットも事前に理解しておくことが重要です。

デメリット① 
後継者との相性や価値観のズレが生じることがある

事業承継では、後継者と現院長の間に考え方や経営方針の違いが出ることが避けられない場合があります。

特に理念や治療方針にこだわりがある経営者ほど、その違いがストレスや摩擦に発展しやすいです。

例えば、現院長が地域密着型の診療を重視する一方、後継者が最新設備や高額治療を重視するスタンスであれば、運営方針が対立する可能性があります。

相性の確認や価値観の共有を十分に行うことが、スムーズな承継に欠かせません。

デメリット② 
承継がスムーズに進まないと診療に支障が出る

承継プロセスに時間がかかると、病院の運営や診療体制に悪影響を及ぼすことがあります。

特に中途半端な状態が長引くと、スタッフの士気が下がったり、飼い主の不信感を招いたりすることもあります。

例えば、後継者が途中で辞退したり、引継ぎが不十分で診療品質が低下したりする場合もあります。

承継は時間をかけて丁寧に行うべきですが、計画性を欠くと逆に現場に混乱を招く要因にもなります。

デメリット③ 
承継先に対して過度な期待や干渉をしてしまいやすい

経営者が事業に強い思い入れを持っているほど、後継者への期待や干渉が過剰になりやすいです。

引き継いだ後も、「こうあるべき」「自分の時代はこうだった」と口を出すと、後継者の自由な判断を妨げてしまいます。

特に親族や元スタッフが後継者の場合、感情的な関係性が入り混じるため、適切な距離感を保つのが難しくなる傾向にあります。

承継後は、信頼して任せる姿勢を持つことが、円滑な運営と関係構築において重要です。

デメリット④ 
規模や収益性によっては後継者が見つかりにくい

小規模で収益性の低い動物病院は、後継者候補にとって魅力が薄く、承継先が見つからない場合があります。

特に地方や高齢化が進んでいる地域では、動物医療の需要はあっても採算が取れにくく、若い獣医師がリスクを懸念して承継に踏み切れないケースも多いです。

また、施設の老朽化やスタッフ不足が重なると、承継後に多大な投資が必要となり、経営負担も大きくなります。

事業の魅力を高める努力と、承継しやすい環境整備が不可欠です。

動物病院の事業承継の流れ

動物病院の事業承継は、一朝一夕で完了するものではなく、段階的な準備と調整が必要です。以下では、主要な5つのステップで承継の進め方を解説します。

ステップ① 
事業承継の目的や希望条件を整理する

最初に行うべきは、「なぜ事業を承継したいのか」という目的や、自身の希望条件を明確にすることです。

ゴールを設定せずに承継を始めると、途中で判断がぶれたり、後継者と意見の食い違いが生じやすくなります。

例えば、「地域のペット医療を今後も守ってほしい」「スタッフの雇用を守ってほしい」「65歳までには引退したい」といった具体的な希望がある場合、それを最初に書き出して整理しておくことで、その後のステップがスムーズになります。

事業承継は、ただ病院を譲るだけでなく、自分の想いや将来設計を反映させる大切なプロセスです。

ステップ② 
後継者候補を探して面談を行う

希望条件を整理した後は、それに合う後継者候補を探し、直接の面談を通じて相互理解を深めることが重要です。

表面的な経歴や技術力だけでなく、人柄や理念の一致を重視することで、承継後のトラブルを未然に防ぐことができます。

例えば、院内の副院長や長年勤めるスタッフが候補の場合、すでに職場環境を把握しており、スムーズに移行できる可能性が高いです。一方で外部候補の場合は、時間をかけて信頼関係を築く必要があります。

面談を重ねることで、お互いの考え方や期待をすり合わせることができ、承継の土台を強固にすることができます。

ステップ③ 
病院の現状や課題を共有して承継方針をすり合わせる

後継者候補が見つかったら、病院の現状や今後の課題を正直に伝え、承継後の方向性をすり合わせることが必要です。

承継における失敗の多くは、情報の非対称や曖昧な引き継ぎに起因します。例えば、収益状況、設備の老朽化、スタッフの課題など、マイナス情報も含めて共有することで、後継者の不安を軽減できます。

同時に、後継者の方針やビジョンも聞き、両者が納得できる形で方針を設定することが重要です。

「透明性」と「協議」のプロセスが、信頼に基づく事業承継を実現する鍵となります。

ステップ④ 
契約条件を決めて承継計画を策定する

承継の方向性が固まったら、具体的な契約条件や引き継ぎスケジュールを策定し、法的な合意を交わします。

この段階では、資産の引き渡し、雇用契約、引退時期、役割分担など、あらゆる要素を文書化する必要があります。専門家(弁護士、税理士、M&Aアドバイザー)に相談しながら進めることで、トラブルのリスクを最小限に抑えることができます。

例えば、「XX年XX月までに院長を交代」「売却金額はXX万円」「設備はそのまま使用する」といった形で、明確なルールを設定することが重要です。

契約と計画の明文化は、承継を現実のステップに移すための重要な区切りです。

ステップ⑤ 
診療・経営を引き継ぎながら信頼関係を築いていく

承継契約を終えた後は、実際の診療や経営を段階的に引き継ぎながら、関係者との信頼関係を築くフェーズに入ります。

特にスタッフや飼い主にとっては「誰が次の院長になるのか」「今までと何が変わるのか」が大きな関心事です。その不安を和らげるためにも、旧院長と新院長が並走して一定期間診療を行う「引き継ぎ期間」は有効です。

例えば、半年〜1年程度の引き継ぎ期間を設け、少しずつ業務を任せていくことで、院内外の混乱を防ぐことができます。

事業承継は「ゴール」ではなく、新体制が信頼を得るための「スタート」です。

動物病院の承継や譲渡に必要な資格や許可は?

動物病院をスムーズに承継・譲渡するには、法的に求められる資格や手続き、許認可の確認が欠かせません。ここでは、具体的に必要となる主な項目を解説します。

獣医師免許を持つ後継者を確保する

動物病院を承継する際には、後継者が「獣医師免許」を有していることが大前提です。

日本では、獣医療行為を行うには獣医師法に基づいた国家資格が必要であり、無資格者が診療を行うことは法律で禁じられています。そのため、事業承継の対象者が獣医師でなければ、そもそも診療を継続することができません。

例えば、親族やスタッフに経営を譲る場合でも、その人物が免許を持っていない限り、別の獣医師を雇う必要が生じるため、承継の実現性が大きく変わってきます。

事業承継の準備段階で、まずは後継者の資格保有を確認し、必要に応じて獣医師免許の取得支援や別の獣医師との連携を検討する必要があります。

【出典】農林水産省「獣医師、獣医療」

開設者変更の手続きを保健所に届け出る

動物病院の運営においては、保健所への「診療施設届出事項変更届」が必須となります。

動物病院は、獣医療法第3条の規定に基づき各自治体への届出を義務付けられており、承継により経営者が変わる場合には、速やかに開設者(経営者)の変更手続きを行う必要があります。

例えば、従来の院長が経営から退き、後継者に病院を譲渡する際には、「診療施設届出事項変更届」を提出し、自治体からの承認を得なければなりません。書類の内容には、病院名称、所在地、施設概要、獣医師名簿などが含まれ、事前に準備しておくべき項目も多岐にわたります。

承継後のトラブルを防ぐためにも、行政手続きは専門家に相談しながら漏れなく進めることが重要です。

【出典】東京都産業労働局「獣医療」

医療機器や施設に関する許認可を確認する

承継時には、病院内の医療機器や施設が関係する「各種許認可」の継続可否も確認する必要があります。

特に、X線装置やMRIなどの放射線機器を使用している場合は、「放射線障害防止法」に基づく使用許可の名義変更が必要になるケースがあります。これを怠ると、違法状態となり診療停止や罰則を受ける可能性もあるため注意が必要です。

具体例として、旧院長名義で登録されているX線装置がある場合は、後継者名義での再登録手続きを行わなければなりません。また、建物の構造や設備に変更がある場合も、再度の検査や許可取得が求められることがあります。

病院の診療機能を維持するためにも、施設と機器に関わる法的手続きは漏れなくチェックし、承継前に必要な措置を完了しておくことが不可欠です。

動物病院の事業承継を成功させるためのポイント

動物病院の事業承継を円滑に進めるには、単なる手続きだけでなく、人や理念、経営の調和が重要です。ここでは、事業承継を成功に導くためのポイントを紹介します。

早めに承継の計画を立てて準備を進める

事業承継は時間をかけて計画的に進めることが成功の鍵です。

承継の準備には、後継者の選定や育成、関係者との調整、契約や手続きなど、多くの工程があります。これを短期間で済ませようとすると、準備不足からトラブルを招く可能性が高まります。

例えば、後継者が決まっていても、理念や経営方針の共有には時間が必要です。引き継ぎ期間も考慮すれば、5〜10年の長期的な視点で計画を立てるのが理想的です。

早期の準備は、経営者自身にとっても精神的・経済的な余裕を生み出し、円滑な事業移行に直結します。

後継者と理念や診療方針をすり合わせておく

後継者との間で診療に対する考え方や経営方針を事前にすり合わせておくことで、承継後の混乱を防ぐことができます。

動物病院は医療サービスであると同時に、地域社会との信頼関係で成り立っています。そのため、後継者が経営を引き継いだ後も、患者やスタッフがこれまで通り安心して通える体制が必要です。

例えば、旧院長が「予防医療重視」の方針で運営していた場合、新院長もその方針を尊重することで、患者の信頼を維持できます。

理念や診療スタンスの共有は、単なる情報の引き継ぎではなく、病院の文化の継承に他なりません。

スタッフや飼い主への丁寧な説明を心がける

事業承継においては、スタッフや飼い主への丁寧な説明が信頼維持のポイントとなります。

いきなり院長が交代したり、方針が変わったりすると、現場に不安や不信感が広がるリスクがあります。そうしたトラブルを防ぐためにも、事前に関係者に承継の内容や今後の体制を分かりやすく説明することが重要です。

例えば、院内ミーティングでスタッフに詳細を伝えたり、飼い主にはお知らせや個別の説明会を設けるなど、段階的なコミュニケーションが効果的です。

誠実な情報共有は、承継に伴う不安を軽減し、新体制への信頼構築につながります。

承継後も一定期間サポートできる体制をつくる

事業承継後も、前院長が一定期間サポートする体制を整えることで、後継者の負担軽減と現場の安定が図れます。

承継直後は、新しい院長に対するスタッフや飼い主の信頼が完全には定着していない場合が多く、旧院長の存在が心理的な支えとなります。

例えば、半年〜1年程度、旧院長が非常勤として残る形や、経営アドバイザーとして関わる形式を採用するケースが増えています。

こうした並走期間は、後継者の自信を育てるだけでなく、関係者にとっても安心材料となる重要なポイントです。

税務・法務の専門家に相談して確実に手続きを進める

事業承継には、税務や法務の専門知識が不可欠であり、専門家のサポートを受けることが確実な手続きの第一歩です。

相続や贈与に関わる税金、譲渡契約に関する書類の作成、登記・許認可の手続きなど、法律的な要素が多く含まれており、素人判断で進めると大きなリスクが伴います。

例えば、事業譲渡による所得税や消費税の申告漏れ、設備や医療機器の名義変更忘れなどがあると、後々問題となりかねません。

税理士や弁護士、行政書士など、専門家と連携しながら承継を進めることで、安心かつ確実な移行が実現できます。

獣医師法に基づく許認可と手続きを確認しましょう

動物病院の事業承継では、獣医師法に基づく各種許認可や手続きが必要となります。開設届の変更や診療施設の基準維持、薬事法に関わる手続きなど、一般企業のM&Aとは異なる専門的な対応が求められます。

特に注意すべきは、診療施設としての要件を満たし続ける必要があることです。施設基準や設備について継承前に確認し、必要に応じて改修や更新を行うことも検討しましょう。

また、麻薬や向精神薬などの管理薬剤については、免許や届出の継承手続きも必要です。

継承後も円滑な診療を続けるためには、これらの法的手続きを漏れなく完了させることが重要です。地域の保健所や獣医師会など、関係機関への事前相談も効果的でしょう。

動物病院の事業承継でよくある質問

動物病院の事業承継を検討する際、多くの方が感じる疑問や不安があります。ここでは、よく寄せられる代表的な質問について、実務的な視点から丁寧に解説します。

動物病院の事業承継を誰に相談すればいい?

動物病院の事業承継を検討する際は、専門知識を持った複数の専門家に相談することが効果的です。

承継は法律・税務・医療・経営と多岐にわたる分野が関係するため、一人で進めようとするとミスや漏れが発生するリスクがあります。

例えば、税務に関しては税理士、法的契約は弁護士、行政手続きは行政書士がそれぞれの領域をサポートします。また、動物病院に特化したM&A仲介業者や獣医師協会、地域の商工会議所なども、承継先探しやマッチング支援を行っているケースがあります。

信頼できる専門家を早期に巻き込むことで、トラブルを回避しながらスムーズに承継を進めることができます。

【関連記事】M&Aはどこに相談する?

動物病院の事業承継で活用できる補助金はある?

動物病院の事業承継においても、一定の条件を満たせば国や自治体の補助金制度を活用することができます。

事業承継に関連する補助金は中小企業庁や各都道府県、市区町村が提供しており、費用の一部をサポートしてくれるため、金銭的負担の軽減につながります。

具体例として、「事業承継・引継ぎ補助金(中小企業庁)」では、事業引継ぎ後の設備投資や広報活動、専門家への依頼費用などに対して補助を受けることが可能です。また、地方自治体によっては、地域の医療体制を維持する目的で独自の支援金を出すこともあります。

承継前に最新の公的支援制度を調査し、積極的に活用することが費用面での安心材料になります。

【参考】事業承継・M&A補助金

動物病院の事業承継に関連する法律はある?

動物病院の事業承継には、いくつかの関連法律を理解しておく必要があります。

承継には経営権の移転、開設者変更、医療機器の名義変更など、多くの法的手続きが伴い、それぞれに関連する法律が存在します。

例えば、「獣医療法」は動物病院の開設・運営に関する基本法であり、後継者が獣医師免許を持っていなければ承継ができません。また、X線装置などを使用する場合には「放射線障害防止法」に基づく許可の名義変更が必要です。さらに、「民法」や「会社法」、「事業譲渡契約」に関する規定も重要となります。

これらの法制度を適切に理解し、必要な手続きを抜け漏れなく進めることが、法的トラブル回避のポイントです。

動物病院の事業承継で税金は発生する?

動物病院の事業承継では、譲渡や相続の形態に応じてさまざまな税金が発生します。

特に注意が必要なのは、所得税、相続税、贈与税、消費税などで、承継のスキームによって税負担が大きく変わってきます。

例えば、親族への無償譲渡であっても、贈与税が発生するケースがあり、逆に第三者に有償で売却した場合には譲渡所得として課税されます。また、事業用資産を承継する際に適用される「事業承継税制」など、一定の条件を満たせば税負担を軽減できる制度もあります。

承継前に税理士と相談し、自院にとって最適な税務対応を計画的に進めることが重要です。

まとめ|動物病院の事業承継は「世代交代」だけでなく信頼と医療の継承

動物病院の事業承継は、単なる経営者交代ではなく、医療の質と地域社会の信頼を引き継ぐ重要なプロセスです。成功のためには、早期の準備と後継者との理念共有、そして法的・税務的な対応を丁寧に行うことが不可欠です。専門家の支援を受けながら計画的に進めることで、スムーズかつ納得のいく承継が実現できます。

CINC Capitalは、M&A仲介協会会員および中小企業庁のM&A登録支援機関として、動物病院の事業承継を専門的にサポートしています。業界最低水準の手数料体系と、動物病院の事業特性を理解した合理的な料金設定で、院長先生の負担を最小限に抑えます。

また、マーケティングテクノロジーを活用した独自のマッチングシステムにより、診療科目や立地条件、経営方針などを考慮した最適な譲渡先候補を効率的に見つけ出し、成約率を高めています。

円滑な事業承継を実現するためには、早めの準備と適切なサポートが不可欠です。事業承継をご検討の動物病院院長様は、ぜひCINC Capitalにご相談ください。

この記事の監修者

阿部 泰士

CINC Capital取締役執行役員社長

阿部 泰士

リクルートHRマーケティング、外資系製薬メーカーのバクスターを経て、M&A業界へ転身。 日本M&AセンターにてM&Aアドバイザーとして経験を積み、ABNアドバイザーズ(あおぞら銀行100%子会社)では執行役員営業本部長として営業組織を牽引。2024年10月より上場会社CINCの100%子会社設立後、現職に就任。

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