CINC CapitalはCINC(証券コード:4378)のグループ会社です。
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M&A / 基礎知識
- 公開日2025.04.09
- 更新日2025.04.09
中小企業M&Aの基本知識と成功に向けたポイント
中小企業のM&Aは、事業承継や新たな成長戦略として近年ますます注目を集めています。中小企業にとってM&Aは、経営者の高齢化や後継者不足といった課題に対する有効な解決策となります。一方で、買い手側から見れば、リソースの補強や新たな市場開拓の手立てとなり得ます。
本記事では、中小企業M&Aに必要な基本知識と、実際にM&Aを進める上で意識したいポイントを解説します。
目次
中小企業のM&Aとは?
中小企業におけるM&Aの意義や背景を理解することは、今後の動向を見極める第一歩です。ここでは、M&Aの定義や中小企業の定義、中小企業M&Aが増加している背景について、整理します。
M&Aの定義と目的
M&A(エムアンドエー)とは、「Mergers and Acquisitions」の略で、日本語では「合併と買収」となります。
ふたつ以上の会社がひとつになったり(合併)、ある会社が、ほかの会社を買ったりすること(買収)を指し、企業または事業の全部や一部の移転を伴う取引で、一般的には「会社もしくは経営権の取得」を意味します。
M&Aは、企業がより大きな成長を目指す、経営を効率化する、後継者不足に悩む企業の事業承継、新たな技術やノウハウを取得することを目的に行われることが多いです。
中小企業の定義
中小企業は、一般的に資本金や従業員数で区分されるケースが多いです。例えば製造業の場合は資本金3億円以下、従業員数300人以下とする基準がありますが、業種によって異なるため注意が必要です。
中小企業M&Aの特徴
中小企業は大企業に比べて経営資源が限られるため、M&Aを通じて不足しがちな人材とノウハウを補う動機が強い傾向にあります。
また中小企業の場合、経営者個人の影響が大きいことも特徴の一つであり、経営トップの意志や方針がM&Aの成否を左右するケースが多いといえます。
中小企業M&Aが増加する背景
中小企業M&Aが増加している背景には、経営者の高齢化や後継者不足といった構造的な問題があります。多くの企業が有望な後継者を見つけられず、M&Aによって事業を存続させる動きが活発化しています。
さらに、国内市場の縮小や国際競争の激化により、企業同士が連携して経営資源を統合することで、競争力を高めようとする動きもM&A増加を後押ししています。
こうした流れの中で、事業承継問題の解決のみならず、他社とのシナジーを求め、全く新しい事業への展開を狙う中小企業も少なくありません。
中小企業M&Aで用いられる手法・スキーム
M&Aにはさまざまな手法があり、企業の目的や状況に応じて選ぶ手法が異なります。中小企業がM&Aを進める際には、譲渡方式や企業統合の方法を検討することが欠かせません。
ここでは、代表的な手法である「株式譲渡」や「事業譲渡」、「会社分割や合併」の特徴とポイントを解説します。
株式譲渡の特徴とポイント
株式譲渡は、売り手企業のオーナーが保有する株式を買い手企業に売却する方法です。この手法では、企業の経営権が買い手に移るため、組織や資産、負債など全てが包括的に引き継がれる特徴があります。
中小企業で株式譲渡が行われるケースは多く、手続きが比較的シンプルな点がメリットです。ただし、買い手側は企業全体を受け継ぐ形となるため、事前のデューデリジェンスでリスクを十分に確認することが重要となります。
また、企業の社名やブランドを継続する場合が多いため、従業員や取引先の安心感を得やすい一方で、売り手・買い手間の経営方針の合意形成が成功の鍵を握ります。
事業譲渡の特徴とポイント
事業譲渡は、企業全体ではなく、特定の事業のみを買い手企業に譲り渡す手法です。この場合、負債などの引き継ぐ範囲を限定できるため、買い手にとっては特定の事業資産や技術のみ取得したい場合に有効です。
売り手側にとっては、不要な事業を切り離し事業再構築を図る際に選ばれることがあります。ただし、対象となる事業部門の切り出し作業や契約の再構築など、手続きが煩雑になりやすい点には注意が必要です。
また、従業員の雇用関係や取引先との契約移転など、事業譲渡特有の課題もあるため、事前に十分な準備と専門家の助言を得ることが望まれます。
会社分割や合併の特徴とポイント
会社分割は、事業部門ごとに法人を分離し、買い手企業や新設会社に承継させる手法です。特定の部門に注力したい戦略がある場合や、負債を特定部門に集中させるなど柔軟な対応が可能です。
合併は、2つ以上の企業を一つの法人として統合する方法です。これにより、組織や人材、ノウハウなどを融合しシナジー効果を得ることが期待できます。ただし、社名変更や組織再編に伴う混乱を最小化させるための準備が重要です。
これらの方法を選択する際は、企業文化の違いに配慮し、円滑な統合プロセスを設計することが成功に繋がります。
M&Aが中小企業にもたらすメリット
M&Aは売り手と買い手の双方に多くのメリットをもたらします。以下では、売り手側・買い手側の具体的なメリットと、それらが企業成長にどう繋がるのかを見ていきます。
売り手側のメリット
後継者問題の解決
経営者の高齢化が進む中、後継者不在のまま事業を続けることは企業存続の大きな障壁となります。M&Aによって他社もしくは新たなオーナーからの経営参加が得られるため、事業を継続していく基盤が整います。
実際、後継者問題を解消することで、既存顧客や従業員の雇用維持が実現し、自社のブランド力や技術を次世代へ承継できるメリットがあります。
場合によっては、買い手企業の経営者が新社長に就任し、これまでのカラーを活かしながら新しい視点を経営に取り入れることも期待できます。
事業の発展と成長の促進
M&Aにより資本やノウハウが加わることで、これまでリソース不足で実現できなかった事業強化や新規事業の立ち上げが可能となるケースがあります。
また、買い手としては既に軌道に乗った事業や製品を取り込むことで、スピーディな成長が期待できる点が魅力です。売り手企業も、他社の販売チャネルや技術を取り入れて拡大が見込まれる可能性があります。
外部のリソースを効果的に導入することで、企業競争力を高め、地域経済にも好影響を与えることができるでしょう。
廃業回避と経済的効果
中小企業において、経営者の引退とともに廃業するケースは少なくありません。M&Aによって企業を存続させることで、長年築き上げてきたノウハウや雇用を守ることができます。
事業を継承することで経済的メリットを維持し、地域社会への貢献も継続させられる点は大きな意義があります。特に地方での事業承継では、雇用維持や地域経済の活性化につながる重要な手段となります。
売り手にとっても廃業では得られない企業価値の対価を受け取れるため、経営者のリタイア後の資金的安定にも寄与する側面があります。
買い手側のメリット
事業規模の拡大
買い手企業が売り手企業のリソースを取り込むことで、市場シェアの拡大や生産能力のアップが見込めます。これにより、同業他社との競争でも優位性を築きやすくなります。
特に成長意欲の高い企業の場合、M&Aは短期的に業績を伸ばす方法として有力であり、投資家からの評価を高めることも期待できます。
また、事業規模の拡大に伴い従業員のキャリアパスも多彩になり、人材の定着率向上にもつながる可能性があります。
人材や技術の獲得
M&Aによって、専門性の高い人材や独自技術を一挙に取り込めるのは大きな強みです。特に中小企業では、技術職や熟練労働者が不足しがちであり、M&Aを通じて人材確保を図ることが増えています。
このように企業が持つ独自のノウハウを取得できれば、研究開発から販売までのプロセスを一気通貫で強化し、差別化を図ることができます。
自社だけでは到達できなかった領域であっても、買収先が有する経験やネットワークを活かすことで、新たな事業機会を生み出すことが可能です。
迅速な市場進出と成長力の向上
買い手企業は、売り手企業が築いてきたブランドや顧客基盤を活用し、手間やコストを抑えながら新たな市場へ参入できます。これは、ビジネス展開のスピード優位に大きく寄与します。
また、急速な拡大は従業員のモチベーション向上にもつながり、組織が一体感をもって成長できる好循環を生み出します。
ただし、短期的な統合(PMI)プロセスがおろそかになると、文化の違いから生じるトラブルや顧客離れが起こり得るため、慎重な調整が欠かせません。
中小企業のM&Aの成功に向けた注意点と課題
M&Aを成功させるためには、さまざまなリスクと課題に対応する準備が重要です。ここでは、特に注意すべき観点を5つご紹介します。
適切な買収先の見極め
売り手企業と買い手企業の相性が良ければ、スムーズな統合が期待でき、シナジー効果も大きくなります。そこで重要なのが経営方針や企業文化、成長目標などの相性の事前確認です。
中小企業では経営者の個性が社風を強く左右するケースが多いため、人間関係や価値観の面でも相性を見極めることが成功へ繋がります。
買収候補の探索には、自社リソースだけでなく仲介会社や専門家の知見を活用し、幅広い選択肢を検討すると効果的です。
売り手・買い手双方の目的を明確化
M&Aを成功に導くためには、売り手・買い手それぞれの目的をはっきりさせ、方向性を把握しておくことが大切です。例えば、売り手は事業存続と雇用維持、買い手は業務拡大とノウハウ獲得を主眼としているなど、両者の利害が一致するかどうかを確認します。
目的の不一致は、交渉の段階で大きな障害となり得ます。譲渡価格だけでなく、将来的な企業運営やブランドの扱いについても合意を形成することが重要です。
M&A後の企業ビジョンを共有しておくことで、従業員の不安も軽減し、ポジティブな雰囲気の中で統合プロセスを進めやすくなります。
デューデリジェンスとリスク管理
売り手企業を正しく評価するためのデューデリジェンスは、M&Aの成否を左右する重要なプロセスです。財務だけでなく、法務・税務・労務・技術など多方面から専門家のサポートを受けることが一般的です。
経営者に依存する部門や、オペレーション上の課題など、隠れたリスクも洗い出しておくことで、買収後のサプライズを最大限抑えられます。
デューデリジェンスを通じてリスクが判明した場合には、譲渡価格や契約条件の再交渉、あるいは買収構造の調整が必要となります。
従業員や取引先への配慮
M&Aは、企業内部だけでなく取引先や顧客にとっても大きな変化となります。従業員への説明不足や取引先への連絡が遅れると、信頼関係の低下につながりかねません。
特に中小企業の場合、人間関係や取引網が企業の価値を大きく支えています。M&Aの過程では早期の段階で関係者への周知を行い、不安が生じる前にしっかりとコミュニケーションをとることが望ましいです。
必要に応じて、経営者やキーパーソンが直接説明会を開くなど、相手の納得を得る努力をすることで、円滑な統合と事業継続が期待できます。
情報管理や秘密保持契約(NDA)の重要性
M&Aでは企業の財務状況や顧客情報など、機密性の高い情報をやり取りする場面が多々あります。これらの情報が漏洩すると、企業価値の毀損につながる恐れがあります。
そのため、秘密保持契約(NDA)は売り手・買い手の双方にとって必要不可欠です。あらかじめルールを定めておくことで、情報管理の徹底とトラブルの回避が可能となります。
守秘義務を遵守しながら十分な情報交換を行うことで、最終的に互いの信頼感を高め、より円滑なM&Aを実現できるでしょう。
M&Aの流れとプロセス
一般的なM&Aのプロセスを把握することで、スムーズな手続きを進めやすくなります。
M&Aの流れは大きく分けて、事前準備、相手先の探索と交渉、デューデリジェンス、最終契約、そしてPMIと呼ばれる買収後の統合に分類できます。以下では、M&Aをスムーズに行う上で押さえておきたい主要なプロセスを順に解説します。
事前準備と企業価値の算定
自社を売却する場合は、自社の強みと弱みを整理し、どの程度の価値があるのかを客観的に把握することが大切です。買い手側から見ても魅力的な要素を明らかにすることで、スムーズな交渉につなげやすくなります。
企業価値の算定は財務諸表の分析や将来キャッシュフローの試算など、専門家のアドバイスを得ることでより正確に行えます。
また、社内の経営資料や契約関係などを整備しておくことで、その後のデューデリジェンスの効率も高まるでしょう。
仲介会社や専門家との相談と選定
M&Aを成功させるためには、信頼できる仲介会社や専門家の力を借りることが効果的です。彼らは企業価値算定から相手先探し、交渉支援、契約書作成など、一連のプロセスをサポートしてくれます。
仲介会社選びのポイントとしては、実績や手数料体系、専門分野の知識が挙げられます。中小企業特有の課題に精通しているかどうかも確認しておくべきでしょう。
また、弁護士や税理士、公認会計士といった士業と連携しながら進めることで、法務リスクや税務面の不安を最小限に抑えることが可能となります。
M&A交渉と条件調整
買い手候補が見つかったら、具体的な交渉と条件のすり合わせを行います。譲渡価格はもちろん、雇用や役員体制、ブランドの扱いなど多岐にわたる調整が必要です。
この段階では、お互いの目的や経営戦略をすり合わせ、最終的なゴールに向けた合意を形成するプロセスが重要です。遠慮なく質問や要望を出し合い、納得感を高めていくことが成功のカギとなります。
価格交渉が難航するケースもありますが、あらかじめ企業価値を算定しておくことで、おおよその目安を提示できる点は大きなメリットです。
デューデリジェンス(DD)と最終契約書の締結
基本合意に至った段階で、デューデリジェンスを行います。財務諸表や契約書、知的財産権など、企業の実態を徹底的に調査して問題点がないか確認する作業です。
デューデリジェンスの結果を踏まえて、契約条件を再度調整し、最終契約書の締結へと進みます。ここでは、表明保証条項や違約金条項など、トラブルを防ぐための取り決めを明確にしておく必要があります。
契約内容に合意した後は、いよいよクロージングに向けた準備を進め、株式譲渡や事業譲渡の場合は所有権移転や名義変更など具体的な手続きを完了させます。
契約締結後の統合プロセス(PMI)
M&Aの完了はあくまでスタートラインです。その後の統合プロセス(PMI)では、組織や人事、システムを円滑に一本化し、両社の強みを活かしたシナジーを最大化することが求められます。
PMIの初期段階では、従業員への説明や新体制の構築が中心となり、コミュニケーション不足による混乱を防ぐことが大切です。
長期的には、ビジョンや方針を一体化させ、ブランドの再構築や新規事業の立ち上げなどを通じて企業価値の向上を目指すことが理想です。
中小企業のM&Aの支援体制と活用できる制度
中小企業向けのM&Aを円滑に進めるため、複数の支援や制度が整備されています。
以下では、具体的に活用しやすい支援体制や公的制度を取り上げ、どのように中小企業のM&Aをサポートするのかを説明します。
M&A仲介会社の活用
M&A仲介会社は、売り手・買い手双方のニーズをマッチングし、交渉や契約手続きなど実務を代行してくれる専門機関です。企業価値の算定から契約締結までをトータルにサポートしてくれるため、初めてM&Aを検討する企業にとって心強い存在となります。
仲介会社を利用する際には、手数料体系や情報の秘匿性、業種特化の知見の有無などをチェックし、信頼関係を築けるパートナーを選ぶことが肝心です。
特に中小企業では、取引規模に合わせた柔軟な対応や、地域の事情に詳しい仲介会社を選ぶことで、より効率的なM&Aを実現しやすくなります。
専門家(士業)の活用
弁護士、公認会計士、税理士などの専門家は、M&Aプロセスで欠かせないアドバイザーです。法務的なリスクや、税務上の優遇措置、有利なスキーム設計など、専門知識が必要な場面は多々あります。
特にデューデリジェンスや契約書の作成、譲渡スキームの検討などでは、専門家の見解が企業の安全を守る大きな助けとなります。
経験豊富な専門家と早めに連携することで、M&A実行のスケジュール管理や、交渉時の条件設定などもスムーズに進めやすくなります。
M&A支援機関登録制度と事業承継補助金制度
公的機関による支援としては、M&A支援機関登録制度が代表的です。信頼性を高めるための登録基準が設けられており、ここに登録された機関を利用することで安心感が得られます。
また、事業承継補助金制度を利用することで、M&A関連の費用負担を軽減できる場合があります。要件や対象となる経費など詳細は各年度で異なるので、最新情報のチェックが必要です。
このような公的サポートを活用することで、資金不足を理由にM&Aを諦めるリスクを抑え、事業承継の可能性を広げることができます。
M&Aプラットフォームやマッチングサイトの活用法
インターネット上にはM&Aのマッチングサイトやプラットフォームが存在し、匿名での情報掲載や買い手・売り手双方の希望条件を的確にすり合わせることが可能です。
これらのプラットフォームを利用することで、地理的な制約や知名度の差を乗り越え、幅広く相手先を探すことができます。特に地方の中小企業にとっては、大都市圏の買い手とマッチングできるチャンスが増えるでしょう。
利用にあたっては情報管理やコミュニケーション体制を慎重に整え、プライバシーや機密情報を守りながら進める必要があります。
まとめ|専門家を活用して、中小企業のM&Aの成功を
専門家や支援制度を上手に活用しながら、戦略的なM&Aを進めることで中小企業の持続的な成長が期待できます。
中小企業のM&Aは、後継者問題の解決や新たな成長戦略の実現に大きく寄与する手段です。一方で、企業文化の融合やリスク管理など、両社にとって解決すべき課題も少なくありません。
仲介会社や士業、公的機関の支援を受けつつ、入念な準備とプロセス設計を行えば、M&Aを通じて企業が飛躍的に成長することも十分可能です。本記事をきっかけに、中小企業の皆様が自社の可能性を再確認し、よりベストなM&Aの選択を検討していただければ幸いです。
CINC Capitalは、M&A仲介協会会員および中小企業庁のM&A登録支援機関として、M&Aのご相談を受け付けております。業界歴10年以上のプロアドバイザーが、お客様の真の利益を追求します。M&Aの相談をご希望の方はお気軽にお問い合わせください。
この記事の監修者

CINC Capital取締役執行役員社長
阿部 泰士
リクルートHRマーケティング、外資系製薬メーカーのバクスターを経て、M&A業界へ転身。 日本M&AセンターにてM&Aアドバイザーとして経験を積み、ABNアドバイザーズ(あおぞら銀行100%子会社)では執行役員営業本部長として営業組織を牽引。2024年10月より上場会社CINCの100%子会社設立後、現職に就任。