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【2025年版】管工事のM&A・事業承継の動向や事例について解説

業種

  • 公開日2025.04.28
  • 更新日2025.04.30

【2025年版】管工事のM&A・事業承継の動向や事例について解説

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管工事業界は現在、後継者不在による事業継続の難しさや管工事現場の人手不足など、多くの課題に直面しています。その課題の解決手段として、M&Aが注目されています。

本記事では、管工事業界のM&Aや事業承継に関する動向を解説します。また、具体的な事例やM&Aがもたらすメリットについても併せて解説します。

管工事とは?

管工事は、配管設備の設置や修理を行う業務です。建物や施設で必要な水道、ガス、暖房、冷却、排水などのライフラインを確保するために欠かせない作業です。

厚生労働省は、管工事を以下のように説明しています。

注 建設業法による「管工事」の定義
冷暖房、空気調和、給排水、衛生等のための設備を設置したり、又は、金属製等の管を使用して水、油、ガス、水蒸気等を送配するための設備を設置する専門工事。

具体的には、給水装置(水道)工事、排水設備工事、給湯設備工事、衛生設備工事、冷暖房設備工事、空気調和設備工事、ガス管配管工事、浄化槽工事等の工事を「管工事」という。

【引用】厚生労働省「配管職種(建築配管作業)」

なお、管工事現場の様子についてはYouTubeでも公開しています。

【参考】配管工(職業情報提供サイト(日本版O-NET)職業紹介動画)

管工事はさらに「下請け」と「自己建設」に分けることができます。

  • 下請け:元請け(ゼネコンなど)が受注した工事をさらに管工事の事業に発注する構造を指します
  • 自己建設:発注者から直接業務を請け、計画策定・工事工程・品質管理などを、一式を自社で手掛ける構造を指します

※ゼネコン…各種の土木・建築工事を発注者から直接請負い、工事全体のとりまとめを行う建設業者を指します。

管工事業界の現状や動向

まず、生活に関わるライフラインがどのくらい整備されているのか理解する必要があります。管路について記したデータがあります。

※管路…電線や光通信などのケーブルを地下に埋設するための専用の管のことを指します。

【引用】厚生労働省「令和6年 水道行政の最近の動向等について 管路更新率%」

厚生労働省の調べによると、管路更新率(1年でどのくらい管路が更新されているか)が年々低下していることが分かります。

2021年は統計開始以来、過去最低の0.64という数値をしました。この状況について厚生労働省は以下のように述べています。

管路経年化率が上昇する中、更新率を上げるためには新技術の開発・導入が必要

【引用】厚生労働省「令和6年 水道行政の最近の動向等について 管路更新率%」

管路をはじめとしたライフラインは経年劣化が進む一方で、修理や整備が間に合っていない状況です。新技術の開発や導入で、耐性を上げたり、業務効率を上げたりすることが求められています。

さらに、管工事業界はライフラインの整備が間に合っていないだけでなく、現場の作業員が不足している状態です。少子高齢化により、労働人口にあたる若年層はどの職種も減少しています。

【引用】厚生労働省「我が国の人口について 日本の人口の推移」

厚生労働省の調べによると、1990年をピークに「15~64歳人口割合」は減少し続けています。

2018年

2021年

事業所数

4,654

9,139

従業員数(1,000人)

188

202

【引用】 総務省統計局「7-1 産業別民営事業所数と従業者数」

また、総務省の調べによると、管工事にあたる「電気・ガス・熱供給・水道業」の2021年の事業所数は、2018年と比べて、1.9636…倍と、およそ2倍となっています。

一方で、2021年の従業員数は、2018年と比べて、1.0744…倍と、3年前とほぼ変わらない結果となっています。数値で見ても、「事業所の数に対して、人が足りてない」ということが読み取れます。

管工事のM&Aの必要性と課題

管工事業界において、M&Aは人材不足を解決する貴重な手段となります。

M&AはMergers and Acquisitionsの略称で、合併と買収を指します。企業または事業の全部や一部の移転を伴う取引で、会社もしくは経営権の取得をします。

M&Aが行われることで、他の企業や事業で既に勤務する人材の獲得をすることが可能です。他社の経営ノウハウを自社で活かすことで業務効率を上げられます。

また、管工事業界は後継者不足で悩む企業も多いですが、M&Aはこの後継者不足の解決策となります。M&Aは事業そのものが手に入るだけでなく、他社に承継してもらう目的で活用することも可能です。

【引用】中小企業庁「後継者の有無別に見た、売り手としてのM&Aの目的や想定する効果」

中小企業庁の調べによると、後継者不在の事業で売り手としてM&Aの目的や想定する効果に「事業の承継」と回答する方が70.0と、高い数値を示しました。「社員や親族の間で、承継できる人がいない」という企業はM&Aを検討してみましょう。

管工事を売却するメリット

ここでは、管工事の事業を売却するメリットについて解説します。メリットを参考にして、今後のM&Aに活かしていきましょう。

従業員の雇用を維持できる

廃業を余儀なくされている事業でもM&Aを行うことで、従業員の雇用を維持できる可能性があります。他社に事業を売却させた際に、雇用の引き継ぎを行えば、売却先の企業で引き続き勤務が可能です。

また、売却先の企業の子会社として引き続き事業が存続する場合は、雇用が維持されるだけでなく、売却先の人材を活用することも期待できます。

なお、従業員の承継についてはM&Aの手法によって異なります。株式譲渡」と「事業譲渡」の場合、以下の通りです。

株式譲渡

事業譲渡

特徴

①法人格に変更がないため、雇用契約は自動的に維持される
②労働条件や就業規則は原則としてそのまま継続する
③従業員の同意は原則として不要
④会社の権利義務関係が包括的に承継されるため、退職金や年功序列などの既得権も維持される

①法人格が変わるため、従業員の雇用契約は自動的には引き継がれない
②従業員の雇用を継続するためには、以下の手続きが必要
・譲渡元での退職手続き
・譲渡先での新規雇用契約の締結
・従業員の個別同意の取得
③労働条件の変更がある場合は、従業員との協議・合意が必要
④退職金や勤続年数などの取り扱いについては、個別に取り決める必要がある

M&Aを実施することが決まり、従業員を第三者に引き継ぐ場合は、事前に従業員に丁寧な説明と情報提供をすることを推奨します。

後継者不足を解決できる

後継者が不在の企業も、他社に事業を売却させることで、経営が引き継がれ、後継者不足が解決されます。後継者が見つからない場合、経営者が引退を迎えると同時に、会社の廃業を余儀なくされます。またその廃業には費用もかかり、負担も大きいです。

「後継者がいない」という企業は第三者への承継も検討しましょう。

【参考】BATONZ

近年、BATONZを始めとしたM&Aマッチング支援サイトも増えています。登録することで、買収先を探している企業とのマッチングが可能です。

※倒産…法人又は個人事業主が経済的に破綻して経済活動をそのまま続けることが不可能になることを指します

管工事業界のM&Aの事例

ここでは管工事業界のM&A事例をご紹介します。各事例を参考に、今後のM&A実施に役立てましょう。

三共HDが晴輝工業を子会社化

三共ホールディングスが株式会社晴輝工業の株式を取得し、子会社化しました。(2024年6月)

晴輝工業は埼玉県越谷市を拠点とする、空調・ダクト工事の会社です。
一方で三共ホールディングスは、土木工事や施設の建築、設備・メンテナンス工事、環境事業の4つの事業を行う総合建設業の会社です。

当時、三共ホールディングスは晴輝工業が強みとしている空調設備の設計から施工、保守までを一貫して提供する体制を強化し、顧客に対して付加価値の提供を目指していました。また、現場技能者の雇用と育成を考えていました。

これらの戦略があった三共ホールディングスは、晴輝工業の支援もする点で合意があり、のちにM&Aが行われました。

【出典】PR TIMES「【M&A成約】譲渡企業主役のPMIで想定以上のシナジーに」

イシイ設備工業が東海管工を子会社化

株式会社イシイ設備工業が東海管工株式会社の株式を取得し、子会社化しました。(2021年2月)

東海管工は、給排水衛生設備、消火設備、冷暖房設備、換気設備の設計・施工管理を基軸とした総合設備会社です。
一方でイシイ設備工業は、群馬県高崎市に本社をおく設備工事会社です。

東海管工は後継者不在の問題を抱えていました。M&A仲介会社を通じ、承継先としてイシイ設備工業が選ばれ、のちにM&Aが行われました。
今後はイシイ設備工業の経営力を活かし、経営基盤を強化・従業員の安定した雇用を目指して運営されてます。

【出典】PR TIMES「〜コロナ禍で創業60年の老舗管工事会社が後継者不在で事業承継〜 M&A総合研究所を介して東海管工株式会社と株式会社イシイ設備工業のM&Aが7ヶ月で成約」

三機サービスが長沼冷暖房を子会社化

株式会社三機サービスが長沼冷暖房株式会社の株式を取得し、子会社化しました。(2023年11月)

長沼冷暖房は新潟県新潟市に本社を置く、設備工事をしている会社です。主に官公庁の施工をしています。

一方で株式会社三機サービスは兵庫県姫路市を拠点とする、ビル・店舗・施設などの建物の保守・管理をする会社です。「自社研究施設」や「総合技術者」を強みとし、全国に事業を展開しています。

三機サービスは、長沼冷暖房が持つ豊富な工事実績が魅力的に映り、のちにM&Aが行われました。

長沼冷暖房の子会社化は、三機サービスが北陸・東北エリアにおける地盤を築くための第一歩と位置付けられています。長沼冷暖房の技術力や顧客基盤を活用することで、地域での競争力を高める狙いがあります。

【出典】PR TIMES「【成約事例】新潟の空調設備工事老舗・長沼冷暖房(株)がM&A 若い社員からの『会社を継続したい』という声を反映」

エンドーウェルディングが計電エンジニアリングを子会社化

エンドーウェルディング株式会社が計電エンジニアリング株式会社の株式を取得し、子会社化しました。(2021年10月)

計電エンジニアリングは、千葉県船橋市に本社を置く、公共施設やプラントの電気設備・計装設備の設計・施工を行っている会社です。

一方でエンドーウェルディングは配管工事を得意とする会社です。「エネルギープラントの配管工事をワンストップで提供」を強みに、福島県いわき市を中心に地域に貢献しています。

両企業が協力し合うことで顧客に対するサービスの質が向上すると、シナジー効果への期待からM&Aが行われました。
また、エンドーウェルディングは計電エンジニアリングの技術を取り入れることで、今後多用なニーズに応えることが可能となりました。

※シナジー効果…2つの企業が統合することで、単独では得られない価値や利益が生まれることを指します。

【出典】PR TIMES「【M&A成約】東日本大震災で事業環境が一変し、M&Aで新たな事業の柱を求める」

京葉ガスエナジーソリューションがガスプラントを事業承継

京葉ガスエナジーソリューション株式会社が、ガスプラント株式会社を事業承継しました。(2023年6月)

ガスプラントは、高圧ガス設備の法定検査やメンテナンスを行っており、特に大型プラントやLPガス、都市ガス設備において安定した顧客基盤を築いています。また、水素やアンモニア設備の検査など、脱炭素に向けた取り組みにも積極的です。

一方で京葉ガスエナジーソリューションは、石油・化学・工業用プラントの設計・施工を行う企業であり、ガスプラントは高圧ガスプラントの認定検査事業者として60年以上の実績を持っています。京葉ガスグループの会社です。

両企業は長年にわたり取引関係を築いています。両企業が一体となることで「高圧ガス分野における強固な事業体制の構築」「お客様に指示され続けること」が期待され、M&Aが行われました。

京葉ガスエナジーソリューションは高圧ガス設備の設計、建設、検査をワンストップで提供できる体制を整え、顧客に対してより包括的なサービスを提供することが可能になります。

【出典】PR TIMES「京葉ガスエナジーソリューション、高圧ガス設備の認定検査事業者『ガスプラント株式会社』を事業承継」

ウェーブロックHDがエイゼンコーポレーションを子会社化

ウェーブロックホールディングスが株式会社エイゼンコーポレーションの株式を取得し、子会社化しました。(2022年4月)

エイゼンコーポレーションは、群馬県前橋市に本社を置く、土木工事や水道施設工事を主な業務とする会社です。
従来の業務に加え、「地中熱」についても携わっています。

一方でウェーブロックホールディングスは複合素材加工メーカーで、「社会が抱えるさまざまな「不」を解決する」をモットーに日々地域貢献をしています。
グループ会社としてマテリアルソリューション事業やアドバンステクノロジー事業など、すでに複数の事業を持つウェーブロックホールディングスですが、エイゼンコーポレーションの新しい強みである地中熱事業にも着目しました。

エイゼンコーポレーションを子会社化することで、地熱事業の拡大と環境問題への対応が期待でき、のちにM&Aが行われました。

ウェーブロックホールディングスは、エイゼンコーポレーションの技術を活用することで、地中熱ビジネスの元請けとしての地位を確立し、設計から施工、運用までの一貫したサービスを提供することが可能になります。

【出典】ウェーブロックホールディングス株式会社「子会社による株式会社エイゼンコーポレーションの株式の取得(孫会社化)に関するお知らせ」

管工事の事業を行う会社がM&Aを成功させるためのポイント

ここでは、管工事の事業を行う会社がM&Aを成功させるためのポイントについて解説します。内容を理解し、今後のM&Aに活かしましょう。

M&Aの目的を理解する

M&Aの目的を明確にすることで、適切な買い手を選定し、交渉を有利に進めることができます。また、M&Aがもたらす目標が明確なため、その目標に向かって円滑な譲渡が期待できます。

特にPMIを意識したM&Aは大切です。PMI(Post Merger Integration)は、M&A成立後に、異なる企業文化や業務プロセスを統合し、シナジー効果を最大化するためのプロセスを指します。

PMIについては別記事で詳細に解説しています。こちらも併せてご覧ください。
【関連記事】M&AにおけるPMIとは?意味や目的、タイミング、成功させるためのポイント

M&A仲介会社の支援を受ける

M&Aを成功させるためには、M&A仲介会社の支援を受けることが効果的です。交渉、契約、法律関係の全てのプロセスを専門的な知識と経験を活かしてサポートしてくれます。

M&Aの仲介会社に依頼することで、買収ターゲットの発見や適切な評価、交渉の進行を円滑に行うことができます。

PMIについては別記事で詳細に解説しています。こちらも併せてご覧ください。
【関連記事】M&Aとは?意味や目的、手法ごとのメリットデメリットをわかりやすく解説

工事引継ぎの手順について理解する

M&Aを実施するタイミングで、工事が進行しているケースが考えられます。どのタイミングでもM&Aが行えるように工事引継ぎの手順について理解しておくことは大切です。

工事手続きは以下の流れで進みます。

  1. 引継ぎ書類の準備
  2. 現場での確認
  3. 技術的な引継ぎ
  4. 安全管理ついて確認
  5. 発注者・監理者との調整

各ステップで実施することは非常に多いです。
参考として表に記載しますが、大変複雑なため、M&A仲介会社の支援を貰いながら手続きを進めることをお勧めします。

引継ぎに必要な各工程

対応・確認事項

引継ぎ書類の準備

工事施工図面

(最新の変更を反映したもの)

施工記録・試験成績書

使用材料リストと検査証明書

工程表と進捗状況

施工写真

安全管理記録

現場での確認事項

施工済み箇所の確認と品質チェック

未施工部分の状況説明

配管ルートの詳細な説明

重要な接続部位や弁類の位置

既存設備との取り合い状況

特殊な施工方法を採用した箇所の説明

技術的な引継ぎ内容

使用している配管材料の仕様

接続方法や施工上の注意点

圧力試験などの検査結果

保温・保冷工事の状況

防食処理の実施状況

耐震措置の実施状況

安全管理関連

危険箇所の周知

必要な安全対策

周辺工事との調整事項

緊急時の連絡体制

発注者・監理者との調整事項

承認済みの変更内容

未決事項や協議中の案件

今後の検査予定

竣工検査に向けての準備状況

その他の重要事項

施工上の課題や懸案事項

材料の在庫状況

協力業者との調整状況

周辺住民への配慮事項

まとめ|管工事は需要は高いが若年層の人材不足が顕著。M&Aの活用が成功の鍵

管工事業界は需要が高まる一方で、若年層の人材不足が大きな課題となっています。このため、M&Aを活用することで財政的な安定や後継者問題の解決へつながります。管工事業界の企業は、早期にM&Aの準備を進めることを推奨します。M&A仲介会社の支援を貰うことで、円滑な譲渡が可能です。

弊社はM&A仲介協会会員および中小企業庁のM&A登録支援機関として、M&Aのご相談を受け付けております。業界歴10年以上のプロアドバイザーが、お客様の真の利益を追求します。M&Aの相談をご希望の方はお気軽にお問い合わせください。

この記事の監修者

阿部 泰士

CINC Capital取締役執行役員社長

阿部 泰士

リクルートHRマーケティング、外資系製薬メーカーのバクスターを経て、M&A業界へ転身。 日本M&AセンターにてM&Aアドバイザーとして経験を積み、ABNアドバイザーズ(あおぞら銀行100%子会社)では執行役員営業本部長として営業組織を牽引。2024年10月より上場会社CINCの100%子会社設立後、現職に就任。

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