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塗料業界のM&A動向は?事例や成功のポイントを解説【2025年】

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  • 公開日2025.09.29

塗料業界のM&A動向は?事例や成功のポイントを解説【2025年】

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塗料業界でM&Aを検討しているものの、「市場の動きが見えない」「他社の成功事例がわからない」と感じていませんか?

M&Aは、会社の将来を左右する重要な判断です。

本記事では、塗料業界のM&A市場の動きや具体的な事例、そして業界の特性を踏まえた成功のポイントをわかりやすく解説します。

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塗料業界の市場動向

日本の塗料市場は、1990年代に約8,500億円の規模がありましたが、長期的に縮小傾向が続き、現在は横ばいから緩やかな停滞が続いています。

2022年は販売額が前年比で6.7%増の6,973億円まで回復しましたが、販売数量は155.2万トンで3.4%減少しています。

塗料は建築、自動車、工業などさまざまな分野で使われていますが、中でも建築用塗料の比率が高くなってる状況です。

一方で、国内市場の伸び悩みを受けて、日本ペイントや関西ペイントは海外展開を強化しており、売上の約70〜86%を海外市場に依存するなど、グローバル化が進んでいます。

今後は、国内市場の成熟により価格競争が激しくなり、原材料費の上昇も課題となります。

【出典】一般社団法人日本塗料工業会「2022年(1~12月合計) 塗料生産・出荷・在庫数量及び平均単価表(年報値)」
【出典】日本ペイントホールディングス株式会社「第198期 有価証券報告書(IFRS)」
【出典】関西ペイント株式会社「2023年度 通期決算説明資料」

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塗料業界が抱えている課題

塗料業界は、安定した需要がある一方で、いくつかの構造的な課題を抱えています。

本章では、これらの代表的な課題について詳しく解説します。

国内市場の成熟と価格競争の激化

国内の塗料市場は成熟が進み、特に中小メーカーは激しい価格競争により収益が圧迫されています。

大手メーカーが希望価格を基準に価格体系を決める中、卸業者や代理店がそれに応じて仕入れ価格を調整しています。

この構造により塗料には明確な定価がなく、価格競争が避けられず、中小企業ほど収益が厳しくなりやすい状況です。

環境規制と技術対応への遅れ

塗料に含まれるVOCの規制は、2006年の大気汚染防止法改正で導入されましたが、日本では欧米に比べ対応が遅れました。

その後、粉体塗装や水性塗料の導入は進んでいるものの、技術や施工の標準化はまだ不十分です。

欧州では粉体塗装が長年発展してきたのに対し、日本は法改正後にようやく普及が始まった段階であり、現場の対応にも課題が残っています。

中小企業の後継者不足と事業承継難

中小規模の塗料メーカーや卸では経営者の高齢化が進み、後継者不在が深刻化しています。

親族や社内からの承継が難しいことから、M&Aへの関心が高まっています。

2022年度には、全業界においても、事業承継・引継ぎ支援センターで1,681件、民間支援機関では4,036件のM&Aが成立し、中小企業全体で承継型M&Aが増加傾向です。

このような背景から、M&Aは中小企業の事業継続と雇用維持に有効な選択肢とされています。

【出典】中小企業庁「事業承継・M&Aに関する現状分析と今後の取組の方向性について」

塗料業界のM&A最新動向(2025年)

塗料業界では、国内市場の停滞や経営者の高齢化、環境規制への対応などを背景に、M&Aの動きが活発化しています。

本章では、2025年時点における塗料業界のM&A動向を3つの視点から詳しく解説します。

海外市場を狙ったM&Aの加速

日本ペイントHDは2024年10月に米国の特殊化学品メーカーAOC社を約6,300億円で買収しました。

これは、米国・欧州市場への進出強化と、コーティング剤や接着剤などの高収益分野への拡張を狙った戦略的判断です。

またAOC買収は、グローバルな地域ポートフォリオのバランスを改善する狙いも含まれており、初年度から株主価値の向上(EPSに年間15~17円の寄与)が期待されています。

【出典】日本ペイントホールディングス株式会社「AOC社の買収に関する説明会 説明会要旨」

後継者不在を背景にした事業承継型M&Aの増加

中小塗料メーカーや卸売業では経営者の高齢化が進み、後継者不在による廃業危機が深刻です。

帝国データバンクによると、2023年の後継者不在率は53.9%と過去最低水準で、M&Aや内部承継による対応が増えています。

大日本塗料が神東塗料をTOBで子会社化した事例は、M&Aが中小企業の存続を支える有効な手段であることを示しています。

【出典】帝国データバンク「全国「後継者不在率」動向調査(2023年)」

国内再編を目的としたM&Aが進行

国内市場が成熟し停滞する中、業界再編の動きが加速しています。

塗料・卸売業界では大日本塗料のジャパンパウダー吸収合併などが複数報告され、規模拡大とコスト効率向上を目指す事例が増えています。

また、生産コストの削減や事業効率化を狙った海外・国内クロスボーダーM&Aも目立ち、単なる規模拡大にとどまらないダイナミックな再編戦略が展開されています。

塗料業界でM&Aを成功させるためのポイント

塗料業界でM&Aを成功させるには、業界特有の商流や技術、環境規制への対応などを踏まえた慎重な検討が必要です。

本章では、塗料業界におけるM&Aを円滑に進め、成果を最大化するための視点を5つに分けて解説します。

異分野の塗料メーカーとの連携でシナジーを狙う

異なる分野の塗料メーカーがM&Aで統合すると、技術や販路を補い合うことができ、収益の拡大につながる可能性が高まります。

実際に塗料卸売業界では、工業用と建築用など用途の異なる企業が合流し、製品ラインや顧客ネットワークを統合する動きが増えています。

環境対応技術を有する企業との統合

環境規制強化の流れに応じて、低VOCや水性・粉体塗料といった環境対応技術を持つ企業とのM&Aは、自社の技術力を短期間で強化する手段となります。

こうした技術をもつ小規模メーカーを取り込むことで、法規制への即応体制が整い新製品開発力も高まります。

成長市場である海外企業の買収を狙う

国内市場の成熟が進む中、海外、特に新興国市場への進出は塗料企業にとって重要な成長戦略となっています。

日本ペイントHDや関西ペイントは、ASEANやインドなどの成長市場を中心にM&Aを進め、現地企業の買収を通じて販路と製造力を一気に獲得しています。

事業承継ニーズを的確に把握し、信頼関係を築く

中小塗料メーカーでは、経営者世代交代が進むなか事業承継の必要性が高まっています。

M&Aにおいて成功するには、売り手側の経営者が望む雇用維持や企業文化の継続を丁寧に理解し、信頼を築く姿勢が欠かせません。

実例として、事業承継支援の専門家が関与した案件では、円滑な合意と継続的運営が実現されています。

買収後の統合作業(PMI)を慎重に設計する

M&Aの成功は統合後のPMIに左右されるといっても過言ではありません。

中小企業のM&Aでは、PMIガイドラインに沿って買収前後の流れを標準化し、優先順位を決めて段階的に進めることが効果的です。

このように進めることで、従業員の不安を和らげながら、買収による効果を最大限に引き出せるとされています。

塗料業界のM&A事例

最後に塗料業界のM&A事例をご紹介します。自社のM&A検討時の参考にしてみましょう。

関西ペイント株式会社によるWEILBURGERのM&A

関西ペイント株式会社は、欧州子会社のKANSAI HELIOS社を通じて、ドイツのGREBE Holdings傘下で工業用塗料事業を展開するWEILBURGER Coatings GmbHおよびWEILBURGER Asia Ltd.の全株式を取得し、買収することを決定しました。

WEILBURGER社は120年以上の歴史を持つ老舗メーカーで、2023年度の売上高は約1億5000万ユーロと見込まれています。

本買収により、関西ペイントは鉄道車両用塗料をはじめ、ノンスティックコーティングや耐熱塗料といった未保有分野の技術を獲得し、工業用塗料市場での地位向上を図ります。

同社はこれまでも欧州で鉄道事業資産や塗料メーカーを相次いで買収しており、本件も成長分野への積極投資を進める中期経営計画の一環と位置付けられます。

グループ内でのシナジー創出とともに、欧州を中心としたグローバル展開の強化が期待される事例です。

【出典】関西ペイント株式会社「欧州子会社KANSAI HELIOS社、WEILBURGER社を買収~鉄道事業他、BtoB成長分野への積極投資~」

東京インキ株式会社による荒川塗料工業株式会社のM&A

東京インキ株式会社は、2021年1月29日付で荒川塗料工業株式会社を完全子会社化しました。

荒川塗料工業は1949年創業の老舗メーカーで、紙加工用塗料や建築用塗料を中心に展開し、水性光沢インキや建材用コート剤などでも実績を持っています。

一方、東京インキはグラビアインキ事業において環境対応製品の拡販を進めており、両社は販売・生産・技術面での事業要素に共通点を持ちながら、製品領域が競合しないことが特徴です。

今回の子会社化により、技術や生産ノウハウを共有することで新事業・新製品の開発を加速させ、インキ事業の拡大とグループ全体の企業価値向上が期待されます。

成熟市場の中で競争力を強化する動きとして、シナジー創出を狙った戦略的なM&Aといえます。

【出典】東京インキ株式会社「子会社等の異動を伴う株式取得に関するお知らせ」

日本ペイントホールディングス株式会社によるAlina Group LLPのM&A

日本ペイントホールディングス株式会社は、シンガポール子会社を通じてカザフスタンのAlina Group LLPの株式75%を取得し、子会社化することを決定しました。

Alina社は中央アジアでドライミックスモルタル材や塗料を製造・販売し、カザフスタン国内の建設化学品および塗料市場でシェア1位を誇る有力企業です。

都市化の進展や経済成長を背景に市場拡大が見込まれる同地域において、日本ペイントはAlina社のブランド力や製造拠点、流通網を活用し、傘下のトルコBetek Boya社との連携による製品ラインアップ拡充を狙います。

本件はEPSへの即時寄与も見込まれており、同社の「アセット・アセンブラー」モデルに基づく成長戦略の一環です。

塗料から建設化学品分野への領域拡大を進めつつ、グループシナジーを最大化する取り組みとして注目されます。

【出典】日本ペイントホールディングス株式会社「当社子会社によるカザフスタンの塗料・塗料周辺製品メーカー Alina Group LLP社の株式取得に関するお知らせ」

まとめ|塗料業界のM&A動向を押さえてM&Aを成功させましょう

塗料業界では、国内市場の成熟や環境規制、後継者不在といった課題を背景に、M&Aの重要性が高まっています。

2025年には、海外展開や国内再編、環境技術の取り込みを目的としたM&Aが活発化しています。

自社の状況や目的に合った形で進めることが、M&Aを成功させる上で重要です。

M&Aをご検討の際は、CINC Capitalにぜひご相談ください。

この記事の監修者

阿部 泰士

CINC Capital取締役執行役員社長

阿部 泰士

リクルートHRマーケティング、外資系製薬メーカーのバクスターを経て、M&A業界へ転身。 日本M&AセンターにてM&Aアドバイザーとして経験を積み、ABNアドバイザーズ(あおぞら銀行100%子会社)では執行役員営業本部長として営業組織を牽引。2024年10月より上場会社CINCの100%子会社設立後、現職に就任。

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