CINC CapitalはCINC(証券コード:4378)のグループ会社です。
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評価 / 企業価値評価(バリュエーション)
- 公開日2025.09.30
企業価値を評価するための指標は?主な算定手法や企業価値を上げるためのポイント
企業価値とは何か、どう評価し、どのように高めるべきか分からず困っていませんか。
「専門用語が多くて難しい」「評価方法が複数あり、判断に迷う」と感じる人は少なくありません。
本記事では、企業価値の基本的な考え方から、代表的な評価手法、そして企業価値を高めるための具体策までをわかりやすく解説します。
目次
企業価値とは?
企業価値とは、企業が持つ経済的な価値全体のことです。
具体的には、企業が将来にわたって生み出すと見込まれるフリーキャッシュフローを一定の割引率で現在価値に換算し、その合計として算出されます。
この定義により、企業全体の経済的な価値が明確になります。
企業の資産や収益に加えて、ブランド、ガバナンス、人的資本などの無形資産も含まれるため、財務データだけでは見えない企業の実態を浮き彫りにできる点が特徴です。
この考え方は、企業の本質的な経済的価値を正確に把握するための基準となります。
例えば、M&Aにおいて買収価格の妥当性を判断するために用いられたり、資金調達の際の信用評価にも活用されます。
なお、企業価値から有利子負債などを差し引いたものが株主価値であり、投資家にとっての利害と直結します。
こうしたことから、企業価値は経営戦略や資本政策の根幹をなす指標であり、企業活動における重要な尺度として多くの場面で活用されています。
企業価値の重要性
企業価値は、単なる財務上の数値ではなく、経営の意思決定や市場からの評価に大きな影響を与える重要な指標です。
本章では、企業価値がなぜ重視されるのかを、3つの観点から解説します。
企業の株価に影響する
企業価値は、株主価値と密接に結びついており、株価に直接的な影響を与えます。
株主価値は企業価値から負債などを差し引いた残余部分であるため、企業価値が上昇すれば市場での株価も上がる傾向があります。
例えば将来のキャッシュフローが増加すると見込まれる場合、その現在価値である企業価値も高まるのです。
それにより投資家からの期待が高まり、株式の需給バランスを通じて株価が上昇します。
したがって、企業価値を高める取り組みは、結果として株主の利益最大化にもつながります。
企業の実態を把握できる
企業価値は、財務諸表だけでは把握しにくい企業の実態を明らかにする手段となります。
例えば、貸借対照表の簿価だけでは企業の実態を正確に把握することはできません。
企業価値の評価では、将来の収益性や無形資産、ガバナンスといった要素も反映されるため、企業の実態をより的確に評価できます。
実際、企業の将来性や事業モデルの強さといった非財務的要素は、投資判断や経営改善の重要な材料となります。
このように、企業価値は経営の実力を測る指標として活用されているのです。
M&Aや資金調達における交渉の基準になる
企業価値は、M&Aや資金調達の場面で客観的な交渉材料として非常に重要です。
例えば、M&Aにおいては、企業価値の算定が買収価格の妥当性を判断する基準となり、売り手と買い手の双方が納得できる条件を導くための出発点となります。
明確な評価がなければ、価格交渉が感覚的なものに終始してしまい、取引の成立が難しくなります。
また、資金調達の場面でも、企業価値が高く安定した財務基盤を持つ企業は、金融機関や投資家からの信用を得やすくなるでしょう。
結果として、低金利での融資や好条件での資金調達が可能になります。
企業価値の評価指標
企業価値を正しく把握するためには、複数の評価手法を理解する必要があります。
主なアプローチは、将来の収益性に基づく「インカムアプローチ」、市場価格と比較する「マーケットアプローチ」、資産価値を基準とする「コストアプローチ」です。
それぞれのアプローチには複数の評価手法があり、企業の状況や目的に応じて使い分けられます。
インカムアプローチ
インカムアプローチは、企業が将来生み出すと予想される利益やキャッシュフローをもとに企業価値を評価する方法です。
例えば、将来の利益計画がある企業や成長性の高いスタートアップなどに適しています。
DCF法(ディスカウントキャッシュフロー法)
DCF法(ディスカウントキャッシュフロー法)は、将来予測されるフリーキャッシュフローを適切な割引率で現在価値に換算し、企業価値を算出する代表的な手法です。
企業が将来的にどれだけのキャッシュを生み出せるかという“稼ぐ力”に着目するため、最も理論的で信頼性の高い評価方法とされています。
ただし、将来予測や割引率の前提によって結果が大きく変動するため、複数のシナリオで検証したり、他の手法と併用したりすることが重要です。
特に、新規事業の立ち上げやM&Aを検討する際には、DCF法を用いることで投資判断の基準となる収益性や回収期間を定量的に把握できます。
一方で、事業計画の精度や割引率の設定により結果が大きく左右されるため、複数のシナリオによる検証や前提条件の妥当性確認が欠かせません。
そのため、実務で用いる際には財務と戦略の両面からの慎重な分析が求められます。
配当還元法
配当還元法は、将来受け取る配当金を基に株式の価値を算出する評価手法です。
株主にとっての実質的な利益は配当であるため、投資リターンの観点から企業の株式価値を直接評価できる方法として知られています。
例えば、安定的に配当を出している企業では、将来の配当額を株主の期待収益率(割引率)で割り戻すことで、理論的な株式価値を導くことが可能です。
一方、日本の税務実務においては、相続や贈与時の非上場株式の評価に「配当還元方式」と呼ばれる別の手法が用いられています。
この方式では、実際の配当実績または一定の仮定(例えば無配企業でも年2.5円の配当を想定)に基づいて評価額を算出可能です。
そのため、税務上の配当還元方式は評価額がゼロになることはなく、主に中小企業の株式評価など特定の場面で活用されています。
このように、一般的な配当割引モデルと税務上の配当還元方式は異なる概念であるため、目的や活用場面に応じて使い分ける必要があるのです。
マーケットアプローチ
マーケットアプローチは、市場での類似企業や過去の取引事例と比較することで、相対的に企業価値を算出する方法です。
市場データを活用するため、客観性や実務での実用性が高いのが特徴です。
類似企業比較法
類似企業比較法は、同業種・同規模の上場企業の株価指標を参考に企業価値を見積もる方法です。
この手法が重視される理由は、市場が形成した株価を基準にするため、実際の投資家評価を反映できるからです。
例えば、対象企業と類似する上場企業のPERやEV/EBITDA倍率を用いて企業価値を計算します。
市場参加者の評価を前提とするため、タイムリーな比較が可能です。
ただし、適切な比較対象が見つからない場合や、規模差が大きいときは精度が落ちます。
類似取引比較法
類似取引比較法は、過去に行われた同業種・同規模のM&A事例をもとに、企業価値を推定する方法です。
実際の取引価格を参考にできるため、市場での企業価値の“相場”を把握しやすい点が特徴です。
例えば、最近買収された競合企業のEV/EBITDA倍率を使えば、それを基に評価対象企業の価値を見積もることができます。
実例に基づいて判断できるため、M&Aの交渉や戦略立案にも役立つでしょう。
しかし、取引データが非公開の場合も多く、特に非上場企業では適用が難しいという課題もあります。
コストアプローチ
コストアプローチは、企業の資産と負債を基準に、純資産の価値をもって企業価値を評価する方法です。
実態のある資産を重視するため、清算価値や再建価値を把握したいときに使われます。
簿価純資産法
簿価純資産法は、貸借対照表に記載された資産と負債の帳簿価格から企業の純資産を算出する方法です。
この手法の利点は、会計基準に基づいた客観的な数値を使用できる点にあります。
例えば、中小企業の株価算定や税務目的で用いられる場面が多く、簡便に評価を行えることが特徴です。
帳簿価格と市場価値が乖離している場合、実態より過小に評価される可能性があるため注意が必要です。
時価純資産法
時価純資産法は、企業が保有するすべての資産と負債を時価に修正したうえで、純資産を評価する方法です。
結論から言えば、企業の実態に近い価値を算出できる手法と言えます。
帳簿に現れない含み益・含み損や、のれん、偶発債務といった要素を時価で再評価することで、より正確な純資産価値を反映できる点が特徴です。
帳簿価格では把握できない含み益や含み損を反映できる点が挙げられます。
取得から年数が経った不動産を現在の公正価値で評価し直すことで、実際の資産価値を明らかにできます。
ただし、資産の時価を評価する手間がかかるうえ、将来の収益力は加味されないため、成長企業の評価には不向きです。
企業価値を向上させるための方法
企業価値は固定的なものではなく、経営戦略や日々の取り組みによって高めることが可能です。
本章では、収益性の向上や成長戦略、資本効率、無形価値の強化、M&Aの活用といった5つの視点から、企業価値の向上策について詳しく解説します。
収益性の向上
企業価値を高めるには、まず収益性を強化することが不可欠です。
企業の将来キャッシュフローは収益性によって決まり、DCF法などの評価で最も重視されるからです。
例えば、売上の拡大やコスト構造の見直しによって利益率が向上すれば、将来のキャッシュフローも増加します。
その結果、企業価値が理論的にも市場的にも高く評価されます。
収益性の改善はすべての企業価値向上策の土台といえるでしょう。
成長戦略
企業価値を高めるには、成長戦略をしっかり立てて実行することが大切です。
成長の見込みがある企業ほど、将来の利益が増えると期待され、より高く評価されます。
例えば、新しい市場への進出や新サービスの展開、海外展開の強化などによって、事業の規模を広げることができます。
こうした取り組みが将来の収益アップにつながり、企業価値の向上を後押しするのです。
また、目先の利益だけでなく、数年先を見据えた成長計画を持つことで、投資家や買い手からの信頼も得やすくなります。
資本効率の改善
資本を効率的に活用することも、企業価値を高める上で重要な視点です。
理由は、ROEやROICといった資本効率指標の改善が、投資家からの評価に直結するためです。
例えば、遊休資産の売却や不採算事業の撤退によって経営資源を集中させると、限られた資本でより多くの利益を生み出せるようになります。
その結果、資本コスト(WACC)を下げながら企業価値を引き上げることが可能になります。
非財務価値の強化
近年では、財務情報だけでなく非財務価値の向上も企業評価に大きく影響しています。
なぜなら、ESGや人的資本、ブランド価値などの無形資産は、企業の持続可能性や社会的信頼に直結するからです。
環境に配慮した経営や多様性を尊重する企業文化の整備は、長期的な成長を支える基盤となり、投資家や顧客からの共感を得やすくなります。
これにより、収益安定性や市場評価の向上を通じて企業価値を高める効果が期待できます。
M&Aや提携戦略
企業価値を一気に引き上げたい場合、M&Aや業務提携の活用が有効です。
買収や統合によって事業シナジーを創出し、短期間で成長機会を獲得できるからです。
例えば、技術力の高い企業を買収することで、自社にはない競争優位性を獲得し、新たな市場への進出を実現できます。
また、統合によって生まれるコスト削減効果も期待でき、結果的に企業価値の上昇に直結します。
まとめ
企業価値は、企業の経済的な実力を示す重要な指標であり、M&Aや資金調達、市場からの評価に大きな影響を与えます。
企業価値を正しく把握するには、収益性や資産価値、市場との比較といった多角的な評価が欠かせません。
また、収益力の強化や成長戦略の推進、非財務面の整備を通じて、企業価値は意図的に高めていくことが可能です。
中長期的な視点で戦略的に取り組むことで、企業は持続的な成長と信頼を獲得できるでしょう。
この記事の監修者

CINC Capital取締役執行役員社長
阿部 泰士
リクルートHRマーケティング、外資系製薬メーカーのバクスターを経て、M&A業界へ転身。 日本M&AセンターにてM&Aアドバイザーとして経験を積み、ABNアドバイザーズ(あおぞら銀行100%子会社)では執行役員営業本部長として営業組織を牽引。2024年10月より上場会社CINCの100%子会社設立後、現職に就任。