CINC CapitalはCINC(証券コード:4378)のグループ会社です。
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- 公開日2025.04.07
- 更新日2025.04.09
税理士法人のM&A動向(2025年)メリットデメリット/事例/成功のポイントを解説
税理士法人のM&Aは、近年ますます活発化しています。中でも大手法人による中小法人の買収や、IT企業との提携を通じたDX推進が盛んで、M&Aは成長戦略の一環として重要視されるようになりました。
本記事では、税理士法人の最新M&A動向、メリット・デメリットや注意点、成功のポイントを詳しく解説し、具体的な事例を交えてM&Aの活用方法を徹底解説します。
目次
税理士法人の市場動向
「総務省統計局」の報告に調査によると、税理士法人の市場規模は2021年時点で約1.9兆円に達しています。2012年時点の総売上は約8,614億円であったため、市場規模は2倍以上に拡大したことがわかります。
市場拡大および税理士需要増加の背景には、インボイス制度の導入や電子帳簿保存法の改正などがあると考えられています。企業における税務・会計業務が複雑化し、制度対応のための専門的なアドバイスが必要となりました。さらに経理実務のアウトソーシング、専門家によるコンサルティング需要などが、市場規模成長の主要因になっていると考えられます。
【出典】総務省統計局「令和3年経済センサス‐活動調査 産業別集計(サービス関連産業に関する集計) 結果の概要」
税理士法人業界が抱える課題
ここでは、国内の税理士法人に見られる経営課題をご紹介します。その解決に向けて、M&Aを検討する法人が増えているのです。
経営者の高齢化と後継者不足
税理士業界では、深刻な後継者不足が大きな課題となっています。高齢化が進む一方で新規参入者が減少し、多くの事務所が事業継続の危機に直面しています。
こうした状況の中、後継者が見つからず廃業・閉鎖を余儀なくされる事務所が増加傾向にあります。なお、2025年には約127万の中小企業が後継者不足に直面する「2025年問題」が起こると予測されています。
【出典】中小企業庁「中小企業・小規模事業者におけるM&Aの現状と課題」
顧問契約の単価低下と価格競争
税理士業界では顧問料の低価格化が進み、収益確保が難しくなっています。特筆すべきは、オンライン税理士の台頭による価格競争の激化です。特に都市圏では低価格化が顕著であり、小規模事業者向けの顧問料はさらに低下する傾向にあります。
高度な専門サービスのニーズが増加
近年、税理士には定型的な税務業務に加え、経営コンサルティングや資産管理などの広範なサービス提供が期待されるようになりました。特に、投資ファンドやM&A関連業務では、高度な専門知識と実務経験が必要とされ、継続的なスキルアップが不可欠です。
税理士法人のM&A最新動向(2025年)
ここからは、2025年における税理士法人のM&A最新動向をご紹介します。現状を把握してM&A戦略に活かしましょう。
大手税理士法人による中小税理士法人の買収が活発化
税理士業界では、業務の高度化・複雑化にともない、大手税理士法人による中小税理士法人の買収が加速しています。背景には税理士の高齢化と後継者不足という構造的な課題があり、業界全体で再編の動きが広がっています。
地方税理士法人の統合が進行
地方では税理士法人の経営統合が見られます。これは地域密着型のサービス提供力の強化、経営基盤の安定化を目的とした戦略的なM&Aとされます。
IT企業との提携・M&AによるDX推進
昨今は「デジタルトランスフォーメーション(DX)」の推進が急務となっており、IT企業との戦略的提携やM&Aも見られます。具体的には、顧問先企業のデジタル化支援ニーズに応えるため、テクノロジーを活用したサービス展開が進んでいるのです。
提携先のIT企業の中には、クラウド会計システムの導入支援や業務プロセスの自動化支援など、DXコンサルティングを実施しているところがあります。税理士法人がITベンダーとの業務提携を発表した事例もあり、DXコンサルティングの強化や、業務のデジタル化支援の拡充を進めています。
税理士法人がM&Aをするメリット
M&Aは主に、企業が抱えるさまざまな経営課題の解決に用いられます。ここでは、税理士法人がM&Aをするメリットを売り手側の目線でご紹介します。
後継者問題の解決
税理士業界では、高齢化と後継者不足が深刻化しており、M&Aによる事業承継が有効な解決策となっています。事業の継続性を確保し、顧問先企業へ安定したサービスを提供するための戦略です。
多くの税理士事務所では内部で後継者を育成していますが、税理士試験の難易度の高さから、計画通りに後継者を確保できないケースも少なくありません。こうした状況の中、M&Aは即戦力となる人材の確保と事業継続を両立できることから注目されています。
顧問契約の維持と従業員の雇用安定
事業承継を行うことで、既存の顧問契約を維持しながら、従業員の雇用を安定させることができます。長年築き上げてきた取引先および従業員との信頼関係を損なうことなく、事業継続が可能です。
売却益によるリターン
市場で税理士法人の資産価値が評価され、相応の売却益が得られます。特に、都市部の税理士法人や法人契約が多い事務所は、相場以上の価格で売却できる可能性もあります。退職金として、あるいは新事業立ち上げの資金として活用できるでしょう。
税理士法人がM&Aをするデメリット
M&Aには相応のデメリットがあり、経営統合に失敗する可能性はゼロではありません。以下のポイントを押さえておきましょう。
顧問先の離脱リスク
M&Aによって経営者が交代すると、長年の信頼関係を築いてきた顧問先が離脱する可能性があります。特に、個人事務所から大手法人に統合される場合、顧客対応の方針が変わることで、クライアントが不安を抱きやすいため注意が必要です。
経営の自由度が失われる
新しい株主やパートナーが経営に参画することで、経営方針が大きく変わる可能性があります。所有する株式の議決権割合によって経営権の行使が制限され、これまでのように迅速な意思決定が難しくなるかもしれません。
従業員の不安と退職リスク
税理士法人のM&Aでは、従業員の雇用継続が保証されるとは限らず、待遇や業務内容の変更により退職するケースもあるのが現実です。評価制度や労働条件が変わることで、優秀な人材が退職したり、モチベーションが低下したりする可能性があります。
税理士法人がM&Aを成功させるためのポイント
M&Aによる経営統合をスムーズに行うには、いくつかのポイントが存在します。ここでは、税理士法人がM&Aを成功させるポイントをご紹介します。
適切なスキームを選択する
M&Aでは、持分譲渡・合併・事業譲渡などの主要なスキームから最適な手法を選択することが重要です。それぞれのスキームには独自のメリットとデメリットがあるため、慎重な検討が必要となります。
シナジー効果が期待できる買い手を選ぶ
シナジー効果(相乗効果)とは、経営統合によって1+1が2以上の価値を生み出すことを指します。税理士法人の場合、人材確保や新規エリアへの進出、経営資源の効率的な活用、技術・ノウハウの共有などにより、より高度なサービス提供が可能となります。そのため、単に財務面での条件だけでなく、事業戦略との相性を考慮した買い手の選定が重要です。
M&A後の関与期間や契約内容を明確にする
M&A成立後の円滑な事業継続には、関与期間や契約内容の事前明確化が不可欠です。中でも既存顧問先との関係維持に関する取り決めは、重要な交渉ポイントといえるでしょう。
M&A契約は通常、秘密保持契約から基本合意書、最終契約書へと段階的に進められます。税理士法人の場合、顧問先との関係継続が重視されるため、譲渡後の関与期間や引継ぎ方法を明確にするべきです。
また、従業員の処遇や保証債務の取り扱いなど、細部にわたる合意事項を契約書に記載し、トラブルを未然に防ぎましょう。
税理士法人のM&A事例
税理士法人蓑・高山会計とテイエムエス税理士法人のM&A
税理士法人蓑・高山会計とテイエムエス税理士法人は、2023年9月12日付で経営統合し、新法人**「れん税理士法人」**として再編されました。本統合により、スタッフ総数は60名となり、千葉・東京・石川エリアを中心に会計・税務サービスの強化を図ります。
本経営統合の背景には、業務の効率化や専門知識の集約を通じたサービス品質の向上があります。両法人はそれぞれ、関東・北陸地域で確固たる基盤を築いてきましたが、経営資源を統合することで、より高度な税務・会計支援を提供できる体制を構築しました。また、拠点統合による「規模の経済」や、異なる専門性を持つ税理士・公認会計士の連携による「範囲の経済」も期待されています。
統合後も、業務内容や担当者は変更せず、従来の顧客対応を継続するとしています。税理士業界では、経営の効率化や専門性の強化を目的とした法人の統合・再編が進んでおり、今回の統合もその一環といえるでしょう。
【出典】税理士法人蓑・高山会計、テイエムエス税理士法人「経営統合と法人名改称のご案内」
税理士法人マッチポイントと税理士法人フューチャークリエイトのM&A
税理士法人マッチポイント(札幌市中央区)と税理士法人フューチャークリエイト(札幌市白石区)は、2023年10月5日付で経営統合しました。本統合により、税務・会計・監査・経営コンサルティングをワンストップで提供する体制を構築し、業務の効率化とサービス強化を図ります。
マッチポイントは、創業4年で急成長し、クラウド会計の活用やコンサルティング事業を展開。一方、フューチャークリエイトは「中小企業をパワフルに!」をミッションに掲げ、財務コンサルティングに注力してきました。統合により、両社の強みを活かした高品質なサービス提供が期待されます。
税理士業界では、競争の激化やデジタル化を背景に、統合による規模拡大や専門性強化の動きが進んでおり、今回の統合もその一例といえます。
【出典】税理士法人マッチポイント「北海道の業界再編が始まる!先進的な税理士法人2社が経営統合」
MACミッドランド税理士法人と税理士法人ブレインパートナーのM&A
2020年12月1日、MACミッドランド税理士法人(名古屋市)と税理士法人ブレインパートナー(同市)は経営統合し、MAC&BPミッドランド税理士法人として新たなスタートを切りました。本統合により、社員数約200名、顧客数約2,700件を誇る国内有数の大型会計事務所が誕生しました。
MACミッドランドは、資産税・事業承継に強みを持ち、高度なコンサルティング実績を有する一方、ブレインパートナーは医療・介護分野で中部地方最大級の顧客基盤を築いてきました。今回の統合により、両社の専門性を融合し、より包括的で質の高い税務・会計サービスを提供できる体制を確立しました。
税理士業界では、競争の激化や顧客ニーズの多様化に対応するため、大規模法人の形成が進んでいます。本統合もその一環といえ、今後もさらなる成長が期待されます。
【出典】株式会社実務経営サービス「MACミッドランド税理士法人と税理士法人ブレインパートナーが経営統合 中部地方に誕生した大型総合会計事務所の事業戦略を探る」
まとめ|税理士法人のM&A動向を押さえてM&Aを成功させましょう
税理士法人のM&Aは、業界の構造変化に対応する有効な手段です。事業の継続性確保や経営の効率化といったメリットがある一方、顧問先の離脱リスク、経営の自由度低下などのデメリットも存在します。そのため、適切なスキームの選択や買い手の見極め、契約内容の明確化が成功の鍵を握るでしょう。
税理士法人のM&Aを検討する際は、最新の市場動向を把握し、自社に最適な戦略を選択することが重要です。これから会社売却や事業承継などを検討する方は、M&A仲介会社やアドバイザーに相談し、専門家ならではの手厚いサポートを受けてください。
CINC Capitalは、M&A仲介協会会員および中小企業庁のM&A登録支援機関として、M&Aのご相談を受け付けております。業界歴10年以上のプロアドバイザーが、お客様の真の利益を追求します。M&Aの相談をご希望の方はお気軽にお問い合わせください。
この記事の監修者

CINC Capital取締役執行役員社長
阿部 泰士
リクルートHRマーケティング、外資系製薬メーカーのバクスターを経て、M&A業界へ転身。 日本M&AセンターにてM&Aアドバイザーとして経験を積み、ABNアドバイザーズ(あおぞら銀行100%子会社)では執行役員営業本部長として営業組織を牽引。2024年10月より上場会社CINCの100%子会社設立後、現職に就任。