CINC CapitalはCINC(証券コード:4378)のグループ会社です。
CINC CapitalはCINC(証券コード:4378)のグループ会社です。

M&A / スキーム
- 公開日2025.04.11
- 更新日2025.04.14
TOBとは?M&AやMBOとの違いやメリットデメリット、成功のポイントを解説
TOB(株式公開買い付け)は企業買収の主要なスキームですが、M&AやMBOと混合されることが少なくありません。それぞれの違いや、TOBを行うメリットなどを把握しておきましょう。
今回は、TOBの基礎知識やM&AやMBOとの違い、売り手・買い手双方のメリット・デメリット、成功させるためのポイントを徹底解説します。
目次
TOB(株式公開買い付け)とは?
TOB(Take-Over Bid)は、買付期間・価格・株式数などを事前に公告した上で、不特定多数の株主から株式を直接買い付けるスキームです。ここでは、TOBとM&Aの違いをご紹介します。
TOBとMBOの違い
TOBとMBO(Management Buyout)の違いは、買付を行う対象にあります。TOBは「第三者の法人」が上場企業の経営権を確保するのに対し、MBOでは経営者・後継者などの「内部の者」が経営権の確保を目指します。また、TOBは主に上場企業を対象としますが、MBOは上場企業・非上場企業を問わず行われる点が違いです。
TOBとM&Aとの違い
M&A(Merger and Acquisition)とは企業の「合併と買収」を意味します。一方、TOBはM&Aを実行する際の一つの手法として使われます。つまり、M&Aを実現するために検討される一つのスキームが、TOBだといえます。
TOBと買収との違い
TOBは買収を実現するための具体的なスキームの一つです。特定の条件下において、株式を市場外で取得します。
そして買収は「対象企業の経営権を獲得するためのプロセス」となります。TOBを含む多様な手段を用いて、企業の経営権獲得を目指します。
TOBに関する重要な法的要件
TOBは金融商品取引法によって厳格に規制されています。日本では以下のような条件に該当する場合、TOBによる買付けが義務付けられています。
-
5%ルール:上場会社などの株券等を市場外取引で買い付け、買付け後の所有割合が5%を超える場合。
-
3分の1ルール:買付け後の所有割合が3分の1を超えるケースで、市場外で株券等を買付ける場合。
-
急速な買付け規制:3カ月間に10%以上の株券等を市場外取引で買い付ける場合。
また、TOBの実施には、「公開買付開始公告」「公開買付届出書(買付け開始日に提出する)」「公開買付報告書(買付け終了後に提出する)」などの開示書類の提出が必要となります。
これらの法的要件を遵守しなければ罰則の対象となる可能性があるため、専門家のサポートを受けながら慎重に進めることが重要です。
TOBの種類
TOBには「友好的TOB」「敵対的TOB」の2つの種類があり、経営陣の同意の有無で区別されます。それぞれ目的や手法が大きく異なるため、企業買収においては重要な判断要素となります。ここでは、友好的TOBと敵対的TOBの特徴をご紹介します。
敵対的TOB
敵対的TOBとは、買収対象企業の経営陣から事前の同意を得ずに行われるTOBです。買収側が一方的に株式の公開買付けを実施し、経営権の獲得を狙います。
敵対的TOBの主な目的は、対象企業の経営支配権を獲得することにあります。多くの場合、現経営陣や株主への事前合意・通知なしに仕掛けられるため、突然の買収提案に対象企業が対応を迫られることになります。
対象企業の株主は、市場価格よりも高いプレミアムが付いた状態で株式を売却できる場合があります。一方、対象企業の経営陣や従業員にとっては経営方針の急激な変更や雇用不安などのリスクをもたらす可能性が高いといえます。
【敵対的TOBの事例】
-
2019年に伊藤忠商事がデサントに対して行った敵対的TOB
-
2020年にコロワイドが大戸屋ホールディングスに対して行った敵対的TOB
友好的TOB
友好的TOBとは、相手企業の経営者から事前に同意を得てから実施するTOBです。買い手と売り手の双方が合意した状態で実施されるため、経営権移転を円滑に行えます。
代表的なケースとしては、グループ企業の完全子会社化などがあります。親会社が子会社の株式を100%取得することで、グループ経営の効率化や意思決定の迅速化を図れます。買収後の統合作業もスムーズに進みやすく、シナジー効果を早期に実現できるのがメリットです。
日本市場では友好的TOBが一般的ですが、近年は敵対的TOBも増加傾向にあります。特に、経営改善が求められる企業や株価が割安と判断される企業が敵対的TOBの対象となりやすい傾向があります。
【友好的TOBの成功事例】
-
2019年にZHDによるZOZOの買収(前澤友作氏が保有株式を売却)
-
2020年にKDDIによるローソンの完全子会社化
【売り手側】TOBのメリットとデメリット
売り手側企業にとって、TOBには明確なメリットとデメリットがあります。それぞれ詳しく見ていきましょう。
【売り手側】TOBのメリット
TOBの最大のメリットは、自社株式を市場価格よりも高値で売却できる可能性があることです。株主は通常の市場取引よりも有利な条件で株式を売却でき、経済的なメリットが期待できます。
また、友好的TOBの場合、買い手企業から資金提供や経営陣の派遣などの支援を受けられる可能性があり、企業間のシナジー効果が期待できます。経営改善や事業拡大が期待できるでしょう。
【売り手側】TOBのデメリット
TOBが実施された場合、自社の経営権は買い手企業に移転します。特に敵対的TOBの場合は、元の経営陣の意思に反する形で経営方針が変更されても、影響力を行使することが難しくなるでしょう。
また、金融商品取引法上の開示規制に基づき、「意見表明報告書」の作成・提出が義務付けられています。この報告書では、経営陣がTOBに賛同するかどうかの意見を表明する必要があり、事務的な負担が生じます。
【買い手側】TOBのメリットとデメリット
続けて、買い手側のメリットとデメリットを見ていきます。短期間で経営権を獲得できる一方で、高額なコストや失敗リスクも考慮する必要があります。
【買い手側】TOBのメリット
買い手側のメリットは、大量の株式を一度に買い集められる点です。通常の市場取引では、一度の取引で得られる株式数に限りがありますが、TOBを利用すれば短期間で大量の株式を取得できます。
また、一定価額で株式を取得できることも重要です。市場を通じて株式を買い集める場合、買付けが進むにつれて株価が上昇する傾向にあります。TOBでは事前に価格を設定するため、買収金額を正確に把握しやすくなります。
【買い手側】TOBのデメリット
TOBでは通常、市場価格にプレミアムを乗せた価格で株式を買い付けます。市場価格から上乗せされた価格設定となり、必然的にコストが増大します。また、自社の動きを妨害する企業が現れるケースが少なくありません。友好的に買収手続きを進めたくても他社に阻止されたり、相手企業の買収防衛策によって阻止されたりすることがあります。
TOBの手順
TOBの手続きは、まず公開買付開始公告にて、TOBの実施予定を公開することから始まります。この公告では買付価格や期間、株式数などの条件を明示します。続いて、公開買付届出書を提出する流れです。
TOBの対象となる企業は、買付者の提案に対する意見表明報告書を提出し、株主に対して賛否の立場を明らかにします。期間終了後、結果が公表され、TOBが成立した場合は株式の決済が行われます。最終的に買付者は公開買付報告書を提出することで、手続きは完了です。
TOBが不成立になるケース
TOBはさまざま要因により不成立となる可能性があります。典型的なケースを見ていきましょう。
市場価格が想定外の値動きをした
市場価格が急激に変動し、買付価格を上回るような状況になれば、株主はTOBに応じるよりも市場で売却するほうが有利です。結果としてTOBが不成立となることがあります。
経営陣の賛同を得ないままTOBを行った
敵対的TOBは買収防衛策の発動や株主の判断により成功が難しくなることがあります。経営陣が反対する場合、株主に対してTOBに応じないよう働きかけたり、防衛策を講じたりすることで、成立を阻止しようとする可能性があります。
TOBに参戦する企業が現れた
TOBが公表された後、より有利な条件を提示する競合買収者が現れることがあります。このような相手が登場すると、当初のTOB提案者は買付価格の引き上げを余儀なくされたり、最終的に撤退せざるを得なくなったりするかもしれません。
大株主がTOBに反対した
TOBの成否は大株主の意向に大きく左右されます。特に保有率の高い大株主がTOBに反対した場合、買付予定数の下限に達せず、TOBが不成立となる可能性が高まります。
TOBを成功させるためのポイント
TOBの成功には綿密な準備と戦略的なアプローチが不可欠です。より詳しくお伝えします。
買収価格と条件を市場環境に応じて適切に設定する
一般的にTOB価格は、市場株価にプレミアムを上乗せして設定されます。その価格を算定するため、適切な企業価値評価を行いましょう。財務状況を筆頭に、将来の成長性や市場での競争力、保有技術や知的財産なども考慮します。また、市場環境や業界動向も価格設定に大きな影響を与えるので、常に最新の情報を収集・分析することが大切です。
株主や市場の理解を得るために戦略的な対応を行う
TOBの成功には、株主や市場関係者との丁寧なコミュニケーションが欠かせません。買収の意図や将来のビジョンを明確に公表することで、株主や市場関係者の理解と支持を得やすくなります。
資金調達と買収後の統合プロセスを確実に準備する
買収資金の調達方法によっては、買収後の財務状況に大きな影響を与える可能性があります。また、買収後の統合プロセスについても、事前に詳細な計画を立てておくことが重要です。組織構造の再編、人事制度の統合、システムの統合など、経営統合後の取り組みに備えましょう。
売り手企業の株主がTOBで考慮すべきポイント
TOBの対象となる企業の株主は、以下のポイントを慎重に検討しておくと良いでしょう。自社が将来的にTOBの対象となる可能性も視野に入れ、常に企業価値を高める経営を心がけることが重要です。
プレミアムの妥当性
提示された買付価格が、企業の本来の価値や将来の成長性を適切に反映しているかを評価しましょう。単に市場価格からのプレミアム率だけでなく、企業価値の本質的な評価が重要です。
買収後の事業計画
買収企業が示す将来ビジョンや事業計画が、現実的で持続可能なものかを検討します。特に従業員の雇用継続や事業の発展性など、長期的な視点での評価が必要です。
他の選択肢の有無
TOBに応じる以外の選択肢も検討しましょう。具体的には、「他の買い手候補の検討」「独自での事業継続」などです。特に経営陣の意見表明は重要な判断材料となります。
税務上の影響
株式売却による譲渡益に対する課税や、各種の税制優遇措置の適用可能性など、税務面での影響も事前に確認しておくことが大切です。
まとめ|TOBとM&Aの違いを理解し、TOBを成功へ
TOBは単なる株式取得ではなく、長期的な企業価値向上のための戦略的な意思決定です。成功させるためには、明確な目的設定と徹底した企業分析、適切な買付価格の設定、そして関係者との丁寧なコミュニケーションが欠かせません。
特に上場企業を対象としたM&AにおいてTOBは重要な手法となりますが、実施には専門的な知識と経験が必要です。また、非上場企業のオーナー経営者にとっても、将来的に買い手企業がTOBを実施することも視野に入れた戦略的な事業運営が重要となります。
弊社CINC Capitalは、M&A仲介協会会員および中小企業庁のM&A登録支援機関として、TOBを含む様々なM&A手法に関する豊富な知見を有しています。業界歴10年以上または特定業界に精通したアドバイザーのみがお客様のM&Aをサポートし、TOBを含む複雑な手続きも的確にガイドいたします。
透明性の高い料金設定で、M&Aに関わる各種コストを最適化。さらには、独自のマッチングシステムにより、最適な買い手候補を効率的に見つけ出し、成約率を高めています。
TOBやM&Aに関するご相談は、ぜひCINC Capitalにお問い合わせください。お客様の状況に合わせた最適なM&A戦略をご提案いたします。
この記事の監修者

CINC Capital取締役執行役員社長
阿部 泰士
リクルートHRマーケティング、外資系製薬メーカーのバクスターを経て、M&A業界へ転身。 日本M&AセンターにてM&Aアドバイザーとして経験を積み、ABNアドバイザーズ(あおぞら銀行100%子会社)では執行役員営業本部長として営業組織を牽引。2024年10月より上場会社CINCの100%子会社設立後、現職に就任。