CINC CapitalはCINC(証券コード:4378)のグループ会社です。
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M&A / スキーム
- 公開日2025.03.26
- 更新日2025.04.02
株式交付とは?手続きの流れとメリット、株式交換との違い
株式交付制度は、2021年3月1日に施行された新しいM&A手法で、親会社が自社株式を対価として提供し、他社を子会社化する仕組みです。
資金調達の負担を軽減しながら柔軟なM&Aを実現できる制度として注目されています。
今回は、株式交付の具体的な手続きやメリット・デメリット、株式交換との違いについて解説します。
目次
株式交付とは
まずは、株式交付の特徴や仕組み、目的を解説します。基本を確認しながら、M&Aによる経営戦略に役立てましょう。
株式交換の仕組み
株式交付とは、M&Aの買い手側となる企業へ自社の株式の交付を認める制度です。株式交付が施行されたことで、株式会社が他社を子会社化する際に、自社の株式を対価として交付できるようになりました。これは、従来の株式交換などの手法を補完するものです。
このスキームにより、企業は現金を準備することなく、自社株を利用して他社の子会社化(議決権の50%超の取得)を目指せます。資金調達の負担を軽減しながら柔軟なM&Aが可能になる仕組みだといえるでしょう。
【出典】国税庁「資産譲渡等の場合の課税の特例制度に関する改正」
株式交付を行う際の手続きの流れ
株式交付を利用する際には、以下の手続きを順に進める必要があります。
株式交付計画を作成する
株式交付を実施する親会社は、最初に株式交付計画を作成します。計画書には、株式交付子会社の商号や住所、譲り受ける株式数の下限、対価として交付する親会社の株式や金銭などの内訳、譲渡申込期日、効力発生日などを記載します。
なお、譲り受ける株式数は、効力発生日時点で議決権の過半数(50%超)となる数量を下限として設定する必要があります。
株主総会で承認を得る
作成した株式交付計画は、原則として株主総会で特別決議を経て承認される必要があります。なお、対価の合計額が親会社の純資産額の20%以下であれば、簡易株式交付制度を利用して株主総会の承認を省略できます。
株主へ株式交付計画を知らせる
親会社は効力発生日の20日前までに、株主に対して株式交付の実施と株式交付子会社の商号や住所を通知する決まりがあります。株式を譲渡したい株主は、指定された申込期日までに、希望する株式数を記載した書面を親会社に提出します。
反対する株主への対応を行う
株式交付に反対する株主には、保有する株式を公正な価格で買い取るよう請求する権利があります。買取請求は効力発生日の20日前から前日までの期間に行う必要があります。
株式以外の対価が含まれる場合は、債権者が異議を申し立てる可能性もあるため、適切な対応が必要です。
株式交付の効力が発生する
効力発生日になると、親会社は子会社の株主に自社株式を交付し、同時に子会社の株式を譲り受けます。これをもって株式交付の手続きは正式に完了します。
事後開示書類を備えておく
株式交付の手続き完了後、親会社は譲り受けた株式数や資産価値などを詳細に記した事後開示書類を作成します。書類は効力発生日から6カ月間にわたり本店に備え置く義務があり、株主や債権者から閲覧の請求があった場合は応じる必要があります。
株式交付のメリットとデメリット
M&Aの新たな手法である株式交付は、メリットとデメリットを正しく理解して判断することが大切です。以下のポイントを押さえておきましょう。
株式交付のメリット
株式交付税制が設けられている
株式交付税制の要件を満たすことで、株式交付によって株式を取得した株主は、譲渡益に対する課税が繰り延べられます。ただし、対価要件である「対価の80%以上が株式であること」を満たす必要があります。
子会社の新株予約権を譲り受けることができる
株式交付を活用することで、子会社の株式を取得できます。この仕組みにより、親会社と子会社の関係を安定的に維持しやすくなるのがメリットです。ただし、新株予約権が対象となるかについては慎重な検討が必要です。
株式交付のデメリット
子会社化できるのは日本の株式会社のみと定められている
株式交付制度は日本の会社法に基づいているので、対象となるのは国内の株式会社のみです。そのため、海外企業のM&Aにおいては、本制度は利用できません。国際取引を視野に入れた企業の場合はデメリットとなる要素です。
新たに子会社化する会社のみが制度の対象となる
現時点で議決権の過半数を保有している企業、つまり既存の子会社に対して追加の株式取得を行う際には、本制度を利用できません。既存の子会社を対象とする場合、別の手法を検討する必要があります。
対価の8割以上が株式である必要がある
適格株式交付(税制上の優遇を受けられる株式交付)の要件を満たすには、対価として支払う総額のうち、少なくとも80%以上を株式とする必要があります。また、適格株式交付と見なされるための要件を満たさなければなりません。
株式交換との違い
株式交付と株式交換は、一見似ているように見えますが、親会社の種類や手続きの流れ、対価などにおいていくつかの違いがあります。詳しく見ていきましょう。
親会社となる会社の種類
株式交換の親会社になれるのは、株式会社と合同会社です。一方、株式交付では、親会社となる企業は株式会社に限定されています。ただし、両制度とも子会社となる企業は株式会社でなければなりません。
株式取得の方法
株式交換では、親会社と子会社が株式交換契約を結び、親会社が子会社の全株式を取得する形式を取ります。株式交付では、親会社が株式を譲渡する意思のある株主を募集し、申し込みのあった株主から株式を取得します。
支払う対価
株式交換では、親会社が自社の株式を一切交付せず、現金のみ、あるいは親会社の親会社が発行する株式を対価にできます。これは2005年に会社法が制定された際に導入された「対価の柔軟化」によるものです。
株式交付では、親会社が子会社の株主に対し、自社株式を必ず交付することになります。現金やその他の資産を組み合わせることが可能ですが、自社株式をまったく交付しない選択肢は認められていません。
子会社における親会社の株式取得の可否
会社法第135条第1項により、子会社が親会社の株式を取得することは禁止されています。親会社の支配下にある子会社が親会社株式を自由に取得するのを避け、相場操縦などのリスクを防ぐために設けられた決まりです。
一方、株式交換では親会社が子会社化対象企業の株式を取得し、その「対価」として親会社株式を子会社側の「株主」に交付することが認められています。なお、両者とも親会社株式の扱いに違いはなく、子会社が直接、親会社の株式を取得することはできません。
子会社の新株予約権の扱い方
株式交付では、親会社が子会社の株式を取得する際に、新株予約権も譲り受けることが可能です。会社法第774条の3第1項第7号に基づいて、親会社は新株予約権を譲り受けるかどうかを選択できます。
手続き方法
株式交換は親会社と子会社の間で手続きが行われますが、株式交付では親会社と子会社の株主の間で手続きが進められます。株式交付において親会社は株式交付計画を提示して譲渡希望株主を募り、株主総会で承認を得ます。さらには反対株主への対応を経て、効力発生日に株式譲渡と交付を実施するのが特徴です。
まとめ|株式交付の流れを理解して、経営戦略に活用しよう
株式交付は、現金ではなく自社株式を対価として他社を子会社化する新たなM&A手法です。株式交付税制が設けられている点や、新株予約権の譲受が可能である点などがメリットとなっています。
一方、対象会社が日本の株式会社に限定されるなど、制約があるのはデメリットだといえます。ここまでご紹介した株式交付の特徴を理解した上で、戦略的にM&Aを検討しましょう。
CINC Capitalは、M&A仲介協会会員および中小企業庁のM&A登録支援機関として、株式交付のご相談を受け付けております。業界歴10年以上のプロアドバイザーが、お客様の真の利益を追求します。M&Aの相談をご希望の方はお気軽にお問い合わせください。
この記事の監修者

CINC Capital取締役執行役員社長
阿部 泰士
リクルートHRマーケティング、外資系製薬メーカーのバクスターを経て、M&A業界へ転身。 日本M&AセンターにてM&Aアドバイザーとして経験を積み、ABNアドバイザーズ(あおぞら銀行100%子会社)では執行役員営業本部長として営業組織を牽引。2024年10月より上場会社CINCの100%子会社設立後、現職に就任。