CINC CapitalはCINC(証券コード:4378)のグループ会社です。
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M&A / スキーム
- 公開日2025.04.28
- 更新日2025.04.30
会社が買収されたらどうなる?従業員や株への影響、PMIをスムーズに進めるポイントも解説
会社が買収されたら、社員の雇用はどうなるのか、経営方針は変わるのか、不安に感じていませんか?
近年、日本国内のM&A件数は年々増加傾向にあります。経済産業省や中小企業庁の統計によれば、特に中小企業の事業承継を目的としたM&Aが急増しています。経営者や従業員にとって、M&Aは大きな転換点となるため、買収の影響やその後の対応について事前に知っておくことがとても重要です。
本記事では、会社が買収された際に起こる変化や、従業員・顧客・株主への影響などを分かりやすく解説します。
目次
会社が買収されたら何が起こる?
会社が買収されると、経営権が移り、社内外の環境が大きく変化します。特に影響を受けやすいのが、従業員の雇用や待遇、経営方針、そして顧客や株主への対応です。
たとえば、組織体制の再編や人事制度の統合が行われることがあり、それに伴って働き方やサービス内容が見直されるケースがあります。本章では、買収によって実際にどのような変化が起こるのかを具体的に解説します。
従業員の雇用や待遇への影響
M&Aのスキームによって従業員への影響は大きく異なります。株式譲渡型のM&Aでは、法人格が変わらないため、雇用契約や労働条件もそのまま引き継がれるのが一般的です。たとえば、給与や退職金の条件が即座に変更されることはなく、原則として労働条件の変更には従業員の同意が必要です。
一方、事業譲渡型のM&Aでは、法人格が変わるため、従業員の雇用契約は自動的には引き継がれません。事業譲渡では、従業員一人ひとりの同意を得て、新会社との雇用契約を結び直す必要があります。この過程で労働条件が変更される可能性もあるため、従業員にとっては株式譲渡よりも不安要素が大きくなる傾向があります。
ただし、労働契約承継法の適用対象となる場合は、一定の保護規定が適用されます。
経営方針やブランドへの影響
買収後は、会社の経営方針が買い手企業の方針に従って変更されます。なぜなら、経営権が移ることで、新たな経営陣が事業の方向性を決定する立場になるからです。
たとえば、取扱商品の見直しや、戦略の転換、人事体制の変更などが起こる可能性があります。また、ブランド名についても、買い手企業が既存ブランドの価値を認めれば維持されることがありますが、統一戦略の一環としてブランドを変更するケースもあります。
株主や顧客への影響
買収は、株主や顧客にも直接的な影響を及ぼします。特に株主は、買収により保有株式を高値で売却できる可能性がある一方、買収完了後に上場廃止となる場合は市場での取引機会を失います。
たとえば、TOB(株式公開買い付け)が行われた場合、プレミアム価格で株式が買い取られることもありますが、価格に納得できない株主から反発が出る場合もあるのです。顧客については、商品やサービスが継続される限り大きな混乱はありませんが、統合によって対応窓口やサポート体制が変更されると、不安や不満が生まれる可能性があります。
そのため、買収後も顧客への丁寧な説明と品質の維持に努めることが欠かせません。
会社が買収されるメリットとデメリット
会社が買収されることには、経営者や従業員にとってプラスとなる点もあれば、慎重に対応すべきリスクもあります。たとえば、後継者問題の解消や事業の成長加速など、多くのメリットを得られる可能性があります。
一方で、経営の自由を失ったり、従業員の不安や取引先の離脱といったリスクも伴うのです。ここでは、買収によって企業や関係者が得られるメリットと、注意すべきデメリットについて解説します。
買収によって得られるメリット
買収されることで、事業を継続しながら経営の課題を解決できる可能性があります。中でも大きなメリットは、後継者不在の問題を解決しながら、創業者利益を確保できる点です。
たとえば、オーナー経営者が株式を譲渡すれば、事業を第三者に承継しながら個人として売却益を得て、引退後の資金を確保することができます。この点は株式譲渡の大きな特徴であり、売却益はオーナー個人や株主に帰属します。
一方、事業譲渡の場合は、売却益は企業(法人)に帰属するという重要な違いがあります。また、買収によって経営資源が強化され、販路や開発体制の拡大により成長の加速が見込まれます。従業員にとっても、大手企業の傘下に入ることで、福利厚生の充実やキャリアの選択肢が広がるケースがあるのです。
買収に伴うデメリットやリスク
会社が買収されることには、経営の自由度を失うなどのデメリットも伴います。特に経営者は、買収後に意思決定権を失うため、従来の経営方針を維持できないことがあります。
たとえば、統合後に経営方針や人事制度が大きく変更され、従業員が戸惑うことも少なくありません。さらに、企業文化の違いから職場の雰囲気に馴染めず、離職者が増える可能性もあります。また、買収が取引先や顧客に知られた際、不安視されて関係が途絶えるリスクもあるため、対応を誤ると事業に悪影響を及ぼします。
買収を成功させるには、こうしたリスクをあらかじめ把握し、ステークホルダーへの配慮を徹底することが重要です。
買収後に経営統合(PMI)を円滑に進めるためのポイント
M&Aの成否を左右するのは、買収後の経営統合(PMI:Post Merger Integration)の進め方です。
PMIとは、M&A成立後に買収企業と被買収企業を実質的に統合していくプロセスのことを指します。実務上、多くのM&A案件はこのPMIの段階で失敗するとも言われており、M&A成功の鍵を握る重要なプロセスです。
本章では、PMIを成功に導くために企業が押さえておくべき5つのポイントを紹介します。
PMI戦略を立案して計画を具体化する
PMIを成功に導くには、明確な戦略と実行可能な計画が欠かせません。なぜなら、統合にあたって目指すべきゴールが曖昧であれば、組織全体が迷走してしまうからです。
たとえば、シナジーの創出や収益目標を明文化し、KPIを設定したうえで、ロードマップを作成することで進捗を管理しやすくなります。実行体制には経営層の関与とPMI専任チームの設置が求められます。
このように、計画の可視化と実行管理の徹底によって、PMIの混乱を未然に防ぐことができるでしょう。
組織構造と人事制度を統合して一貫性を持たせる
買収後は、組織体制や人事制度を一本化しなければ統一感が生まれません。なぜなら、制度がバラバラのままだと社員の処遇に差が出て、不公平感が生まれてしまうからです。
たとえば、評価基準や昇進ルールが旧体制のまま残っていると、社員間で不満が蓄積されやすくなります。制度統合では、段階的な移行や説明会を通じて社員の理解を得るプロセスが必要です。
その結果、組織全体が一体感を持ち、新体制へのスムーズな移行が実現します。
企業文化の違いを調整してシナジーを創出する
PMIで最も難しく、かつ失敗の主要因となりやすいのは、企業文化の融合です。文化の違いが衝突を生むと、組織全体に不和が広がり、期待していたシナジー効果が実現できなくなります。
実際のM&A現場では、「文化的不適合(カルチャーミスマッチ)」が原因で、優秀な人材の流出や生産性の低下、最終的には統合の失敗につながるケースが少なくありません。
たとえば、トップダウン型の企業と現場主導の企業が統合すると、意思決定のスピードや働き方に大きなギャップが生じます。また、リスクを取って挑戦する文化と慎重に安定を重視する文化の衝突、顧客対応の方針の違い、評価基準の相違なども大きな摩擦を生み出します。
私の経験上、財務や法務のデューデリジェンスに比べて、こうした文化面のデューデリジェンスが不足しているケースが多く見受けられます。
業務プロセスとITシステムを統一して効率化を図る
業務やITが統一されていないと、統合効果が発揮されません。なぜなら、プロセスが二重化したままでは無駄が発生し、データの連携も取れなくなるからです。
たとえば、会計システムや販売管理ツールが別々のままだと、集計作業や情報共有に手間がかかります。この状況を改善するには、どちらの仕組みをベースに統合するかを早期に決定し、段階的に切り替えていく必要があります。
効率的な業務と正確なデータ運用を実現するには、システムと業務の両面から統一する取り組みが欠かせません。
円滑なコミュニケーションを確保してリスクを管理する
統合を進めるうえで、情報共有とリスク管理は最重要課題の一つです。なぜなら、従業員や取引先が変化に対する不安を抱えたままでは、誤解や混乱が拡大する恐れがあるからです。
たとえば、買収の目的や統合の方向性を伝えずに進めてしまうと、現場の士気が下がり離職につながることもあります。これを防ぐためには、社内説明会やQ&A対応を通じて対話を促し、懸念を早期に吸い上げる仕組みが必要です。
また、顧客や取引先への報告もタイミングと内容を工夫することで信頼関係の維持につながります。コミュニケーションの質と頻度を高めることが、リスクの早期発見と統合の安定化につながります。
買収される会社の特徴と兆候
企業が買収される背景には、様々な兆候が存在します。たとえば、業績の悪化や資金繰りの困難、競争力の低下、株主や取引先からの圧力などが代表的な例です。こうした状況では、自社単独での経営継続が難しくなり、外部資本に支援を求める選択が現実味を帯びてきます。
本章では、買収の対象となりやすい企業の特徴と兆候を具体的に解説します。
業績の低迷や財務状況の悪化により経営の選択肢が限られている
継続的な赤字や資金繰りの悪化は、買収される企業に共通する典型的な特徴です。なぜなら、自力での経営再建が困難になると、外部資本に頼らざるを得なくなるからです。
たとえば、借入金の返済が滞るような状況に陥ると、銀行からの融資が打ち切られる可能性があり、経営者は選択肢を失います。その結果、事業を継続させるために、第三者への事業譲渡や企業売却を選ぶケースが増えています。
こうした企業は、早期に支援先を見つけることで倒産を回避し、従業員や取引先との関係維持を図ることができます。
競争優位性が低下し自社のみでの成長が難しくなっている
市場での競争力を失い始めた企業は、単独での生き残りが困難になる傾向があります。なぜなら、製品やサービスの独自性が失われると、価格競争に巻き込まれやすくなり、利益率が急激に下がるからです。
たとえば、技術革新のスピードについていけない中小企業が、新興企業や大手にシェアを奪われ、売上が伸び悩むケースがあります。このような状況に直面した経営者は、自社の将来性に限界を感じ、成長力のある企業に事業を託す選択をするようになります。
買収により経営資源を補完し、新たな展開を図ることが現実的な手段となるのです。
株主や取引先からの圧力が高まり経営の方向転換が求められている
外部からのプレッシャーによって、会社の方針転換を迫られるケースもあります。特に上場企業では、株主からの要請で経営体制の見直しや売却判断を余儀なくされることがあります。
たとえば、業績不振が続く企業に対し、アクティビストが企業価値向上のためのM&Aを提案することがあるのです。また、取引先から「今後も安定供給できる体制を整えてほしい」と求められ、買収によって経営基盤を強化する決断に至ることもあります。
こうした外部環境の変化が、買収という選択を現実のものにする要因となります。
成長企業や優良企業が戦略的に買収される事例
高い成長性や独自の技術・ノウハウを持つ企業は、戦略的買収の対象として注目されています。これらの企業は経営が安定し収益も順調であるにもかかわらず、さらなる成長や事業拡大のために買収を選択するケースが増えています。
たとえば、優れた技術やビジネスモデルを持つスタートアップ企業が、グローバル展開や大規模な事業拡大を実現するために、大手企業の傘下に入ることを戦略的に選択するケースが増えています。自社単独での成長には資金や人材、グローバルネットワークなどの点で限界があるため、大手企業のリソースを活用することでさらなる飛躍を目指すのです。
また、安定した優良企業であっても、業界再編の波の中で競合他社に先んじるために規模の拡大を図る、あるいは新たな市場に迅速に参入するためにM&Aを選択するケースもあります。このような場合、買収は危機的状況からの脱出ではなく、さらなる成長のための前向きな戦略的判断となります。
経営者は自社の強みや成長可能性を見極め、最適なタイミングで戦略的な判断を行うことが重要です。
まとめ|買収の本質を理解し、新たな成長機会を
会社が買収されることは、大きな経営転換を意味します。しかし、買収の本質を正しく理解し、統合後の対応を丁寧に進めることで、企業にとって新たな成長機会となります。
従業員・顧客・取引先との信頼関係を維持しながら、メリットを最大限に活かすためにも、準備と戦略的判断が重要です。事前に兆候を見極め、適切なタイミングで最良の選択ができるよう備えておきましょう。
CINC Capitalは、M&A仲介協会会員および中小企業庁のM&A登録支援機関として、M&Aのご相談を受け付けております。業界歴10年以上のプロアドバイザーが、お客様の真の利益を追求します。M&Aの相談をご希望の方はお気軽にお問い合わせください。
この記事の監修者

CINC Capital取締役執行役員社長
阿部 泰士
リクルートHRマーケティング、外資系製薬メーカーのバクスターを経て、M&A業界へ転身。 日本M&AセンターにてM&Aアドバイザーとして経験を積み、ABNアドバイザーズ(あおぞら銀行100%子会社)では執行役員営業本部長として営業組織を牽引。2024年10月より上場会社CINCの100%子会社設立後、現職に就任。