CINC CapitalはCINC(証券コード:4378)のグループ会社です。
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M&A / 基礎知識
- 公開日2025.04.22
- 更新日2025.04.23
クロスボーダーM&Aとは?種類やメリットデメリット、流れ、成功させるためのポイントを解説
海外市場への進出に向けてM&Aを検討しているものの、どのように進めれば良いのかわからないと悩んでいませんか?近年は国内市場が成熟し、企業の成長戦略としてクロスボーダーM&Aが注目されています。しかし、異なる文化や法規制、買収後の統合(PMI)など、乗り越えるべき課題も少なくありません。
本記事では、クロスボーダーM&Aの基本概念から、成功のポイントまで解説します。
目次
クロスボーダーM&Aとは?
クロスボーダーM&Aとは、国境を越えて行われるM&A(企業の買収や合併)のことです。具体的には、日本企業が海外企業を買収するケース、または海外企業が日本企業を買収するケースなどが該当します。
国内M&Aとは異なり、異なる法制度や文化、経営慣習の違いを考慮する必要があるため、慎重な戦略が求められます。
クロスボーダーM&Aは、日本企業にとって海外市場への参入手段の一つとして重要視されているのです。
クロスボーダーM&Aの現状
クロスボーダーM&Aの動向は、日本企業の海外進出戦略やグローバル経済の変化に大きく影響を受けています。国内市場が成熟し、成長の限界が見え始めている中、企業の競争力を維持・強化するために、海外市場への進出は避けられない課題といえます。
実際に、日本企業による海外企業の買収は近年増加傾向にあります。特に、ASEAN諸国や北米市場における案件が目立ち、アジアの成長性を背景に投資対象としての注目度が高まっています。
一方で、海外企業による日本企業の買収も安定的に推移しています。米国や中国、シンガポールなどからの投資が中心で、外資ファンドやグローバル企業による日本市場への参入も引き続き進んでいます。
また、経済環境や国際情勢もクロスボーダーM&Aに影響を与える重要な要素です。為替レートの変動、各国の投資規制、地政学的リスクなどが、取引の意思決定に直結するため、M&Aの成否を左右する要因となっています。
クロスボーダーM&Aの種類
クロスボーダーM&Aの種類は、企業の所在地の組み合わせによってIN-OUT型、OUT-IN型、OUT-OUT型の3つです。それぞれの形態によって、M&Aの目的やメリット、リスクが異なります。ここでは、それぞれの種類の特徴を解説します。
IN-OUT型(アウトバウンド型)
IN-OUT型とは、日本企業が海外企業を買収するM&Aの形態です。この手法は、海外市場への参入、販売網の拡大、現地の技術や人材の確保を目的として実施されます。
例えば、日本の製造業が東南アジアの現地企業を買収し、生産拠点を確保するケースがあります。このM&Aの利点は、新規参入よりも短期間で市場に浸透しやすいことです。現地企業を買収することで、既存のブランド力や顧客基盤を活用できるため、ゼロから市場開拓をするよりも効率的に事業展開が可能です。
ただし、異なる法制度や文化に適応する必要があるため、事前の市場調査や現地経営陣との連携が重要になります。
OUT-IN型(インバウンド型)
OUT-IN型とは、海外企業が日本企業を買収するM&Aの形態です。外資企業が日本市場に参入しやすくするために、既存の日本企業を買収することで、市場のノウハウや顧客基盤を得る狙いがあります。
特に、日本の高度な技術やブランド力に魅力を感じる海外企業が多く、製造業やサービス業での買収が増えています。この形態のM&Aは、日本企業にとって資金調達や経営再建の手段になる場合があります。経営難に陥った企業が、海外資本の支援を受けて事業を継続するケースが増えており、特に外資ファンドによる買収が顕著です。
ただし、買収後に日本企業の企業文化や従業員の意識とのギャップが発生しやすいため、統合作業(PMI)の適切な計画が求められます。
OUT-OUT型
OUT-OUT型とは、日本企業が直接関与しない、海外企業同士のM&Aを指します。
例えば、日本企業の欧州子会社が、現地の別の企業を買収するケースです。この形態のM&Aは、グローバルな事業展開を進める上で海外の競争力を強化する手段として活用されます。特に、日本企業が現地法人を経由してM&Aを行うことで、法規制の違いをクリアしやすくなるメリットがあります。
一方で、日本本社と現地法人の経営方針が合わない場合、シナジーを生み出すのが難しくなるため、事前の経営方針の統一が必要です。
クロスボーダーM&Aの主な手法
クロスボーダーM&Aでは、買収や統合の手法が複数存在し、取引の目的や企業の状況に応じて適切な手法が選ばれます。代表的な手法として、株式譲渡、事業譲渡、三角合併などが挙げられます。また、資金調達方法としてLBO(レバレッジド・バイアウト)なども用いられます。これらの手法と資金調達方法はそれぞれメリットとリスクが異なるので注意が必要です。ここでは、それぞれの手法の特徴について解説します。
株式譲渡
株式譲渡とは、企業の株式を売却し、経営権を移転するM&A手法です。この方法は比較的一般的であり、買収側は株主から株式の過半数を取得すれば、経営方針の決定権を持つことが可能です。
この手法のメリットは、会社の事業や契約関係を維持しながらスムーズに経営権を移転できる点です。企業全体をそのまま引き継ぐため、取引先や従業員との契約を個別に変更する必要がなく、M&A後の統合作業が比較的容易になります。
ただし、買収企業の負債も引き継ぐため、事前のデューデリジェンス(買収監査)を慎重に行うことが重要です。
事業譲渡
事業譲渡とは、会社の一部の事業を売却し、買収企業がその事業を継承する手法です。株式譲渡とは異なり、企業全体ではなく、売却する事業のみを選択できるため、経営戦略に応じた柔軟な取引が可能です。
この手法の利点は、買収側が不要な資産や負債を引き継がず、必要な事業のみを取得できる点にあります。また、売却側にとっても、収益性の低い事業を整理し、本業に集中できることがメリットです。
しかし、事業譲渡では、取引先や従業員との契約を個別に引き継ぐ必要があるため、手続きが煩雑になりやすいという課題があります。そのため、法務・会計の専門家と連携し、円滑な移行を進めることが重要です。
三角合併
三角合併とは、海外企業が日本企業を買収する際に、自社の子会社を経由して合併を行う手法です。日本の会社法上、外国法人が直接合併当事者となることには制限があるため、三角合併という手法が活用されます。
この方法のメリットは、海外企業が自社の株式を対価として日本企業を買収できるため、現金を使用せずに買収を実行できることです。また、グローバル企業が日本市場に参入する際に、既存の事業基盤を活かしながらスムーズに経営統合を進められます。
一方で、日本企業側からすると、買収後に海外本社の経営方針に従う必要があり、企業文化や経営体制の統合に時間がかかることが課題になります。
LBO(レバレッジド・バイアウト)
LBO(レバレッジド・バイアウト)とは、買収対象企業の資産や将来のキャッシュフローを担保にして資金を調達し、その資金を使って企業を買収する手法です。投資ファンドが活用することが多く、自己資金を抑えながら大型のM&Aを実施できる点が特徴になります。
この手法の利点は、買収側が少ない自己資金で大規模な企業を取得できることです。特に、キャッシュフローが安定している企業を対象とする場合、銀行などの金融機関からの融資を受けやすくなります。
ただし、LBOによるM&Aは、多額の負債を伴うため、買収後に経営が悪化すると、財務リスクが高まる可能性があります。そのため、適切な財務計画とリスク管理が重要です。
クロスボーダーM&Aのメリット
クロスボーダーM&Aは、企業がグローバル市場で成長するための有力な手段です。特に、海外市場への参入、ブランド価値の向上、コスト削減、技術力や人材の獲得といった点で大きなメリットがあります。海外市場に進出しやすくなることで、新たな顧客層を獲得し、事業の成長を加速できます。ここでは、クロスボーダーM&Aの主なメリットについて解説します。
海外市場に進出しやすい
クロスボーダーM&Aは、企業が新たな市場に迅速に参入するための有効な手段です。
新規進出の場合、現地での事業立ち上げには時間とコストがかかります。しかし、既存の企業を買収することで販路や顧客基盤を活用しながら、スムーズに事業展開が可能です。
例えば、日本のメーカーが東南アジアの企業を買収することで、その地域の販売ネットワークを即座に活用できます。これにより、市場参入の時間を短縮し、競争優位性を確保できます。
企業のブランド価値や国際的な知名度が向上する
クロスボーダーM&Aにより、企業のブランド価値が向上し、国際的な市場での認知度が高まります。特に、海外の有名企業を買収することで、そのブランド力を活用しながら、グローバル市場での競争力を強化できます。
例えば、日本企業が欧米の有名ブランドを買収した場合、そのブランドの持つ信頼性や市場評価をそのまま活用できるため、新市場での販売拡大が容易です。また、海外市場での知名度が高まることで、新たなビジネスチャンスが生まれる可能性もあります。
生産コストや税負担を抑えられる
クロスボーダーM&Aを活用すると、生産コストや税負担の削減が可能になります。特に、労働コストの低い国での生産拠点確保や、法人税率の低い国への拠点移転により、事業の収益性を向上させることができます。
例えば、日本企業が東南アジアや中南米の企業を買収することで、現地の低コスト労働力を活用し、製造コストを削減可能です。また、特定の国ではM&Aに対する税制優遇措置があり、適切な税務戦略を立てることで利益を最大化できます。
技術力や専門知識、人材などの経営資源を活用できる
クロスボーダーM&Aは、技術力や専門知識の獲得、優秀な人材の確保にも有効です。先進技術を持つ海外企業を買収することで、自社の研究開発力を強化できます。
例えば、日本企業がシリコンバレーのテクノロジー企業を買収した場合、最新のIT技術や専門知識を取り込み、イノベーションを加速させることが可能です。また、グローバル市場での競争においては、多様な人材の確保が重要になります。
クロスボーダーM&Aを通じて、現地の優秀な人材を確保することで、競争力を高めることができるため、企業の成長戦略としても有効です。
クロスボーダーM&Aのデメリット
クロスボーダーM&Aには多くのメリットがある一方で、文化や経営スタイルの違い、技術流出のリスク、情報収集の難しさなど、国内M&Aにはない課題が伴います。特に、異なる国の企業同士が統合するため、企業文化の違いや意思決定のプロセスが障壁となるケースが多く見られます。ここでは、クロスボーダーM&Aによるリスクについて解説します。
文化や経営スタイルの違いによる摩擦が生じるおそれがある
クロスボーダーM&Aでは、異なる文化や経営スタイルの違いが摩擦を生み、統合後の経営に影響を及ぼす可能性があります。意思決定のスピード、労働慣習、組織の階層構造などの違いが原因となり、M&Aの成功を妨げることがあります。
例えば、日本企業は慎重な意思決定を重視する傾向がありますが、欧米企業ではスピードを優先するケースが多いです。その結果、統合後に経営方針の違いが明らかになり、従業員の混乱や業務の停滞を招くことがあります。
また、労働文化の違いも大きな課題となります。欧米ではジョブ型雇用が一般的であるのに対し、日本企業はメンバーシップ型雇用を重視するため、統合後の人事制度の調整が必要になります。
技術やノウハウが流出するリスクがある
クロスボーダーM&Aでは、企業の技術やノウハウが流出する場合があります。先進的な技術や知的財産を持つ企業を買収する場合、契約の不備や管理体制の甘さが原因で、競争相手に技術が流出することがあるのです。
例えば、海外企業が日本の製造業を買収した後、技術者が流出し、買収元の企業が独自に事業を展開するケースが発生しています。また、中国や新興国では、知的財産権の管理が厳格でない場合もあり、企業秘密の保持が難しくなるリスクがあります。
この問題を防ぐためには、契約時に技術流出を防ぐための条項(NDAや競業避止義務)を設けることや、買収後の管理体制を強化することが必要です。特に、機密情報の取り扱いや技術者の引き留め策を慎重に設計することで、リスクを最小限に抑えることができます。
国内のM&Aと比べて必要な情報を集めるのに時間を要する
クロスボーダーM&Aでは、国内M&Aと比較して、対象企業の情報を集めるのに時間がかかるという課題があります。特に、国によっては会計基準が異なり、財務状況を正確に把握することが難しくなります。また、政府の規制や市場環境の違いも、デューデリジェンス(買収監査)を複雑にします。
例えば、日本企業が新興国の企業を買収する場合、現地の財務報告の透明性が低く、正確なデータを得るまでに時間を要することがあるのです。さらに、政府の承認が必要な業種では、規制当局との交渉が長期化し、M&Aの成立までに数か月から数年かかる場合があります。
これらのリスクを回避するためには、現地の法律や市場環境に精通した専門家を活用し、デューデリジェンスを慎重に進めることが重要です。また、事前に規制のリスクを評価し、必要な承認手続きを見越したスケジュールを立てることで、スムーズな取引を実現できます。
クロスボーダーM&Aの主な流れ
クロスボーダーM&Aは、戦略策定から買収完了(クロージング)まで複数のステップを経て進行します。国内M&Aと比較して、手続きが複雑であり、国ごとの法規制や市場環境を考慮しながら慎重に進めなくてはなりません。ここでは、M&Aの戦略策定からターゲット企業の選定、デューデリジェンス(買収監査)、契約の締結、決済とクロージングまでの流れを詳しく解説します。
戦略の策定とM&Aの必要性確認
クロスボーダーM&Aを成功させるためには、最初に明確な戦略を策定し、M&Aの必要性を確認することが重要です。
企業の成長戦略と整合性が取れていないM&Aは、買収後にシナジーを生み出せず、期待した効果が得られない可能性があります。
例えば、新市場への参入や競争力の強化が目的であれば、現地の市場規模や成長率を分析し、M&Aが最適な手段かどうかを検討する必要があります。
ターゲット企業の選定と情報収集
ターゲット企業の選定では、市場環境、競争状況、財務状況などを総合的に分析し、適切な買収先を見極めることが求められます。海外企業の情報は国内企業と比較して入手が難しいため、信頼できる情報源やM&Aアドバイザーを活用することが重要です。
例えば、ASEAN市場に進出を検討している場合、現地の規制や業界動向を調査し、財務の健全性や経営体制を精査する必要があります。
現地視察と面談
ターゲット企業の選定後、現地での視察や経営陣との面談を通じて、企業の実態を把握する必要があります。オンライン上の情報だけでは把握できない、企業文化や従業員の雰囲気、オペレーションの実態を確認することが目的です。
例えば、製造業の場合、工場の稼働状況や設備の状態を確認し、品質管理が適切に行われているかを調査します。
また、経営陣との面談では、買収後の事業方針や人材の引き継ぎについて議論し、M&A後のスムーズな統合を見据えた関係構築を進めることが重要です。
基本合意書(MOU)または意向表明書(LOI)の締結
M&Aの基本条件について合意が形成されたら、基本合意書(MOU)または意向表明書(LOI)を締結し、具体的なデューデリジェンス(買収監査)へ進みます。これは、M&Aの基本方針を明確にし、双方の期待値を一致させるための重要なステップです。
例えば、買収価格の概算や取引のスキーム、統合後の経営方針について大枠の合意を得ることで、デューデリジェンスの方向性が明確になります。
ただし、MOUやLOIには法的拘束力を持たない場合が多いため、詳細な契約内容は最終契約で定めることになります。
デューデリジェンス(買収監査)と最終契約の締結
デューデリジェンス(DD)は、ターゲット企業の財務・法務・税務・ビジネスリスクを詳細に調査し、M&Aのリスクを最小限に抑えるために実施されます。
このプロセスを適切に行わないと、買収後に予想外の負債やリスクが発覚し、経営に大きな支障をきたす可能性があるのです。
例えば、財務DDでは、過去の収益構造や負債状況を精査し、将来的なキャッシュフローの見通しを立てます。法務DDでは、契約の有効性や訴訟リスクを確認し、取引の安全性を確保します。
デューデリジェンスの結果をもとに、買収価格の調整や契約内容の見直しを行い、最終契約を締結しましょう。
決済とクロージング
最終契約の締結後、決済手続きを行い、正式に企業の経営権が移転します。
クロスボーダーM&Aでは、国内取引と異なり、資金の送金手続きや政府の承認手続きに時間を要することがあるため、適切なスケジュール管理が必要です。
例えば、国際送金の規制が厳しい国では、資金の流れを事前に確認し、適切な金融機関を利用する必要があります。
また、買収後の統合(PMI)を迅速に進めるため、従業員や取引先への周知を徹底し、経営の混乱を防ぐことが重要です。
クロスボーダーM&Aを成功させるためのポイント
クロスボーダーM&Aを成功させるためには、文化の違いを理解し、適切な統合プロセス(PMI)を進めることが重要です。異なる国の企業が統合する際、文化や経営スタイルの違いを考慮しないと、従業員のモチベーション低下や組織の混乱を招く可能性があります。ここでは、文化の統合、法規制への対応、シナジーの最大化という3つの重要なポイントについて解説します。
文化の違いを理解し、統合プロセスを丁寧に進める
クロスボーダーM&Aでは、文化や経営スタイルの違いが事業統合の障壁となることが多く、慎重な対応が求められます。買収後に統合をスムーズに進めるためには、異文化を尊重し、相互理解を深めることが重要です。
例えば、日本企業が欧米企業を買収した場合、意思決定のスピードや組織運営のスタイルに大きな違いがあります。日本企業は合意形成を重視する傾向が強いのに対し、欧米企業はトップダウン型の意思決定を好むケースが多いです。この違いを認識しないと、経営層と従業員の間に摩擦が生じ、統合作業が停滞する可能性があります。
成功させるためには、事前に相手企業の文化や価値観を理解し、買収後も現地の従業員と密にコミュニケーションを取ることが不可欠です。
現地の法規制や税制を正しく把握し、リスクを回避する
クロスボーダーM&Aでは、各国の法規制や税制の違いを理解し、適切に対応しましょう。事前に十分な情報を収集し、法務・税務の専門家と連携してリスクを回避することが重要です。
例えば、日本企業が海外企業を買収する際、その国の外資規制により株式取得の比率に制限がある場合があります。また、税制の違いにより、思わぬコスト負担が発生することもあります。特に、二重課税の回避措置が整っていない国では、M&A後の利益配分に影響が出る可能性があります。
こうしたリスクを最小限に抑えるためには、現地のM&Aに関する法律や税務ルールを事前に精査し、適切なスキームを構築することが不可欠です。
買収後のシナジーを最大化するための戦略を策定する
クロスボーダーM&Aの成功は、買収後の統合(PMI)にかかっており、シナジー効果を最大化する戦略が不可欠です。買収が完了しただけで満足せず、統合の計画を明確にし、実行することが求められます。
例えば、製造業の企業が海外企業を買収した場合、調達や生産の最適化を図ることでコスト削減につなげることが可能です。また、営業面では、買収した企業の販売チャネルを活用し、自社製品の市場拡大を狙うこともできます。
こうしたシナジーを実現するためには、経営統合の初期段階で具体的なアクションプランを策定し、段階的に実行する必要があります。特に、PMIを成功させるためには、初期の100日間が極めて重要とされています。
まず、統合チームを設立し、日本側と相手国側の両方からメンバーを選出して協力体制を構築します。そのうえで、短期・中期・長期の統合計画を立案し、各フェーズごとに明確なマイルストーンと責任者を設定することが求められます。
また、従業員とのコミュニケーションもPMIの成功を左右する要素です。定期的な進捗報告や説明会を通じて、現場の不安や誤解を早期に解消し、統合に対する理解と協力を得ることが重要です。
特に留意すべきは、相手企業の優秀な人材の流出を防ぐための施策です。買収後の早期段階で、キーパーソンの特定と留任インセンティブの設計、キャリアパスの提示などを実施し、人材の定着と組織安定を図る必要があります。
まとめ|クロスボーダーM&Aを検討する際は、専門家の活用を
クロスボーダーM&Aは、企業の成長やグローバル展開を加速させる有力な手段ですが、異なる文化、法規制、市場環境の中で慎重に進める必要があります。
特に、文化の違いを理解し、現地の規制に対応しながら、買収後のシナジーを最大化することが不可欠です。
これらを適切に管理できれば、企業価値を大きく向上させることができます。
クロスボーダーM&Aを検討する際は、事前の情報収集と専門家の活用を意識し、長期的な視点で戦略を構築しましょう。
この記事の監修者

CINC Capital取締役執行役員社長
阿部 泰士
リクルートHRマーケティング、外資系製薬メーカーのバクスターを経て、M&A業界へ転身。 日本M&AセンターにてM&Aアドバイザーとして経験を積み、ABNアドバイザーズ(あおぞら銀行100%子会社)では執行役員営業本部長として営業組織を牽引。2024年10月より上場会社CINCの100%子会社設立後、現職に就任。