CINC CapitalはCINC(証券コード:4378)のグループ会社です。
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清算・廃業・解散 / 廃業
- 公開日2025.04.24
- 更新日2025.04.24
【出さないとどうなる?】廃業届とは?書き方や提出のタイミング、手続きの流れを解説
事業をやめようとして「何から始めればいいのか分からない」「廃業届ってどこに出せばいいの?」と悩んでいませんか?書類の準備や提出期限など、慣れない手続きに戸惑う方は少なくありません。
本記事では、廃業届の提出タイミング、必要書類、正しい書き方から、提出後の注意点まで順を追って分かりやすく紹介します。
目次
廃業届とは?
個人事業を終了する際には、税務署へ「廃業届」を提出する必要があります。廃業届は、事業をやめたことを税務署に正式に報告するための届出です。提出を怠ると、税務署からは事業を継続していると判断され、不要な申告義務が発生する可能性があります。事業を終えたら速やかに提出することで、税務上のトラブルを避けられます。
なお、事業をたたむ前に、事業承継やM&Aによる譲渡の可能性も検討する価値があります。中小企業庁の調査によれば、廃業の約6割が黒字廃業とされ、後継者不在を理由に廃業を選択するケースが多く見られます。
M&Aによる事業譲渡は、従業員の雇用を守り、築き上げた事業を存続させる有効な手段となり得ます。特に黒字経営の場合は、譲渡対価を得られる可能性もあるため、廃業届を提出する前に、事業承継・引継ぎ支援センターやM&A仲介会社への相談も検討しましょう。
本章では、廃業届を提出するタイミングや必要書類を紹介します。
廃業届を提出するタイミング
廃業届は、事業を廃止した日から1ヶ月以内に提出することが法律で定められています。提出が遅れると事業継続とみなされる可能性があるので注意が必要です。
廃業日を年末に設定すると、所得税の計算上でメリットが出る場合もあるため、事前に検討することをおすすめします。適切なタイミングで届出を行うことが、スムーズな手続きにつながります。
廃業届で用意するもの
廃業届の提出にはいくつかの準備が必要です。廃業届を提出する際には、「個人事業の開業・廃業等届出書」の記入済み用紙が必要です。
加えて、本人確認のために、提出方法に応じてマイナンバーと顔写真付きの身分証明書の提示、もしくはそのコピーが求められます。事業を青色申告していた場合は、青色申告の取りやめ届も必要です。
従業員がいる事業者は、給与支払事務所の廃止届なども併せて提出する必要があります。提出方法に応じて、控えや返信用封筒の準備も忘れずに行いましょう。
廃業届は提出しないとどうなる?
廃業後に届出を出さずに放置してしまうと、思わぬ税務トラブルを招く可能性があります。廃業届を提出しないと、税務署はその個人事業が継続していると判断します。
その結果、確定申告の義務が残っていると見なされ、提出しない場合には無申告加算税や延滞税が発生する恐れがあります。こうしたリスクを避けるためにも、事業終了の際は速やかに廃業届を提出することが重要です。
廃業届の書き方
廃業届は「個人事業の開業・廃業等届出書」という書類を使って提出します。記入内容に不備があると受理されない場合があるため、正確に理解しておくことが大切です。
廃業届の書き方で最も重要なのは、「誰が」「いつ」「なぜ」事業を廃止したのかを明確に記入することです。具体的には、まず「提出先」欄に所轄の税務署名を記載し、「納税地」は自宅住所などに該当する場所を選びます。次に、氏名・生年月日・マイナンバーを記入し、印鑑を押します。さらに、「職業」「屋号」「廃業日」も記載し、事業を廃止した理由について簡潔に書きます。
青色申告をしていた場合や、従業員がいた場合には、関連項目への記入も求められます。
廃業届の手続きの流れ
廃業届の提出には、書類の準備・提出方法の選択・提出期限の確認という3つのステップがあります。
本章では、それぞれの手順について順番に解説します。
必要書類を準備する
手続きを円滑に進めるには、事前の準備が不可欠です。まずは必要書類を正しくそろえることから始めましょう。廃業届の提出には、「個人事業の開業・廃業等届出書」のほか、状況に応じた追加書類の用意が必要です。
たとえば、青色申告をしていた場合には「青色申告の取りやめ届出書」、従業員がいた場合は「給与支払事務所の廃止届出書」をあわせて提出します。また、本人確認書類としてマイナンバーと運転免許証などの写しも求められます。書類に不備があると受理が遅れたり、再提出を求められる場合があるため、提出前に一つずつ確認することが大切です。
事業資産の処分と債権債務の整理を行う
廃業手続きを円滑に進めるためには、廃業届の提出前に事業用資産の処分や債権債務の整理を行うことが重要です。
固定資産(店舗、設備、車両など)の売却や譲渡を行い、在庫品や商品も処分します。これらの資産を売却した場合、譲渡所得として確定申告が必要になる場合があります。また、リース契約や賃貸借契約も解約手続きを行う必要があります。
さらに、取引先への未払金や借入金などの債務、および売掛金などの債権も漏れなく整理することが大切です。債権については、回収漏れがないよう注意し、債務については完済するか返済計画を立てましょう。これらの整理が不十分だと、廃業後もトラブルの原因となる可能性があります
書類の提出方法を選択する
廃業届は、税務署の窓口への持参・郵送・e-Taxのいずれかで提出できます。直接窓口に出向けば、担当者にその場で確認してもらえるため安心感があります。一方で、時間が取れない場合は郵送が便利です。控えが必要な場合は、返信用封筒を同封すると返送してもらえます。
また、電子申告であるe-Taxは、自宅のパソコンから24時間提出できるのが利点です。ただし、事前にマイナンバーカードとカードリーダーなどの準備が必要です。それぞれの方法にはメリットがあるため、自身の状況に応じて最適な提出手段を選択しましょう。
提出期限を守って提出する
正しく記入された書類でも、期限を過ぎると意味がありません。決められた期日内に提出することが大切です。
廃業届は、事業を廃止した日から1ヶ月以内に提出することが法律で定められています。この期限を過ぎても特別な罰則はありませんが、税務署は廃業を認識できないため、事業が継続していると判断され、不要な申告義務が発生する可能性があるのです。
その結果、確定申告義務があると見なされ、延滞税や加算税が発生することがあります。不要なトラブルを回避するためにも、廃業日から1ヶ月以内という提出期限は必ず守りましょう。
業種に応じた許認可の返上手続きを行う
業種によっては、許認可や免許の返上手続きが必要です。これらの手続きを怠ると、後々トラブルの原因となる可能性があります。例えば、飲食店の場合は保健所への「食品営業許可の廃止届」、酒類販売業の場合は税務署への「酒類販売業免許の取消申請書」、建設業の場合は国土交通省または都道府県への「建設業許可の廃止届」などが必要です。
また、専門的な資格に基づく事業(行政書士、税理士、司法書士など)を行っていた場合は、それぞれの監督官庁に事業停止の届出が必要な場合があります。これらの手続きは業種ごとに異なるため、所轄官庁に事前に確認することをおすすめします。
廃業届に関するよくある質問
廃業届に関して、手続きを進めるなかで「法人との違い」や「休業時の対応」に関して疑問を持つ人が少なくありません。
本章では、特に多く寄せられる2つの質問に対して詳しく解説します。
個人事業主の廃業手続きと法人とは違う?
個人と法人では、廃業手続きにかかる手間や必要な手続きの範囲が大きく異なります。個人事業主の廃業は、基本的に廃業届を税務署に提出するだけで完了します。
一方で法人の場合、会社を解散し清算を完了させるまでに複数の工程が必要となります。具体的には、株主総会の開催、解散登記の実施、法人税や消費税の清算申告、厚生年金や雇用保険の廃止手続きなどが必要です。
このように、法人の手続きは関係機関も多く、期間も費用もかかります。個人事業の廃業は比較的シンプルであり、手続きが簡素で済む点が、法人との大きな違いです。
休業の際も廃業届の提出は必要?
事業を一時的に停止する場合は、必ずしも廃業届が必要なわけではありません。再開の見込みがあるかどうかが判断のポイントになります。個人事業主が一時的に事業を休む場合、廃業届を提出する義務はありません。税務署では「休業」という区分を設けていないため、あくまで「廃業するか否か」で判断されます。今後再開の可能性があるなら、廃業届を出さずに休業状態を維持する方が良いでしょう。
ただし、休業中も青色申告の繰越控除を継続したい場合には、収入がなくても確定申告を行う必要があります。また、個人事業税の扱いについては自治体ごとに異なるため、必要に応じて都道府県税事務所へ相談することをおすすめします。
さらに、将来的にM&Aによる事業承継の可能性を検討している場合は、廃業届を提出せずに休業状態を維持する方が有利となるケースもあります。廃業してしまうと、許認可や取引先との関係、事業の継続性などが失われ、事業としての価値が大きく低下してしまいます。
一方で休業状態を維持していれば、顧客リストや契約関係、許認可などの事業資産を残すことができ、M&A時の譲渡価値を保ちやすくなります。特に将来の再開や事業売却の選択肢がある場合は、専門家に相談したうえで休業か廃業かを判断することが重要です。
廃業後の確定申告はどうすればよい?
廃業した年も確定申告が必要です。通常の年と同様に、1月1日から12月31日までの所得を申告します。廃業年の確定申告では、年の途中で事業を終了した場合でも、1月1日から12月31日までの所得全体を申告します。廃業前の事業所得に加えて、資産の売却による譲渡所得や、廃業後に得た給与所得なども合算して申告する必要があります。
また、青色申告をしていた場合、赤字が出ていれば繰越控除の対象となります。ただし、廃業後の給与所得に対して事業の赤字を相殺することはできないため、注意が必要です。さらに、廃業に伴って消費税の課税事業者だった場合は、消費税の申告も忘れずに行いましょう。廃業時に保有していた棚卸資産には消費税がかかる場合があります。
まとめ|廃業後の手続きを正しく理解しましょう
廃業届は、個人事業を正式に終えるための重要な手続きです。提出しないと税務上のトラブルが発生する可能性があるため、廃業後1ヶ月以内に正しく届け出ることが大切です。記入方法や提出手段、必要書類を事前に確認しておけば、手続きはそれほど難しくありません。本記事を参考に、スムーズに廃業手続きを完了させましょう。
CINC Capitalは、M&A仲介協会会員および中小企業庁のM&A登録支援機関として、M&Aのご相談を受け付けております。業界歴10年以上のプロアドバイザーが、お客様の真の利益を追求します。M&Aの相談をご希望の方はお気軽にお問い合わせください。
この記事の監修者

CINC Capital取締役執行役員社長
阿部 泰士
リクルートHRマーケティング、外資系製薬メーカーのバクスターを経て、M&A業界へ転身。 日本M&AセンターにてM&Aアドバイザーとして経験を積み、ABNアドバイザーズ(あおぞら銀行100%子会社)では執行役員営業本部長として営業組織を牽引。2024年10月より上場会社CINCの100%子会社設立後、現職に就任。