CINC CapitalはCINC(証券コード:4378)のグループ会社です。
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業種
- 公開日2025.04.30
- 更新日2025.04.30
Webサイト譲渡とは?売却方法や売買の流れ、契約書の記載事項を解説
近年、Webサイトの譲渡はオンラインビジネスの新たな選択肢として注目を集めています。事業の成長を支える重要な資産であるWebサイトを売却することで、リタイアメント資金の確保や新たなビジネス機会への移行が可能になります。しかし、Webサイト譲渡には複雑な手続きや法的な事項が伴うため、事前に正しい知識を身につけておくことが重要です。
本記事では、Webサイト譲渡の基本から、実際の売却方法、契約書の記載事項に至るまで、譲渡を成功させるために必要な情報を詳しく解説します。これからWebサイト譲渡を考える方々が、スムーズに、そして安心して譲渡を進められるよう、実務的なアドバイスをお届けします。
目次
Webサイト譲渡とは
Webサイト譲渡とは、Webサイトの所有者(売り手)がそのウェブサイトを他の個人または企業(買い手)に譲渡する際に締結する法的な契約です。この契約はサイトそのものだけでなく、そのサイトに関連する事業や権利義務も含まれます。
Webサイト譲渡は「サイトM&A」や「サイト売買」とも呼ばれます。まずはWebサイト譲渡契約の概要と、サイト譲渡の無償と有償の違いについて解説します。
WebサイトM&Aについて詳しくは以下の記事で解説しております。併せてご覧ください。
【関連記事】WebサイトM&Aとは?メリット・デメリットや売買の流れについて
Webサイト譲渡契約とは
Webサイト譲渡契約とは、Webサイトの所有権を正式に買い手に移すための法律契約です。この契約により、所有権や運営権が正式に移行することが保証されます。
Webサイトの譲渡は契約書に記載された条件に基づいて行われ、これにより関係者全員が合意した内容に従って権利や義務が明確に定義されます。Webサイト譲渡の取引の対象となるものは、主に以下のものです。
- サイトのプログラムやデザイン
- ドメインに関する権利義務
- ユーザーの契約情報などの権利義務
- 取引情報
- その他サイト運営に関するノウハウなどを含めた知的財産権など
Webサイト譲渡契約は、売り手と買い手双方の権利と義務を明確にし、トラブルを未然に防ぐ重要な役割を果たします。
サイト譲渡の無償と有償の違い
サイト譲渡には、無償譲渡と有償譲渡という2つの方法があります。
無償譲渡は、売り手が対価を受け取らずにウェブサイトやその関連資産を譲渡することです。この場合、譲渡は贈与として扱われます。譲渡側は資産を無償で移転するため、通常は贈与税が課せられる場合があります。法人が無償で資産を譲渡する場合、寄付や贈与として扱われるケースが多いです。
無償譲渡の場合、新しい管理者にサイトを引き渡すだけで手続きが完了することが一般的です。従って、契約内容もシンプルで、手続きや書類作成にかかる時間も比較的短くなります。
一方、有償譲渡は金銭的な対価が発生するため、契約内容が複雑になりがちですが、ビジネスとしての価値があるウェブサイトや事業の売買において一般的には有償譲渡(売却)が行われます。有償譲渡では、譲渡価格が市場の相場やサイトの収益性に基づいて設定され、譲渡契約書が作成されることが通常です。
有償譲渡では、サイトの正式な評価を行い、双方が合意した金額で対価を受け渡す流れになります。また、有償譲渡では税務処理の問題も考慮しなければならず、税法に基づいた適切な報告が求められます。
一般的に、有償譲渡を選択する場合のほうが、手続きが多く時間がかかる傾向にあります。契約書の作成やファイナンシャルプランニング、法律上の問題をクリアするために、多くのステップを経る必要があります。したがって、有償譲渡を検討している方は、事前の準備が重要です。
Webサイト譲渡のやり方は?
Webサイトの譲渡の代表的な方法としてマッチングプラットフォームの利用とM&Aの専門業者への依頼が挙げられます。それぞれの方法に応じたメリットと注意点について説明します。
マッチングプラットフォームを利用する
マッチングプラットフォームとは、特定のニーズを持つ売り手と買い手を結びつけるためのオンラインサービスです。マッチングプラットフォームを利用することで、Webサイトの譲渡はスムーズに進められます。
プラットフォームには多くの売り手と買い手が集まっており、さまざまな業種や条件の案件が掲載されているため、譲渡に適した相手を比較的簡単に見つけられるでしょう。
また、マッチングプラットフォームを利用すれば、効率的かつ迅速にサイトの譲渡を進められるというメリットもあります。譲渡のプロセスが整理されているため、煩雑な手続きを簡略化し、時間や労力を削減できます。
M&Aの専門業者に依頼して譲渡を実施する
M&A専門業者への依頼は、譲渡プロセスを効率化します。M&A専門業者とは、企業の合併や買収(M&A)に関する専門的な知識と経験を持つプロフェッショナル集団です。専門業者は企業価値算定、交渉、契約書作成までを一貫してサポートし、最適な売買条件の実現とリスク低減に貢献します。
専門業者に依頼することで、譲渡プロセスを円滑に進めるだけでなく、取引の成功率を高められるため、Webサイト譲渡を検討している方には有益な選択肢です。
【売り手側】Webサイト譲渡の流れ
売却側がWebサイト譲渡を成功させるには、正しい手順に従うことが重要です。以下では、売り手側がどのようにしてWebサイトを譲渡するかについての具体的な流れを解説します。
売却サービスやサイトへ登録する
はじめに、Webサイトを売却する際の第一歩として、適切な売却サービスやプラットフォームへの登録を行います。登録する際には、売却したいサイトの基本情報(サイト名、URL、収益、トラフィックなど)を提供します。
売却サービスやサイトの審査を受ける
登録後、売却サービスは提供された情報を基に審査を行います。売却サービスへ登録する審査では、サイトの収益性やトラフィック、コンテンツの質などが評価され、売却可能かどうかが判断されます。審査に通過すると、サイトの詳細情報が公開され、売り手の情報を買い手が閲覧できるようになります。
仲介契約や秘密保持契約を締結する
売却サービスを利用する場合、仲介契約と秘密保持契約(NDA)※1を締結します。仲介契約は、売却サービスが売り手と買い手の間に入って取引をサポートするための契約です。秘密保持契約は、売却に関する情報が外部に漏れないようにするためのもので、情報の取り扱いや使用目的を明確にします。
※1…企業や個人が機密情報や営業秘密を保護するために使用される、特定の情報を第三者に開示しないことを約束する法的な契約
買い手の候補先と交渉を始める
売却サービスを通じて、買い手候補と交渉を開始します。交渉の際は、売り手は買い手からのオファーを受け取り、条件について話し合います。交渉が進む中で、買い手がサイトの詳細情報を求める場合が一般的です。
また、譲渡範囲に関する交渉では、コンテンツやドメインの引き渡し方法、引き渡し後のサポート内容など、具体的な条件を取り決めます。交渉の段階で詳細な条件を提示することは、後々のトラブルを回避するためにも重要です。
各種契約を結び手続きを進める
交渉がまとまった後、最終契約を結びます。この契約には、譲渡条件や対価、引き渡しの詳細が含まれます。契約書は単に合意を書面で記録するだけでなく、法的な保証を提供する重要な要素です。契約書には通常、譲渡対象の具体的内容、譲渡対価の設定、支払条件、そして引き渡し方法など、交渉で合意した詳細事項が明記されます。
譲渡対価を獲得する
最終的に、譲渡対価が支払われ、取引が完了します。譲渡の対価として、売り手は合意された金額を受け取り、買い手はサイトの権利を正式に取得します。譲渡対価の受け取りは、契約に基づいて行われるため、事前に確認が必要です。
【買い手側】Webサイト譲渡の流れ
Webサイトの買収は、買い手の視点から見ても多くの手順と注意点が必要です。以下では、買い手側の具体的な流れを段階ごとに解説します。
買収サービスやサイトへ登録する
買い手は、Webサイトの買収を行うために、M&A仲介サービスやマッチングサイトに登録します。買い手側が登録を行う際は、買収希望の条件や業種、予算などを入力・提出し、登録が終わり次第、買い手はサイトの情報を閲覧できます。
買収するサイトを検討する
買い手は、登録された案件の中から興味のあるサイトを選び、その詳細情報を確認します。買収するサイトを検討する際は、サイトの収益性、トラフィック、運営状況などを評価し、買収の可否を検討すると良いでしょう。必要に応じて、売り手との面談を要請する場合もあります。
売り手との交渉を行う
買い手が興味を持ったサイトについて、売り手と交渉を開始します。この際、秘密保持契約(NDA)を締結することが一般的です。交渉では、譲渡金額や譲渡条件、引き渡しのスケジュールなどを話し合います。
各種契約を結び、M&Aを進める
交渉がまとまった後に基本合意書を締結し、最終契約書を作成します。この契約には、譲渡対象の詳細、譲渡対価、引き渡し条件、デューデリジェンスの実施などが含まれます。契約書には、双方の権利義務が明記され、取引の透明性が確保されます。
ドメイン移管を管理会社に申請する
最終契約が締結された後、ドメインの移管手続きを行います。現在のドメイン管理会社に対して移管申請を行い、移管が完了すると、買い手はドメインの管理権を取得します。
Webサイト譲渡契約書とは
Webサイト譲渡契約書とは、譲渡条件や義務を明確にする法的文書です。Webサイトの譲渡はデジタル資産だけでなく関連する権利や義務も含む複雑な取引であるため、双方が納得できる明確な契約書作成が不可欠です。Webサイト譲渡契約書は将来のトラブルを防止し、スムーズな取引を保証する役割を果たします。
Webサイト譲渡契約書には、譲渡対象の範囲、譲渡対価、引き渡し方法、知的財産権の取り扱い、競業避止義務などの重要項目が含まれます。これらは譲渡後のトラブル防止に不可欠です。Webサイト譲渡契約書の存在により、譲渡に関わる全ての当事者が自分の権利と義務を明確に理解し、安心して取引を行うことができます。
Webサイト譲渡契約書の主な条項
Webサイト譲渡契約書は、譲渡に関する詳細な条件を記載した重要な書類です。以下では、Webサイト譲渡契約書に盛り込むべき主な条項について具体的に説明していきます。
譲渡対象
契約書には譲渡対象となるWebサイトや関連資産を明確に記載する必要があります。譲渡対象が曖昧だと、後々のトラブルの原因となり得るため、具体的に記載することが重要です。具体的には、譲渡の対象にはドメイン名やホスティングサーバーのアカウント情報、提供される全てのコンテンツ、そして顧客データベースなどが含まれます。
譲渡対価
譲渡対価に関しては、契約書に金額や支払い条件を具体的に記載します。これが不明確であると、支払い遅延や不履行のリスクが高まるため注意が必要です。契約書には、譲渡価格と支払い方法、支払い期限を明記する必要があります。分割払いの場合は、そのスケジュールや利息の設定についても詳細に記載します。
引渡し
Webサイト譲渡における引き渡し条件は、契約の重要なポイントです。引き渡しが完了したと見なされる時点を明確に定義することが求められます。譲渡条件が詳細に定義されていれば、買い手と売り手の間での誤解を防ぎ、スムーズに取引を完了できます。
例えば、引き渡された目的物が種類や品質、数量に関して契約に適合しない場合、買い手は売り手に対して修補や代替物の引渡し、不足分の引渡しなどによる履行の追完を請求することができます。ただし、売り手は買い手に不相当な負担を課さない場合、買い手が請求した方法とは異なる方法で履行を完了することができます。
また、契約で不適合が買い手の責任による場合、履行の追完を請求することはできません。引き渡し条件を詳細に定義することで、譲渡後に発生し得る不必要なトラブルを回避し、双方にとって安心で円滑な取引が実現します。
【参考】民法 第562条(e-GOV)
精算
サイトを運営する際には、ランニングコストや突発的な費用が発生する場合があります。サイト運営に関する費用が発生した場合、契約締結から引渡しまでの期間中にどちらが負担するのかを明確にしておきましょう。
例えば、譲渡日以前の原因に基づく費用は売り手が負担し、譲渡日以降に発生する費用は買い手が負担するというように、費用負担の基準日を定めることで、トラブルを避けやすくなります。
知的財産権
知的財産権に関する条項は、譲渡対象に含まれる著作権や商標権などの取り扱いを明確にするために重要です。
例えば、著作権に関わるサイト内のテキストや画像、動画などのオリジナルコンテンツの権利関係や、商法やロゴの使用権限、独自開発した機能やシステムなどの特許や技術的なノウハウの取り扱いについて契約書に明記することで、譲渡後の権利関係の混乱を防ぎます。
また、譲渡後に想定外の法的要求や訴訟を避けるために、契約書締結時には専門家の助言を受け、知的財産権に関する条項を適切に整備しておくことをお勧めします。
【参考】中小企業庁「知的財産取引に関するガイドライン・契約書のひな形について」
競業避止義務
競業避止義務とは、譲渡後に売り手が同様の事業を行わないことを定める条項です。売り手が類似サイトを立ち上げると買い手の収益が損なわれるため、この条項は買い手のビジネス保護に不可欠です。
売却したサイトと同様の内容やサービスを提供する新たなサイトが誕生すると、利用者は分散し、その結果、買い手が期待する収益が得られなくなる恐れがあります。このような状況を防ぐために、売り手が譲渡後一定期間、同様のWebサイトを新たに運営することを禁止する条項を設けるケースが一般的です。
具体的には、売り手に対して「1年間は同じ業種でのWebサイト立ち上げを禁止する」などの明確な競業避止義務を契約書に盛り込みます。
Webサイト譲渡を実施するときの注意点
Webサイト譲渡を実施する際には、注意すべき点がいくつかあります。ここではトラブルを未然に防ぐための、契約書の内容や知的財産の取り扱い、違反時の対応など、譲渡において重要となる要点について詳しく解説します。
契約書には譲渡範囲や責任の所在を明確に記載する
譲渡対象の明確化と同様に重要なのが、責任の所在の明確な記載です。特に以下の点を含める必要があります。
- 譲渡日前後の法的責任の区分
- サイトコンテンツに関する保証の範囲
- 第三者の知的財産権侵害が発覚した場合の対応
- 譲渡後のサポート期間と範囲
上記の責任関係を契約書に明記することで、譲渡後に発生する可能性のある法的問題や運営上のトラブルへの対応が明確になります。
特に、過去のコンテンツに起因する問題や、顧客データの取り扱いに関するトラブルは発生しやすいため、慎重に取り決めましょう。
知的財産やコンテンツの帰属先を事前に取り決めておく
知的財産やコンテンツの帰属先を事前に取り決めることが必要です。知的財産やコンテンツの帰属先に関する曖昧な取り決めは、後の紛争の元になる可能性があります。譲渡後の混乱を避けるためにも、しっかりと取り決めておきましょう。
具体的には、サイト内のブログ記事や画像、ロゴなどの知的財産が誰のものになるのかを契約書に明記しておく必要があります。特に売り手が複数のサイトを運営している場合や、買い手が特定のコンテンツを重視している場合には、詳細な取り決めが求められます。
違反時の対応や保障内容を契約書に明記してトラブルを防止する
違反時の対応や保障内容を契約書への明記は、Webサイト譲渡において非常に重要です。
突発的な違反や契約不履行が発生した場合、契約書に対応策や保障内容が明記されていないと問題が生じた際に迅速な対応ができず、双方の信頼関係を損なわせる恐れがあります。
違反が発生した場合、どのような手段で解決するか、補償の範囲や方法についての詳細な記述や、契約違反があった場合の罰則規定や解決手段についても事前に定めておくことで、違反時のリスクを低減できます。事前に保障内容を契約書に明確に記載しておきましょう。
ライセンス契約やSaaS利用規約の譲渡制限に注意する
Webサイトで使用されているソフトウェアやサービスには、第三者への譲渡を制限するライセンス契約や利用規約が存在する場合があります。特にSaaS(Software as a Service)※2やクラウドサービスでは、利用者に対して「非独占的で譲渡不能かつ再許諾不可な使用権」が付与されていることが一般的です。
そのため、Webサイトの譲渡を検討する際には、使用しているソフトウェアやサービスのライセンス契約や利用規約を事前に確認し、譲渡が可能かどうかを明確にする必要があります。
必要に応じて、サービス提供者やライセンサーからの同意を取得することが求められます。
※2…クラウドコンピューティングの一形態であり、インターネットを通じてソフトウェアを提供するモデルのこと
個人情報の取り扱いについて事前に確認する
Webサイトを通じて収集された個人情報(例:顧客データ、会員情報など)を譲渡する場合、個人情報保護法に基づく適切な対応が必要です。原則として、個人データを第三者に提供するには、本人の同意を得ることが求められます。ただし、事業の承継に伴う場合など、一定の条件下では本人の同意なしに個人データを提供できる例外も存在します。
譲渡前には、個人情報の利用目的が明確に定義されているか、譲渡先が個人情報を適切に管理・利用できる体制を有しているか、必要に応じて、本人からの同意を取得する手続きを行っているかなどを確認しましょう。上記の対応を怠ると、法令違反となる可能性があるため、慎重な対応が求められます。
まとめ|Webサイト譲渡に向けて流れや注意点を押さえて成功に導こう
今回は、Webサイト譲渡の基本概念、売却方法、売買の流れ、契約書の記載事項について解説しました。また売り手と買い手それぞれの視点から、譲渡プロセスの詳細や注意点についても説明しました。
Webサイト譲渡を検討中の方は、まず信頼できるマッチングプラットフォームやM&A専門業者に相談することをおすすめします。
弊社はM&A仲介協会会員および中小企業庁のM&A登録支援機関として、M&Aのご相談を受け付けております。業界歴10年以上のプロアドバイザーが、お客様の真の利益を追求します。M&Aの相談をご希望の方はお気軽にお問い合わせください。
この記事の監修者

CINC Capital取締役執行役員社長
阿部 泰士
リクルートHRマーケティング、外資系製薬メーカーのバクスターを経て、M&A業界へ転身。 日本M&AセンターにてM&Aアドバイザーとして経験を積み、ABNアドバイザーズ(あおぞら銀行100%子会社)では執行役員営業本部長として営業組織を牽引。2024年10月より上場会社CINCの100%子会社設立後、現職に就任。