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Web制作業界のM&A動向(2025年)メリットデメリット/事例/成功のポイントを解説

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  • 公開日2025.04.07
  • 更新日2025.04.09

Web制作業界のM&A動向(2025年)メリットデメリット/事例/成功のポイントを解説

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昨今のWeb制作業界は、技術の高度化や人材不足を理由に、M&Aによる業界再編が活発化しています。特筆すべきは、大手制作会社による中小制作会社の買収です。事業拡大や人材確保など、市場での優位性を高めるためにM&Aが行われています。

本記事では、Web制作業界におけるM&Aの最新動向や、メリット・デメリット、成功のポイントを解説します。

Web制作業界の市場規模

「株式会社矢野経済研究所」が2024年に公表したデジタルマーケティング市場に関する調査結果によると、2023年における国内のデジタルマーケティング市場は、売上高ベースで推計3,019億9,000万円規模となっています。同調査では、今後も市場規模は年々拡大傾向と予測されています。

Web制作業界を含め、近年は「デジタルトランスフォーメーション(DX)」の加速や、コロナ禍によるオンラインビジネスの急速な普及を背景に、デジタルマーケティング市場が着実な成長を見せています。

また、Web制作業界では、技術の高度化や人材不足を理由に、M&Aによる業界再編が活発化しています。大手制作会社による中小制作会社の買収や、異業種からのWeb制作業界への参入が増加しており、業界構造が大きく変わろうとしている状況です。

このほかに、大手デジタルマーケティング企業やIT企業によるWeb制作会社の買収も見られます。デジタルマーケティング分野との経営統合によって、Web制作のみならず、運用・保守からマーケティング支援まで含めたワンストップサービスの提供が実現可能となります。

【出典】株式会社矢野経済研究所「デジタルマーケティング市場に関する調査を実施(2024年)」

Web制作業界が抱える課題

Web制作業界は現在、以下のさまざまな課題に直面しています。詳しく見ていきましょう。

価格競争の激化

AIやノーコードツールの普及により、Webの制作ハードルが大きく下がりました。中小規模のWeb制作会社は、大手企業との価格競争により収益性が低下し、事業継続に影響が出はじめています。この状況を打開するには、価格以外の付加価値創出や独自のサービス展開が必要です。

人材不足と技術進化の速さ

Web制作業界の最大の課題として、IT人材不足が挙げられます。経済産業省が公表する「IT人材需給に関する調査報告書」によると、2030年には最大で約79万人の人材不足が発生する見込みです。

また、AI・IoT・ビッグデータをはじめとした新技術が急速に普及したことで、従来のスキルに加えてIT人材に求められる知識と技術の範囲が広がりつつあります。今後のIT人材には、継続的な学習と最新の環境への適応が求められ、難易度が高まっています。

【出典】経済産業省「IT人材需給に関する調査報告書」

受託案件依存のリスク

多くのWeb制作会社では、特定のクライアントからの受託案件に依存している傾向にあります。こうした依存体質が、景気変動や市場環境の変化に対して脆弱な経営体質を生むと懸念されています。

また、受託開発モデルでは社内のナレッジ蓄積が進みにくく、長期的な競争力の低下につながるリスクもあります。

Web制作業界のM&A最新動向(2025年)

Web制作業界では事業拡大や課題解決など、さまざまな目的でM&Aを検討するケースが増えています。ここでは、M&A最新動向をチェックしていきましょう。

大手企業による小規模制作会社の買収が加速

Web制作業界の大手企業が、特定分野に強みを持つ小規模制作会社を買収し、サービスの多様化・技術力向上・人材確保を実現しています。M&Aの活用により、業界内で貴重な高スキル人材を確保できる点に魅力を感じる企業が多くあります。

個人事業主やスタートアップのM&Aが増加

Web制作業界では、個人事業主やスタートアップ企業のM&Aが新たなトレンドとなっています。特に、技術力や独自のノウハウを持つ事業の場合、買収によって事業成長を実現できる可能性があることから、大手の買い手企業から注目を集めています。

海外企業による日本市場参入

海外企業にとって、日本のWeb制作会社の買収は、言語や文化の壁を超えて市場参入する有効な手段です。現地の商習慣や顧客ニーズを理解している企業を買収することで、新規参入時のリスクを軽減できると期待されています。

Web制作業界の企業がM&Aをするメリット

ここでは、Web制作業界の企業がM&Aをするメリットをご紹介します。主に売り手目線のメリットをお伝えするため、売却へ向けてぜひ参考にしてください。

事業の安定化

クラウドツールやAIの普及により、従来型のWeb制作サービスだけでは競争力の維持が難しくなりました。売り手がM&Aを通じて大手企業グループに参画することで、安定した経営基盤を確保し、長期的な事業継続が可能となります。

また、親会社の持つ営業網や技術力を活用し、さらなる成長機会を獲得できるでしょう。

新規事業への転換

売り手は親会社のノウハウや経営資源を活用し、自社における事業領域を拡張させられます。

例えば、デジタルマーケティング領域のサービスをECサイトと組み合わせることで、これまで続けてきたWeb制作事業を、より付加価値の高い事業に転換できる可能性があります。

従業員の雇用維持

売り手側は自社の事業に適切な買い手が見つかれば、これまで勤務していた従業員の雇用を守れる可能性があります。M&Aの交渉次第で既存従業員の雇用を維持できる可能性が高まり、従業員により大きな組織で活躍する機会を提供できるメリットがあります。

Web制作業界の企業がM&Aをするデメリット

中小規模のWeb制作会社が大手に買収される場合、以下の課題と向き合うことになります。ここでは、M&Aのデメリットを売り手目線でご紹介します。

企業文化の統合が難しい

クリエイティブな職種が活躍するWeb制作業界では、企業文化の違いが業務プロセスや品質管理に直接影響をおよぼすおそれがあります。

例えば、デザインの方向性や品質基準、プロジェクト管理手法など、企業ごとに異なる価値観や手法があるでしょう。企業間の違いを無視して強引な統合を進めると、従業員のモチベーション低下や離職につながる可能性があります。

経営の自由度が低下

M&Aで事業を売却すると、基本的に買い手企業の意向で事業戦略や投資判断が進められることになります。

具体的には、新規プロジェクトの着手や人材採用、取引先との契約更新など、さまざまな意思決定において親会社との協議・承認が必要となります。経営の自由度が低下する可能性がある点に留意しましょう。

Web制作業界の企業がM&Aを成功させるためのポイント

Web制作業界の企業がM&Aを成功させるポイントとして、目的やビジョンを策定したり、既存従業員の処遇を買い手企業と交渉したりすることが挙げられます。M&Aを成功させるためのポイントをお伝えします。

M&A後のビジョンを明確にする

Web制作業界のM&Aでは、買い手側と売り手側の企業文化や価値観の違いが大きな課題となります。そのため、経営統合後のビジョンを早期に策定し、両社の従業員に共有しましょう。組織の一体感を醸成できれば、スムーズな経営統合を実現しやすくなります。

既存クライアントとの信頼関係を維持する

経営統合後も変わらぬサービス品質を提供し続けることは、クライアントの信頼を維持する上でもっとも重要です。経営統合にいたる場合でも、既存の担当者や制作チームの継続性を確保し、クライアントとの関係性を丁寧に引き継ぐことが大切です。

従業員の処遇を考慮する

M&A実施前から、給与体系や福利厚生、評価制度などについて、買い手企業との綿密な協議を行います。特にWeb制作業界特有のスキルや経験を持つ従業員に対し、適切な評価と処遇を維持することで、人材流出を防ぎやすくなります。

Web制作業界のM&A事例

アクセルマーク株式会社による株式会社 craftyのM&A

2024年12月23日、アクセルマーク株式会社(東証グロース上場)は、株式会社craftyの全株式を取得し、子会社化するための基本合意書を締結しました。

アクセルマークは、ゲーム事業や広告事業で培ったデジタルマーケティング力を活かし、2023年9月からトレーディングカード(トレカ)事業に参入。全国350台以上の自動販売機を運営し、データ分析を基にした店舗展開やECサイトの開発を進めています。今回のM&Aは、EC領域を強化する戦略の一環です。

crafty社は、ECオリパ(オリジナルパック)販売の「アイリストレカ」ブランドを展開し、X(旧Twitter)フォロワー2.6万人、LINE友だち登録者6.6万人を誇る人気サービスを運営しています。2024年1月期には売上4.7億円、営業利益1億円超を達成し、急成長を遂げました。

このM&Aにより、アクセルマークはECサイトの立ち上げを迅速化し、既存の自動販売機・店舗・オンライン販売の統合によるクロスセル強化を図ります。また、エンジニア部門の開発力向上も見込まれており、トレカ事業の成長を加速させる狙いです。

近年、トレカ市場は高い成長性を示しており、特にEC領域の競争が激化しています。アクセルマークの今回のM&Aは、オフラインとオンラインの融合を推進し、市場競争力を高める重要な一手となるでしょう。

【出典】アクセルマーク株式会社「子会社等の異動を伴う株式譲渡契約に関する基本合意書締結のお知らせ」

株式会社クロス・マーケティンググループによる株式会社トラフィックスのM&A

2024年1月31日、株式会社クロス・マーケティンググループ(東証プライム上場)は、株式会社トラフィックス(TFC社)の全株式を取得し、完全子会社化しました。本M&Aの目的は、関西エリアにおけるプロモーション支援事業の強化です。

TFC社は、大手広告代理店やメーカー、官公庁を主要顧客とし、BPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)、Web制作、クリエイティブ制作、システム開発を手掛ける企業です。特に、自社開発のSaaSソリューション「Entry Box」や「Gate Option」により、キャンペーンやイベント運営の効率化を支援してきました。

クロス・マーケティンググループは、デジタルマーケティングやデータマーケティングを強みとし、インフルエンサーマーケティングや広告プランニングを展開しています。今回の買収により、TFC社のオフラインイベント運営やシステムソリューションを取り込み、オンラインとオフラインを融合したプロモーション支援の強化を図ります。

近年、イベントやインフルエンサーを活用したマーケティング需要が高まっており、本M&Aは同分野での競争力向上に寄与すると考えられます。特に、関西エリアでの対応力強化により、クロス・マーケティンググループの事業拡大が期待されます。

【出典】株式会社クロス・マーケティンググループ「株式会社トラフィックスの株式取得について」

株式会社SHIFTによる株式会社さうなしのM&A

2019年1月4日、ソフトウェアの品質保証・テスト事業を手掛ける**株式会社SHIFT(東証マザーズ上場)**は、株式会社さうなしの全株式を取得し、完全子会社化しました。本M&Aの目的は、ソフトウェア製品の品質向上を機能面だけでなく、ユーザー体験(UI/UX)やマーケティングの視点からも強化することにあります。

さうなしは、Webサイトの企画・制作やマーケティング戦略コンサルティングに強みを持ち、企業のブランドサイトやECサイトを手掛ける企業です。特に、高いデザイン力とマーケティングノウハウを活かし、大手企業からの直接受注が多い点が特徴です。

SHIFTは、ソフトウェアの品質保証を主軸に、エンタープライズからエンターテインメント領域まで幅広くサービスを展開。今回のM&Aにより、SHIFTはソフトウェアの「使いやすさ」や「魅力的品質」の向上を図り、BtoB・BtoC問わず、より付加価値の高いサービス提供を目指します。

近年、IT業界では、単なる機能開発だけでなく、UI/UXの最適化やマーケティング戦略と連携した開発の重要性が増しています。本M&Aは、SHIFTの事業成長と「スマートな社会の実現」に向けた戦略的な一手といえるでしょう。

【出典】株式会社SHIFT「株式会社さうなしの株式取得に関するお知らせ」

まとめ|Web制作業界のM&A動向を押さえてM&Aを成功させましょう

Web制作業界のM&Aは、経営課題の解決や競争力強化の有効な手段として注目されています。一方で、企業文化の統合や経営の自由度の低下など、慎重な対応が必要な課題も存在します。

株式譲渡や会社売却をスムーズに進めるには、Web制作業界特有の課題や業界動向を熟知した専門家のサポートが欠かせません。企業価値の最大化や円滑な事業承継を実現するため、まずはM&A仲介会社などに相談しましょう。

CINC Capitalは、M&A仲介協会会員および中小企業庁のM&A登録支援機関として、M&Aのご相談を受け付けております。業界歴10年以上のプロアドバイザーが、お客様の真の利益を追求します。M&Aの相談をご希望の方はお気軽にお問い合わせください。

この記事の監修者

阿部 泰士

CINC Capital取締役執行役員社長

阿部 泰士

リクルートHRマーケティング、外資系製薬メーカーのバクスターを経て、M&A業界へ転身。 日本M&AセンターにてM&Aアドバイザーとして経験を積み、ABNアドバイザーズ(あおぞら銀行100%子会社)では執行役員営業本部長として営業組織を牽引。2024年10月より上場会社CINCの100%子会社設立後、現職に就任。

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