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鉄骨工事業界のM&A動向(2025年)メリットデメリット/事例/成功のポイントを解説

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  • 公開日2025.03.12
  • 更新日2025.03.12

鉄骨工事業界のM&A動向(2025年)メリットデメリット/事例/成功のポイントを解説

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鉄骨工事は、建設業界全体のなかでも重要な役割を担う分野の一つですが、少子高齢化や後継者不在といった課題が深刻化しています。事業承継がスムーズに進まないケースも多く、会社譲渡や株式譲渡といった手段が注目されています。

こうした状況を背景に、事業売却や子会社化を目的としたM&Aが業界の活性化に大きく貢献しており、シナジー効果を狙う企業も増加中です。

本記事では、2025年の最新動向を踏まえ、鉄筋工事業界のM&A案件のメリットや成功のポイントを徹底解説します。

鉄骨工事業界の市場動向

現在、鉄骨工事業界は大きな転換期を迎えています。2024年度上期の鉄骨需要は193万トンと、4期連続で200万トンを下回る結果となり、年間需要も2年連続で400万トン未満が続いている状況です。

この需要低迷の背景には、建設コストの高騰や人手不足などの影響で工事工程がずれ込むことが挙げられます。また、一部の大型案件では計画の見直しや中断が進むなど、業界全体で厳しい状況が続いています。

市場規模の縮小が予測されるなか、インフラ需要や大型建築物の需要が一段落したことも、鉄骨工事業界における需要減少を加速させているといえるでしょう。

さらに、鉄骨工事業界ではコスト上昇圧力も深刻です。鉄骨資材の価格高騰や輸送費、人件費の増加が企業経営を圧迫し、受注競争の激化に伴う値下げ圧力も利益を出しにくい状況を生み出しています。

【出典】全国厚板シヤリング工業組合「2024年度第4四半期の切板需要動向」

鉄骨工事業界が抱える課題

鉄骨工事業界はさまざまな課題を抱えていますが、なかでも少子高齢化による問題が深刻です。ここでは、鉄骨工事業界における主な課題をご紹介します。

後継者問題

鉄骨工事業界においても、後継者問題は深刻な課題の一つです。特に中小企業では後継者が見つからないケースが多く、会社の存続が危ぶまれる要因となっています。

候補者がいても経営に必要なスキルや知識が不足している、または本人が後継を辞退する場合も少なくありません。このような状況が続くと、経営が安定していても事業継続が難しくなる可能性があります。

人材不足と高齢化

鉄骨工事業界では技術者の高齢化が進行しており、若手人材の確保が困難になっています。熟練技術者の引退に伴い、現場監督や作業員が不足している企業も多く、人材の育成や採用に多くの時間とコストがかかっています。この課題は、業界全体の競争力低下にも直結する深刻な問題です。

市場縮小と受注競争の激化

近年、大規模建築物の需要減少に伴い、鉄骨工事業界の市場は縮小傾向です。このような市場環境のなかで、受注競争が激化し、利益率の低下が企業の課題となっています。また、資材価格の高騰や工事費の値下げ圧力も、企業の経営を圧迫する要因です。

鉄骨工事業界のM&A最新動向(2025年)

鉄骨工事業界におけるM&Aは、国内外の需要の変化や人材不足、事業継続の課題を背景に、2025年も注目される施策の一つです。ここでは、2025年に見られる主要な動向について解説します。

国内需要縮小に対応した海外進出の動き

国内需要が縮小するなか、多くの鉄骨工事会社が海外市場への展開を目指してM&Aを進めています。特にアジア諸国をはじめ、成長著しい地域の企業と提携を行うケースが増加中です。日本企業の高い技術力を武器に海外市場でのシェアを拡大する狙いが見られます。

異業種との連携による事業多角化

鉄骨工事業界の競争が激化するなかで、異業種とのM&Aを行い事業の多角化を図る動きが目立っています。新しい分野への進出を進めることで、景気変動の影響を受けにくい経営基盤の構築を目指している企業も少なくありません。

中小企業によるM&Aの増加

近年では、大手企業だけでなく、中小規模の企業によるM&Aも注目を集めています。経営者の高齢化や後継者不足により、オーナーが事業承継の手段としてM&Aを選択するケースが増加傾向です。

鉄骨工事会社がM&Aをするメリット

鉄骨工事業界には、さまざまな業界特有の課題が見られます。M&Aを活用することで問題を解消し、さらなる成長のチャンスを掴むことが可能です。ここでは、鉄骨工事業者がM&Aをすることで得られるメリットについて解説します。

事業規模の拡大とスケールメリットの享受

M&Aは、事業規模を効率的に拡大する手段としても効果的です。買収先の市場シェアや顧客基盤を獲得することで、短期間で売上や利益を伸ばせます。また、規模の拡大によるスケールメリットとして、資材調達コストの削減や設備の効率的な運用が可能です。事業運営の効率化が実現できるでしょう。

技術やノウハウの共有による競争力の向上

M&Aを通じて、買収先企業の持つ独自の技術やノウハウを取り入れることが可能です。自社の技術力を強化し、他社との差別化を図れます。

例えば、特殊な鉄骨加工技術や施工ノウハウを持つ企業を取り込むことで、従来の業務範囲を超えた新たなサービス展開が可能になります。顧客ニーズへの対応力が向上し、取引先からの信頼性を高められるでしょう。

後継者問題の解決と事業の継続

特に中小規模の鉄骨工事会社にとっては、後継者問題が大きな課題です。事業承継がスムーズに進まない場合、最悪のケースでは廃業に追い込まれることもあります。

しかし、M&Aを活用すれば、買い手側が後継者となり、事業を継続することが可能です。長年培った技術や顧客関係を無駄にすることなく、会社を存続させることができます。

鉄骨工事会社がM&Aを成功させるためのポイント

鉄骨工事業界でM&Aを成功させるには、業界特有の状況や課題に応じた対策が必要です。以下では、具体的な成功のためのポイントを解説します。

進行中の案件の確認と整理

鉄骨工事会社がM&Aを行う際には、売却企業が現在進行中の案件を正確に把握し、整理することが重要です。

特に、施工中のプロジェクトや契約が未完了の状態であれば、買い手側がそれを引き継ぐ必要があります。この場合、工程表やコスト負担、品質管理の責任範囲を明確にすることで、後のトラブルを回避できます。事前に案件を整理し、透明性を確保することが成功への鍵です。

技術者や資格保有者の確認

鉄骨工事業界において、施工を担当する技術者の資格は非常に重要です。特定の資格がなければ施工できない工事が多いため、売却企業が保有する資格者やその人数、技術レベルを確認することが求められます。

また、資格者が買い手企業の条件を満たすかどうかを事前に確認し、不足がある場合には適切なフォローアップ体制を構築する必要があります。

設備・重機の状態確認

鉄骨工事には多くの専門的な機械や設備が必要です。売却企業が保有する工場設備や重機の稼働状況、保管状態、メンテナンス履歴を確認することが重要です。

老朽化した設備や管理が不十分な重機を引き継ぐと、買い手側にとって予期せぬ追加コストが発生する可能性があります。事前に適切な検査を行い、問題があれば交渉の際に対応を協議しておきましょう。

専門家のサポート活用

M&Aを成功させるためには、専門的な知識と経験を持つM&Aアドバイザーや弁護士、会計士の支援を受けることが不可欠です。鉄骨工事業界特有の課題や取引条件に対応できる専門家を選ぶことで、スムーズな取引と成功率の向上が期待できます。

また、企業価値評価や契約書の作成、交渉のサポートを通じて、最適な条件でM&Aを進めることが可能です。

鉄骨工事業界のM&A事例

森田鋼材株式会社による三豊鋼業株式会社のM&A

鉄鋼・建材の流通商社である小野建株式会社(東証プライム・福証上場、以下「小野建」)は、2024年2月22日、子会社の森田鋼材株式会社(以下「森田鋼材」)を通じて、三豊鋼業株式会社(以下「三豊鋼業」)の株式譲渡契約を締結しました。本件により、森田鋼材は2024年3月29日付で三豊鋼業を完全子会社化します。

三豊鋼業は、兵庫県伊丹市を拠点とする鉄筋加工卸売・工事業の企業で、「鉄筋のコンビニ」を社訓に掲げ、関西地区で200以上の取引先を有しています。今回の買収により、小野建グループの兵庫県内の拠点数は5カ所となり、同地域での売上高100億円を目指す体制を確立します。

小野建は、「販売エリアの拡大」と「販売シェアの向上」を掲げ、中期ビジョンにおいてM&Aを成長戦略の柱の一つに位置付けています。本件を通じて、森田鋼材と三豊鋼業の連携を強化し、関西地区における鉄筋需要への対応力を高めることを狙いとしています。

この買収は、小野建が推進する「鉄鋼のよろずや」戦略の一環であり、関西市場における競争力向上と事業拡大を後押しすることが期待されます。

【出典】小野建株式会社「長期ビジョン2035」

旭化成株式会社による中央ビルト工業株式会社株式のM&A

旭化成株式会社の完全子会社である旭化成ホームズ株式会社(以下、旭化成ホームズ)は、2023年12月14日、建設用仮設機材や住宅鉄骨部材を手掛ける中央ビルト工業株式会社(以下、中央ビルト工業)の株式公開買付け(TOB)を開始すると発表しました。

旭化成ホームズは、すでに中央ビルト工業の筆頭株主(32.75%保有)であり、今回の公開買付けを通じて残りの株式を取得し、完全子会社化を目指しています。買付価格は1株750円で、総額約11.8億円を予定しています。中央ビルト工業の取締役会はこの買収に賛同し、株主に対し応募を推奨しています。

このM&Aの背景には、両社の協業強化があります。旭化成ホームズは、住宅建設において中央ビルト工業の鉄骨部材を採用しており、よりシームレスなサプライチェーンの構築を目指しています。また、上場維持に伴うコスト削減や経営資源の最適化も狙いの一つです。

今後、買付けが成立すれば、旭化成ホームズは中央ビルト工業を完全子会社化し、鉄骨部材の供給体制強化や建築事業の拡大を進める方針です。この買収を通じて、旭化成グループ全体の競争力向上が期待されます。

【出典】旭化成株式会社「旭化成株式会社の子会社(旭化成ホームズ株式会社)による中央ビルト工業株式会社株式(証券コード 1971)に対する公開買付けの開始に関するお知らせ」

瀧上工業株式会社による東京フラッグ株式会社のM&A

瀧上工業株式会社(東証・名証第二部、以下「瀧上工業」)は、2022年3月2日、鋼構造物工事の現場溶接を手掛ける東京フラッグ株式会社(以下「東京フラッグ」)の全株式を取得する株式譲渡契約を締結しました。本件により、東京フラッグは瀧上工業の完全子会社となる予定です。

瀧上工業は、橋梁や鋼構造物の製造を主力事業とし、保全事業や鉄骨事業の拡充を進めています。一方、東京フラッグは1988年に創業した溶接専門企業で、各種鋼構造物の現場溶接を手掛けており、近年では福島第一原子力発電所の貯水タンク工事にも携わった実績を有しています。

本件の買収により、瀧上工業は東京フラッグの高い溶接技術を取り込み、鋼構造物製造事業の競争力を強化します。さらに、「入札だけに頼らない企業体を作る」という多角化戦略の一環として、安定した収益基盤の構築を目指します。

瀧上工業は、今回の買収を通じて鋼構造物事業の成長を加速させ、より柔軟で強靭な企業体質の実現を図る考えです。

【出典】瀧上工業株式会社「株式取得(子会社化)に向けた株式譲渡契約締結のお知らせ」

まとめ|鉄骨工事業界のM&A動向を押さえてM&Aを成功させましょう

鉄骨工事業界では、人手不足や設備投資の負担増といった課題を背景に、M&Aが事業拡大や課題解決の有力な手段として注目されています。特に、経営資源の効率化や技術力の強化、シェア拡大を目指す企業にとって、M&Aは新たな成長のきっかけとなるでしょう。

一方で、進行中の案件管理や技術者・設備の状況確認など、業界特有のポイントを押さえた慎重な準備が求められます。また、専門家のサポートを活用することで、M&Aプロセスをスムーズに進めるだけでなく、より有利な条件で取引を実現できる可能性が高まります。

これから鉄骨工事業界でのM&Aを検討する際は、業界の動向を踏まえながら、自社の強みを活かしつつ、具体的な課題に対応する計画を立てることが重要です。

CINC Capitalは、M&A仲介協会会員および中小企業庁のM&A登録支援機関として、M&Aのご相談を受け付けております。業界歴10年以上のプロアドバイザーが、お客様の真の利益を追求します。M&Aの相談をご希望の方はお気軽にお問い合わせください。

この記事の監修者

阿部 泰士

CINC Capital取締役執行役員社長

阿部 泰士

CINC Capital取締役執行役員社長。リクルート関連会社や外資系製薬会社、国内最大手M&A仲介会社で営業組織を牽引。 特にM&A実績の多い業界は調剤・IT・運送業。

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