CINC CapitalはCINC(証券コード:4378)のグループ会社です。
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業種
- 公開日2025.09.30
SES業界の事業承継の動向は?事例や成功のポイントを解説【2025年】
SES業界の「自社の将来」や「後継者問題」に不安を感じていないでしょうか。
市場は拡大する一方で、人材不足や多重下請けといった構造的課題も深刻です。
本記事では、最新の市場動向、課題、事業承継のトレンド、成功のポイントなどを詳しく解説します。
目次
SES業界の市場動向
日本のSES業界は、IT市場全体の拡大とともに成長を続けています。
矢野経済研究所によると、国内民間IT市場は2023年に約15兆円、2025年には約16.7兆円に拡大する見通しです。
このような市場の拡大に伴い、SES業界も成長を遂げています。
特に、DX(デジタルトランスフォーメーション)の推進やAI、IoT、クラウドサービスの需要増加が、SES企業への依頼を増やす要因となっています。
SES業界が抱えている課題
SES業界はIT業界の成長とともに拡大していますが、構造的な課題も抱えています。
これらは業界の持続的発展を妨げる要因であり、早急な対応が必要です。
本章では主要な課題を3つ解説します。
多重下請け構造と契約形態の問題
SES業界では多重下請け構造が一般的で、エンジニアがクライアント企業から遠い位置に配置されやすいです。
この構造は指示系統を複雑化させ、モチベーション低下や品質のばらつきを招く要因となります。
また中間業者による「中抜き」により報酬が減り、待遇改善が困難です。
準委任契約では責任が曖昧になることも多く、エンジニアの働きやすさやキャリア形成に悪影響を与え、業界の魅力低下につながっています。
業界イメージの悪化と他業種との競争
SES業界は、エンジニアの待遇やキャリアパスの不透明さから、業界イメージが悪化していると指摘されています。
長時間労働や低賃金、スキルアップの機会の乏しさが若手に敬遠される要因です。
加えて、フリーランスや自社開発企業との競争も激化しており、優秀な人材の確保が困難になっています。
人材流出を防ぐためにも、労働環境の改善やキャリア支援による業界イメージの向上が求められます。
IT人材の慢性的な不足
SES業界における深刻な課題の一つが、IT人材の慢性的な不足です。
経済産業省は2030年に最大79万人の人材不足が生じると予測しており、エンジニアの確保や育成が困難な状況が続いています。
SES企業では人材確保の難しさが案件遂行や品質維持に直結し、結果として顧客満足度や信頼性の低下を招くリスクがあります。
SES業界の事業承継最新動向(2025年)
2025年のSES業界では、事業承継の動きが活発化しており、特に3つの主要な傾向が顕著です。
これらは業界の構造変化や成長戦略に直結しており、今後の方向性を見極める上で重要な指標となります。
以下で詳しく解説していきます。
後継者不在による第三者承継の増加
SES業界では後継者不在が深刻化しており、第三者承継が増加しています。
これは、経営者の高齢化が進む中で、親族や社内に後継者を見つけられない企業が増えているためです。
実際に、M&Aや株式譲渡を通じて他社に事業を引き継ぐ中小SES企業が増えており、買い手側の需要も高まっています。
その結果、企業の存続と雇用の維持を目的とした第三者承継の動きは今後も続くと予測されます。
社内幹部やファンドによる多様な承継モデルの登場
事業承継の手法が多様化し、柔軟な選択肢が広がっています。
従来の親族内承継だけでなく、社内幹部によるMBOや、投資ファンドによる事業承継が注目されているためです。
ファンドを活用することで、後継者不在の課題を解決でき、経営者の負担軽減や新体制への移行もスムーズになります。
このように、状況に応じた承継モデルの導入が、SES企業の事業継続を支えています。
大手・異業種による中小SES企業の買収が加速
大手や異業種企業によるSES企業の買収が加速しています。
その背景には、即戦力となるエンジニアの確保や、クラウド・AIなど先端技術分野への進出ニーズがあるためです。
特に、DX推進に対応できる技術力を持つ中小SES企業は、高く評価され、積極的なM&Aの対象となっています。
こうした動きは業界再編を促進し、SES業界の成長戦略の一環として今後も続くでしょう。
SES業界で事業承継を成功させるためのポイント
SES業界で事業承継を成功させるには、業界特有の構造や人材事情を踏まえた戦略が欠かせません。
特に、エンジニアの離職防止や顧客との関係維持、組織文化の統合が重要です。
本章では、承継を円滑に進めるための具体的なポイントを解説します。
エンジニアの離職を防ぐための戦略的な引き継ぎ体制の構築
SES企業においては、エンジニアが最大の資産であり、彼らの離職は企業価値の大幅な低下を招きます。
M&A後もキープレイヤーが継続して勤務するためには、インセンティブ設計やキャリアパスの明確化が必要です。
特に、M&A実施後の最初の3〜6ヶ月は「エンジニア流出の危険期間」とされており、この期間における従業員とのコミュニケーション強化が重要です。
主要顧客との関係維持と契約継続のための工夫
SES企業は特定の取引先との継続契約に依存することが多く、事業承継時には主要顧客との関係維持が不可欠です。
契約上の手続きを丁寧に進めるとともに、顧客に対して安心感を与える対応が求められます。
特に、契約形態が準委任契約である場合、契約主体の変更に伴う再契約が必要となるケースがあるため、法的な手続きにも注意が必要です。
組織文化や評価制度の統合に配慮したPMI
企業文化や制度の違いを段階的に統合することは、従業員の定着とスムーズなPMIに不可欠です。
特に、文化の融合には時間がかかるため、計画的な対応が求められます。
評価制度もスキルと成果を正しく評価できる仕組みを整え、モチベーション維持を図りましょう。
従業員のキャリア支援と育成制度の強化による人材定着
エンジニアの成長意欲に応えるため、研修や資格取得支援制度を導入し、キャリアパスの明確化を図ることが求められます。
特に、M&A後の環境変化に対応するためのスキルアップ支援や、新技術への対応力を高めるための教育プログラムの整備が重要です。
これにより、従業員の定着率向上と企業の競争力強化が期待できます。
ステークホルダーへの丁寧な情報開示とコミュニケーション戦略
従業員・顧客・取引先への情報共有やタイミング調整を図り、誤解や不安を最小限にする広報設計も成功の要素です。
M&Aの発表タイミングや情報の伝え方には慎重な配慮が必要です。
ステークホルダーとの信頼関係を維持・強化するためには、計画的なコミュニケーション戦略が求められます。
SES業界の事業承継事例
サイネックス株式会社による株式会社リーディのM&A
2024年12月、サイネックス株式会社は、大阪市中央区に本社を構える株式会社リーディの全株式を取得し、子会社化することを発表しました。
リーディはWebアプリ開発やシステムエンジニア派遣(SES)を手がけており、近年堅調な業績を維持しています。
サイネックスは自治体向け広報支援やデジタルサイネージなどを通じた地方創生事業を展開しており、今回のM&AによりDX支援領域の強化を図ります。
SESによる技術者派遣と開発力の内製化により、自治体や地域企業へのデジタル支援を一層強化できる体制が整うことが期待されます。
地方創生とITの融合を目指す中での戦略的な事業拡張といえるでしょう。
【出典】株式会社サイネックス「株式会社リーディの株式取得(子会社化)に関するお知らせ」
NGFホールディングス株式会社による株式会社レッティのM&A
2023年10月、NGFホールディングス株式会社は、名古屋市に本社を置く株式会社レッティの全株式を取得し、完全子会社化しました。
レッティは、東海地方を中心にソフトウェアの受託開発やIT人材の常駐支援を手がけ、年間売上高は5億円を超える中堅のシステム企業です。
NGFホールディングスは本件を通じて、両社の技術力・顧客基盤・人材リソースの相互活用による相乗効果を見込み、グループ全体の成長を加速させる狙いです。
地方都市を拠点とするIT企業のM&Aは、地域密着型のソリューション力と首都圏依存からの脱却を図る戦略的な動きとして注目されます。
【出典】NGFホールディングス株式会社「株式会社レッティの全株式の取得について」
株式会社cottaによる株式会社TERAZのM&A
2024年10月、製菓・製パン関連EC事業を手がける株式会社cottaは、システム受託開発やSES事業を展開する株式会社TERAZの発行済株式の66.7%を取得し、連結子会社化しました。
TERAZはリモートワーク特化型の人材マッチングサービス「Remoters」シリーズを運営し、高い技術力を有するエンジニアによる受託開発も手がけています。
cottaは、EC化やDX化が遅れがちな製菓業界において、TERAZの技術力とノウハウを取り込むことで、自社システムの拡充と業界全体のデジタル化を加速させる狙いです。
スタートアップ企業の成長を取り込み、既存事業とのシナジーを図る実践的なM&Aといえます。
【出典】株式会社cotta「株式会社TERAZの株式取得(子会社化)に関するお知らせ」
まとめ|SES業界の事業承継動向を押さえて事業承継を成功させましょう
SES業界では、市場拡大と人材不足が進む中、持続的成長には的確な事業承継が欠かせません。
M&AやMBO、ファンドなど多様な承継手段が広がる今、自社に合った方法を選ぶことが重要です。
CINC Capitalは、M&A仲介協会会員および中小企業庁のM&A登録支援機関として、M&Aのご相談を受け付けております。業界歴10年以上のプロアドバイザーが、お客様の真の利益を追求します。M&Aの相談をご希望の方はお気軽にお問い合わせください。
この記事の監修者

CINC Capital取締役執行役員社長
阿部 泰士
リクルートHRマーケティング、外資系製薬メーカーのバクスターを経て、M&A業界へ転身。 日本M&AセンターにてM&Aアドバイザーとして経験を積み、ABNアドバイザーズ(あおぞら銀行100%子会社)では執行役員営業本部長として営業組織を牽引。2024年10月より上場会社CINCの100%子会社設立後、現職に就任。