CINC CapitalはCINC(証券コード:4378)のグループ会社です。
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業種
- 公開日2025.09.29
不動産開発業界のM&A動向は?事例や成功のポイントを解説【2025年】
不動産業界の将来に不安を感じていませんか?
不動産開発業界は、人口減少、建設コストの上昇、後継者不足など、時代の変化により大きな転換期を迎えています。
本記事では、不動産開発業界の市場動向や主要な課題など、M&Aを成功させるための具体的なポイントを解説します。
目次
不動産開発業界の市場動向
不動産開発業界は、人口減少や社会構造の変化の影響を受けながらも、全体としては堅調に推移しています。
国土交通省によると、2025年度の建設投資の見通し金額は2024年度比3.2%増額の75兆5,700億円としており、年々建設投資額は増加の傾向にある。
また、不動産業全体の売上高に関しても、財務省の法人企業統計によると、2023年では前年度22%増の約56兆円と増加している。
一方で、新築住宅の着工数は2018年の約95万戸から2022年には約86万戸へ減少し、新築市場は縮小傾向です。
一方で、中古住宅やリフォーム、再開発などの既存ストック活用市場は拡大しており、住宅リフォーム市場は緩やかな拡大傾向にあり、ストック活用の観点から注目が高まっています。
【出典】国土交通省「令和7年度(2025年度)建設投資見通し」
【出典】財務省「年次別法人企業統計調査(令和5年度)結果の概要」
【出典】国土交通省「建築物リフォーム・リニューアル調査報告(概要)」
不動産開発業界が抱えている課題
不動産開発業界は成長の余地を持つ一方で、根本的な構造課題を抱えています。
本章では、業界における代表的な3つの課題について解説します。
人口減少と空き家問題
地方では住宅需要が減少し、空き家が急増しています。
総務省によると、2023年10月時点の空き家は約900万戸、空き家率は13.8%と過去最高を記録しました。
この影響で、販売計画や資金調達が難しくなり、投資回収も厳しくなっています。
地方の開発では採算が合わず、事業計画の見直しを迫られるケースもあります。
そのため、リノベーションや都市部への事業転換が重要です。
【出典】総務省「令和5年住宅・土地統計調査住宅数概数集計(速報集計)結果」
人材不足・後継者不足
不動産開発業界では、宅建士などの有資格者や経営者の高齢化が進み、後継者不足が深刻です。
帝国データバンクによると、不動産業界全体の社長の平均年齢は62.8歳と業種トップであり、全体の81.9%が50代以上となっています。
そのため、後継者がいない企業は、事業や信頼を守るためにM&Aを選ぶケースが増えています。M&Aは、雇用や顧客、ブランドの継承手段として有効な手段です。
【出典】帝国データバンク「全国『社長年齢』分析調査(2024年)」
【出典】帝国データバンク「全国『社長年齢』分析調査(2022年)」
人件費の高騰と中小企業の経営圧迫
建設資材価格の高騰と職人不足により人件費が急上昇しているため、中小の不動産開発会社は採算圧迫が深刻です。
帝国データバンクによると、2024年の建設業倒産件数は前年比13%以上増加し、1,890件と過去10年で最多となりました。
こうした状況では、開発コストを価格に転嫁できず、収益性が低下します。
これを背景に、小規模企業ではM&Aによる事業統合、規模拡大、コスト圧縮、人材・資材の効率的な共有化が求められるようになっています。
【出典】帝国データバンク「『建設業』倒産動向調査(2024年)」
不動産開発業界のM&A最新動向(2025年)
2025年の不動産開発業界では、企業の再編や生き残りを目的としたM&Aがさらに一般化しています。
本章では、業界におけるM&Aの特徴的なトレンドを3つに分けて解説します。
大手による中小企業の買収加速
収益強化や地域展開を目的とした戦略を背景に、大手不動産デベロッパーによる中小企業の買収が活発化しています。
たとえば、ヒューリックは2024年にレーサムを約1,735億円で買収しました。これにより、資産運用のノウハウや安定した仕入れ力を取り込み、都市開発を強化しています。
事業承継型M&Aの増加
後継者不足や創業者の高齢化を背景に、廃業を避けて事業や雇用を守る手段として、M&Aが活用されるケースが増えています。
不動産業(開発・仲介・賃貸を含む)においてもM&Aは盛んで、都市再開発や建売住宅を手がける不動産開発会社による事例も見られます。特に、事業承継やグループ再編を目的とした案件が目立っています。
また、開発事業に特化した統計は存在しないものの、取引全体の傾向から、不動産開発業界でもM&Aの活用が進んでいることは明らかです。この流れにより、地域密着型の企業がブランドを維持したまま新体制で再スタートを切るケースも増えています。
今後もM&Aは、中小企業が持続的に成長していくための有力な選択肢として定着していくでしょう。
異業種・テクノロジー企業との連携拡大
不動産業界では、PropTechやIT企業とのM&Aが広がりつつあります。
背景には、業務のデジタル化や顧客サービスの向上を目指して、技術を自社に取り込む動きがあります。
実際に、PropTech企業の買収や、建築設計会社とIT企業の提携が進み、業務の効率が大きく改善されています。
オンライン契約やAI査定、スマート管理などの新サービスも拡大中です。
不動産開発業界でM&Aを成功させるためのポイント
不動産開発業界でM&Aを成功させるには、一般的なM&Aノウハウだけでなく、業界特有の構造や法規制、資産の特性を踏まえた対策が必要です。
本章では、不動産開発業界におけるM&A成功のために押さえておくべき5つのポイントを詳しく解説します。
保有資産の正確なデューデリジェンス
M&Aを成功させるには、不動産資産の適正な評価とリスク調査が欠かせません。
帳簿価格と実勢価格に差があることも多く、法的制限や環境リスクが取引に大きく影響します。
実際、アデックスの報告では、不動産鑑定士による適正な評価が、価格差の是正とリスク可視化に有効であるとされています。
このように、鑑定評価とデューデリジェンスを組み合わせ、多面的に資産を確認することが重要です。
【出典】アデックスリサーチアンドコンサルティング株式会社「M&Aにおける不動産資産の適正評価とデューデリジェンス強化」
宅建士や建築士などの有資格者の継続雇用
M&A後の事業継続には、宅建士などの有資格者の確保が重要です。
不動産業では、法律により一定数の宅建士の配置が義務付けられています。
キーマンの離職リスクもあるため、雇用契約の継続や待遇の維持が重要です。
そのため、M&A時には資格者の配置計画を立て、営業停止のリスクを防ぐ必要があります。
地域ブランドや顧客基盤の保持
M&Aが成功するかどうかは、買収先の地域で築いた信頼や顧客との関係を守れるかにかかっており、それを失えば顧客離れや売上の減少につながります。
したがって、社名変更や担当者体制の見直しは段階的に実施し、既存顧客との関係を損なわない配慮が必要です。
開発から管理まで一貫した業務フローの構築
開発から管理までを一貫して行う体制を整えることで、収益性と顧客満足の両方が向上します。
仲介手数料を自社内で確保でき、情報連携による業務効率化も実現できるためです。
実際に、仲介や管理業務を内製化することで、取引スピードやコスト面での強みが生まれると報告されています。
DX・サステナビリティ対応の強化
M&Aを機にDXとサステナビリティへ投資を進めることで、企業価値の向上が期待できます。
電子契約やAI査定、省エネ対応などが評価される時代となっており、実際にDXは意思決定の迅速化やESG評価の向上にもつながると報告されています。
不動産開発業界のM&A事例
最後に不動産開発業界のM&A事例をご紹介します。自社のM&A検討時の参考にしてみましょう。
ヒューリック株式会社による株式会社レーサムのM&A
2024年10月、ヒューリック株式会社は公開買付け(TOB)を通じて不動産会社レーサムの株式を取得し、子会社化することを発表しました。
本公開買付けでは8,375,371株(議決権所有割合29.13%)を取得し、同時に香港を本拠とするRays Company(レーサムの親会社)の株式も譲り受けることで、レーサム株式の合計93.02%を保有する見込みです。
その結果、ヒューリックは新たにレーサムの親会社および主要株主となり、従来の親会社であったオアシスマネジメント系の持株会社は支配権を喪失します。
ヒューリックはレーサムの不動産開発・資産運用ノウハウを取り込み、グループの事業拡大と収益基盤の強化を図る計画です。
今後は残余株式の取得を進め、完全子会社化による上場廃止も予定されています。
本件は不動産業界における再編の一環として注目されます。
【出典】株式会社レーサム「ヒューリック株式会社による当社株式に対する公開買付けの結果 並びに親会社及び主要株主の異動に関するお知らせ」
株式会社オープンハウスグループによる株式会社三栄建築設計のM&A
オープンハウスグループは、2023年8月、三栄建築設計に対する公開買付けを開始し、同社を完全子会社化する方針を発表しました。
対象株式の過半数を保有する創業者・小池信三氏らと応募契約を締結し、議決権の約64%を確保した上で買収を進める構図です。
三栄建築設計の取締役会も賛同を表明しており、手続きの完了後はスクイーズアウトを通じて100%子会社化を目指します。
オープンハウスは中期経営計画でM&Aを成長戦略の柱と位置づけており、これまでもホーク・ワンやプレサンスコーポレーションの子会社化を通じて規模と事業領域を拡大してきました。
今回の買収により、設計・建築機能の強化と供給体制の効率化が期待され、首都圏を中心とした戸建事業の競争力を一層高める狙いが見込まれます。
不動産業界においては、需給環境の変化に対応するためにも、同業者間の統合や機能補完型のM&Aが加速する流れを象徴する事例といえます。
【出典】株式会社オープンハウスグループ「株式会社三栄建築設計株式(証券コード:3228)に対する公開買付けの開始に関するお知らせ」
ケイアイスター不動産株式会社によるTAKASUGI株式会社のM&A
ケイアイスター不動産は2024年7月、熊本県を中心に分譲・注文住宅事業を展開するTAKASUGI株式会社の過半数株式を取得し、連結子会社化しました。
タカスギは1998年創業以来、熊本県内有数の住宅メーカーとして成長し、近年は福岡や佐賀にも事業を拡大しています。
今回のグループ参画により、両社の戸建分譲や注文住宅のノウハウを融合し、事業基盤の強化と成長戦略の加速が期待されます。
ケイアイスターは過去にも福岡のよかタウンや京都のエルハウジングなどを傘下に収めており、エリアごとに有力企業を取り込みながら全国展開を進めてきました。
分譲戸建市場は着工棟数の増加傾向が続いており、今後も有望な市場とみられる中、今回のM&Aは九州エリアでの地盤強化とシェア拡大に資する動きといえます。
業界全体でも地域密着型メーカーと大手との連携・統合が進む流れを象徴する事例となりました。
【出典】ケイアイスター不動産株式会社「TAKASUGIの株式取得(連結子会社化) に関するお知らせ」
不動産開発業界のM&A動向を押さえてM&Aを成功させましょう
不動産開発業界では、人口減少や後継者不足、建設コストの上昇により、単独での成長が難しくなっています。
こうした中、M&Aは事業承継や経営資源の最適化、競争力強化の有効な手段として注目されています。
M&Aを成功させるには、業界特有のリスクや制度を把握し、自社の強みを踏まえた戦略設計が欠かせません。
CINC Capitalは、様々な分野に精通した専門家が戦略立案からPMIまで一貫して支援します。
M&Aをご検討の方は、ぜひお気軽にご相談ください。
この記事の監修者

CINC Capital取締役執行役員社長
阿部 泰士
リクルートHRマーケティング、外資系製薬メーカーのバクスターを経て、M&A業界へ転身。 日本M&AセンターにてM&Aアドバイザーとして経験を積み、ABNアドバイザーズ(あおぞら銀行100%子会社)では執行役員営業本部長として営業組織を牽引。2024年10月より上場会社CINCの100%子会社設立後、現職に就任。