CINC CapitalはCINC(証券コード:4378)のグループ会社です。
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業種
- 公開日2025.04.24
- 更新日2025.04.24
出版業界のM&A動向(2025年)事例から見るメリットと成功のポイント
出版業界はデジタル化や後継者不足など、大きな転換期を迎えています。「デジタル化への対応が不安」「後継者が見つからない」と悩む声も多く聞かれます。
こうした課題の解決策として、M&Aによる戦略的な事業統合が注目されています。業界に精通したM&Aアドバイザーに相談することで、適切な戦略を立て、成功に導く支援を受けられます。
この記事では、2025年に向けた出版業界のM&A動向、メリット・デメリット、成功事例を解説します。
目次
出版業界の市場動向
出版業界は、コロナ禍でのライフスタイルの変化やデジタル技術の進展により、大きな転換期を迎えています。書籍・雑誌の販売額は2010年の2兆円から2023年には1.2兆円まで減少しており、市場規模の縮小が続いている状況です。
一方で、電子書籍市場は年平均10%以上の成長を続けており、新たなビジネスチャンスも生まれてきています。特に、マンガアプリやサブスクリプションサービスの普及により、若年層を中心に新しい読書スタイルが定着しつつありますね。このような市場環境の変化を受けて、多くの出版社がデジタル戦略の強化やM&Aによる業界再編を積極的に進めています。
出版業界の市場規模の推移
出版業界の市場規模は、過去10年間で大きな変化を経験してきました。紙の出版物市場は年々縮小傾向にあり、2010年に2兆円だった市場規模は2023年には1.2兆円にまで減少しています。
この背景には、デジタル技術の発展による読書スタイルの変化があります。特に2020年以降、電子書籍市場は急速に拡大し、2023年には4,000億円規模まで成長しました。紙の出版物と電子書籍を合わせた総市場規模は、およそ1.6兆円となります。
市場規模の推移を細かく見ていくと、以下のような特徴が見られます。
- 書籍市場:年間3〜5%のペースで縮小傾向
- 雑誌市場:年間7〜10%の大幅な減少が続く
- 電子書籍市場:年間10〜15%の成長率を維持
特筆すべきは、コミック市場におけるデジタルシフトの加速です。2023年には電子コミックの売上が紙のコミックを上回り、この傾向は今後も続くと予測されています。
2025年に向けては、紙の出版物市場は1兆円を割り込む可能性が高いものの、電子書籍市場は5,000億円規模まで拡大すると見込まれます。出版業界全体としては、デジタルとリアルの両輪で新たな成長モデルを模索する段階に入っています。
このような市場規模の変化は、出版業界のM&A動向にも大きな影響を与えており、特に中小出版社の事業継続や大手出版社のデジタル戦略に関連した案件が増加傾向にあります。
出版業界の現状
出版業界の現状は、大きな構造変革の真っただ中にあると言えます。従来の紙媒体中心のビジネスモデルから、デジタルとの融合による新たな価値創造が求められる時代に突入しています。
業界内では、規模や得意分野によって二極化が進んでいます。大手出版社は豊富な資金力を活かしてデジタル投資を積極的に行い、新規事業開発にも注力しているのに対し、中小出版社は経営資源の制約から、従来型のビジネスモデルからの転換に苦慮している状況が見られます。
特徴的なのは、電子書籍市場における新たなプレイヤーの台頭です。IT企業や通信キャリアなど、異業種からの参入が相次いでおり、業界の競争環境は一層厳しさを増しています。
また、出版業界特有の課題として、以下のような状況に直面しています。
- 書店の減少による流通網の縮小
- 返品率の高止まりによる収益性の悪化
- 人材確保・育成の困難さ
一方で、明るい兆しも見え始めているのが現状です。オーディオブックやサブスクリプションモデルなど、新しいコンテンツ消費の形が生まれ、若年層を中心に新たな需要が創出されつつあります。
さらに、SDGsへの関心の高まりを受けて、環境配慮型の出版物や、社会課題解決に貢献するコンテンツへのニーズも拡大傾向にあります。
このような業界環境において、M&Aは事業継続や成長戦略を実現するための重要な選択肢となります。特にデジタル領域の強化や、経営資源の効率的な活用を目指す動きが活発化しているのが特徴的です。
出版業界が抱える課題
出版業界は現在、大きな変革期を迎えており、さまざまな課題に直面しています。特に深刻なのが、デジタル技術の進歩による紙媒体離れと、若年層の読書離れによる市場規模の縮小傾向です。
さらに、電子書籍市場の急成長や動画配信サービスの台頭により、従来の出版ビジネスモデルの見直しを迫られているのが現状です。これらの課題に対応するため、多くの出版社がデジタル戦略の強化や異業種との連携を模索しています。
デジタル化の進展により紙媒体の需要が減少している
デジタル技術の急速な進展により、出版業界の紙媒体離れが加速しています。特に若年層を中心に、スマートフォンやタブレットでの読書が一般的になってきました。
主な要因は、電子書籍の利便性の高さにあります。場所を取らない、持ち運びが楽、文字サイズの調整が可能といった特徴が、読者のニーズに合致しているのです。実際に、電子書籍市場は2020年に3,000億円を突破し、2025年には5,000億円規模まで成長すると予測されています。
この変化は、具体的な数字にも表れています。
- 紙の書籍販売額:2010年 1兆9,000億円 → 2023年 1兆2,000億円
- 紙の雑誌販売額:2010年 1兆3,000億円 → 2023年 5,000億円
- 書店数:2000年 2万2,000店舗 → 2023年 1万店舗未満
特に深刻なのは、雑誌市場の縮小です。スマートフォンの普及により、これまで雑誌が担ってきたニュースや情報提供の役割が、ウェブメディアやSNSに移行しつつあります。
このような状況下で、出版社にはデジタルトランスフォーメーション(DX)への対応が急務となっています。単なる紙媒体の電子化だけでなく、デジタルならではの機能や価値を提供することが求められているのです。
しかし、すべての出版社がデジタル化に対応できているわけではありません。特に中小規模の出版社では、技術面やコスト面での課題を抱えているケースが少なくないでしょう。そのため、M&Aによる経営資源の統合や、異業種との連携が重要な選択肢となります。
少子化や読書離れにより業界全体の市場規模が縮小している
出版業界の深刻な課題として、少子化と読書離れによる市場規模の縮小が急速に進んでいます。
特に10代から20代の若年層における読書時間は、2010年と比較して約40%も減少していることが明らかになっています。スマートフォンやSNSの普及により、若者の余暇時間の使い方が大きく変化しているのです。
具体的な数字を見てみましょう。全国学校図書館協議会の調査によると、1か月間に本を1冊も読まない高校生の割合は以下のように推移しています。
年度 | 読書ゼロの割合 |
2010年 | 45% |
2015年 | 51% |
2020年 | 57% |
2023年 | 62% |
この読書離れの傾向は、出版市場の縮小に直結しています。さらに、15歳未満の人口が1980年の2,751万人から2023年には1,493万人まで減少しており、主要な読者層の絶対数が大幅に減っています。
特に深刻なのは、学習参考書や児童書などの教育関連出版物への影響です。少子化により市場規模が年々縮小しており、教育系出版社の経営環境は一段と厳しさを増している状況です。
このような環境下で、出版社には新たな収益モデルの構築が求められています。例えば、デジタルコンテンツの強化や、異業種とのコラボレーションによる新規事業の展開などが考えられます。また、M&Aによる経営資源の統合や事業の効率化も、有効な打開策となり得るのではないでしょうか。
経営者の方々は、この厳しい現実を直視しつつ、自社の強みを活かした新たな成長戦略を模索する必要があります。業界全体の構造変化を意識した、中長期的な視点での経営判断が求められる時代となってきました。
電子書籍や動画配信サービスとの競争激化
出版業界の競争環境は、電子書籍や動画配信サービスの台頭により、従来にない厳しい局面を迎えています。
特に電子書籍市場は、2023年に4,000億円規模まで成長し、紙の出版物市場を急速に浸食しているのが現状です。大手プラットフォーム事業者の参入により、読者の選択肢は大きく広がり、従来の出版社は厳しい競争にさらされています。
具体的な競争激化の要因として、以下のような状況が挙げられます。
- Amazonや楽天などのECプラットフォームによる電子書籍配信サービスの展開
- NetflixやHuluなどの動画配信サービスによる視聴時間の奪取
- スマートフォン向けマンガアプリの急成長による紙媒体離れの加速
特に深刻なのは、若年層の読書時間が動画視聴やSNSに奪われている点です。スマートフォンの普及により、コンテンツ消費の形態が大きく変化し、従来型の出版ビジネスモデルが通用しにくくなっています。
こうした状況に対応するため、出版社各社はデジタルプラットフォームの強化や新規サービスの開発に注力していますが、独自のリソースだけでは限界があるのが実情です。そのため、M&Aによる経営資源の獲得や異業種との連携が、重要な戦略オプションとなります。
技術革新のスピードが速く、競争が一層激化する中で、各社は自社の強みを活かしながら、新たなビジネスモデルの構築を迫られている状況と言えるでしょう。
出版業界のM&A最新動向(2025年)
出版業界のM&A市場は2025年に向けて、デジタル化対応と業界再編の2つの大きな潮流が見られます。特に大手出版社による中小出版社の買収や、デジタルコンテンツ企業との戦略的提携が活発化しています。
電子書籍市場の拡大に伴い、コンテンツのデジタル化やプラットフォーム開発に強みを持つIT企業とのM&Aも増加傾向にあります。従来の出版事業に加えて、デジタル配信やオンラインサービスなど、新たな収益モデルの構築を目指す動きが加速していきそうです。
大手出版社の中小出版社買収による業界再編
出版業界における大手出版社による中小出版社の買収は、業界全体の構造改革を促進する重要な動きとなります。
まず、大手出版社は経営基盤の強化とコンテンツの拡充を目的に、特色ある中小出版社の買収を積極的に進めています。この動きは2025年に向けてさらに加速すると予測されています。
その背景には、中小出版社が抱える3つの大きな課題があります。
- 経営者の高齢化と後継者不足
- デジタル化投資の資金不足
- 書店の減少による販路縮小
また、大手出版社にとっても、独自のジャンルや専門性の高いコンテンツを持つ中小出版社の買収は、事業ポートフォリオの拡大につながるメリットがあるんです。例えば、専門書分野に強い中小出版社を買収することで、新たな読者層の開拓が可能になります。
さらに、規模の経済を活かした経営の効率化も期待できます。印刷・物流コストの削減や、デジタル化への投資負担の軽減といった相乗効果が生まれます。
ただし、M&Aを成功させるためには、中小出版社が持つ独自の企業文化や編集方針を尊重することが重要です。優れたコンテンツを生み出してきた編集体制を維持しながら、デジタル化などの新しい取り組みを進めていく必要があります。
このように、大手出版社による中小出版社の買収は、業界全体の活性化と持続的な成長につながる重要な戦略となります。2025年に向けて、さらなる業界再編が進むことが予想されます。
デジタルコンテンツ強化を目的とした異業種との連携
出版業界のM&A動向において、デジタルコンテンツの強化を目的とした異業種との連携が活発化しています。2025年に向けて、IT企業やデジタル技術を持つ企業との戦略的な提携やM&Aが増加する傾向にあります。
この背景には、出版社単独ではデジタル化への対応が困難という実情があります。システム開発やデジタルマーケティングのノウハウ不足、投資資金の確保など、多くの課題を抱えています。
具体的な連携先として、以下のような業界が注目されています。
- プラットフォーム事業者(電子書籍配信、サブスクリプション)
- システム開発企業(アプリケーション開発、デジタルコンテンツ制作)
- コンテンツ制作会社(動画、音声、インタラクティブコンテンツ)
特に成功している事例として、大手出版社とIT企業の協業が挙げられます。従来の出版物をデジタル化するだけでなく、AIを活用した新しい読書体験の提供や、ユーザーの読書データを活用したマーケティング施策の展開など、革新的なサービスが生まれています。
このような異業種連携によるM&Aでは、既存のコンテンツ資産とデジタル技術を組み合わせた新たな価値創造が重要なポイントとなります。単なるデジタル化ではなく、読者により豊かな体験を提供することで、新たな収益モデルの構築を目指しているのです。
そして、このトレンドは今後さらに加速するでしょう。特にメタバースやAIなど、新しいデジタル技術との融合を見据えた戦略的なM&Aが増えていくことが予測されます。出版社にとって、異業種との連携は生き残りをかけた重要な経営判断となってきました。
コンテンツ取得を目的とするM&Aの実施
出版業界では、魅力的なコンテンツを獲得するためのM&Aが活発化しています。優良なコンテンツを持つ出版社の買収により、既存のIP(知的財産)を活用した事業展開が可能となるためです。
特に注目されているのが、マンガやライトノベルなどのエンターテインメントコンテンツです。これらのコンテンツは、電子書籍化やアニメ・映画化など、さまざまなメディアミックス展開が期待できます。
具体的な事例として、大手出版社による中堅出版社の買収や、IT企業による出版社のM&Aが増加傾向にあります。買収側は既存のコンテンツを活用して新規事業を展開し、売却側は制作したコンテンツの価値を最大限に活かすことができるでしょう。
このようなM&Aでは、以下の点が重要なポイントとなります。
- 著作権などの知的財産権の適切な評価と管理
- クリエイターとの良好な関係維持
- デジタル展開に向けた権利関係の整理
出版業界のM&Aにおいて、コンテンツ取得は今後も重要なトレンドとなっていくことでしょう。優良なコンテンツを持つ企業は、M&Aの好機と捉えて積極的な検討を始めてみてはいかがでしょうか。
【売り手】出版業界がM&Aをするメリット
出版業界でM&Aを検討する企業が増えているのは、デジタル化への対応や事業承継の課題を解決できるからです。特に中小出版社にとって、M&Aは経営資源の有効活用や事業の存続を図る重要な選択肢となります。
M&Aを実施することで、デジタルコンテンツ制作のノウハウを持つ企業と統合して新しい市場に参入したり、後継者不足の問題を解決したりできます。また、本業に経営資源を集中させたい企業にとっては、出版事業を売却することで主力事業に専念できるメリットもあります。
デジタル分野のノウハウを持つ企業との統合で新市場に参入できる
デジタル化が急速に進む出版業界では、ITやデジタルコンテンツに強みを持つ企業とのM&Aによって、新たな市場機会を獲得できるようになりました。
この統合のメリットは、デジタル技術やノウハウを効率的に取り入れられる点にあります。独自で開発するよりも、すでに実績のある企業のリソースを活用することで、電子書籍市場への参入障壁を大きく下げることができるでしょう。
具体的には、次のような新規事業展開が可能になります。
- 電子書籍プラットフォームの構築・運営
- デジタルコンテンツの制作・配信
- サブスクリプションモデルの導入
特に重要なのが、既存コンテンツのデジタル化とマネタイズです。紙の書籍をただ電子化するだけでなく、動画やオーディオブック、SNSとの連携など、デジタルならではの付加価値を生み出すことができます。
また、デジタル企業との統合によって得られるデータ分析の知見は、読者ニーズの把握や効果的なマーケティング施策の立案にも活用できます。これにより、より戦略的な出版活動が可能になります。
さらに、異業種との連携は新たな収益モデルの創出にもつながります。たとえば、教育系出版社がEdTech企業と統合することで、オンライン学習プラットフォームを展開するといった展開も見られます。
このように、デジタル分野に強みを持つ企業とのM&Aは、出版社の事業領域を大きく広げ、持続的な成長への道を開くことができるのです。
後継者不足の課題を解決し、事業を次世代に引き継ぐことができる
出版業界では、経営者の高齢化が進む中で後継者不足が深刻な課題となっています。M&Aは、この課題を解決する有効な選択肢の1つとして注目を集めています。
家族経営が多い出版業界では、子どもが事業を継がないケースが増えており、事業承継の問題が経営の大きな課題となります。また、編集者が創業者であるケースが多く、技術的な承継が難しいといった課題もあります。
M&Aを活用することで、以下のようなメリットが得られます。
- 従業員の雇用を守りながら事業を存続できる
- 築き上げたブランドや知的財産を次世代に引き継げる
- 取引先との関係を維持しつつ、円滑な事業承継が可能
特に重要なのは、編集者やライターなど専門性の高い人材の雇用を守れるという点です。長年培ってきた編集ノウハウや作家とのネットワークは、出版社にとってかけがえのない財産となります。
M&Aによる事業承継では、買収側の経営資源やノウハウを活用することで、デジタル化への対応も円滑に進められます。新しい技術やサービスの導入により、従来の出版事業に新たな価値を付加することも可能になります。
ただし、M&Aを成功させるためには、事前の準備と慎重な検討が欠かせません。特に、企業文化や経営理念の違いによる統合後の摩擦には注意が必要です。従業員とのコミュニケーションを密に取り、スムーズな統合を進めることが大切になります。
このように、M&Aは後継者不足に悩む出版社にとって、事業を次世代に引き継ぐための現実的な選択肢となります。今後も、業界再編の重要な手段として活用されていくことでしょう。
出版事業の売却で主力事業に専念できる
出版事業以外に、より収益性の高い事業を展開している企業にとって、M&Aは非常に有効な選択肢となります。特に出版部門の売却により、経営資源を主力事業に集中できるメリットが大きいのです。
企業が複数の事業を展開している場合、各事業部門への投資や人材配置の最適化が課題となります。出版事業は、デジタル化対応や新規コンテンツ開発に多額の投資が必要となる一方で、市場規模の縮小により収益性の向上が難しい状況にあります。
このような状況下で、出版事業をM&Aで売却することで得られる資金を、成長性の高い主力事業に投資できるというメリットがあります。例えば、製造業や小売業を主力とする企業が、自社の出版部門を専業の出版社に売却するケースが増えてきました。
また、経営者の意思決定や組織のリソース配分も、より効率的になります。出版事業特有の課題に対応する必要がなくなることで、主力事業の競争力強化に専念できるというわけです。
さらに、出版事業の売却により得られた資金は、以下のような戦略的な投資に活用できます。
- 主力事業の設備投資や研究開発
- 新規市場への進出
- デジタル化やDXの推進
- M&Aによる事業拡大
ただし、出版事業の売却を検討する際は、これまで築き上げてきたブランド価値や、取引先との関係性への影響も考慮する必要がありますね。特に企業のブランディングや広報活動で重要な役割を果たしている場合は、慎重な判断が求められます。
主力事業への経営資源の集中は、経営効率の向上につながる重要な戦略です。出版事業の売却は、その実現のための有効な選択肢の一つとなります。
従業員や読者への影響が懸念される
M&Aによる組織変更は、従業員の雇用条件や職場環境に大きな影響を与える可能性があります。特に、長年親しんできた企業文化や働き方が変わることへの不安は深刻なものとなるかもしれません。
従業員にとって最も心配なのは、統合後の人事制度の変更や役職の再編成です。給与体系や評価制度が変わったり、部署の統廃合により業務内容が大きく変更されたりする可能性があります。また、余剰人員となることへの不安も大きな懸念事項となります。
読者への影響も見過ごすことはできません。長年親しまれてきた出版物の編集方針が変更されたり、定期刊行物が休刊になったりする可能性があるためです。特に、専門書や文芸書など、独自の編集方針で固定読者を持つ出版社の場合、読者離れが起きるリスクも考えられます。
具体的な影響として以下のような事例が報告されています。
- 統合後の組織再編により、ベテラン編集者が退職
- 採算性重視の経営方針により、マイナーだが質の高い出版物が廃刊
- 電子書籍への移行により、紙の書籍のラインナップが縮小
このような課題に対しては、M&A実施前から従業員とのコミュニケーションを丁夫に行い、不安を解消する取り組みが重要です。また、読者に対しても、編集方針の継続性を保証するなど、信頼関係を維持するための施策を講じる必要があります。
M&Aの成功には、単なる事業統合だけでなく、人材や企業文化、そして読者との関係性をいかに維持・発展させていくかという視点が欠かせません。慎重な準備と丁寧な実行プロセスを心がけましょう。
統合後に編集方針や出版物の方向性が変更されるリスクがある
統合後の編集方針や出版物の方向性の変更は、出版社のアイデンティティに関わる重要な問題です。
M&Aによって経営主体が変わると、これまで大切にしてきた出版理念や編集方針が大きく変更されるリスクがあります。特に、企業文化や価値観の異なる異業種企業との統合では、その可能性が高まるでしょう。
具体的には、以下のような変更が懸念されます。
- 利益重視の経営方針への転換による出版物の質の変化
- ターゲット読者層の見直しによるコンテンツの方向性の変更
- 既存シリーズの休刊や廃刊
このような変更は、長年かけて築き上げてきた読者との信頼関係を損なう可能性があります。特に専門書や学術書を手がける出版社では、編集方針の一貫性が重要な価値となっているため、その影響は深刻です。
また、編集部の人事異動や組織改編により、これまで培ってきた編集ノウハウや作家とのリレーションが失われる可能性も考えられます。優秀な編集者の離職は、出版物の質の低下につながりかねません。
さらに、デジタル化の推進を目的としたM&Aの場合、従来の紙媒体中心の出版活動が縮小され、電子書籍やデジタルコンテンツへの移行が急速に進められる可能性があります。これは、紙の書籍にこだわりを持つ読者層との齟齬を生む要因となるかもしれません。
このリスクを軽減するためには、M&A契約時に編集の独立性や既存ブランドの維持について明確な取り決めを行うことが重要になります。
【買い手】出版業界をM&Aするメリットデメリット
出版業界へのM&Aは、買い手企業にとって魅力的な機会を提供していますが、同時にリスクも伴います。既存の出版社が持つブランド力や顧客基盤を活用できる点は大きな強みとなります。
特に、デジタルコンテンツ企業による出版社のM&Aでは、紙とデジタルの融合による相乗効果が期待できます。ただし、業界特有の課題である紙媒体市場の縮小傾向や、統合後の文化の違いによる軋轢には十分な注意が必要です。後続のセクションでは、これらのメリットとデメリットについて、より具体的に見ていきましょう。
既存のブランド力や顧客基盤を活用して市場シェアを拡大できる
出版業界に参入する買い手企業にとって、既存の出版社が持つブランド力や顧客基盤は非常に魅力的な経営資源となります。
長年の実績により築き上げられた出版社のブランドイメージや、作家・クリエイターとの関係性、書店や取次との取引網は、新規参入企業が一から構築するのが難しい価値あるものなんです。特に人気シリーズや定評のある専門書を持つ出版社の場合、そのブランド力は非常に大きな魅力となるでしょう。
例えば、教育関連企業が教科書出版社を買収することで、学校現場での信頼性や販売網をすぐに手に入れることができます。また、デジタルコンテンツ企業が老舗の文芸出版社を買収することで、質の高い作品や作家との関係性を活用して電子書籍事業を展開できるようになります。
さらに、既存の出版社が持つ読者データベースや、書店との取引実績は、新規事業を展開する際の強力な基盤となります。特に会員制度や定期購読者のような固定客は、安定した収益源として期待できるポイントです。
このように、M&Aを通じて既存の経営資源を獲得することで、市場参入のリスクを抑えながら効率的に事業規模を拡大できます。ただし、買収後もブランドの信頼性を維持し、既存の顧客基盤を大切にしていく必要がありますので、慎重な統合プロセスが求められます。
デジタル分野でのノウハウを組み合わせ、新規事業を展開できる
デジタル分野のノウハウと出版業界の強みを組み合わせることで、新たなビジネスチャンスが広がります。特に、デジタルコンテンツの制作・配信技術を活用することで、従来の出版事業の枠を超えた展開が可能になります。
この統合によって実現できる新規事業には、以下のようなものがあります。
- オンライン学習プラットフォームの構築
- 動画・音声コンテンツの制作配信
- AIを活用した個別最適化サービス
特に注目したいのが、既存の出版コンテンツを活用したマルチメディア展開です。例えば、人気小説を映像化したり、教育書をインタラクティブな学習コンテンツに発展させたりすることができます。
また、デジタル技術を活用することで、読者の行動データを分析し、ニーズに合わせた新商品開発やマーケティング施策の立案も可能になります。これにより、より効果的な事業展開が期待できます。
さらに、異業種のノウハウを取り入れることで、サブスクリプションモデルやフリーミアムモデルなど、新しい収益モデルの構築にもつながります。従来の出版ビジネスでは実現が難しかった、継続的な収益確保の仕組みを作ることができます。
このように、デジタル分野との融合は出版業界に新たな可能性をもたらしてくれます。ただし、成功のためには従来の編集力や企画力も大切にしながら、バランスの取れた事業展開を心がけることが重要になります。
紙媒体の市場縮小による収益性低下のリスク
買い手企業にとって、出版業界のM&Aにおける最大のリスクは、紙媒体市場の縮小に伴う収益性の低下です。
実際のデータによると、紙の書籍・雑誌市場は年率5〜7%のペースで縮小を続けており、2025年には1兆円を割り込む可能性が高いと予測されています。この市場縮小は、M&A後の事業計画に大きな影響を与える可能性があります。
特に懸念されるのが、以下の3つのリスク要因です。
- 紙媒体の製作・流通コストの上昇
- 書店の減少による販路の縮小
- 広告収入の減少による雑誌事業の採算悪化
例えば、書店数は2003年に約20,880店舗あったものが、2023年には10,980店舗まで減少しています。この傾向は今後も続くと予測され、紙媒体の販売チャネルがさらに縮小する可能性が高いと予想されます。
また、電子書籍市場は成長を続けているものの、紙媒体の売上減少を完全に補完するまでには至っていません。デジタル化に向けた投資負担も大きく、短期的な収益改善は難しい状況となります。
このような環境下でM&Aを成功させるためには、紙とデジタルの両方に対応したハイブリッドな事業戦略の構築が不可欠です。買収後の統合プロセスにおいて、コスト削減と新規事業開発をバランスよく進めていく必要があるでしょう。
【出典】出版科学研究所「日本の書店数」
出版業界のM&A相場は?
出版業界のM&A価格は、企業規模や業績、保有するコンテンツの価値によって大きく異なります。一般的な価格算定方法としては、時価純資産法とマルチプル法が日本の中小企業のM&Aでは多く採用されています。
時価純資産法では、企業のバランスシート上の資産・負債を時価評価し、そこに営業権(のれん代)を加えて企業価値を算出します。出版業界では特に、知的財産権や棚卸資産(書籍在庫)の適切な時価評価が重要になります。また、不動産や設備などの有形資産についても、簿価と実際の市場価値に乖離がある場合は適切な評価替えが必要です。
マルチプル法では、各企業の財務状況や成長性、業界動向などを総合的に考慮し、EBITDA(利払い前・税引き前・償却前利益)や当期純利益などの財務指標に適切な倍率を乗じて企業価値を算出します。出版業界の場合、特にコンテンツの将来性やデジタル展開の可能性が評価に大きく影響します。
ただし、デジタルコンテンツの権利や人気作家との関係性など、無形資産の評価が取引価格に大きく影響を与えることがあります。特に電子書籍市場の拡大に伴い、デジタル資産の価値評価が重要になってきました。
出版業界のM&Aにおける価格決定要因としては、以下の要素が特に重要です。
- 時価純資産価値(特に知的財産権の評価)
- 収益性(EBITDA、営業利益、当期純利益などの指標)
- 手元現金や有利子負債などの財務状況
- 将来の成長性と市場環境
- ブランド力や顧客基盤の強さ
- 作家やクリエイターとの関係性
- デジタル展開の実績や可能性
なお、業界特有の事情として、老舗出版社の場合、単純な財務指標だけでなく、文化的価値も考慮されることがあります。そのため、一般的な企業価値評価の方法とは異なるアプローチが必要になることもあります。
出版業界のM&A相場は、個々の企業の状況や交渉力によって大きく変動するため、専門家に相談しながら慎重に検討を進めることをおすすめします。
出版業界がM&Aを成功させるためのポイント
出版業界でM&Aを成功させるためには、デジタル化への対応と人材・ブランドの継承という2つの観点が重要になってきます。特に従業員の不安を取り除き、既存の読者層との信頼関係を維持することが、事業の継続的な発展につながるポイントです。
また、M&Aを進める際は法務や財務の専門家と連携し、適切な事業価値評価やデューデリジェンスを実施することが大切でしょう。さらに、デジタルコンテンツの展開や異業種との協業など、将来を見据えた成長戦略を描くことで、より円滑な統合が実現できます。
デジタル化や異業種連携を見据えた事業計画を策定する
出版業界のM&Aを成功させるためには、デジタル化時代に即した事業計画の策定が不可欠です。特に、異業種との連携を見据えた戦略的なアプローチが重要になります。
まず、デジタルトランスフォーメーション(DX)を軸とした具体的な成長戦略を立案する必要があります。電子書籍市場の拡大や、オンラインコンテンツの需要増加を見据えて、3~5年程度の中期的な視点で事業計画を策定します。
具体的な計画立案のポイントとして、デジタル戦略の明確化が挙げられます。例えば、電子書籍プラットフォームの構築や、オーディオブック事業への参入、さらにはAI技術を活用した編集支援システムの導入など、具体的な施策を盛り込んでいくとよいでしょう。
異業種連携においては、IT企業やデジタルコンテンツ制作会社との協業可能性を詳細に検討することが大切です。特に、以下の3つの観点から計画を練ることをおすすめします。
- 技術連携による新規サービス開発
- コンテンツの多角的展開
- 顧客基盤の相互活用
また、M&A後の統合プロセスを見据えて、組織体制や人材育成についても具体的な計画を立てることが重要となってきます。デジタル人材の確保や、既存社員のスキルアップ研修など、人的資源の強化策も併せて検討してみてください。
このような戦略的な事業計画の策定により、M&A後の事業シナジーを最大限に引き出すことが可能となるはずです。ただし、計画の実現可能性や市場環境の変化には十分な注意を払い、必要に応じて柔軟に見直しを図っていきましょう。
従業員や既存顧客への配慮を徹底する
出版業界でのM&Aを成功させるためには、従業員と既存顧客への配慮が非常に重要です。特に、企業文化や価値観の違いによる混乱を最小限に抑えることが求められます。
まず、従業員に対しては早期かつ丁寧な情報共有が大切です。統合後の人事制度や組織体制について、できるだけ具体的な説明を行い、不安を解消していく必要があります。特に編集部門のスタッフは、その専門性や経験が出版社の価値の源泉となっているため、モチベーション維持に細心の注意を払いましょう。
次に、既存顧客への対応も慎重に進める必要があります。長年親しまれてきた出版物の編集方針や品質を維持することで、読者からの信頼を守ることができます。特に、以下の3点に注意を払うことが大切です。
- 定期刊行物の継続性の確保
- 作家やクリエイターとの良好な関係維持
- 書店や取次との取引関係の安定化
また、統合後の100日計画を策定し、具体的なコミュニケーション施策を実行することも効果的です。社内報やイントラネットを活用した情報発信、部門間の交流会の開催など、相互理解を深める機会を積極的に設けていきましょう。
M&Aの成功には、単なる事業統合だけでなく、人材や企業文化をいかに融合させていくかという視点が欠かせません。経営陣には、従業員と顧客の双方に寄り添った丁寧なマネジメントが求められるのです。
適切なアドバイザーや専門家を活用する
M&Aを成功に導くためには、専門的な知識とノウハウを持つアドバイザーの活用が不可欠です。
特に出版業界のM&Aでは、業界特有の商慣習や著作権などの知的財産に関する専門的な知識が必要となります。適切なアドバイザーを選ぶことで、より円滑な統合プロセスを実現できるでしょう。
主なアドバイザーには以下のような専門家が含まれます。
- M&A専門の会計士や税理士
- 知的財産権に詳しい弁護士
- 出版業界に精通したコンサルタント
- デューデリジェンスの専門家
これらの専門家は、企業価値評価から統合後の組織づくりまで、M&Aの各段階で重要な役割を果たします。例えば、デジタルコンテンツの権利関係の整理や、従業員との労働条件の調整など、専門的な判断が必要な場面で的確なアドバイスを提供してくれます。
アドバイザー選定のポイントとしては、出版業界での実績や、デジタル化への対応経験が重要です。また、自社の規模や目的に合ったサービス提供が可能かどうかも確認しておく必要があります。
さらに、M&A後の統合プロセスをスムーズに進めるため、PMI(Post Merger Integration)の専門家との連携も検討すべきです。企業文化の違いやシステム統合など、統合後に発生する様々な課題に対して、適切なサポートを受けることができます。
このように、専門家の知見を活用することで、M&Aのリスクを最小限に抑えながら、最大限の効果を引き出すことが可能となります。
出版業界のM&A事例
出版業界のM&Aは近年、デジタル化への対応や事業承継を目的として活発化しています。メディアドゥによるエブリスタの買収やインプレスホールディングスによるイカロス出版のM&Aなど、業界内外からの注目度の高い案件が増えてきました。
これらの事例からは、デジタルコンテンツの強化や既存ブランドの活用など、時代のニーズに合わせた戦略的なM&Aが展開されていることがわかります。フレーベル館によるJULA出版局の買収のように、得意分野を補完し合うような案件も見られ、業界再編が着実に進んでいるようです。
メディアドゥによるエブリスタのM&A
メディアドゥによるエブリスタのM&Aは、デジタル出版市場での競争力強化を目指した戦略的な買収事例として注目を集めています。
このM&Aは、電子書籍取次最大手のメディアドゥが、ウェブ小説プラットフォームを運営するエブリスタを約50億円で買収したものです。2021年に実施されたこの統合により、両社の強みを活かした新たなビジネス展開が期待されています。
買収の背景には、電子書籍市場の急成長とウェブ小説の人気化という市場環境の変化がありました。メディアドゥは従来の電子書籍取次事業に加えて、オリジナルコンテンツの制作・配信にも注力したいと考えていたのでしょう。
具体的な成果として、以下のような相乗効果が生まれています。
- エブリスタの投稿作品をメディアドゥの配信網で展開
- 人気作品の電子書籍化やマンガ化の促進
- AI技術を活用した新サービスの開発
この事例から、出版業界のM&Aにおける重要なポイントが見えてきます。まず、デジタルプラットフォームの獲得により、新たな市場への参入が可能になりました。また、若年層向けのコンテンツ強化という点でも、大きな成果を上げることができました。
このM&Aの成功要因は、両社の事業領域に重複が少なく、補完関係が築けた点にあります。メディアドゥの配信インフラとエブリスタのコンテンツプラットフォームが、うまく組み合わさったことで、新たな価値創造が実現できたと評価されています。
インプレスホールディングスによるイカロス出版のM&A
インプレスホールディングスによるイカロス出版のM&Aは、デジタル出版とリアル出版の融合を目指した戦略的な統合事例として注目を集めました。
この案件では、インプレスホールディングスが持つデジタルコンテンツのノウハウと、イカロス出版が持つ航空・鉄道などの専門性の高いコンテンツを掛け合わせることで、新たな価値創造を目指しています。
具体的な統合効果として、イカロス出版の人気コンテンツである「航空ファン」「鉄道ファン」といった専門誌を電子化し、デジタル配信を強化することができました。また、両社の編集ノウハウを活かして、紙とデジタルのクロスメディア展開も実現しています。
統合にあたっては、以下のような取り組みが行われました。
- イカロス出版のブランドと編集体制を維持
- デジタル化投資の効率的な実施
- 物流・印刷コストの削減による収益性改善
特筆すべき点は、既存の読者層への配慮です。長年親しまれてきた紙媒体の専門誌は継続しながら、デジタルコンテンツとして付加価値を提供することで、読者の利便性を高めることに成功しました。
この事例は、出版業界におけるM&Aの成功モデルとして参考になるでしょう。特に、デジタル戦略の強化と既存ブランドの価値維持を両立させた点が高く評価されています。
今後も、このような専門性の高いコンテンツを持つ出版社と、デジタル技術に強みを持つ企業とのM&Aは増加していくと予測されます。両社の強みを活かした相乗効果の創出が、成功の鍵となります。
フレーベル館によるJULA出版局のM&A
フレーベル館によるJULA出版局のM&Aは、教育出版分野における重要な事例として注目を集めています。
JULA出版局は独自の英語教材や教育関連書籍で知られる老舗出版社を、フレーベル館が2022年に買収しました。この統合により、両社の教育コンテンツ資産を活かした新たな展開が期待されているんです。
買収の背景には、教育のデジタル化の加速があります。特に、GIGAスクール構想の推進により、デジタル教材の需要が急増していたことから、フレーベル館はデジタルコンテンツの強化を進める必要がありました。
具体的な統合効果として、以下のような相乗効果が生まれています。
- フレーベル館の幼児教育コンテンツとJULA出版局の英語教材の融合
- デジタル教材開発における技術・ノウハウの共有
- 営業網の統合による販路拡大
特筆すべき点は、両社の企業文化や教育理念を尊重した統合プロセスです。JULA出版局のブランドや編集方針は維持されつつ、フレーベル館のデジタル戦略と組み合わさることで、新たな価値創造につながります。
この事例は、出版業界におけるM&Aの成功モデルとして参考になるでしょう。特に、既存の強みを活かしながら新しい市場に挑戦するという点で、多くの示唆を与えてくれます。
まとめ|出版業界のM&A動向を抑えてM&Aを成功させましょう
出版業界のM&A動向を的確に把握することで、成功への道が開けていきます。これまでご説明してきた出版業界のM&A動向や事例から、重要なポイントが見えてきました。
出版業界のM&Aでは、デジタル化への対応と既存の強みの活用がカギとなっています。特に2025年に向けては、電子書籍市場の更なる拡大が予測されるため、デジタルコンテンツ強化を意識した戦略立案が欠かせないでしょう。
M&Aを成功に導くためには、以下の3つの要素に注目してみてください。
- 明確な目的と戦略の設定
- 慎重なデューデリジェンスの実施
- 統合後の組織文化への配慮
実際のM&A検討では、専門家のアドバイスを受けながら、自社の状況に合わせた最適な選択をすることが大切です。業界動向を把握した上で、長期的な視点で判断することがM&A成功の鍵となります。
また、買収後の統合プロセスにも十分な注意を払う必要があります。特に出版業界では、編集者や作家との関係性維持が重要になります。これまでの事例からも、従業員や取引先とのコミュニケーションを丁寧に行った企業ほど、スムーズな統合を実現できています。
今後も出版業界では、市場環境の変化に応じてM&A活動が活発化すると予想されます。業界動向をしっかりと見極めながら、慎重にM&Aを進めていくことをおすすめします。適切なタイミングで決断することで、新たな成長機会を掴むことができるはずです。
CINC Capitalは、M&A仲介協会会員および中小企業庁のM&A登録支援機関として、M&Aのご相談を受け付けております。業界歴10年以上のプロアドバイザーが、お客様の真の利益を追求します。M&Aの相談をご希望の方はお気軽にお問い合わせください。
この記事の監修者

CINC Capital取締役執行役員社長
阿部 泰士
リクルートHRマーケティング、外資系製薬メーカーのバクスターを経て、M&A業界へ転身。 日本M&AセンターにてM&Aアドバイザーとして経験を積み、ABNアドバイザーズ(あおぞら銀行100%子会社)では執行役員営業本部長として営業組織を牽引。2024年10月より上場会社CINCの100%子会社設立後、現職に就任。