CINC CapitalはCINC(証券コード:4378)のグループ会社です。
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- 公開日2025.04.09
- 更新日2025.04.10
ペット業界のM&A動向(2025年)メリット/事例/成功のポイントを解説
2025年、ペット業界はさらなる成長を続け、M&A市場でも注目を集めています。ペットショップや動物病院の事業譲渡、ペット用品やペットフードを扱う企業の会社売却など、幅広い案件が登場しています。時には規模の大きい会社譲渡や株式譲渡も行われ、事業承継を目的とした売却も増加中です。
ペット関連のサービスは娯楽やレジャー関連でも需要が高く、売上高を伸ばす企業が増える一方で、従業員や運営体制の課題も浮上しています。解決策としてスムーズな譲渡を目指すなら、仲介会社や専門家のサポートを活用することが大切です。
この記事では、ペット業界の最新のM&A動向や事例、成功のポイントなどをご紹介します。
目次
ペット業界の市場動向
ペット業界の市場規模は拡大傾向にあり、2023年度におけるペット関連総市場規模は1兆8,629億円と見込まれています(前年度比104.5%)。
この成長の背景には、原材料費や人件費の高騰による価格調整が進む中でも、ペットフードや用品における高付加価値商品への需要が高まったことがあると考えられています。特に、飼育頭数が微増で推移している猫向け商品が売上高を押し上げています。
さらに、犬や猫の生体価格がコロナ禍前より高騰している影響で、手頃な価格帯の小動物や魚への需要が増加傾向です。この流れは、ペットショップや関連事業者にとって、対象を広げた商品展開やサービスの提供が今後の市場成長に寄与する可能性を示しています。
【出典】株式会社矢野経済研究所「ペットビジネスに関する調査を実施(2024年)」
ペット業界が抱える課題
ペット業界が抱える課題は多岐にわたり、業界全体の持続的な成長を妨げる要因となっています。以下では主な課題について説明します。
労働力の不足
ペット業界では、動物のケアやサービスを担う従業員に専門知識とスキルが求められます。しかし、専門性を持つ人材の確保が難しく、人手不足が深刻化しています。さらに、人件費の上昇が事業運営に大きな負担を与えており、適切な人材確保とコスト管理が課題です。
動物福祉への対応
動物福祉への関心が高まる中、飼育環境や動物へのケアが消費者の購買意欲に影響を与えるケースも珍しくありません。適切な飼育環境を提供するためには、施設の改善やスタッフの研修などが不可欠です。業界全体での取り組みが求められています。
市場規模の小ささ
ペット業界の需要は拡大しているものの、市場自体の規模は決して大きいわけではありません。業界全体の市場規模が限られているため、需給バランスが崩れると市場が飽和しやすいというリスクを抱えています。
ペット業界のM&A最新動向(2025年)
ペット業界におけるM&Aは、どのような傾向にあるのでしょうか。以下では、2025年現在の主要なM&A動向について解説します。
大手企業による個人店舗の買収が拡大
ペット業界では、大手企業が個人経営のペットショップや中小規模の事業を買収する動きがよく見られます。特に、自社の出店していない地方にある小規模店舗を取り込むことで、広域的な事業展開を目指すケースは珍しくありません。このような動きは、大手企業にとって市場シェアの拡大だけでなく、幅広い顧客ニーズへの対応力向上にもつながっています。
異業種からの積極的な参入
異業種によるペット業界への参入が進んでいるのも特徴的な動向です。IT関連企業や保険会社など、さまざまな企業がペット業界の企業とM&Aを行っています。
中小企業や個人によるM&Aの活性化
これまで大手企業が中心だったM&A市場ですが、近年では中小企業や個人事業主によるM&Aも目立つようになっています。例えば、地元のペットショップ同士が経営資源を統合することで、規模の経済を活かして競争力を高める動きが見られます。
ペット業界の企業がM&Aをするメリット
ペット業界においてM&Aを活用することで、単なる事業拡大以上のメリットを得られる可能性があります。以下では、ペット業界の企業がM&Aを行う具体的なメリットを解説します。
【売り手側】後継者問題の解決
ペット業界では、後継者不足が深刻な課題です。特に個人経営の店舗では、経営者が高齢化して事業を引き継ぐ人がいないケースが増えています。M&Aを通じて事業を譲渡することで問題を解消しつつ、店舗の存続や従業員の雇用を守ることが可能です。
【売り手・買い手共通】サービスラインの拡充
M&Aを活用することで、フード、用品、医療サービス、トリミング、ペットホテルといった多様なサービスを統合し、ワンストップで提供できる体制を整えられます。顧客満足度を向上させるだけでなく、競合との差別化も図れます。
【売り手・買い手共通】地域における市場競争力の向上
地方や都市部で展開する店舗を統合することで、地域における競争力を高められます。特に複数店舗を運営する場合、仕入れコストの削減やマーケティング効果の最大化を図ることができ、収益性の向上につながります。
ペット業界の企業がM&Aを成功させるためのポイント
ペット業界におけるM&Aは、一般的なM&Aの成功要因だけでなく、業界特有の視点や注意点を押さえることが大切です。ここでは、ペット業界の企業がM&Aを成功させるための重要なポイントを解説します。
ブランド価値の維持と活用
ペットショップやペットフードメーカーなどにおけるブランド価値は、これまでに根付いたイメージが大きく影響します。買収後もその価値を維持し、さらに拡大させることが重要です。
特に店舗名やロゴ、サービスの質を維持することで、既存顧客の離脱を防ぎ、新規顧客を獲得しやすくなるでしょう。また、M&Aプロセス中に顧客への適切な情報提供を行うことで、不安を軽減することも必要です。
人材の確保とスキル向上
ペット業界では、専門知識を持つスタッフが事業の成功を支えます。M&Aの実施後も離職を防ぐための施策が必要です。また、新たに統合する店舗間で教育プログラムを導入し、スキルの標準化を図ることで、サービスの質を向上させることが可能です。従業員のモチベーションを高めるための制度整備も成功の鍵となります。
PMI(統合後プロセス)の計画と実行
M&A後の統合プロセス(PMI)は、事業をスムーズに展開し、最大限のシナジーを生むために不可欠です。統合プロセスでは、新経営体制の構築やオペレーションの調整を計画的に進める必要があります。
特に、各店舗の特色や地域性を尊重しながら、統一された運営方針を確立することで、事業の成功を促進できるでしょう。PMIはM&Aの初期段階から計画を立て、長期的な視野で実施することが求められます。
ペット業界のM&A事例
株式会社 WOLVES HANDによる株式会社バハティーのM&A
2025年2月5日、株式会社WOLVES HAND(本社:大阪府、東証グロース市場上場)は、株式会社バハティー(本社:滋賀県守山市)の全株式を取得し、子会社化することを決定しました。バハティーは、守山市で「守山しっぽ動物病院」を運営し、地域に根ざした動物医療を提供してきました。
WOLVES HANDは関西・関東・九州・沖縄エリアで動物病院を展開しており、今回の買収により、滋賀県エリアでの事業基盤を強化します。特に、守山市は京都・大阪へのアクセスが良く、人口増加が見込まれるエリアであるため、長期的な成長が期待されています。グループ内の病院との連携を強化し、より高度な動物医療の提供を目指す戦略と考えられます。
動物病院業界では、大手グループによる経営統合が進んでおり、今回のM&Aもその流れの一環といえます。今後、WOLVES HANDは関西圏でのさらなる拠点拡大や、専門性の高い医療サービスの提供を加速させる可能性があります。
【出典】株式会社 WOLVES HAND「株式会社バハティーの株式の取得(子会社化)に関するお知らせ」
アニコム ホールディングス株式会社による株式会社シムネットのM&A
2019年12月16日、ペット保険大手のアニコム ホールディングス株式会社(以下、アニコムHD)は、ペット関連インターネットサービスを手掛ける株式会社シムネット(本社:宮城県仙台市)の全株式を取得し、完全子会社化することを決定しました。
シムネットは、ブリーダーマッチングサイト「みんなのブリーダー」「みんなの子猫ブリーダー」を運営し、業界トップシェアを誇ります。また、100%子会社のみんなのペットオンライン株式会社を通じて、ペットのオンラインマッチングサービスを提供しています。アニコムHDは、ペット保険の提供を中心にペット業界のインフラ構築を進めており、近年では遺伝子検査を活用したブリーダー支援にも取り組んでいます。
今回のM&Aにより、アニコムHDはシムネットのプラットフォームを活用し、ブリーダー向けサービスの拡充を図るとともに、ペット保険の販売促進を強化します。また、ブリーダーマッチング事業を通じて、遺伝病のないペット流通を推進し、ペットの健康維持と消費者の安心感向上を目指します。ペット業界では、オンラインプラットフォームと保険事業の連携が進んでおり、今回の買収もその一環といえるでしょう。
【出典】アニコム ホールディングス株式会社「株式会社シムネットの株式の取得(子会社化)に関するお知らせ」
SBIインシュアランスグループ株式会社
2019年3月12日、SBIインシュアランスグループ株式会社(以下、SBIインシュアランス)の子会社であるSBI少短保険ホールディングス株式会社は、日本アニマル倶楽部株式会社(本社:宮城県仙台市)の全株式を取得し、子会社化することを決定しました。これにより、日本アニマル倶楽部はSBIインシュアランスの孫会社となります。
日本アニマル倶楽部は、ペット保険を提供する少額短期保険会社であり、ペットショップなどのリアル・チャネルを活用した対面販売に強みを持っています。一方、SBIグループ傘下のSBIいきいき少額短期保険は、インターネットを活用した非対面販売を中心に展開しており、今回のM&Aにより、オンラインとリアルの販売チャネルを補完し合う形となります。
SBIインシュアランスは、本件買収を通じて、ペット保険市場におけるシェア拡大を狙い、SBIグループの顧客基盤を活用したクロスセル戦略を推進する方針です。ペット保険市場は成長余地が大きく、今後のさらなる事業拡大が期待されます。
【出典】SBIインシュアランスグループ株式会社「当社子会社による株式取得(孫会社化)に関するお知らせ」
まとめ|ペット業界のM&A動向を押さえてM&Aを成功させましょう
ペット業界のM&Aは、業界の成長やデジタル化の進展を背景に、近年注目を集めています。成功するためには、ペット業界特有の課題に対応した戦略の立案や、ブランド価値の維持、人材育成、デジタルツールの活用、そしてPMIの計画と実行が重要です。
これらのポイントを押さえることで、買収後のシナジーを最大化し、事業の成長を実現することができるでしょう。
また、専門家の支援を受けることで、よりスムーズかつ確実なM&Aを進めることが可能です。M&A仲介会社へ相談し、自社へのアドバイスを受けることがおすすめです。ペット業界の未来を見据え、M&Aを事業拡大や競争力強化の手段として活用していきましょう。
CINC Capitalは、M&A仲介協会会員および中小企業庁のM&A登録支援機関として、M&Aのご相談を受け付けております。業界歴10年以上のプロアドバイザーが、お客様の真の利益を追求します。M&Aの相談をご希望の方はお気軽にお問い合わせください。
この記事の監修者

CINC Capital取締役執行役員社長
阿部 泰士
リクルートHRマーケティング、外資系製薬メーカーのバクスターを経て、M&A業界へ転身。 日本M&AセンターにてM&Aアドバイザーとして経験を積み、ABNアドバイザーズ(あおぞら銀行100%子会社)では執行役員営業本部長として営業組織を牽引。2024年10月より上場会社CINCの100%子会社設立後、現職に就任。