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舗装工事業界のM&A動向(2025年)メリットデメリット/事例/成功のポイントを解説

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  • 公開日2025.04.28
  • 更新日2025.04.30

舗装工事業界のM&A動向(2025年)メリットデメリット/事例/成功のポイントを解説

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舗装工事業界は市場拡大の兆しを見せる一方で、原材料価格の高騰や技術者の高齢化、後継者不足という深刻な課題に直面しています。こうした環境下で注目されているのが、生き残りをかけたM&A戦略です。

本記事では、舗装工事業界特有のM&A動向を徹底解説し、経営判断に役立つメリット・デメリット、事業承継・事業売却を成功させるポイントを徹底解説します。

舗装工事業界の市場動向 

「国土交通省」の建設工事受注動態統計調査によると、令和4年度における公共機関からの受注工事(1件500万以上の工事)において、舗装工事の請負契約額は1兆1,398億1,700万円でした。前年比5.4%増の数値となっており、舗装業界の公共工事分野における需要が拡大していると見て取れます。

また、令和4年度の公共工事は、国の機関から7兆910億円、地方の機関からは14兆4,512億円の工事が発注されました。特に都道府県の道路工事発注額は1兆9,233億円と多く、舗装業界にとって地方自治体との関係構築が重要であると考えられます。

【出典】国土交通省「建設工事受注動態統計調査報告 令和5年3月分及び令和4年度分」

舗装工事業界が抱える課題

日本の舗装工事業界は、公共事業の減少や原材料コストの高騰、技術者の高齢化などの課題を抱えています。それぞれ具体的に見ていきましょう。

価格競争の激化

企業間の価格競争が激化した結果、適正な利益の確保が難しくなっています。また、公共工事の入札システムにおいては、最低価格での落札が重視されており、技術力より価格が優先されている状況です。こうした環境で、中小業者が単独で価格競争に勝ち残ることは困難となっています。

原材料費・燃料費の高騰

舗装工事業界は近年、原材料費とエネルギーコストの上昇に悩まされています。特に深刻なのは、舗装工事に不可欠なアスファルト混合物の原料となる原油価格の高騰です。世界情勢の悪化や世界的なインフレ、欧米との金利格差による急激な円安により、原油・原材料の価格上昇が進行しています。

技術者の高齢化と後継者不足

「建設業界」全体で技術者の高齢化が進んでいます。「国土交通省」によれば、建設業就業者のおよそ35%が55歳以上、11%が29歳以下であり、この先10年以内に引退する方が多いと考えられています。それは舗装工事会社も例に漏れず、若手人材の確保に苦戦しています。

また、経営者の後継者問題も深刻です。舗装現場での施工技術や合材プラントの運営ノウハウは、長年の経験にもとづく“暗黙知”の部分が多く、マニュアル化が難しい特性があります。こうした技術承継のハードルの高さも、後継者や若手人材の確保の足枷(あしかせ)となっているのでしょう。

【出典】国土交通省 北陸地方整備局「令和6年度(後期)生産性向上等説明会 資料 現場における工事の生産性向上をめざして」

舗装工事業界のM&A最新動向(2025年)

市場環境の変化と事業継承問題を背景に、業界各社は生き残りをかけた戦略的判断を迫られています。そこで選択肢の一つとなっているのがM&Aです。ここでは、舗装工事業界のM&A最新動向をご紹介します。

大手ゼネコンによる系列舗装会社の完全子会社化

近年、大手ゼネコンにより、系列の舗装子会社を完全子会社化する事例が見られます。「親子上場解消」という政府方針も、このような形のM&Aを後押ししている状況です。これは単なるグループ再編の動きではなく、業界全体の構造改革の一環として捉えるべき事柄といえます。

中小舗装会社間の経営統合

地域補完による営業エリア拡大と経営基盤強化を目的に、中小の舗装会社同士における経営統合を行うケースも見られます。舗装工事はそもそも、地域密着型のビジネスです。原材料となるアスファルト合材は運搬距離の制約があるため、地元自治体との関係構築も重要となります。こうした背景から、地域に根ざした企業同士の統合は理にかなった経営戦略といえるでしょう。

技術獲得を目的としたM&A

建設現場へのICT技術導入を進める「i-Construction」プロジェクトやデジタル化の波を受け、技術獲得を目的としたM&Aも行われています。ICT技術などを持つ企業を買収することで、自社の技術力を高めて競合他社との差別化を図れるのが魅力です。

舗装工事会社がM&Aで売却するメリット

上記のような課題は、M&Aによって解決できる可能性があります。ここからは、舗装工事会社がM&Aで事業承継・事業売却・会社売却を検討するメリットをご紹介します。

公共工事の入札資格・経営事項審査点数の向上

舗装業界における最重要指標の一つに「経営事項審査(経審)」があります。経審では「総合評定値」(通称:P点)が算出され、この点数が高いほど大型案件への入札参加資格が得られます。

M&Aを実施すると、完成工事高(X1)や自己資本額(X2)といった経営規模評価が向上し、総合点数アップにつながります。例えば、年間売上10億円の会社と5億円の会社が合併した場合、事業規模の拡大により総合評定値が上昇する可能性があります。

重機・特殊機械設備の有効活用

舗装工事に使われるアスファルトフィニッシャーやロードローラーといった専門機械の導入には多額の投資が必要で、稼働率は収益性に直結します。他社との経営統合により機械設備の共有が可能になれば、重複投資の回避と設備稼働率向上といったメリットが生まれます。

営業範囲・施工エリアの拡大

地理的な営業範囲の拡大は、M&Aがもたらす即効性の高いメリットです。舗装業界では原材料となるアスファルト合材の輸送距離に制約があり、それが営業エリア拡大の障壁となっています。隣接地域や未進出エリアの企業を買収することで、輸送距離の制約から解放されるのです。

舗装工事会社がM&Aで売却するデメリット

中小舗装会社の経営者にとって、M&Aの意思決定は一度きりの大きな判断となります。メリットだけでなくデメリットも冷静に評価すべきです。以下、M&Aのデメリットをご紹介します。

許認可の引継ぎが煩雑化しやすい

舗装事業を行うには「建設業許可」が必須であり、許認可の引継ぎが思わぬ障壁となります。許可は個人・法人に与えられるもので、単純に事業を買収しただけでは自動的に継承されません。特に合併や事業譲渡の形態によっては新たな許可申請が必要となり、その間の事業継続が困難になるケースがあります。

地域特性に応じた施工技術の承継が難しい

舗装工事は地域の気候や地質に影響される事業です。例えば、北海道と九州では舗装材料の配合や施工方法が大きく異なり、各地域に適した独自のノウハウと施工技術が存在します。それらを異なる企業間で統合するのは、想像以上に難しい課題です。

舗装工事会社がM&Aで売却を成功させるためのポイント

舗装工事業界のM&Aには、一般的な事業承継・事業売却とは異なる特有の課題と成功要因があります。ここでは、M&Aを成功させるためのポイントをご紹介します。

経審の評点を維持する

経審の評点は、舗装工事業者における公共工事受注の生命線です。M&A検討時は、売り手・買い手双方の経審評点の詳細分析が欠かせません。相手の実績と評点の間に乖離(かいり)がないか、粉飾決算や不適切な資格者配置などの不正がないかを精査します。統合後に評点が大幅に下がると、これまで参加できていた規模の工事から締め出される恐れがあります。

適切な引継ぎ計画を立てる

引継ぎプロセスでは、全ての施工中案件について「工程表」「施工計画書」「協力業者リスト」「原価管理表」などの基本書類を整理し、プロジェクトごとの課題や注意点を明確にすることが大切です。工期遅延リスクや追加工事の可能性がある案件については、発注者と事前に協議し、M&Aにともなう体制変更について理解を得ておきましょう。

有資格者の処遇を明確にする

M&Aの交渉段階から、核となる技術者へのリテンション(引止め)策を検討すべきです。具体的には、一定期間の継続勤務を条件としたボーナス支給や、業績連動型のインセンティブ制度の導入が有効です。統合後の役職や権限についても明確にし、技術者のモチベーション維持を図りましょう。

舗装工事業界のM&A事例

最後に、舗装工事業界のM&A事例をご紹介します。自社のM&A検討時の参考にしてみましょう。

成友興業株式会社による株式会社武蔵野トランスポートのM&A

2025年3月、成友興業株式会社は東京都武蔵野市に本社を置く舗装工事会社、株式会社武蔵野トランスポートの全株式を取得し、完全子会社化しました。

武蔵野トランスポートは、官公庁からの受注による土木・舗装工事を主力とし、地域に根差した事業展開で安定した経営基盤を築いてきました。

成友興業は首都圏での事業拡大と工種の多角化を推進する中、今回の買収により多摩地域での事業基盤強化を図る狙いです。

また、技術交流や相互支援体制を整えることで、グループ全体の収益性向上が期待されます。業界内での事業承継型M&Aの動きが加速する中、地域密着型企業の連携による成長戦略が今後のカギとなりそうです。

【出典】成友興業株式会社「株式会社武蔵野トランスポートの株式取得(子会社化)に関するお知らせ」

株式会社マイスターエンジニアリングによる泰平建設株式会社のM&A

2024年3月、マイスターエンジニアリング株式会社は、神奈川県横浜市に本社を置く泰平建設株式会社の全株式を取得し、グループに迎えました。

泰平建設は、舗装・土木工事を中心とした公共性の高い事業を展開し、横浜市からの優良工事業者表彰など高い技術力で地域に貢献してきた企業です。

マイスターエンジニアリングは、同社を神奈川県における新たな事業拠点と位置づけ、グループ会社との技術・営業・人材面での連携を通じて、超重要インフラの施工・保全領域をさらに強化する狙いです。

地域密着型企業の承継により、事業基盤の安定とグループ全体の付加価値向上が期待されています。

【出典】株式会社マイスターエンジニアリング「泰平建設株式会社の株式の取得に関するお知らせ」

成友興業株式会社による木本建興株式会社のM&A

2024年2月、成友興業株式会社は、神奈川県相模原市の建設会社・木本建興株式会社の全株式を取得し、子会社化しました。

木本建興は1977年の設立以来、水道工事をはじめとした官公庁向けの土木・建築工事を手掛け、特定工種に強みを持つ企業として東京都・神奈川県で確固たる信用を築いてきました。

成友興業は、同社の子会社化を通じて神奈川県での事業展開を強化するとともに、グループ内の技術交流や相互支援体制の充実を図ることで、収益力と企業価値の向上を目指します。

今回のM&Aは、首都圏における地盤拡大と工種の多角化を進める同社の中長期的戦略の一環と位置付けられています。

【出典】成友興業株式会社「木本建興株式会社の株式取得(子会社化)に関するお知らせ」

まとめ|舗装工事業界のM&A動向を押さえてM&Aを成功させましょう

舗装工事業界のM&Aは、経営事項審査点数の向上や設備の有効活用、施工エリアの拡大といった明確なメリットをもたらします。一方で、許認可の引継ぎ問題や地域特性に応じた技術承継の難しさは無視できません。

業界再編が加速する今こそ、生存戦略としてのM&Aを検討しましょう。舗装工事業の事業承継や会社売却をお考えの際は、業界特有の制度や課題に精通したM&A仲介会社に相談することで、より良い選択肢を見つけやすくなります。

CINC Capitalでは、舗装工事業界に深い知見を持つ専門チームが、経営者様の想いにしっかりと寄り添いながら、M&Aの成功をサポートします。経審評点の維持・向上や技術者の雇用継続といった業界特有のポイントにも配慮し、最適なマッチングをご提案します。

この記事の監修者

阿部 泰士

CINC Capital取締役執行役員社長

阿部 泰士

リクルートHRマーケティング、外資系製薬メーカーのバクスターを経て、M&A業界へ転身。 日本M&AセンターにてM&Aアドバイザーとして経験を積み、ABNアドバイザーズ(あおぞら銀行100%子会社)では執行役員営業本部長として営業組織を牽引。2024年10月より上場会社CINCの100%子会社設立後、現職に就任。

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