CINC CapitalはCINC(証券コード:4378)のグループ会社です。
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- 公開日2025.04.21
- 更新日2025.04.21
整骨院のM&A動向(2025年)メリットデメリット/事例/成功のポイントを解説
整骨院が属する「柔道整復業界」では近年、市場競争の激化と療養費削減の影響で経営環境が厳しくなっています。とりわけ個人や中小事業者の経営が悪化しており、事業存続のためにM&Aを検討する動きも見られるようになってきました。
本記事では整骨院M&Aの最新動向、メリット・デメリット、売却を成功させるポイントを徹底解説します。
目次
柔道整復業界の市場動向
「矢野経済研究所」の調査によると、柔道整復・鍼灸・マッサージ市場は2021年度に約9,680億円と推計され、前年から5.3%増加してコロナ禍からの回復傾向を示しました。しかし2023年には市場規模が前年比3.0%増の9,850億円と見積もられ、成長率の鈍化が明らかになっています。要因は多岐にわたりますが、市場競争の激化、保険請求基準の厳格化、療養費の削減などが大きいと考えられます。
【出典】株式会社矢野経済研究所「柔道整復・鍼灸・マッサージ市場に関する調査を実施(2024年)」
柔道整復業界が抱える課題
柔道整復業界は現在、複数の深刻な経営課題に直面しています。ここでは、整骨院に見られる経営課題を3つのポイントからご紹介します。
施設数増加による市場競争の激化
整骨院の数は近年急速に増え続け、業界全体は過当競争の状態に陥っています。厚生労働省の調査によると、2008年に約34,839軒だった「柔道整復の施術所」が、2018年には50,077軒にまで膨れ上がっています。この急激な増加により、整骨院のサービス供給量が需要を大きく上回り、経営環境は一段と厳しさを増しています。
さらに大手チェーンや異業種からの市場参入が進むことで、個人経営の整骨院は価格競争や集客競争に巻き込まれ、生き残りが困難な状況に追い込まれています。特に人口密集地域である都市部では競争が熾烈を極め、新規顧客の獲得はますます難しくなっています。
【出典】厚生労働省「平成30年衛生行政報告例(就業医療関係者)の概況」
療養費不正請求問題
整骨院業界では、療養費の不正請求が長年にわたり社会問題となっています。一部の整骨院が本来保険対象外の施術を保険適用として請求したり、実際の施術内容を水増ししたりして、請求する事例が報告されています。これに対応するため、国は保険請求の審査基準を厳格化し、不正行為に対する罰則強化の方針を打ち出しました。
収益モデルの変化
保険診療の審査厳格化や療養費削減の流れを背景に、国内の整骨院は自費診療サービスの導入・拡充を進めています。自費診療では、慢性的な肩こりや腰痛、美容目的の施術など、保険適用外のサービス提供によって収益確保が可能になります。
しかし、自費診療への移行には多くの課題が存在します。例えば、適切な価格設定や効果的な集客方法など、保険診療とは全く異なるマーケティング戦略が求められます。さらに患者に対して自費診療の価値を適切に伝えられなければ、患者の離反を招く恐れもあるなど、決して簡単な話ではありません。
柔道整復業界のM&A最新動向(2025年)
近年は大手グループによる中小整骨院の買収や異業種からの新規参入が増加しています。ここでは、整骨院を含む柔道整復業界のM&Aの最新動向をご紹介します。
大手グループによる複数店舗の一括買収
大手グループによる複数施設の一括買収が増加し、業界再編の動きが加速しています。これには特定地域でのドミナント戦略の強化、経営効率化、ノウハウ共有による収益性向上などの狙いがあると考えられます。
異業種からの参入
介護事業者や医療機関、フィットネス業界からの異業種参入が増加傾向にあります。この動きが業界に新しい風を吹き込み、革新的なビジネスモデルの創出につながっています。
例えば、介護事業者は整骨院の専門技術やノウハウを活用し、サービス品質の向上を図っています。医療機関では、リハビリテーションサービスの拡充や予防医療強化、フィットネス業界においては、運動指導と身体ケアを組み合わせた新たなサービス展開を目指す動きが見られます。
自費メニュー特化型整骨院の注目度向上
保険診療の審査厳格化や社会保障費削減の流れを受け、自費診療メニューに特化した整骨院が高い注目を集めています。特に慢性的な肩こりや腰痛、骨盤矯正などの自費診療サービスを強化する動きも見られます。今後、こうした整骨院の収益性が高く評価され、M&A市場において高額で取引される可能性もあるでしょう。
整骨院がM&Aで売却するメリット
ここでは、整骨院がM&Aをするメリットをご紹介します。売り手の内容を中心に触れますので、ぜひ参考にしてください。
経営の安定化と事業の拡大
市場競争が激化している今、経営基盤の強化が生き残りの鍵です。資本力のある大手企業と連携することで、経営の安定化や事業拡大も期待できるでしょう。例えば、地方の整骨院が大手企業と提携することにより、地域密着型のブランド展開を進め、安定した経営基盤を確立するケースが見られます。
退店コストの削減
賃貸物件で営業している場合、相手企業に契約条件をそのまま引き継ぐことで、原状回復費用や違約金などのコスト負担を回避できます。同時に整骨院の設備・機器を引き継げば、その処分費用や手間を省けるのもメリットです。
従業員の雇用維持と患者のケア
M&Aによって事業を存続できれば、従業員の雇用を守り、患者への治療サービスを途切れなく提供できます。特に長期的な治療が必要な患者にとって、突然の廃業は大きな影響を与えるものです。患者の治療計画を中断せず、社会的な責任を果たせます。
整骨院がM&Aで売却するデメリット
M&Aにはメリット同様、知っておくべきデメリットも存在します。以下の点を覚えておきましょう。
経営の自由度の低下
整骨院の売却後、施術方針や運営方法について買い手企業の意向に従わなければなりません。これまで独自の施術法やサービスを提供していた場合も、買い手のブランドイメージや経営戦略に合わせた変更を求められる可能性があります。
既存患者の離脱リスク
施術方針や院の雰囲気が変わることで、長年通っていた患者が不安を感じ、ほかの整骨院に流れてしまうことがあります。特に整復師の技量が評判になっている整骨院は、その人に診てもらいたくて通院している患者が少なくありません。特定の整復師が退くと既存患者が離れてしまい、売上低下を招く恐れがあります。
整骨院がM&Aで売却を成功させるためのポイント
整骨院の売却を成功させるためには、事業価値を高める準備と適切な売却戦略が不可欠です。ここでは、整骨院がM&Aを成功させるためのポイントをご紹介します。
治療実績や口コミをアピールする
整骨院の市場価値を高める要素として、治療実績と口コミの質があります。特にインターネット上での高評価の口コミは、新規患者獲得だけでなく、M&A時の事業価値評価に直接影響します。地域で先駆的な施術を行い、インターネット上の口コミ数・高評価が多い整骨院は、特別な集客活動をしなくても高い利益を確保できるため、高く売れやすいのです。
患者データの適切な整理と可視化
患者のリピート率が高く、安定した患者基盤を表すデータがあると市場評価が高くなる傾向にあります。年齢層や来院頻度、施術内容、売上などの患者データを整理し、事業の強みを可視化することで買い手の目を引きやすくなります。
不正請求のないクリーンな経営
買い手企業はデューデリジェンス(詳細調査)を通じて、過去の保険請求の適正性を厳しくチェックします。不正請求の疑いがある場合、M&A自体が中止になるリスクがあります。そのため、日頃から適正な保険請求を心がけ、監査に耐えうる記録管理を行うことが重要です。
適正な企業価値評価を理解する
整骨院のM&Aでも、適正な企業価値評価が重要です。日本の中小企業M&Aでは一般的に「時価純資産+営業権法」や「マルチプル法(EBITDA倍率法)」で企業価値が算定されます。整骨院の場合、特に安定した患者基盤や保険診療と自費診療のバランス、設備の状態などが評価に影響します。
時価純資産+営業権法では、整骨院の保有する資産から負債を差し引いた純資産に、将来の収益力を示す営業権(のれん)を加えて企業価値を算出します。マルチプル法では、EBITDA(利払前・税引前・減価償却前利益)に一定の倍率を掛けて企業価値を算出します。
自社の価値を過大評価せず、市場相場を踏まえた現実的な価格設定が、M&A成功の鍵となります。
整骨院のM&A事例
最後に、整骨院のM&A事例をご紹介します。自社のM&A検討時の参考にしてみましょう。
株式会社ケイズグループによるデータマーケティング株式会社のM&A
鍼灸整骨院事業を中心にウェルネス分野を展開するケイズグループホールディングスは、データマーケティング株式会社の全株式を取得し、完全子会社化しました。
データマーケティングはLINE公式アカウントの導入支援ツール「プロラインフリー」で79,800アカウント以上の導入実績を誇り、今後も成長が期待されています。
本件により、ケイズグループの全国220店舗における集客力向上と、グループ全体のマーケティング基盤の強化を目指します。ウェルネス領域でのDX推進にも寄与する見通しです。
【出典】株式会社ケイズグループ「整骨院グループ最大手のケイズグループ、データマーケティング社を完全子会社化」
株式会社ケイズグループによる株式会社光井JAPANおよび有限会社太洋メディカルのM&A
鍼灸整骨院最大手のケイズグループホールディングスは、関西圏で鍼灸整骨院を展開する株式会社光井JAPANおよび有限会社太洋メディカルの全株式を取得し、完全子会社化しました。
光井JAPANは大阪南部を中心に14院、太洋メディカルは大阪北部から京都・東京にかけて13院を展開しています。
本件により、リスク分散と経営効率化を図るとともに、地域特性を活かした事業拡大と採用強化を目指します。地域医療の発展に貢献しつつ、ホールディングス全体のさらなる成長が期待されます。
【出典】株式会社ケイズグループ「光井JAPAN・太洋メディカルの⼦会社化に関するお知らせ」
株式会社GENKIDOによる株式会社あゆみホールディングスのM&A
株式会社GENKIDOは、北海道札幌市を拠点とする株式会社あゆみホールディングスとの間で事業譲渡契約を締結し、同社が展開する「骨盤メディカル整骨院」の事業を取得しました。
あゆみホールディングスは、骨盤矯正や交通事故後のリハビリに強みを持つ整骨院を運営してきました。全国に整骨院事業を展開するGENKIDOは、本件により北海道・札幌エリアでの出店を強化し、両社のノウハウを融合することで、中期経営計画に基づく成長戦略を加速させる方針です。
【出典】株式会社GENKIDO「株式会社あゆみホールディングスの事業譲渡契約締結のお知らせ」
まとめ|整骨院のM&A動向を押さえてM&Aを成功させましょう
整骨院の売却を検討するなら、専門知識と豊富な実績を持つM&A仲介会社への相談をおすすめします。アドバイザーが適切な市場価値を見極め、最適な買い手とのマッチングをサポートします。業界再編が進む今こそ、専門家の力を借りて最良の選択をしましょう。
CINC Capitalは、M&A仲介協会会員および中小企業庁のM&A登録支援機関として、M&Aのご相談を受け付けております。業界歴10年以上のプロアドバイザーが、お客様の真の利益を追求します。M&Aの相談をご希望の方はお気軽にお問い合わせください。
この記事の監修者

CINC Capital取締役執行役員社長
阿部 泰士
リクルートHRマーケティング、外資系製薬メーカーのバクスターを経て、M&A業界へ転身。 日本M&AセンターにてM&Aアドバイザーとして経験を積み、ABNアドバイザーズ(あおぞら銀行100%子会社)では執行役員営業本部長として営業組織を牽引。2024年10月より上場会社CINCの100%子会社設立後、現職に就任。