CINC CapitalはCINC(証券コード:4378)のグループ会社です。
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業種
- 公開日2025.03.12
- 更新日2025.03.12
保育園におけるM&Aの特徴とは?市場規模や今後の展望
M&A活発化の波は、保育業界にも訪れています。保育園のM&Aを実施することで事業者の課題を解決し、より高品質な保育サービスを実現することも可能になるでしょう。
この記事では、保育園のM&A動向や価格相場、社会福祉法人のM&Aにおける注意点などをご紹介します。
保育園とは
保育園のM&Aについて知る前に、保育園の基礎知識を確かめておきましょう。ここでは、保育園の定義や種類、運営主体などについて解説します。
保育園の定義
保育園(保育所)は0歳から就学前までの子どもが通える施設です。児童福祉法によって定められた福祉施設であり、保護者に代わって子どもたちの保育を行います。法律上の名称は「保育所」ですが、施設名についての規定は存在しないため、「○○保育園」といった名が付いているケースも多く見られます。
保育園の主な種類
保育園は、認可保育園と認可外保育園に大きく分けられます。認可保育園は職員数や施設設備など、国の基準を満たして認可を受けていることが特徴です。自治体によって設置・運営される公立保育園と、民間事業者が設置・運営する私立保育園があります。
認可保育園以外に該当するのが認可外保育園です。事業所内保育園や企業主導型保育園、簡易保育園などの種類があります。
保育園と幼稚園の違い
幼稚園は、主に3歳から就学前の子どもが通える施設です。学校教育法によって定められた教育機関であり、預かる時間は4時間が最低基準とされています。保育園の預かり時間は8時間が標準です。また、保育園と幼稚園の特徴を併せ持ち、保育と教育を同時に行う「認定こども園」もあります。
保育園の主な運営者
保育園によって運営主体は異なります。主な運営者は地方自治体(市区町村)・社会福祉法人・NPO法人・学校法人・株式会社などです。直営の保育園もありますが、運営を民間事業者に委託しているところも珍しくありません。
保育業界の市場やM&Aの動向
保育園のM&Aを検討する際は、保育業界の現状や市場規模などを把握しておくことがおすすめです。以下では、保育業界の市場規模やM&A動向、今度の展望などを解説します。
保育業界の現状
2000年より「保育所設置に係る主体制限」が撤廃され、民間企業も認可保育園を設置できるようになりました。それまでは自治体や社会福祉法人による運営が基本でしたが、以降は株式会社の運営する保育園も増えていきました。
2024年現在、保育園の数自体は増加傾向にあり、待機児童数も年々減少しています。なかには、保育園の申し込み数が見込みを下回った自治体もあるようです。保育の受け皿となる施設が増えたことや、子どもの数が想定以上に減っていることなどが要因と考えられています。特に過疎地域の保育園は空きが多く、今後は施設の規模縮小や再編などが進むとの予想があります。
【参考】こども家庭庁「保育所等関連状況取りまとめ(令和6年4月1日)」
保育業界におけるM&Aの動向
2024年現在、株式会社の保育園運営は少数派であり、施設の多くは自治体や社会福祉法人によって運営されています。しかし、株式会社のM&A事例は複数公開されています。異業種による保育事業参入の例もあるのが特徴です。
保育業界の今後の展望
少子化が進んでいるものの、フルタイム勤務の保護者も珍しくない昨今は、保育園の需要も変わらず維持されると考えられています。依然として待機児童問題に悩まされている地域もあるため、そういったエリアでは保育園の増設が求められるでしょう
加えて、柔軟に利用できる延長保育や一時保育など、多様なニーズを満たす保育施設の設置・運用も期待されています。
高品質な保育サービスを提供するため、M&Aによる事業の多角化や規模の拡大を狙うのも戦略の一つです。従業員を承継する契約であれば、買い手側はノウハウを持つ保育士を確保でき、売り手側は従業員の雇用を維持できる点もメリットとなります。
保育園のM&Aの価格相場や取引額を決める主な要因
保育園のM&Aにおいて気になる部分の一つが取引価格です。相場を把握しておくことで、不当に低価格の取引を避けることもできます。一般的な価格相場や、取引額を決定する要因などを確かめておきましょう。
保育園のM&Aの価格相場
保育園の売却価格は、「園の規模」「立地」「財務状況」「収益性」といった多様な要因によって大きく変動します。具体的な価格相場については、個別の事情を踏まえて評価する必要があるため、M&Aの専門家へご相談ください。
取引額を決める主な要因
保育園の取引額は以下の要因によって左右されることがあります。
- 保育園の規模
- 運営主体
- 財務状況
- 立地条件 など
大規模な保育園ほど譲渡価格は上がりやすくなります。株式会社が運営している場合、収益性に基づくDCF法(ディスカウントキャッシュフロー法)によって事業価値が算定され、交渉の余地が生まれることがあります。
財務状況に問題がなく、収益性の高さが見込まれる園であれば、買取額も高くなりやすいでしょう。利便性の高い立地にある施設なら、多くの利用者が獲得できると期待できるため、その点からも高値がつきやすくなります。
社会福祉法人が運営する保育園をM&Aで継承する際の注意点
私立保育園の運営主体として多く見られるのが社会福祉法人です。社会福祉法人のM&Aは可能ですが、いくつか気をつけておきたいポイントがあります。以下の注意点を確認しておきましょう。
特別の利益供与の禁止
社会福祉法人は公益性の高さが求められる非営利法人です。関係者に特別な利益を与えるのは禁止されています。
具体的には、合併の際には対価の授受は行われません。事業譲渡の場合には、適正価格で譲渡すれば対価を受け取ることが可能ですが、その対価は社会福祉事業に再投資する必要があります。
法人外への利益流出の禁止
社会福祉法人の事業で得た剰余金を、法人外へ流出させるのは禁じられています。無償譲渡を行った場合や、相場より極端に低価格で譲渡した場合、社会福祉法人の資産を不当に流出させる行為とみなされるため注意が必要です。
【参考】厚生労働省「社会福祉法人に特有の規制について」
採用できるM&A手法の制限
社会福祉法人のM&Aでは、事業譲渡と合併が主な手法です。事業譲渡の場合、社会福祉事業を行える法人に対して事業の一部を譲渡します。合併の場合は、複数の社会福祉法人同士が一つに統合されます。
補助金の取り扱い
社会福祉法人の運営資金は補助金や寄付金などです。国庫補助金等で取得した財産を処分する際には、厚生労働大臣の承認が必要です。また、状況によっては、交付された補助金相当額の返還が求められる場合もあるため、注意しましょう。
まとめ|社会福祉法人の特性を理解した上で保育園のM&Aを進めよう
保育園の基礎知識や市場規模、M&Aなどに関する情報をお伝えしました。M&Aを実施することで、売り手側は後継者不足の解消や経営安定化、従業員の雇用継続など、さまざまなメリットを得られます。買い手側は新規開設に伴うリスクを避けながら、事業拡大や人材・設備の確保を叶えられるのがメリットです。
保育園の取引額は多様な条件によって異なる上、適した売却手法も状況によって変わります。適切な取引額や売却手法を把握したい場合は、M&A仲介会社に相談してみることがおすすめです。専門家によるアドバイスを受けることで、M&Aの成功にるでしょう。
CINC Capitalは、M&A仲介協会会員および中小企業庁のM&A登録支援機関として、M&Aのご相談を受け付けております。業界歴10年以上のプロアドバイザーが、お客様の真の利益を追求します。M&Aの相談をご希望の方はお気軽にお問い合わせください。
この記事の監修者

CINC Capital取締役執行役員社長
阿部 泰士
CINC Capital取締役執行役員社長。リクルート関連会社や外資系製薬会社、国内最大手M&A仲介会社で営業組織を牽引。 特にM&A実績の多い業界は調剤・IT・運送業。