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製薬業界のM&A動向(2025年)メリットデメリット/事例/成功のポイントを解説

業種

  • 公開日2025.03.27
  • 更新日2025.04.02

製薬業界のM&A動向(2025年)メリットデメリット/事例/成功のポイントを解説

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製薬業界の企業は、特許切れによる収益減少や新薬開発の高コスト化など、多くの課題に直面しています。そんな中、近年は大手製薬企業による買収が活発化すると予測されており、M&Aの動向が注目されています。

本記事では、製薬業界のM&A最新動向や、メリット・デメリット、成功事例、成功に導くためのポイントをご紹介します。

製薬業界の現状

「第一三共株式会社」が公表するデータによると、2023年における世界の医薬品市場の売上は約1兆6,068億ドル(約233兆円)に達しています。なかでも日本の売上高シェアは、米国・欧州5カ国・中国に次いで多い4.5%を占めており、売上高は約10.6兆円となっている状況です。なお、日本と同様に多くの地域において薬価は行政機関が管理しています。

一方、国内の医薬品市場に着目すると、ジェネリック医薬品市場が着実な成長を続けています。「株式会社富士経済」のプレスリリースによると、2023年の市場規模は、前年比8.0%増となる1兆2,287億円を記録しました。薬効領域ごとのデータでは、「生活習慣病」「がん関連」「消化器科」などの領域に成長が見られ、その背景に高齢化の進行が影響していると考えられています。

【出典】第一三共株式会社「医薬品業界について-個人投資家の皆さま-株主・投資家の皆さま-第一三共株式会社」

【出典】株式会社富士経済「生活習慣病やがん関連領域など8領域のジェネリック医薬品国内市場を調査」

製薬業界が抱える課題

日本の製薬業界では、新薬開発の高コスト化や後継者不足、デジタル化の遅れなど、複数の課題に直面しています。これらの重要課題を解決するための手段として、M&Aが注目されている状況です。

創薬コスト

製薬業界における最大の課題は、創薬にかかる莫大なコストです。日本の大手製薬会社の場合、新薬開発には10年以上の期間と、数億円もの研究開発費が必要とされます。そのうえ、成功確率はわずかとなっています。

後継者不足

製薬業界では後継者不足も大きな課題となっています。多くの医薬品製造販売業者が後継者候補となる人材の不在に直面しているのが現状です。製薬に関する専門知識を持ちながらも、経営経験が不足している人材が多く、円滑な事業承継が困難となっています。

デジタル技術の遅れ

デジタル技術の導入の遅れは、業界全体の競争力低下を招いています。特に、創薬プロセスや臨床試験におけるデジタル化の遅れが顕著です。

AI創薬やデジタル治験など、新たな技術を活用した研究開発の効率化が急務となっており、これらの課題解決のためにもM&Aが検討されています。

製薬業界のM&A最新動向(2025年)

業界特有の経営課題を解決するために、製薬会社各社がM&Aを検討するようになりました。ここでは、日本の製薬業界におけるM&A最新動向をご紹介します。

大手によるM&Aの買収や売却が増加している

2024年には、国内製薬企業による大型M&Aが成立し、業界再編の動きが加速しています。新薬開発にかかる膨大なコストを効率化する手段として、戦略的にM&Aが活用されています。

別業種からのM&Aも見られる

医療デジタルトランスフォーメーション(DX)の推進にともない、異業種からの製薬業界への参入や連携が活発化しています。

例えば、認知機能に関連する金融取引サービスや、IoT技術を活用した高齢者見守りサービス、患者の運動療法を支援するフィットネス事業など、多様な業種との協業が進んでいます。

医薬品製造工場を対象とするM&A件数も増えてきている

研究開発費の効率的な投資を実現するため、製造工場の譲渡や売却が増加しています。特に中小規模の製薬企業で、研究開発費の確保や経営効率化を目的とした工場売却のニーズが高まっています。

製薬業界がM&Aをするメリット

特許切れによる収益減少や新薬開発の高コスト化により、M&Aの重要性が一層高まっています。ここからは、製薬業界の企業がM&Aをするメリットについて売り手側の視点からご紹介します。

新薬開発コストを削減できる

新薬開発には膨大な時間と費用が必要となり、その成功確率は決して高くありません。M&Aで大手製薬会社に買収されることで、現状の経営資源を活用し、新薬開発にかかるリスクおよびコストを軽減できるでしょう。

研究員や営業社員の雇用を維持できる

M&Aを通じて大手製薬企業の傘下に入ることで、研究開発部門や営業部門の従業員の雇用を継続できる可能性があります。買い手企業との交渉次第では、買収後も研究開発チームを維持し、新会社として事業を継続できるかもしれません。

長年培ってきた技術やノウハウを失うことなく、事業を発展させられる点が魅力です。

事業承継問題を解決できる

中堅・中小の製薬企業にとって、事業承継は重要な経営課題です。M&Aは、売り手側にとって後継者不在の問題を解決する有効な手段であり、自社の存続と発展を両立できます。今後は業界再編が加速する中で、事業承継を目的としたM&Aが増加すると予想されます。

個人保証から解放される

中小製薬企業の経営者にとって、個人保証からの解放は大きなメリットの一つです。M&Aを機に経営者個人の保証責任から解放され、安定した経営基盤の確保と、個人資産の保護が期待できます。

製薬業界がM&Aをするデメリット

製薬業界のM&Aにおいて、売り手側にはさまざまな課題が存在します。ここでは、製薬業界の企業がM&Aをするデメリットについて見ていきます。

研究開発の自由度が低下する可能性がある

M&A後は、買い手側の戦略に沿って、自社の研究開発の方向性が大幅に変更される可能性があります。これまで自社で培ってきた研究開発のノウハウや独自の開発アプローチが制限を受け、自由度の低下を招くおそれがあります。

自社ブランドが消滅する

長年かけて構築してきた企業ブランドを、M&A後に維持できないおそれがあります。事業が統合されることで、取引先との信頼関係や独自の企業文化が失われる可能性を否定できません。

従業員の士気が低下するおそれがある

M&A後の組織再編や人事制度の変更により、従業員のモチベーションが低下するリスクがあります。特に、研究開発部門の従業員は、これまでの研究テーマの変更や中止により士気が低下し、離職する可能性があります。

製薬業界がM&Aを成功させるためのポイント

製薬業界では、大手製薬企業による買収が活発化すると予測されています。ここでは、製薬業界の企業がM&Aを成功させるポイントについて、売り手目線で解説します。

企業価値を明確化しておく

自社が保有する医薬品の開発状況や臨床試験の進捗について、詳細なデータを提示できるように準備しておきましょう。特に、肥満治療薬やがん治療薬などの成長分野における研究開発実績は、企業価値を高める重要な要素です。

知的財産を適切に管理し保護する

製薬業界において、特許権などの知的財産は企業価値の核となります。新薬の開発に莫大な費用が必要とされる中、独自技術や特許の適切な管理・保護は、M&Aでの交渉を有利にする材料です。

財務状況を整理しておく

M&Aを成功に導くためには、財務諸表の透明性を確保し、収益構造を明確に示すことが重要です。中でも研究開発費の使途や収益性の分析、将来の成長性について、具体的な数値とともに説明できるようにしておきましょう。

専門家にアドバイスをもらう

製薬業界特有の複雑な規制環境や特許制度を考慮すると、M&Aの専門家のサポートは事実上不可欠です。特に、企業価値評価や知的財産の取り扱い、法規制対応などについて、専門家のアドバイスを受ければ、有利な条件で経営統合をしやすくなります。

製薬業界のM&A事例

武田薬品工業株式会社によるシャイアー・ジャパン株式会社のM&A

武田薬品工業は2018年5月8日、アイルランドのバイオ医薬品大手シャイアーを約6兆8000億円で買収することで合意しました。本件により、武田の売上規模は約3.4兆円となり、世界9位の製薬メーカーとなる見込みです。買収は**英国会社法に基づく「スキーム・オブ・アレンジメント」**を活用し、通常のTOBより迅速な手続きが可能となります。

買収資金のうち約3兆円はJPモルガン・三井住友銀行・三菱UFJ銀行からの融資で賄われ、武田の有利子負債は6兆円超に拡大します。また、3兆円規模の「のれん」計上により減損リスクも懸念されます。一方で、シャイアーの希少疾患領域の強みや米国市場での売上比率向上が期待されます。今後、経営陣は高額なプレミアムを正当化する成果の創出が求められます。

【出典】武田薬品工業株式会社「武田薬品工業がシャイアーを約 6 兆 8000 億円で買収」

シオノギヘルスケア株式会社による宝ヘルスケア株式会社のM&A

塩野義製薬は2018年9月20日、子会社のシオノギヘルスケアが宝ホールディングス傘下の宝ヘルスケアの全株式を取得し、吸収合併すること、加えてタカラバイオの健康食品事業を承継する契約を締結しました。これにより、シオノギヘルスケアは宝グループの健康食品事業を一体化し、シニア向け健康増進事業を強化します。

本件により、フコイダンなどシニア層に支持される健康食品をシオノギヘルスケアが継続提供し、一般用医薬品とのシナジーを生かした事業拡大を目指します。統合後も既存の製品・サービスは維持され、消費者への影響はありません。

シオノギヘルスケアは**「人々の健康を守る最良のヘルスケア商品を提供する」**という理念のもと、一般用医薬品を中心に事業展開しています。今回の統合により、超高齢化社会に対応するヘルスケア市場での競争力をさらに強化するとみられます。本件による2019年3月期の業績への影響は軽微とされています。

【出典】シオノギヘルスケア株式会社「シオノギヘルスケアによる宝ヘルスケアの株式取得と吸収合併ならびにタカラバイオの健康食品事業承継について」

ロート製薬株式会社による

ロート製薬は、オーストリアの**Mono chem-pharm Produkte GmbH(モノ社)の株式51%を取得することを決定し、2024年6月5日に株式譲渡契約を締結しました。取得総額は30百万ユーロ(約51億円)で、同社の親会社であるMONDPICHLER-NOORDUNG財団(MNP)**からの取得と増資によって実施されます。

モノ社は眼科・耳鼻咽喉科向け医薬品・医療機器の製造・販売を行うジグマファーム社を傘下に持ち、欧州市場で事業を展開しています。今回の買収により、ロート製薬は欧州市場でのアイケア事業を強化し、製造拠点を確保することで迅速な事業拡大を目指します。また、2024年3月からオーストリア市場で販売を開始した「ロートドライエイド点眼薬」の流通も加速させる方針です。

ロート製薬は、モノ社の高品質な生産力と自社の研究開発力を融合させ、欧州における革新的な製品展開を推進します。本件による業績への影響は軽微と見られていますが、欧州市場におけるさらなる成長が期待されます。

【出典】ロート製薬株式会社「オーストリアの製薬会社 Mono chem-pharm Produkte GmbH の株式取得について」

まとめ|製薬業界のM&A動向を押さえてM&Aを成功させましょう

製薬業界におけるM&Aは、新薬開発コストの削減をはじめとして、さまざまな経営課題の解決に役立てられています。その一方で、知的財産の取り扱いなど製薬業界ならではの注意点も存在するため、M&Aプロセスは慎重に進めることが重要です。M&Aを成功へ導くためにも、業界に詳しいM&A仲介会社に相談し、まずはM&A実施計画の策定から着実に取り組んでいきましょう。

CINC Capitalは、M&A仲介協会会員および中小企業庁のM&A登録支援機関として、M&Aのご相談を受け付けております。業界歴10年以上のプロアドバイザーが、お客様の真の利益を追求します。M&Aの相談をご希望の方はお気軽にお問い合わせください。

この記事の監修者

阿部 泰士

CINC Capital取締役執行役員社長

阿部 泰士

リクルートHRマーケティング、外資系製薬メーカーのバクスターを経て、M&A業界へ転身。 日本M&AセンターにてM&Aアドバイザーとして経験を積み、ABNアドバイザーズ(あおぞら銀行100%子会社)では執行役員営業本部長として営業組織を牽引。2024年10月より上場会社CINCの100%子会社設立後、現職に就任。

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